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2024/01/04

オープンイノベーションとは?意味や目的と導入事例について解説

目次

    オープンイノベーションとは、商品やサービスの開発、技術研究など、会社を成長させる過程の中で、技術やノウハウを外部から得て革新的なビジネスモデルを作り上げる経営戦略のひとつです。

    しかし、オープンイノベーションを導入することで、「外部に漏らしたくない情報が漏洩してしまうリスク」や、「自社の開発スキルが低下する可能性がある」ため注意が必要です。

    自社にとってのリスクをしっかりと避け、効果的にオープンイノベーションを導入することで、大きな利益につながるでしょう。

    この記事では、オープンイノベーションとは何か、意味や導入の目的、メリットとデメリットや注意すべき点、導入事例について解説します。

    オープンイノベーションのための社内スキルの把握

    オープンイノベーションとは

    オープンイノベーションとは、商品やサービスの開発、技術研究など、会社を成長させる過程の中で、技術やノウハウを外部から得て革新的なビジネスモデルを作り上げる経営戦略のひとつです。

    またオープンイノベーションには、外部からのスキルやノウハウの受け入れだけではなく、自社のスキルやノウハウを自由に流出させ、あえて市場の競争を強化させることも含まれます。

    つまりオープンイノベーションとは、「商品開発や技術開発を会社の枠を越えて進めていく考え方」を指します。

    「自社で培ったスキルやノウハウを外部流出させてしまえば、会社の利益損失につながる」と考える場合もあるかもしれませんが、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が進む現代において、自社のスキルやノウハウを外部に流出させ、業界全体で技術力を高める動きが始まっています。

    外部と協業するというと、他の会社と協業することを想像する方もいるかもしれませんが、それだけではありません。

    オープンイノベーションを取り組む相手は、他の企業や一般顧客が対象で、企業に必要なスキルやノウハウ、情報を得られる最善の相手と取り組みます。

    オープンイノベーションとクローズドイノベーションの違い

    オープンイノベーションの対義語は「クローズドイノベーション」です。

    クローズドイノベーションとは、自社の知識やノウハウを外部に流出させず、自社のリソースだけで商品開発や技術革新を図る考え方です。

    クローズドイノベーションの考えを持った企業は、「自分たちの力でイノベーションを起こす」「自分たちが新しい商品やサービスを創造しなければいけない」と考えており、自社の研究開発に重点を置いています。

