人材育成
2023/03/07
OJTとOFF-JTとは?メリット・デメリットや活用方法を解説
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新しく従業員が入社すると、業務に必要な知識やノウハウを身につけるための指導・教育を行う必要があります。
新しく入社した従業員に対する指導・教育の方法として代表的なものに、OJTとOFF-JTがあります。
OJTとOFF-JTとは、それぞれどのような方法で行われるのでしょうか。
また、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
この記事では、OJTとOFF-JTの概要やメリット・デメリット、OJTとOFF-JTを効果的に活用するためのポイントについて説明します。
OJTとは
OJTは、「On the Job Training」の頭文字を取ったものです。直訳すると「職場内訓練」という意味です。
これは現場での実務を通じて業務の知識・ノウハウを身につける方法を指します。
OJTは元々、アメリカで第一次世界対戦中に短期間で多数の新人を育成するために考案された「4段階職業指導法」をベースに作られた指導法です。
「4段階職業指導法」では、「Show(やって見せる)」「Tell(説明する)」「Do(実践させる)」「Check(評価と指導を行う)」の4段階を元に指導を行うことが特長です。
OJTでも「4段階職業指導法」と同様に、新入社員は先輩社員が実際に業務を行う様子を見て説明を聞き、自分自身も実践します。
そして、実践の内容についてフィードバックをもらい、その後に活かしていくのです。
研修などの論理的・体系的な学習では分からない、現場に則した学びができることがOJTの大きな特長と言えるでしょう。
つまり、OJTはアウトプットの場であると言えます。
OJTのメリット
OJTは、現場で業務を行いながら、先輩社員から直接指導を受ける方法です。
現場を離れることなく、実務の中で指導が行われることがOJTの大きな特長です。
では、OJTには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
以下で3点に分けて説明します。
対象の従業員に合った指導ができる
OJTは、新入社員と先輩社員が一対一で行います。
一対一であることにより、複数人へ同時に行う指導に比べて個人の習熟度に合わせた指導を行えることは、OJTのメリットの一つです。
新入社員にはひとりひとり、得意・不得意な分野があるでしょう。
OJTで個別に指導することにより、得意と判断できる分野については時間をかけずに指導を行えます。
逆に、不得意と考えられる分野については、時間をかけて繰り返し指導を行います。
習熟度に合わせた指導ができることで、必要な箇所に必要な時間をかけることができ、合理的な指導が行えると言えるでしょう。
迅速なフィードバックができる
実務の場で一対一で行う指導であるため、先輩社員からスピーディーにフィードバックを受けられる点は、OJTのメリットの一つです。
大人数で一斉に行う講義形式の指導の場合、トレーナーである先輩社員に自身の習熟度を把握してもらうことは難しい場合もあるでしょう。
OJTであれば、自身が実践する様子を目の前で先輩社員に見てもらえるため、習得できている点や不足している点について迅速にフィードバックをもらえます。
リアルタイムでフィードバックをもらえることにより、正しく知識を習得できているのか分からず不安を感じる、といったことが少なくなるでしょう。
コミュニケーションが活発になる
OJTを実施することにより、新入社員と先輩社員とのコミュニケーションが活発になることが期待できます。
大人数で同時に行う講義形式の指導では、指導をする側が一方的に話をすることが多く、新入社員は話を聞くのみになりがちです。
それに対し、OJTは一対一の実際の環境で行われるため、不明点がある際は先輩社員へその場で直接質問することができます。
先輩社員も、新入社員の質問に答えることはもちろん、自身の経験について話すなどする中で、会話をすることが多くなるでしょう。
また、トレーナーである先輩社員が自身の上司へOJTの進め方について助言を仰ぐこともあるでしょう。
OJTにより、新入社員と先輩社員、また先輩社員と上司を始めとする他の社員とで、それぞれコミュニケーションが活性化されていくことが期待できます。
OJTのデメリット
OJTは一対一で行うため、個人の習熟度に合わせた合理的な指導ができることが特長です。
では、OJTにおけるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下で3点に分けて説明します。
論理的・体系的な指導がしづらい
OJTでは現場で実践を行い、その実践内容についての振り返りをすることによって知識・ノウハウを身につけます。
そのため、実際の業務に必要な知識は身につきやすいでしょう。
