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オープンイノベーションの効果とは?導入事例も併せてご紹介

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目次

    本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。

    オープンイノベーションとは

    まずはオープンイノベーションの概要について解説します。

    概要

    オープンイノベーションとは、商品・サービスの開発や技術研究など、会社を成長させる過程の中で、技術やノウハウを外部から得て革新的なビジネスモデルを作り上げる経営戦略のひとつです。

    また、外部からのスキル・ノウハウの受け入れだけではなく、自社のスキル・ノウハウを自由に流出させ、あえて市場の競争を強化させることも含まれます。

    つまりオープンイノベーションとは、商品開発や技術開発を会社の枠を越えて進めていく考え方を指します。

    読者の中には、「自社で培ったスキル・ノウハウを外部流出させてしまえば会社の利益損失につながる」と考える方もいるのではないでしょうか。

    しかし、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が進む現代において、自社のスキル・ノウハウを外部に流出させ、業界全体で技術力を高める動きがはじまっています。

    外部と協業するというと、他の会社と手を組むことを想像する方もいるかもしれませんが、それだけではありません。

    オープンイノベーションを取り組む相手は、他の企業や一般顧客が対象で、企業に必要なスキル・ノウハウ、また情報を得られる最善の相手と取り組みます。

    クローズドイノベーションとの違い

    オープンイノベーションの対義語は「クローズドイノベーション」といいます。

    クローズドイノベーションとは、自社の知識・ノウハウを外部に流出させず、自社のリソースだけで商品開発・技術革新を図る考え方です。

    こうした考えを持った企業は、「自分たちの力でイノベーションを起こす」や「自分たちが新しい商品・サービスを創造しなければいけない」と考えており、自社の研究開発に重点を置きます。