    オープンイノベーションが注目される背景

    オープンイノベーションが注目されている背景について確認してみましょう。

    オープンイノベーションが注目される背景

    • 顧客ニーズの多様化

    • 市場投入スピード

    • 自社リソースの強化

    顧客ニーズの多様化

    オープンイノベーションが注目される背景には、「顧客ニーズの多様化」があげられます。

    顧客のニーズの多様化とともに、IT技術の進化によって商品やサービスの広まるスピードも加速し、企業の商品開発は質とスピードが重要になっています。

    こうした時代の中で、自社内のアイディアや技術だけでは、多様化する顧客のニーズに応えられなくなり、会社外と協力して事業を進めていく考え方が広がっています。

    また、他の企業と協業することで、自社内では見落とされていた顧客ニーズに気づくこともあります。

    他社が把握している顧客ニーズを自社内に取り入れることで、新たな商品やサービスの開発にもつながり、新たな価値を提供することができるようになります。

    市場投入スピード

    オープンイノベーションが注目される背景には、「市場投入スピード」があげられます。

    顧客ニーズの多様化によって、商品やサービスの市場投入スピードも求められるようになりました。

    また、あらゆる業界で市場投入スピードを早めていることもあり、1つの商品やサービスのライフサイクルが短くなっているのも事実です。

    例えば、自社が市場の中で品質も価格も顧客のニーズに最も合わせた商品を提供していたとします。

    市場の中で1番の商品であったとしても、他の企業が自社製品よりも更に良質な商品を提供すれば自社商品のニーズは徐々に落ちていきます。

    こうした時代の中で、外部の要素を柔軟に取り入れ、迅速な商品開発や技術向上を図ることが重視されています。

    自社リソースの強化

    オープンイノベーションが注目される背景には、「自社リソースの強化」があげられます。

    企業に求められているのは、市場投入するスピードを早めることだけではありません。

    顧客に提供する商品やサービスの内容を強化する必要もあり、企業は革新的な商品をスピーディーに市場投入することが求められています。

    以前は、市場をリードできるのは資金力のある大手企業でした。

    しかし、顧客ニーズが多様化している現代では、大手企業が必ずしも市場をリードするとは限りません。

    大手企業でなくても、大手企業が提供していない、革新的な商品やサービスを提供することで、優位に立てることもあるでしょう。

    革新的な商品やサービスを想像し、顧客に提供するためにも、自社のリソースを強化する必要があります。

    また、オープンイノベーションは、自社のリソースを改革し強化することにも役立ち、これまで培われていなかった新しい技術やスキルを身に付けることにもつながります。

    自社の商品やサービスを向上させるため、また組織の改革を行うためにもオープンイノベーションという考え方が広まりつつあります。

    オープンイノベーションのメリット

    オープンイノベーションを導入することで得られるメリットについて確認してみましょう。

    オープンイノベーションのメリット

    • 自社の強みと弱みが把握できる

    • 多様化する顧客ニーズに対応できる

    • 新しい知識やノウハウを効率良く吸収できる

    自社の強みと弱みが把握できる

    オープンイノベーションを導入することで、「自社の強みと弱みが把握できる」というメリットがあります。

    クローズドイノベーションのように、自社の知識だけで事業を行っていた場合、他社がどこまでの技術やスキル、ノウハウを持っているかを明確に把握することができません。

    オープンイノベーションで、他社と情報を共有することで、「この技術は自社の強みだったのか」「他社に比べてこのスキルが足らなかったのか」など、自社の現在地を確認することができます。

    そして、自社の現在地が把握できると、「どのスキルを伸ばせば良いのか?」「新たに取り入れるべき要素は何か?」が明確になるでしょう。

    この気付きは、事業をする上で必要なスキルを向上させ、会社の技術力や組織力強化の第一歩になります。

    多様化する顧客ニーズに対応できる

    オープンイノベーションを導入することで、「多様化する顧客ニーズに対応できる」というメリットがあります。

    オープンイノベーションを導入することで、今までにない考えとスキルやノウハウの習得が進むでしょう。

    こうして新しい考え方や能力を従業員が身につけることで、自社の商品やサービスの品質も変化します。

    近年では、顧客のニーズが多様化し、企業は柔軟にニーズに対応できる力が求められています。

    しかし、この柔軟な対応は自社努力だけでは追いつけないほど顧客のニーズが多様化しているのも事実です。

    こうした時代背景の中、外部から技術やスキル、ノウハウを習得するオープンイノベーションは、企業が生き残る上で必要な経営戦略と言えるでしょう。

    新しい知識やノウハウを効率良く吸収できる

    オープンイノベーションを導入することで、「新しい知識やノウハウを効率良く吸収できる」というメリットがあります。

    オープンイノベーションは外部のスキルやノウハウを自社に取り込むことが可能です。

    もし、オープンイノベーションを導入せずに外部のスキルやノウハウを吸収する場合は、外部の講習を受けたり、研修に行ったりするなど、時間とコストがかかります。

    一方で、オープンイノベーションを導入した場合、協力する外部とは利害が一致していることから、お互いの資源を有効活用することができます。

    必要なスキルやノウハウを効率よく、スピーディに吸収できることはオープンイノベーションの大きなメリットです。

    オープンイノベーションのデメリット

    オープンイノベーションを導入することで起こるデメリットについて確認してみましょう。

    オープンイノベーションのデメリット

    • 協業他社とのトラブルが発生する可能性がある

    • 自社の技術が流出する可能性がある

    • 自社の開発スキルが低下する可能性がある

    協業他社とのトラブルが発生する可能性がある

    オープンイノベーションを導入することで、「協業他社とのトラブルが発生する可能性がある」というデメリットがあります。

    トラブルの主な原因は、商品開発を他社と共同で行う際の、費用負担や利益分配にあります。

    例えば、「開発にかかった費用をどれだけ負担するか?」や「得られた収益をどうやって分配するか」が明確に決められていない場合、トラブルに発展してしまう可能性があるため注意が必要です。

