組織課題とは?具体例や見つけ方、解決方法4ステップを解説
組織状態の把握から分析・課題抽出までワンストップで実現
- 組織課題とは
- 表面化している顕在課題
- 水面下にある潜在課題
- よくある組織課題の具体例6選
- 経営理念や事業戦略が社内に浸透しない
- 離職率の増加
- 次世代リーダーの不在・人材育成不足
- 部署間・従業員間のコミュニケーション不足
- 不公平感を生む人事評価制度
- 長時間労働・非効率業務
- 【課題タイプ別】組織課題を見つける方法
- 顕在課題を見つける3つの方法
- 潜在課題を見つける2つの方法
- 組織課題を解決する手順4ステップ
- 1.組織課題の調査・把握と社内共有
- 2.組織課題の優先順位決定と原因分析
- 3.組織課題の解決策検討と実行
- 4.効果の検証と振り返り
- 組織課題の分析・解決に有効な5つのフレームワーク
- 企業戦略構築や組織分析に役立つ「7S」
- 現状分析に役立つ「SWOT分析」
- 複雑な問題の要素分解に役立つ「MECE」
- 目指す方向性の明確化に役立つ「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」
- パフォーマンスの定点観測に役立つ「KPI」
- 組織課題解決のために管理職が意識すること4選
- プレイヤー意識を取り除く
- 職場環境を改善する
- メンバーとの個別でのコミュニケーションを増やす
- 状況を逐一共有する
- 組織課題を明らかにして解決に向けて全社で取り組もう
「採用や育成、離職対策など、個別の施策を打っても組織全体の停滞感が拭えない」といった組織課題があるものの、根本的な原因がわからず悩んでいませんか?
この記事を読めば、漠然とした組織の問題の根幹を見つけ出し、取り組むべき課題の優先順位が明確になります。
本記事では、組織課題の定義から、具体的な課題、フレームワークを用いた課題分析方法まで解説します。現状分析や対策を検討する際に役立つツールの活用についても紹介するので、組織課題に直面している場合には、ぜひ参考にしてみてください。
組織課題とは
組織課題とは、企業や組織が目標を達成するうえで直面している問題や改善すべき点のことを指します。たとえば、人材の定着率が悪い、チームの連携がうまく取れていない、従業員のモチベーションが低いなど、さまざまな症状が組織課題として現れます。
これらの課題は、業績の低下や従業員の離職など、経営に大きな影響を与えるため、早期の発見・対処が重要です。
組織課題には、すでに表面に現れている「顕在課題」と、まだ表面化していない「潜在課題」があります。 顕在課題だけでなく、潜在課題にも目を向けることで、根本的な原因へのアプローチが可能です。
以下では、顕在課題と潜在課題について解説していきます。
表面化している顕在課題
顕在課題とは、組織内ですでに問題として認識されており、表面化している課題のことです。 たとえば、離職率が高い、従業員の生産性が低いなどの状況が該当します。
これらの課題は、日々の業務の中で従業員が不満を感じたり、業績が悪化したりすることで、問題として認識されやすい傾向にあります。顕在課題を放置すると、さらに深刻な問題へと発展する可能性があるため、顕在課題から優先的に取り組むことが効果的です。
まずは、アンケート調査や面談を通して従業員の意見を聞きながら顕在課題を明確にしたうえで、原因と課題を切り分けて対策を打つことが組織改善への第一歩となります。
水面下にある潜在課題
潜在課題とは、まだ表面には現れていないものの、将来的に組織に悪影響を及ぼす可能性のある課題のことです。 たとえば、「目標設定があいまいで評価基準が不明瞭」「将来を担うリーダーが育っていない」などの状況が考えられます。
潜在課題は数値では捉えにくく、日々の業務や対話だけでは見えにくいため、発見には工夫が必要です。 具体的には、1on1面談での深掘りやアンケートなどを通じて、本音を引き出すコミュニケーションが求められます。
どんなに優れた人材を採用しても、このような環境ではモチベーションが低下し、やがて離職に至る可能性もあります。
潜在課題は、放置しておくと将来的に顕在課題となって大きな問題に発展する可能性があるため、兆候を見逃さずに迅速に対応することが重要です。
よくある組織課題の具体例6選
組織課題にはさまざまな種類がありますが、ここではよく見られる6つの具体例を紹介します。
経営理念や事業戦略が社内に浸透しない
離職率の増加
次世代リーダーの不在・人材育成不足
部署間・従業員間のコミュニケーション不足
不公平感を生む人事評価制度
長時間労働・非効率業務
これらの課題は企業の成長を妨げる要因となるため、早期に把握し、原因を分析したうえで改善策を講じていきましょう。
経営理念や事業戦略が社内に浸透しない