その反面、講義形式で行うような論理的・体系的な指導はしづらいと考えられます。
OJTで得られる知識は、実務の場に限定されたものであることが多く、汎用性がない可能性もあります。
実務で経験を積めても、その経験をその後に活かすためのプロセスや論理について学びづらい点はOJTのデメリットと言えます。
進度や習熟度に差が出やすい
OJTは先輩社員と新入社員の一対一の指導であり、言ってみれば先輩社員に指導内容を一任する方法です。
そのため、トレーナーとなる先輩社員のスキルによって、同じ時期に入社した新入社員間で指導の進度・習熟度に差が出やすいと言えます。
先輩社員とは言え、教えることが得意な人がいれば、苦手な人もいるため、指導に差が生まれるのは当然のこととも言えるでしょう。
また、指導の内容についても、先輩社員の考え方や実際のOJTの流れによってばらつきが出やすくなります。
指導する従業員の負担が大きい
OJTは実務の中で指導を行うため 、先輩社員は新入社員への指導と自身の業務とを並行して行う必要があります。
トレーナーである先輩社員が業務と指導の両立のために、大きな負担を抱えやすい点はOJTのデメリットであると言えます。
新入社員の指導も大切ですが、通常の業務も同じく大切です。
場合によっては指導に時間を取られてしまい、業務が計画通りに進まない状況になることもあるでしょう。
トレーナーである先輩社員にとっては、通常業務に充てる時間とOJTの時間との配分が難しいかもしれません。
OFF-JTとは
OFF-JTは「OFF the Job Training」の頭文字を取ったもので、セミナーや研修など、実務から離れて行う指導を指します。
一対一で行うOJTに対し、OFF-JTは通常は同時に複数人を対象に行います。
また、内容は知識のインプットが中心であり、実務でのアウトプットを主に行うOJTとは対照的です。
特に、ほぼ業務に関する知識がない状態で入社する新入社員は、OFFーJTの場で基本的な知識の土台を作ることができるでしょう。
OFF-JTの具体的な内容としては、挨拶や名刺交換の方法などを始めとしたビジネスマナーの座学や、特定のテーマについて討議やプレゼンテーションをするグループワークなどが挙げられます。
OFF-JTのトレーナーについては、自社の従業員が務めることもありますが、外部から招いた講師が担当する場合もあります。
また、通信教育やe-ラーニングによる学習もOFF-JTに含まれます。
OFF-JTのメリット
OFF-JTは、実務の場から離れて、複数人を対象に行う教育・指導を指します。
OFF-JTを行うメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
以下で2点に分けて説明します。
同時に複数の従業員に指導ができる
OFF-JTは、セミナーや講義の形式であることが多いため、同時に多くの新入社員に対して指導を行えます。
OJTのように、通常の業務と並行して指導を行う余裕がない場合は、OFF-JTの方が合理的に行えると言えるでしょう。
また、新入社員ひとりひとりにトレーナーとなる先輩社員の人員を確保できない場合にも、OFF-JTの方が適していると言えます。
指導内容を統一できる
OFF-JTは、セミナーや講義の形式で複数の新入社員に対して同時に行うため、指導する内容を統一できます。
トレーナーとなる先輩社員によって指導内容に差が出がちなOJTと比べて、OFF-JTでは習得できるスキルや知識が均質化されやすいと言えます。
そのため、同時期に入社した社員であるにも関わらず、指導の進度が異なるという状況が避けられるでしょう。
また、慌ただしい実務の現場を離れて指導を受けられることから、じっくりと知識を吸収できると考えられます。
OFF-JTのデメリット
OFF-JTは、複数の新入社員に対して同時に行える点が大きな特長です。
それでは、逆にOFF-JTのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下で3点に分けて説明します。
学んだことを活用できない可能性がある
OFF-JTでは、セミナー・講義の形式で、知識を体系的・論理的に学ぶことができます。
しかし、体系的・論理的な知識には、実務において活用しづらいものもあります。
ビジネスマナーとして教わる、名刺交換の作法などがこの一例です。
多くの新入社員は業務知識を学び始めた段階であり、取引先と挨拶をしたり名刺の交換をしたりする機会があるのはまだ先でしょう。
特に、自社の従業員ではなく外部の講師がトレーナーを務める場合は、実務に繋がりにくい内容を学ぶことが多くなりがちです。
外部の講師は自社の従業員ほどは自社の業務に精通していないため、すぐに実務で活用できる知識を教わることは難しいでしょう。
また、学ぶテーマが実務と関連のない内容である場合などは、講義を聞いても具体的なイメージが湧きにくいでしょう。
実務に直結する知識を得られるOJTと比較すると、OFF-JTは学ぶ側がモチベーションを維持する努力が大切と言えます。