    オープンイノベーションが注目される背景

    ここからは、オープンイノベーションが注目される理由・背景について解説します。

    顧客ニーズの多様化

    オープンイノベーションが注目されるひとつ目の背景には、顧客のニーズが多様化していることがあげられます。

    顧客のニーズは多様化しており、IT技術の進化により商品・サービスの広まるスピードも加速していることもあり、企業の商品開発は質とスピードが重要です。

    こうした時代の中で、自社内のアイディアや技術だけでは、多様化する顧客のニーズに応えられなくなり、会社外と協力して事業を進めていく考え方が広がっています。

    また、他の企業と協業することで、自社内で見落とされた顧客ニーズに気づくこともあるでしょう。

    他社が抑えている顧客ニーズを自社内でも取り入れることで、新たな商品・サービス開発にもつながり、新たな価値を提供できます。

    求められる市場投入のスピード

    上述したように、顧客ニーズは多様化しており、また商品・サービスを市場に投入するスピードも求められています。

    あらゆる業界で市場投入スピードを早めていることもあり、1つの商品・サービスのライフサイクルが短くなっているのも事実です。

    例えば、自社が市場の中で品質も価格も顧客のニーズに最も合わせた商品を提供していたとします。

    市場の中で1番の商品であったとしても、他の企業が自社製品よりも更に良質な商品を提供すれば自社商品のニーズが徐々に落ちていくでしょう。

    こうした時代の中で、外部の要素を柔軟に取り入れ、迅速な商品開発・技術向上を図ることが重視されています。

    求められる自社リソースの強化

    企業に求められているのは、市場投入するスピードを早めるだけではありません。

    顧客に提供する商品・サービスの内容を強化する必要もあり、企業は革新的な商品をスピーディーに市場投入することが求められています。

    以前では、市場をリードできるのは資金力のある大手企業であった時代もありました。

    しかし、顧客ニーズが多様化している現代では、大手企業が必ず市場をリードできるとは限りません。

    大手企業が提供していない、革新的な商品・サービスを提供することで、優位に立てることもあるでしょう。

    革新的な商品・サービスを想像し、顧客に提供するためにも、自社のリソースを強化する必要があります。

    オープンイノベーションは、自社のリソースを改革・強化することにも役立ち、今まで培わなかった新しい技術・スキルを身につけることにもつながるでしょう。

    自社の商品・サービスを向上させるため、また組織の改革を行うためにもオープンイノベーションという考え方が広まりつつあります。

    オープンイノベーションのメリット

    ここからは、オープンイノベーションのメリットについて解説します。

    自社の強み・弱みを把握できる

    オープンイノベーションを採用し、外部のスキル・ノウハウを知ることで自社の強みと弱みを把握する機会になるでしょう。

    クローズドイノベーションのように、自社だけの知識だけで事業を行っていた場合、他社がどこまでの技術やスキル、ノウハウを持っているか明確に把握できません。

    しかし、他社と情報を共有することで、「この技術は自社の強みだったのか」や「他社に比べてこのスキルが足らなかったのか」などと自社の現在地を確認できます。

    自社の現在地が把握できると、「どのスキルを伸ばせばいいか?」や「新たに取り入れるべき要素は何か?」が明確になるでしょう。

    この気付きは、事業をする上で必要なスキルを向上させ、会社の技術力・組織力強化の第一歩になります。

    多様化する顧客ニーズに対応できる

    オープンイノベーションを導入することで、今までにない考えやスキル・ノウハウの習得が進むでしょう。

    こうして新しい考え方や能力を社員が身につけることで、自社の商品・サービスの品質も変化します。

    近年では、顧客のニーズが多様化し、企業は柔軟にニーズに対応できる力が求められています。

    しかし、この柔軟な対応は自社努力では追いつけないほど顧客のニーズが多様化しているのも事実です。

    こうした時代背景の中、外部から技術やスキル、ノウハウを習得するオープンイノベーションは、企業が生き残る上で必要な経営戦略と言えるでしょう。

    新しい知識・ノウハウを効率よく吸収できる

    上述したように、オープンイノベーションは外部のスキル・ノウハウを自社に取り込むことが可能です。

    もしオープンイノベーションを採用せずに外部のスキル・ノウハウを吸収する場合は、外部の講習を受けたり、研修に行ったりするなど、時間とコストがかかります。

    一方で、オープンイノベーションを採用した場合、協力する外部とは利害が一致していることから、お互いの資源を有効活用できます。

    必要なスキル・ノウハウを効率よく、スピーディに吸収できることはオープンイノベーションの大きなメリットです。

    オープンイノベーションのデメリット

    次にオープンイノベーションのデメリットもご紹介します。

    初めてオープンイノベーションを導入する企業は、デメリット要素もしっかりと理解し、会社の不利益にならない導入を心がけましょう。

    他社とトラブルに発展する可能性がある

    オープンイノベーションは、協業する他社とトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。

    トラブルの主な原因は、商品開発を他社と共同で行う際の費用負担や利益分配で発生することがあります。

    例えば、「開発にかかった費用をどれだけ負担するか?」や「得られた収益をどうやって分配するか」が明確に決められていないとトラブルの元となり注意が必要です。

    こうした共同開発を行う際は、開発の過程でどれだけの費用が出るかをあらかじめ予測し、その費用の負担を明確に定めておきましょう。

    また、商品を提供し発生した利益についてもあらかじめ決めておく必要があります。

    基本的には半分ずつで分けることでトラブルを避けられますが、提供する資源が両社でばらつきがある場合、きれいな半分で割れないケースもあるでしょう。

    トラブルを避けるためには、事前に話し合い、納得できる条件で提携する必要があります。

    自社の技術が流出する可能性がある

    次に、自社の技術・ノウハウが外部に流出するリスクもあらかじめ把握しておく必要があります。

    オープンイノベーションは、ただ単に外部の技術・ノウハウを受け取れるものではありません。

    協業する外部との契約次第では、自社の経営資源を外部に公にする必要があります。

    仮に流出を避けたい技術やノウハウがある場合、オープンイノベーションを採用するのを諦めるか、外部に公表しない契約をするように進めましょう。

    社内の開発スキルが低下する可能性がある

    自社内の商品開発を強化する目的でオープンイノベーションを導入しても、かえって社内の開発スキルを低下させることにつながる恐れもあります。

    開発スキルが低下する原因は、社内にはないスキル・ノウハウが容易に吸収できるからです。

    一度オープンイノベーションを導入したからといって、永久的に外部と連携して事業を進めるとは限りません。

    オープンイノベーションを導入したとしても、外部の資源に頼るだけではなく、社内の研究・開発担当者を刺激しながら取り組める環境をつくりましょう。

    外部から得たスキル・ノウハウを活用して、他の商品やサービスにも活かせるような仕組みにしたり、新たな製品の創造につなげたり、様々なことに活用できるように社内の工夫が必要です。