経営理念や事業戦略が社内に浸透しないことは、組織の一体感を損なう大きな課題です。 従業員一人ひとりが会社の目指す方向性を理解し共感していなければ、日々の業務における判断や行動に一貫性がなくなり、結果として企業の成長を阻害してしまう可能性があります。
たとえば、経営者はイノベーションの推進を掲げているにもかかわらず、現場の人事評価制度は失敗を許さない減点主義のまま、という矛盾が生じているようなケースが挙げられます。
このような課題を解決するためには、経営層が主体となって説明会や社内SNSを通じて情報発信し続けるとともに、従業員一人ひとりが会社と業務のつながりを感じられる継続的なコミュニケーションが必要です。
離職率の増加
離職率の増加は、企業にとって人材の流出だけでなく、採用コストの増加や既存従業員のモチベーション低下にもつながる深刻な課題です。人が辞めるということは、採用・育成コストが無駄になるだけでなく、残された従業員の負担が増え、さらなる離職を招く悪循環にもつながりかねません。
重要なのは、待遇面だけで会社を辞める人ばかりではなく、将来のキャリアや日々の承認への不満が、離職の引き金となるケースもあるということです。
離職率増加を防止するためには、退職者へのヒアリングを通じて具体的な離職理由を把握したり、従業員満足度調査を実施して潜在的な不満を洗い出したりすることで根本的な原因を探ることが重要です。
また、従業員のキャリア形成支援や、公正な評価制度の導入、働きやすい職場環境の整備も、離職を未然に防ぐ有効な対策となります。
次世代リーダーの不在・人材育成不足
次世代リーダーの不在や人材育成不足は、企業の持続的な成長を危うくする潜在的な組織課題です。 経験豊富なベテラン従業員が退職した際、その知識やスキルを引き継ぐ人材が育っていないと、業務の停滞や生産性の低下を招くことになります。
解決策としては、計画的なOJT(職場内訓練)や階層別研修だけでなく、メンター制度の確立や外部研修への参加支援などが挙げられます。また、若手従業員に早期から裁量権を与え、チャレンジングな機会を提供することで、自律的な成長を促すことも重要です。
キャリアパスや評価基準を明示し、自ら手を挙げやすい風土づくりもリーダー候補が育ちやすくなる秘訣です。
部署間・従業員間のコミュニケーション不足
部署間や従業員間のコミュニケーション不足は、業務の非効率化やミスの発生、さらには従業員のエンゲージメント低下につながる組織課題です。
とくに組織が大きくなるほど、業務の分業化が進み、部門の壁ができやすくなります。その結果、連携ミスや責任の押し付け合いが起こり、プロジェクトが停滞することもあります。
情報共有のためのツールを導入したものの、結局誰も使わず、重要な連絡は口頭や一部のメンバー間でのメールのみというのもよくあるケースです。
この課題を解決するためには、定期的な部署間ミーティングの実施、社内SNSやチャットツールの活用、社内イベントの開催など、意識的にコミュニケーションの機会を増やす必要があります。また、部門横断での目標設定の導入も、気軽に意見を言い合える職場環境づくりに取り組むうえで効果的です。
不公平感を生む人事評価制度
従業員のエンゲージメントを直接的に低下させる要因のひとつが、人事評価制度への不満や不信感です。「あれだけ頑張ったのになぜこの評価なんだ」「結局、上司の好き嫌いで評価されているのではないか」などの不公平感は、仕事への意欲を根本から削いでしまいます。
人事評価は、給与や昇進を決めるだけのプロセスではありません。会社の期待を伝え、従業員の成長を促し、モチベーションを高めるための、組織と個人の重要なコミュニケーションの機会です。
人事評価制度に問題がある場合には、まず評価項目や基準を明確にし、従業員に周知徹底することが重要です。目標設定と評価のプロセスを透明化し、フィードバックの機会を定期的に設けることで、従業員が納得感を持って評価を受け入れられるようにすることが求められます。
長時間労働・非効率業務
長時間労働や非効率な業務は、従業員の健康を害し、生産性の低下、また企業の競争力低下につながる組織課題です。 従業員が常に長時間労働を強いられている状態では十分な休息が取れず、集中力の低下やストレスの蓄積により、業務効率が落ちてミスが増える原因となります。
このような課題を解決するには、業務の棚卸しと可視化を行い、どこに時間がかかっているのかを分析することが重要です。さらに、RPAやチャットボットの導入、会議の時間短縮など、具体的な効率化施策を実施することが求められます。
そのうえで、フレックスタイム制やリモートワークといった多様な働き方を導入することで、従業員の働き方への満足度向上が期待できるでしょう。
【課題タイプ別】組織課題を見つける方法
組織課題を効果的に解決するには、どのように課題を見つけるかが重要です。 とくに、顕在課題と潜在課題では、見つけ方が異なります。
