グローバル人材とは?育成方法から成功事例まで5分で解説
- グローバル人材の定義とは
- 文部科学省・総務省の定義
- グローバル人材育成推進会議の役割
- グローバル人材が注目されるようになった背景
- グローバル人材に必要な能力
- コミュニケーション能力
- 外国語能力
- 主体性やチャレンジ精神
- リーダーシップ
- 日本文化・伝統の理解
- グローバル人材開発・育成5つのステップ
- Step1:候補者のリストアップ
- Step2:能力育成に関する課題をリストアップ
- Step3:人材育成計画の作成
- Step4:人材育成のための研修・PDCA
- Step5:配属
- グローバル人材育成・取り組み企業事例
- 事例1:株式会社日立製作所
- 事例2:楽天グループ株式会社
- 【まとめ】人材管理・育成業務をカンタン・シンプルに
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グローバル人材の定義とは
グローバル人材とは、国内・国外問わず幅広いビジネスシーンで横断的に成果を出せる人材のことを指します。海外での活躍が多くなるため、語学力や高いコミュニケーション能力が必要です。ここではさらに文部省などの公的な定義から、グローバル人材に注目が集まる理由を紹介します。
文部科学省・総務省の定義
文部科学省や総務省ではグローバル人材に関して以下のように定義しています。
文部科学省
文部科学省では、「グローバル人材」の概念を以下のような要素と定義づけています。
要素I:語学力・コミュニケーション能力
要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素III:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
この他、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等をもった人材です。
(※参照)文部科学省:「グローバル人材の育成について」より
総務省
総務省では、グローバル人材とは同計画において、「日本人としてのアイデンティティーや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・ 積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材」と定義しています。
(※参照)総務省:「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」より
上記のようにグローバル人材の定義では、語学力、主体性、日本人としてのアイデンティティーなどの必要性をあげています。
ただし最初に定義されている語学力に関して、現状の日本の国内英語力はTOEFLの国別ランキングでは135位、アジア内順位でも27位です。また、スイスの研究教育機関IMDが発表している世界競争ランキング(2011年)では、日本は59カ国中26位と、2006年の16位から下がっている傾向があります。(※1)
このため同じ調査報告書の中で、今後は英語能力に関して「二者間折衝・交渉レベル」「多数者折衝・交渉レベル」の人材の継続した育成と、一定数の「人材層」として確保する必要性が強調されています。
(※1)文部科学省:「グローバル人材の育成について」より
グローバル人材育成推進会議の役割
グローバル人材育成推進会議は、国際的に活躍できる「グローバル人材」を継続的に育成すること、そのような人材が社会で活用されることを目的として関係閣僚により2011年に設置されたものです。内閣官房長官を議長に、外務大臣、文部化科学大臣、経済産業大臣などで構成されています。
特に2004年以降、海外へ留学する日本人学生の数は減少傾向にあり、特に米国の大学に在籍する日本人学生数は大きく落ち込んでいるのが実態です。一方経済成長中の中国やインドは海外留学生の数を伸ばしています。日本は、人口が日本の半分の韓国にも留学者実数が劣るなど、グローバル化への遅れへの危機感は募っています。
こういった背景を受け、グローバル人材育成推進会議ではグローバル人材を小中高校生からの英語教育強化や、海外留学促進、帰国子女の受け入れ枠増など、学生への支援を課題としてあげています。
(※参照)首相官邸:「グローバル人材育成戦略」より
グローバル人材が注目されるようになった背景
今後さらに加速する国内の少子高齢化と人口減により、国内の需要は今よりも低迷すると予測されています。このため海外市場を開拓したいと考える企業も増えており、ますますグローバル人材への需要は高まると考えられています。
しかしながら、もともと優秀な人材は採用難なことに加え、グローバルで活躍できる人材となると、確保の難易度はさらにあがってしまいます。このため、自社で人材育成を行い、確実な人材確保を狙う企業が増えています。
グローバル人材に必要な能力
グローバル人材に必要な能力は、政府の定義では語学力、主体性、日本人としてのアイデンティティーの3つの柱が明示されていましたが、ここではさらに詳しく紹介します。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は外国語を駆使できるという意味だけでなく、相手のことを理解し、物事を円滑に進めることのできる能力と言えます。特に海外でのビジネスは、交渉やプロジェクトの締結が大きな要素になってくると思われます。