    他社と共同開発を行う際は、開発の過程でどれだけの費用が出るかをあらかじめ予測し、費用の負担を明確に定めておきましょう。

    また、商品を提供し発生した利益についてもあらかじめ決めておく必要があります。

    基本的には半分ずつで分けることでトラブルを避けられますが、提供する資源に両社でばらつきがある場合、きれいに半分で割れないケースもあります。

    トラブルを避けるためには、事前に話し合い、納得できる条件で提携する必要があります。

    自社の技術が流出する可能性がある

    オープンイノベーションを導入することで、「自社の技術が流出する可能性がある」というデメリットがあります。

    オープンイノベーションは、ただ単に外部の技術やノウハウを受け取れるものではありません。

    協業する外部との契約次第では、自社の経営資源を外部に公にする必要があります。

    仮に流出を避けたい技術やノウハウがある場合は、オープンイノベーションを採用するのを諦めるか、外部に公表しない契約をするように進めましょう。

    自社の開発スキルが低下する可能性がある

    オープンイノベーションを導入することで、「自社の開発スキルが低下する可能性がある」というデメリットがあります。

    自社内の商品開発を強化する目的でオープンイノベーションを導入しても、かえって社内の開発スキルを低下させてしまう場合もあります。

    開発スキルが低下する原因は、オープンイノベーションを導入することで、社内にはないスキルやノウハウが容易に吸収できてしまうからです。

    しかし、一度オープンイノベーションを導入したからといって、永久的に外部と連携して事業を進めるとは限りません。

    オープンイノベーションを導入したとしても、外部の資源に頼るだけではなく、社内の研究や開発担当者を刺激しながら取り組める環境を作るようにしましょう。

    オープンイノベーションで得たスキルやノウハウを活用して、他の商品やサービスにもいかせるような仕組み作りや、新たな製品の創造につなげたりと、さまざまなことに活用できるように社内の工夫が必要です。

    オープンイノベーションの事例

    オープンイノベーションの導入事例について確認してみましょう。

    スターバックス社と一般顧客

    スターバックス社は、カフェ事業を展開する企業で、オープンイノベーションとして、顧客と共に新たな価値を提供する取り組みを行いました。

    スターバックスの公式サイトで「My Starbucks Idea」というサイトを開設し、顧客からドリンクや店内のデザインやインテリアのアイデアを募集しました。

    そして、「My Starbucks Idea」を通して、顧客から集められたアイデアの中から、新しい価値の提供につながるものを選び実際に取り入れています。

    採用されたアイデアは、サイト内で紹介されているため、アイデアを提供した顧客も楽しみながら参加することができます。

    多様化するニーズを顧客から直接吸収することで、顧客ニーズを的確に把握することにつなげている、良い事例といえます。

    スターバックスコーヒージャパン株式会社

    LEGOグループと一般顧客

    LEGOグループは、デンマークで設立された企業で、オープンイノベーションとして、顧客からアイデアを募集する取り組みを実施しています。

    LEGOでは、アイデアを募集するための公式サイト「LEGO Ideas Site」を開設し、顧客が望む商品の把握を行いました。

    この公式サイトのコンセプトは、「ファンと共創する」というもので、社内だけで商品を開発する体制から顧客と共に価値を提供する体制へと変化させました。

    こうしたオープンイノベーションを取り入れたこともあり、LEGOは業績を上げており、オープンイノベーションで成功した企業のひとつといえます。

    LEGO Group
    LEGO Group「レゴ®アイデア

    ソフトバンク株式会社と中小企業やベンチャー企業

    ソフトバンク株式会社は携帯会社大手で、2015年にオープンイノベーションとして、「Softbank Innovation Program」という取り組みを始め、国内外問わず共同で事業を行うパートナー会社を募集しました。