顕在課題は表面化している問題のため、現場での声やデータを通じて把握しやすい一方で、潜在課題は見えにくく、従業員の本音や兆候を見極める力が求められます。
ここでは、それぞれの課題を発見するための具体的な方法を解説します。
顕在課題を見つける3つの方法
顕在課題を見つけるには、現場での声や状況に目を向けることが大切です。 具体的には、以下の3つの方法が有効です。
アンケート調査
1on1面談
社内会議
これらの方法を組み合わせることで、見逃されがちな課題も明らかになり、取り組むべき優先順位も整理しやすくなります。
従業員の本音を引き出すサーベイ・アンケート調査
組織全体の課題の傾向を定量的に把握し、客観的な事実に基づいて議論を行うためのもっとも効果的な手法が、従業員サーベイ・アンケートの実施です。
従業員が日頃感じている不満や意見、改善提案を集めることで、普段は声に出しにくい本音を聞き出せます。
また、「職場の人間関係」「業務量」「キャリアパスへの不安」「人事評価への納得感」など、多岐にわたる項目について具体的な質問を設定し、自由記述欄を設けることで、定量的なデータだけでなく定性的な意見も収集可能です。
さまざまな角度からのデータが収集できることは、課題解決の優先順位を考える際に強力な材料となります。サーベイを実施する際には、システムを活用することでデータの収集・分析が容易になります。
ただし、サーベイ・アンケートはあくまで課題の仮説を得るための手段です。その数値をもとに「なぜこのスコアが低いのか?」を深掘りする次のアクションにつなげることが重要です。
個人の状況を深く把握できる1on1面談
アンケート調査で得られた数値に潜む理由を掘り下げ、個々の従業員の業務状況や悩みを深く理解するために効果的なのが、1on1面談です。アンケートだけではわからない、個別の事情や人間関係の機微、業務上の具体的な障害を本人の言葉で直接ヒアリングすることで、課題の解像度が高められます。
効果的な1on1を行うためには、面談者が傾聴の姿勢を持ち、否定せず受け止めることが大切です。
また、日常的に行うことで、信頼関係が築かれ、より本音を引き出しやすくなります。定期的な実施をルール化することで、継続的な課題把握につながるでしょう。
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多角的な視点を集める社内会議
社内会議は、部署横断的な課題や、複数の従業員に共通する顕在課題を発見し、共有するうえで有効です。
異なる部署や役職のメンバーがそれぞれの立場から意見を出し合うことで、ひとつの課題に対して多様な視点からの意見や情報が集まります。
たとえば、現場からは「業務フローが非効率」という声が上がったのに対して、管理部門からは「それによりコストがかさんでいる」という声が上がることで、多面的な課題理解につながります。
会議では、参加者が自由に意見を言える雰囲気作りが重要です。中立的なファシリテーターを立てて議論を円滑に進めたり、複数人でアイデアを出し合うブレインストーミングなどの手法を取り入れたりすることで、活発な意見交換が期待できるでしょう。
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潜在課題を見つける2つの方法
潜在課題を見つけるには、客観的な視点でデータを分析する必要があります。 なぜなら、潜在課題は現場で明確に認識されておらず、表面に現れていないため、個人の主観だけでは見落としてしまう可能性があるからです。
具体的には、以下の2つの方法が有効です。
客観的データに基づく専用ツールの活用
業績結果の分析
これらの手法により、行動や結果に潜む違和感や兆候を可視化し、組織が抱える本質的な課題を見つけやすくなります。
客観的データに基づく専用ツールの活用
潜在課題の発見には、客観的データに基づく組織診断ツールを活用することが効果的です。
たとえば、組織サーベイツールやエンゲージメント測定ツールを導入することで、従業員のエンゲージメントレベルやストレス状況、組織文化への適合度など、数値では見えにくい心理状態や組織状態を客観的なデータとして把握できます。
数値だけでなく、変化や傾向を読み解くことも可能です。たとえば、前年より満足度が下がった項目があれば、それが組織内でどのような兆候を示しているのかの分析に役立ちます。データに基づく発見は、経営層への説明や施策立案にも説得力を持たせる材料になります。
これらのツールを活用することで、問題の早期発見や打ち出した施策の効果測定につながり、効果的な課題解決に導けるでしょう。
業績結果の分析
潜在課題を見つけるもうひとつの方法は、組織の業績結果から読み取ることです。 数値として表れる売上・利益・生産性・離職率などは、組織の状態を示す鏡ともいえます。