こちらの主張だけを通すのではなく、先方の要求や条件を聞いた上で、双方が納得できるポイントを探していくのは、高いコミュニケーションスキルが必要になります。
外国語能力
コミュニケーションを行う上で、外国語能力は必須でしょう。
筆者は社会人になってからシドニー大学の寮で生活をしていた経験があります。高校生までに海外で英語を学んだ学生は、ネイティブに近い語学力を持っていました。しかし大学から留学した学生には、大学での論文の課題で、必ずネイティブチェックによる文章の修正が必要になっていました。どうしても、英語学習の開始が遅くなると、日本語で言う「てにをは」の感覚がつくのに時間がかかるようです。筆者のように社会人になってから外国語学習を始めるのでは、さらに数倍の努力が必要になります。学生時代に留学ができなくても、国内で異文化に触れる機会を作るなどのアクションをしておかなかったことを後悔しました。
ただし外国語ができるだけでは、ただの通訳になってしまいます。グローバル人材に必要な外国語能力とは、さらに外国語を使い交渉できるレベルの論理的思考、問題解決の能力なども必要です。
主体性やチャレンジ精神
国内ではなく、海外で活躍したいと思う人材には、新しいことのチャレンジ精神や、物事を自分で解決する主体性は欠かせないでしょう。
しかし、総務省の調査によると、政府主導の日本人海外留学の促進は2012年6万人を2020年に12万人にする計画でしたが、結果は5.3万人と減少傾向が続いています。生まれた時から周りにモノがあふれている現在の若者は、無いものを得るために自ら動くチャレンジ精神よりも、満たされている現状を守るという保守的な傾向があるとされています。
また日本の大学在学中に長期留学をすると休学が必要になるため、留学を諦めてしまうケースがあります。
留学先が日本の大学と提携しており、単位の取得・互換ができる場合は休学の必要がなく、通常の年数で卒業することができるでしょう。しかしこのような場合は、留学させてもらえる人数に限りがあり、学内選考などを通過しなければならないことが多いです。一方、学生が自身で留学エージェントなどを通じて留学することもできます。基本的に選考などはなく誰でも留学に挑戦できますが、大学とは関係のない機関を通じての留学になるため、留学の期間によっては大学の休学が必要になり、留年してしまう可能性があります。こういった現状も長期留学を思い止まらせる要因になっています。この結果、企業が求める1年以上の留学者と、在学中の留学では6ヶ月未満という現状との、ミスマッチが起こっています。
これからますます主体性やチャレンジ精神のある人材の採用は、取り合いになる可能性があります。
(※参照)総務省:「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」より
リーダーシップ
リーダーシップはどのような企業でも必要になる能力と言えます。ただ目標やビジョンに向かって自ら行動できる資質は、特にグローバルで活躍するためには必要な資質でしょう。自ら判断するということは、その分責任も問われます。責任を持って行動する姿勢は、周囲によい影響を与えることになります。
日本文化・伝統の理解
日本文化と伝統の理解、および日本人であることのアイデンティティーは、海外では必ず聞かれる「自分は何者か?」ということをきちんと説明できるということでもあります。
筆者の経験でも、海外でのビジネスシーンで、日本以上に日本のことを知っている方、もしくは自国への深い愛情を語る方にお会いすることがあり、逆に日本人のほうが謙遜してしまう文化のせいか、「日本なんて」と卑下した態度をとってしまうことを目にしました。その場合はその人物自体が軽くみられ、尊重されないのだということを学びました。生まれ育った国に感謝が言える人物の方が、人として器が大きく感じられるようです。
日本の自然や文化、歴史といった基本的なことだけでなく、技術力なども含め誇りを持って紹介できる知識が必要といえます。
グローバル人材開発・育成5つのステップ
今後ますます需要と供給のバランスの差が大きくなるであろうグローバル人材。企業が自社内で育てるケースが増えています。ここでは育成5つのステップを解説します。
Step1:候補者のリストアップ
最初に行うのは、候補者のリスト化です。人事による人事評価の管理データからの抽出だけでなく、上司による推薦や自薦も加えます。周りの評価だけでなく、本人のやる気が大きく結果を左右します。特に低い人事評価でない場合は、自薦はやる気を見る上で有効な手段と言えます。
自社で考えるグローバル人材のスキルを点数化し、人事もしくはグローバル人材育成のプロジェクトメンバーで、優先順位を付けてリストを完成させていきます。
Step2:能力育成に関する課題をリストアップ
次に行うのは、補うべき能力や課題のリストアップです。各人材の補うべきウィークポイントをリスト化し、社内の研修や今後の仕事の経験などで育成できるか確認します。
グローバル人材を育てるのは一朝一夕では実現できません。長期的視野で課題を解決する視点が必要になります。
Step3:人材育成計画の作成
候補者と課題のリストアップが完了したら、人材育成計画を作成します。自社内の技術の知識や、ビジネスの知識を学ぶ必要がある場合は、今後の配属プランを各マネージャークラスと話し合う必要があるでしょう。
語学力など、OJTでなくても補えるスキルに関しては、オンライン研修や集合研修などの計画を組み入れます。
具体的な今後の自社の海外戦略とあわせて、いつまでにどのような人材が必要なのか、経営計画とあわせて進行させるとよいでしょう。また選抜された本人も、闇雲に勉強するのではなく、明確な配属イメージがあるほうがモチベーションの維持もしやすくなります。