    オープンイノベーションの事例

    ここからはオープンイノベーションの導入事例をご紹介します。

    スターバックス ✕ 一般人

    カフェ事業を展開するスターバックスでは、顧客と共に新たな価値を提供する取り組みを行いました。

    スターバックスの公式サイトで「My Starbucks Idea」というサイトを開設し、顧客からドリンクや店内のデザイン・インテリアのアイデアを募集したのが主な取り組みです。

    こうして集められたアイデアの中から、新しい価値の提供につながるものを選び実際に取り入れています。

    採用されたアイデアは、サイト内で紹介されており、アイデアを提供した顧客も楽しみながら参加できたでしょう。

    多様化するニーズを顧客から直接吸収することで、的確に把握することにつながり、良い事例と言えます。

    LEGO ✕ 一般人

    デンマークで設立されたLEGOですが、スターバックス同様に顧客からアイデアを募集するオープンイノベーションを実施しています。

    LEGOでもアイデアを募集するための公式サイト「LEGO Ideas Site」を開設し、顧客が望む商品の把握を行いました。

    この公式サイトのコンセプトは、「ファンと共創する」ことで、社内だけで商品を開発する体制から顧客と共に価値を提供する体制へと変化させました。

    こうしたオープンイノベーションを取り入れたこともあり、LEGOは業績を上げており、オープンイノベーションで成功した企業のひとつです。

    ソフトバンク ✕ 中小企業&ベンチャー企業

    上記で紹介した2つの事例は、企業と一般顧客とのオープンイノベーションの例でしたが、大企業が中小企業と手を組んだ事例も存在します。

    携帯会社大手のソフトバンクは、2015年に「Softbank Innovation Program」という取り組みを始め、国内外問わず共同で事業を行うパートナー会社を募集しました。

    パートナー会社を募集したことで、複数の中小企業が大企業と共に事業を行うチャンスが与えられた事例です。

    ソフトバンクは、このプログラムで革新的な技術やアイデアを持つ企業とコラボし、新しい価値を提供することを目指しています。

    近年では、このプログラムを通じAIやIoT、VRの技術を向上させ、新たな価値の提供に取り組んでいます。

    オープンイノベーションの課題・注意点

    ここからはオープンイノベーションの課題・注意点について解説します。

    利益分配の設定

    オープンイノベーションを導入する際に、苦労するポイントとして利益分配の設定があります。

    共同で商品開発を行う場合などは、その活動で得た利益を関わった会社で分配しなければいけません。

    理想は均等に分配することですが、提供した資源や貢献度の違いにばらつきがあると分配設定が難しくなることもあるため、注意が必要です。

    共同で事業を行う際に提供する資源や活動内容をあらかじめ明確にし、利益分配を明確にしてから取り組みましょう。

    スキル・ノウハウの漏洩リスク

    オープンイノベーションを導入する際の大きなリスクは、スキル・ノウハウの漏洩リスクです。

    競合他社に自社のスキル・ノウハウを知られたくない場合、共同する相手に気をつけてオープンイノベーションを進めましょう。

    例えば、スターバックスやLEGOの事例のように、一般顧客からニーズを募集したり、全く違う業界からスキル・ノウハウを吸収したりすれば、競合他社に大切な情報を漏らすことなく必要なスキル・ノウハウを吸収できるでしょう。

    自社の情報が漏れてはいけない会社や業種をあらかじめ整理して計画することが重要です。

    開発スキルの低下

    新たなスキル・ノウハウを効率的に吸収できることから、自社の開発スキルが低下する恐れがあります。

    オープンイノベーションを取り入れることで、新たなスキル・ノウハウの習得は容易にできますが、自社の開発スキル向上も同時に行う必要があります。

    吸収したスキル・ノウハウを自社内で活用し、他の商品やサービスにつながられるような仕組みを考えましょう。

    まとめ

    今回は、オープンイノベーションに焦点を当て、その概要とメリット、デメリットを解説しました。

    オープンイノベーションを導入する最大の目的は、自社にはない技術や知識の習得で、組織の枠を越えた事業を行うことで新たな価値の提供につながります。

    また、自社で持つスキル・ノウハウも外部に提供することで、業界のスキルアップにつながり、業界全体で提供するサービスの質向上が期待できます。

    しかし、外部に漏らしたくない情報が漏洩してしまうリスクもあり、取り組みには十分注意が必要です。

    自社にとってリスクになることをしっかりと避け、効果的にオープンイノベーションを導入することで、大きな利益につながるでしょう。

    今回紹介した注意点をしっかりと理解し、効果のある導入を目指しましょう。

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    HR大学編集部

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