たとえば、特定の商品やサービスの解約率が急増している場合、製品の問題だけでなく「担当チームのスキル不足」「営業部門との連携不足による顧客ニーズの把握漏れ」などの組織的な課題が背景にあるのではないか、仮説を立てて原因の深掘りが可能になります。
大切なのは、単に数値を眺めるだけでなく、「なぜその結果になったのか」を多角的に検討することです。定期的な業績レビューと、改善のための振り返りを習慣化することが、潜在課題の早期発見につながります。
組織課題を解決する手順4ステップ
組織課題を効果的に解決するためには、体系的なステップを踏んで進めることが重要です。ここでは、組織課題の発見から解決、定着までの一連の流れを4つのステップで紹介します。
- 組織課題の調査・把握と社内共有
- 組織課題の優先順位決定と原因分析
- 組織課題の解決策検討と実行
- 効果の検証と振り返り
この手順に従うことで、課題の本質を見極め、効果的な解決策を実行し、組織をよりよい方向へ導くことができるでしょう。
1.組織課題の調査・把握と社内共有
組織課題を解決するための最初のステップは、現状の課題を正確に調査・把握したうえで社内で共有することです。 課題がどこにあるのかを特定しなければ、適切な解決策は立てられません。
具体的には、従業員アンケートや1on1面談を実施して、従業員の困りごとや不満の声を集めます。また、離職率や残業時間、売上データなどの客観的な数値データも分析し、課題の全体像を把握します。
これらの調査結果は、経営層だけでなく、課題に関わる部署や従業員にも共有することが重要です。課題を自分ごととして捉えてもらい、解決に向けた意識を高めることで、その後のステップがスムーズに進みます。
2.組織課題の優先順位決定と原因分析
次に行うのは、それらの課題に優先順位をつけ、それぞれの根本的な原因を深く分析することです。 すべての課題に一度に取り組むことは難しいため、組織に与える影響の大きさや解決の緊急性などを考慮して、どの課題から着手すべきかを決定します。
たとえば、「離職率の高さ」という課題があった場合、その原因が「長時間労働」「不公平な評価制度」「人間関係の悪化」のいずれにあるのかを具体的に掘り下げていきます。
原因を特定するためには、何度も「なぜ?」を繰り返すなぜなぜ分析や、組織構造を明確にしたうえで問題解決を図る7Sなどのフレームワークを活用するのが効果的です。根本原因を特定することで、表面的な対策ではなく、真に効果のある解決策を検討できるようになります。
3.組織課題の解決策検討と実行
原因が明らかになったら、その課題に合った解決策を検討・実行しましょう。 ここで大切なのは、理想的な解決策だけでなく、現場で無理なく実施できる現実的な対策を選ぶことです。
たとえば、コミュニケーション不足が課題であれば、定例ミーティングの導入や1on1の実施回数を増やすといった具体的な施策が考えられます。 また、施策の実行にあたっては、責任者や実施スケジュールを明確にし、進捗状況を管理する体制を整えましょう。
最初から完璧な計画を目指す必要はありません。途中で現場の声を取り入れながら柔軟に調整することも重要です。小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体へよい変化が広がります。
4.効果の検証と振り返り
最後のステップは、実行した施策の効果を検証し、振り返ることです。 このプロセスを行うことで、施策が期待通りに機能しているかどうかを確認でき、必要に応じて改善も可能になります。
たとえば、業務効率化ツールを導入した場合は、導入前後の残業時間の変化や生産性の向上度合いを数値で測定します。
期待する効果が得られなかった場合は、原因分析や解決策の検討プロセスに立ち戻り、必要に応じて計画を修正します。PDCAサイクルの「Check(評価)」と「Action(改善)」にあたる部分を継続的に回すことで、組織は常に改善を続け、より強固なものへと成長できるでしょう。
組織課題の分析・解決に有効な5つのフレームワーク
組織課題を効果的に解決するには、課題の本質を見抜き、正しく整理することが重要です。そのためには、以下のようなフレームワークを活用するのが有効です。
企業戦略構築や組織分析に役立つ「7S」
現状分析に役立つ「SWOT分析」
複雑な問題の要素分解に役立つ「MECE」
目指す方向性の明確化に役立つ「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」
パフォーマンスの定点観測に役立つ「KPI」
これらを活用することで、課題の全体像を把握し、具体的な解決策を導き出しやすくなります。
企業戦略構築や組織分析に役立つ「7S」
マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した「7S」は、企業戦略の構築や組織の現状分析に役立つフレームワークです。 7つのSとは、以下のとおりです。
Strategy(戦略)
Structure(組織構造)
Systems(制度)
Shared Value(価値観)
Skills(スキル)
Staff(人材)
Style(経営スタイル)
これらの要素のバランスが崩れていると、組織に課題が生じるとされています。
たとえば、新しい戦略を導入しても、それを実行するための組織構造や評価制度が整っていなかったり、従業員のスキルが不足していたりすると、戦略はうまく機能しません。
7Sを使うことで、それぞれの要素を具体的に洗い出して現状を把握することで、組織全体の機能不全の原因を特定し、包括的な改善策を立てるのに役立ちます。
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現状分析に役立つ「SWOT分析」
「SWOT分析」は、組織の現状を総合的に分析し、課題の発見や戦略策定に役立つフレームワークです。 組織の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの視点から、内部環境と外部環境を整理します。
たとえば、従業員の定着率が高いという強みがある一方で、人材育成制度が整っていないという弱みがあるとします。そのうえで、業界全体の人材不足という脅威や、テレワーク推進による機会なども踏まえて課題の優先順位の検討が可能です。
このフレームワークの本質は、これら4要素を掛け合わせるクロス分析にあります。強みと機会を活かして新事業を立ち上げる攻めの戦略や、弱みと脅威から最悪の事態を避けるための防衛戦略を効率的に検討できるでしょう。
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複雑な問題の要素分解に役立つ「MECE」
MECE(ミーシー)は、課題や情報を「モレなく、ダブりなく」整理するための考え方です。 組織課題は複雑になりやすいため、関係する要素を丁寧に分けて考えることで、正確な原因分析や対策立案が可能になります。
たとえば、従業員アンケートの設問を設計する際に、MECEの考え方を用いて「仕事」「上司」「同僚」「会社」「待遇」などの観点で構成することで、網羅的な調査が可能になります。
MECEを用いることで、特定の原因を見落としたり、同じ原因を重複して分析したりする非効率を避けることができ、効率的かつ網羅的に課題の本質に迫ることが可能です。
課題を分析する際は、常に「モレはないか?ダブりはないか?」と自問自答する癖をつけることで、思考がクリアになり、議論が建設的に進むようになります。
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目指す方向性の明確化に役立つ「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」
「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」は、組織の目指す方向性を明確にし、従業員全員が共通の目標に向かって進むための指針となるフレームワークです。
「ミッション」は企業の存在意義や果たすべき使命、「ビジョン」は将来的に目指す姿、「バリュー」は組織として大切にする価値観や行動規範を示します。
MVVが明確に設定され社内に浸透している組織では、従業員一人ひとりが、自分の仕事が会社の全体目標にどのように貢献しているかを理解しやすくなります。逆に、MVVが不明確であったり形骸化していたりすると、従業員の行動に一貫性がなくなり、組織全体の方向性がぶれやすくなるでしょう。
MVVの再構築・浸透は、多くの組織課題を根本から解決する、インパクトの大きい手段といえます。
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パフォーマンスの定点観測に役立つ「KPI」
「KPI(Key Performance Indicator)」は、「重要業績評価指標」と呼ばれ、組織や個人のパフォーマンスを数値で定点観測し、目標達成度合いを測るためのフレームワークです。組織課題の解決策が実際に効果を発揮しているかを確認するために不可欠なツールです。
たとえば、「離職率の改善」という組織課題に取り組む場合、KPIとして「月ごとの離職率」「入社3年以内の離職率」などを設定し、定期的に数値を追跡します。これにより、解決策を実行した後に、離職率が本当に低下しているのか、目標値に近づいているのかの客観的な判断が可能になります。
解決策を実行する際は、SMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限)の原則を意識してKPIを設定することが効果的です。