    「Softbank Innovation Program」は、ソフトバンクがパートナー会社を募集したことで、複数の中小企業やベンチャー企業に大企業と共に事業を行うチャンスが与えられた事例です。

    ソフトバンクは、このプログラムで革新的な技術やアイデアを持つ企業とコラボし、新しい価値を提供することを目指しています。

    近年では、このプログラムを通じAIやIoT、VRの技術を向上させ、新たな価値の提供に取り組んでいます。

    ソフトバンク株式会社
    ソフトバンク「『SoftBank Innovation Program』を開始

    オープンイノベーションの課題と注意点

    オープンイノベーションを導入する際の課題と注意点について確認してみましょう。

    オープンイノベーションの課題

    • 利益分配の設定

    • スキルやノウハウの漏洩リスク

    • 開発スキルの低下

    利益分配の設定

    オープンイノベーションを導入する際に課題となることとして、「利益分配の設定」があります。

    共同で商品開発を行う場合などは、その活動で得た利益を関わった会社で分配しなければいけません。

    理想は均等に分配することですが、提供した資源や貢献度の違いにばらつきがあると、分配設定が難しくなることもあるため、注意が必要です。

    共同で事業を行う際に提供する資源や活動内容をあらかじめ明確にし、さらに利益分配を明らかにしてから取り組みましょう。

    スキルやノウハウの漏洩リスク

    オープンイノベーションを導入する際に課題となることとして、「スキルやノウハウの漏洩リスク」があります。

    競合他社に自社のスキルやノウハウを知られたくない場合、共同開発を行う相手に気をつけてオープンイノベーションを進めましょう。

    例えば、スターバックス社やLEGOグループの事例のように、一般顧客からニーズを募集したり、全く違う業界からスキルやノウハウを吸収したりすれば、競合他社に大切な情報を漏らすことなく必要なスキルやノウハウを吸収することができるでしょう。

    自社の情報が漏れてはいけない競合他社や業種をあらかじめ整理したうえで、オープンイノベーションを計画することが重要です。

    開発スキルの低下

    オープンイノベーションを導入する際に課題となることとして、「開発スキルの低下」があります。

    オープンイノベーションを取り入れることで、新たなスキルやノウハウの習得は容易にできますが、自社の開発スキル向上も同時に行う必要があります。

    吸収したスキルやノウハウを社内で活用し、他の商品やサービスにつなげられるような仕組みを考えましょう。

    オープンイノベーションを効果的に実施するためのスキル管理

    オープンイノベーションを導入する最大の目的は、他社や顧客と共同開発を行うことで「自社にはないスキルやノウハウの習得」を行うことです。

    また、組織の枠を越えた事業を通して「新たな価値の提供」を行うことが可能になります。

    さらに、自社が持つスキルやノウハウを外部に提供することで、業界全体のスキルアップにつながり、業界全体が提供するサービスの質の向上が期待できます。

    しかし、オープンイノベーションを導入することで、「外部に漏らしたくない情報が漏洩してしまうリスク」や、自社にはないスキルやノウハウが容易に吸収できてしまうため「自社の開発スキルが低下する可能性がある」ため、取り組みには十分注意が必要です。

    自社にとってリスクになることをしっかりと避け、効果的にオープンイノベーションを導入することで、大きな利益につながるでしょう。

    オープンイノベーションを導入する際には、あらかじめ自社に不足しているスキルやノウハウを把握することが大切です。

    「HRBrain タレントマネジメント」は、「スキルマップ」の作成をはじめとした、従業員のあらゆるデータを一元管理し可視化することで、自社内の「スキル」や「ノウハウ」を把握し管理することが可能です。

    従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、研修などの育成履歴や、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、1on1やフィードバックなどの面談履歴、OKRなどの目標管理とマネジメント業務をクラウド上で一元的に感知できるため、人事業務の効率化が期待できます。

    また、オープンイノベーション実施後の「自社の開発スキルの低下」を防ぐための、社内研究や開発担当者の育成や、オープンイノベーションで得たスキルやノウハウの活用にも役立ちます。

    HRBrain タレントマネジメントの特徴

    • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

    運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

    • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

    従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

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    HR大学編集部
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