Step4:人材育成のための研修・PDCA
計画までできたら、あとは研修含めPDCAを回していきます。ただしビジネスの環境変化が速いため、長期プランで人材育成をしている場合、目標としていた配属先や計画そのものが変更になる可能性があります。また育成中の人材が思ったように育たない、もしくは退職してしまうなどのトラブルも起こるでしょう。
人事やプロジェクトメンバーは、常に変化を分析し、臨機応変に計画修正や対応をしていく必要があります。
Step5:配属
人材が育った後は、ビジネス計画とあわせて配属するだけです。しかしながら、リストアップした当初の期待と結果には、人材の成長にバラツキがでたり、ライフスタイルの変化で本人が海外勤務を希望しなくなったりするなどの変化もでてきます。
このため、もともとのプランでは数人だけでなく、数十人から数百人といった規模で育成をしておくのがおすすめです。
グローバル人材育成・取り組み企業事例
グローバル人材の自社育成は、今後海外展開をする企業にとって、必須になっていくと思われます。ここではグローバル人材育成に成功した企業事例を紹介します。
事例1:株式会社日立製作所
株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区)は日本を代表する家電メーカーですが、「社内イノベーション事業」を中心に事業のグローバル化を進めています。現在総売上は8.7兆円を超え、うち海外の売上高比は48%、連結従業員数は30万人を超える大企業です。同社では「グローバル人材マネジメント戦略」を策定し、2011年より「グローバル人財本部」を設立・運営しています。
それまでは日本の本社の下に海外拠点があるという発想でしたが、これを転換しグローバルと言う人材マネジメントがあり、その下に日本も含めた世界の6拠点がフラットであるという考えに切り替えたそうです。以下の4つを使い、世界が見える「グローバルな人財部門」を目指しています。
グローバル人材データベース
グローバルグレード(人財評価尺度統一)
パフォーマンスマネジメント
タレントマネジメント
オンゴーイングで取り組み中とのことですが、人事評価や処遇も「グローバルグレード」にシフトし、45,000もの業務ポジションのマッピング化を達成。さらに最も重要な資源は「人財」として、Workday(人財マネジメント統合プラットフォーム)を導入し、全世界約30万人の人財をデータ化し「グローバルに見える化」することに成功しています。これにより企業として各ポジションに必要なスキルと経験が明確化され、グローバルに戦う多様な人財集団をめざした「意識・風土改革」を推進できるとしています。
(※参照)HITACHI:「日立の事業変革とグローバル人財戦略」より
(※参照)日本の人事部:『「人」基準から「仕事」基準へーー日立製作所が取り組むグローバル視点に基づく人財マネジメントとは』より
事例2:楽天グループ株式会社
楽天グループ株式会社(本社:東京都世田谷区)は、1997年設立の主にインターネット上でショッピングモールを展開する企業です。同社では2010年から社内の公用語を英語にしたことで話題になりました。「グローバル イノベーション カンパニー」になるというビションを掲げ、全社員をグローバル人材として通用するために成長させる施策でした。当時の従業員のTOEIC平均スコアは526点でしたが、TOEICスコア800点を目標にし、2015年に達成。現在の入社規則では、原則TOEIC800点以上が求められるようになっています。
成功の大きな要因は代表の三木谷氏自らが、計画発表後の朝礼含め、社内会議ではすべて英語を使うようになったことです。役員も例外なく英語を勉強し、海外研修へいくなど努力する姿勢を社員にみせたことだといいます。当初は日本人同士なのに、会議であえて英語を使う、社内文章もすべて英語にすることに外部からの批判があったそうですが、社内でのアンケート調査は意外にも好意的な結果だったそうです。英語を学びたいと思っている従業員が思った以上に多かったとのこと。結果として日本語を母国語としない優秀な人材含め、採用の幅が広がる結果になり、企業のダイバーシティ化や、全世界基準の統一した人事評価のシステムが組めています。
現在は社員の2割以上が外国籍で約80カ国の国籍からなり、約3分の一の従業員が海外を拠点に活躍するようになっています。また誰でも海外の展示会や説明会などへいけるようになりました。従業員総グローバル人材化と、企業のグローバル戦略を成功させた事例といえます。
(※参照)HRカンファレンス:「今求められる、グローバル人材マネジメントとは」より
(※参照)The Asahi Shimbun Globe+:「【三木谷浩史】英語を社内公用語にしなければ、楽天は終わっていた」より
(※参照)人材・組織システム研究室:「第45回 社内公用英語化の宣言から12年目。楽天グループの現在地から改めて学ぶこと」より
【まとめ】人材管理・育成業務をカンタン・シンプルに
グローバル人材に関して、その定義から育成方法、成功事例まで紹介してきました。今後の人事戦略としても必要になってくる施策といえます。
またグローバル人材の育成のステップや、企業事例でも紹介しましたが、育成のためには人材のデータ化がかかせません。しかしこのデータ化は人事の工数増に繋がり、大きなネックではないでしょうか。
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