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組織課題解決のために管理職が意識すること4選
組織課題の解決には組織全体の取り組みが必要不可欠ですが、とくに管理職の役割は重要です。
管理職は、現場と経営層の橋渡し役として、課題の発見から解決策の実行、効果の定着まで、あらゆるフェーズでリーダーシップを発揮することが求められます。
ここでは、組織課題解決のために管理職が意識すべき4つのポイントを紹介します。
プレイヤー意識を取り除く
職場環境を改善する
メンバーとの個別でのコミュニケーションを増やす
状況を逐一共有する
管理職の姿勢が変わることで、組織全体にも前向きな変化の波及が期待できます。
プレイヤー意識を取り除く
管理職が組織課題を解決するためには、まずプレイヤー意識を取り除くことが重要です。 プレイヤー意識とは、自分自身が現場の業務で最高の成果を出すことに固執する考え方を指します。管理職本来の役割は、チーム全体のパフォーマンスを最大化し、メンバーの成長を支援することです。
プレイングマネージャーとして自身の業務に没頭していると、部下の育成や業務プロセスの改善、チームの目標設定などの本来管理職が時間を費やすべきマネジメント業務がおろそかになります。結果として部下は育たず、業務は属人化し、チーム全体の成長が止まってしまいます。
プレイヤー意識を取り除くためには、業務の権限委譲を進めたり、メンバーに意思決定の機会を与えたりすることで、チームとしての総合力を高めることを意識しましょう。
職場環境を改善する
組織課題の解決には、職場環境の改善が欠かせません。職場環境は、従業員のモチベーションや生産性に直結する重要な要素であり、多くの組織課題の根本原因となっていることがあります。
職場環境の改善とは、単にオフィスの設備を整えるだけではありません。業務の無駄を見直したり休暇の取得を促進したりと、従業員の負担軽減につながる取り組みも含まれます。
また、心理的安全性の確保も重要です。上司に対して自由に意見を言える雰囲気や、失敗を責められない文化があることで、職場全体の信頼関係が高まります。 建設的な意見対立や活発な議論を通じて、快適な環境を整えてチームのパフォーマンスを最大化させましょう。
メンバーとの個別でのコミュニケーションを増やす
管理職が組織課題の解決に貢献するためには、メンバーとの個別でのコミュニケーションを増やすことが重要です。 日常的な業務連絡だけでなく、1on1ミーティングや個別対話の時間を通じて、従業員それぞれの個性や価値観、キャリアに対する考え方、抱えている悩みを深く理解する機会を設ける必要があります。
具体的には「最近の業務で困っていることはないか」「プライベートで何か悩んでいることはないか」などの質問を投げかけ、傾聴の姿勢で話を聞くことが大切です。
定期的な会話を重ねることで、潜在課題や個人のパフォーマンスに影響を与えている問題を早期に発見し、適切にサポートできるようになります。
人事部は、管理職向けに1on1の目的や進め方に関する研修や情報提供を行い、その質の向上を支援しましょう。
状況を逐一共有する
組織課題を解決するには、メンバーと状況を逐一共有する姿勢が大切です。課題解決に向けた取り組みの進捗状況や、決定事項、今後の見通しなどを定期的にメンバーに伝えることで、従業員は納得感と当事者意識を持ちながら業務に取り組むことができます。
情報のブラックボックス化は、不信感ややらされ感を生み、チームの一体感を損ないます。具体的には、課題解決のための経営会議でどのような議論がなされ、どのような決定がされたのか、その決定がメンバーの業務にどう影響するのかについて具体的な説明が必要です。
ポジティブな情報だけでなく、課題や困難な状況も包み隠さず共有することで、メンバーは当事者意識を持ちやすくなります。
状況共有を通じて、メンバー全員が一体となって自律的に行動できる組織文化を築くことが、組織課題の解決を加速させます。
組織課題を明らかにして解決に向けて全社で取り組もう
組織課題の解決は、一朝一夕で成し遂げられるものではなく、全社の継続的な取り組みが必要です。そのプロセスは組織をより強く、よりしなやかに成長させるための重要な機会でもあります。
課題解決には、まずは現状の課題を正確に把握し、その根本原因を突き止めることが重要です。 現状の課題の把握・分析は、「HRBrain 組織診断サーベイ」のようなツールを活用しながら効率的に進めましょう。
そして、経営層から現場の従業員まで、組織全体が課題に対して当事者意識を持ち、解決に向けて一丸となって取り組むことが必要です。
本記事で紹介した課題発見の方法や解決手順、そしてフレームワークを参考に、ぜひ貴社の組織課題解決に役立ててください。