外部の講師に委託した場合はコストがかかる
OFF-JTのトレーナーを外部の講師に依頼した場合は、大半の場合コストがかかります。
自社の従業員である先輩社員がトレーナーを務めるOJTと異なり、費用がかかる点はOFF-JTのデメリットと言えます。
また、自社内ではなく研修施設などの大きな場所を借りてOFF-JTを行う場合も、利用料としてのコストが発生するでしょう。
OFF-JTにかかる費用を削減するためには、トレーナーを外部に依頼せず自社の従業員が務める、e-ラーニングやオンラインを活用するなどの方法が有効です。
新入社員の現場意識が醸成しづらい
OFF-JTは、トレーナーや講師が複数の新入社員に向かって、講義形式で一方的に話をするパターンが多くなります。
座って話を聞くのみになりがちなために、新入社員の現場意識が醸成しづらい点はOFF-JTのデメリットの一つと言えます。
OFF-JTで学んだことを実務で活かせるかどうかは、新入社員本人の意識次第です。
形式上の学びで満足するのみにならないよう、実務で活用するために学ぶのだという意識を持ってOFF-JTに参加することが大切です。
OJTとOFF-JTを効果的に活用するには
OJTとOFF-JTには、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。
可能な限りOJTとOFF-JTを使い分けて、その効果を高められることが理想的です。
それでは、OJTとOFF-JTを効果的に活用するためには、どのような点に留意すると良いのでしょうか。
以下で3点に分けて説明します。
それぞれの内容を複合的に活用する
OJTもOFF-JTも、学んだことを業務に活かすことができなければ意味がありません。
学びを実務で活かすためには、OJTとOFF-JTとを線引きすることなく、複合的に活用することが大切です。
複合的な活用によって、それぞれの弱みを補完し合えることが期待できるでしょう。
たとえば、OJTでうまくできなかった・理解できなかった部分を、OFF-JTでの学びによってカバーできる場合があります。
逆に、OFF-JTで得た体系的・論理的な知識を、実践の場であるOJTで活かすこともできるでしょう。
環境や制度を整えて指導の質を高める
OJTとOFF-JTを活用するためには、実施する際の環境づくりや、制度の充実が大切です。
環境面で言えば、OJTやOFF-JTを実施する前に、十分な育成計画を立てることがその一例です。
無計画な指導をすると、学びの土台ができないままに次々と新しい知識を与えられ、新入社員が混乱してしまう可能性があります。
また、指導はすべて終えたのに知識の抜け漏れが多数あった、ということにもなりかねません。
そのような事態を避けるためにも最初に育成計画を立て、どのような内容をどのような日程で習得するのか、流れを決めておくことが大切です。
制度面で言えば、OJTでトレーナーを担当する従業員を対象とした研修の実施が有効です。
普段実務を担当している従業員でも、トレーナーを上手にこなせる人ばかりではありません。
まずは、育成計画の立て方や教え方、コミュニケーションスキルの知識などをトレーナー自身が学ぶことが大切です。
研修によってトレーナーとしてのスキルが向上することにより、OJTの質が上がることが期待できるでしょう。
自己啓発を促進する
OJTやOFF-JTは、トレーナーとなる先輩社員や講師から知識・ノウハウを教えてもらう、言わば受け身の学びです。
受け身ではなく、自主的に学ぼうとする自己啓発を促進することにより、OJTやOFFーJTの効果をより高められることが期待できるでしょう。
自己啓発には具体的に、書籍で学ぶ、外部のセミナーに参加するなどの方法があります。
また、業務に関連する資格の取得も自己啓発の一つです。
また、OJTやOFF-JTでは、学ぶ内容があらかじめトレーナーや講師側で決められています。
それに対し、自己啓発は新入社員が自分で学びたいことを選択できる、自由度の高いものです。
その代わりに、自己啓発による学習には、必ず最後までやり通さなければならないという縛りがありません。
そのため、知識の習得や資格の取得などの最終目標を達成できるかどうかは、学ぶ本人の意思次第となるでしょう。
まとめ
OJTは現場での実践を通じ、先輩社員と一対一で知識・ノウハウを習得する方法です。
そしてOFF-JTは、講義やセミナーなど、現場を離れた場所で多人数で同時に学ぶ方法です。
OJTやOFF-JTそれぞれのメリット・デメリットを把握した上で、その時々の目的に合った方法を選択することが大切です。
さらに、知識を教えてもらう受け身の学びだけにならないよう、新入社員が自主的に学ぼうとする自己啓発の姿勢を促進することも重要です。
OJTとOFF-JT、そして自己啓発の促進によって、新入社員にとってより深い学びができることが期待できるでしょう。
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