#人事評価
2025/12/24

定性評価と定量評価の違いとは?メリットやデメリットも解説

シンプルな操作で評価業務の効率化を実現

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人事評価の場面で「評価が不公平だ」「なぜこの評価なのかわからない」という声を耳にすることはありませんか。

こうした不満の多くは、評価基準が曖昧だったり、説明が不十分だったりすることから生まれます。評価の公平性と納得感を高めるためには、「定性評価」と「定量評価」の適切な使い分けが必要です。

本記事では、定性評価と定量評価の違いから実務での活用ポイントまで、人事評価制度の改善に役立つ情報を解説します。

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定性評価と定量評価の違いとは?

人事評価には「定性評価」と「定量評価」の2つの手法があり、それぞれ評価する対象と方法が異なります。

多くの企業では、この2つを組み合わせることで、従業員の働きぶりを多角的に捉えています。どちらか一方だけでは、評価の偏りや従業員からの不満が生まれやすいため、両方の特性を理解したうえで使い分けることが重要です。

以降では、定性評価と定量評価の違いを解説します。

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定性評価は数値化できないものに対する評価

定性評価とは、数値では測りにくい「仕事への取り組み姿勢」や「チームへの貢献度」を評価する手法です。

後輩への指導態度や顧客対応の丁寧さ、業務改善への積極性などが該当します。具体的には、営業職であれば「顧客との信頼関係構築に努めた」、エンジニアであれば「チーム内で技術的な知見を積極的に共有した」といった行動が評価対象です。

数字だけでは見えない、働き方の質を捉えられる点が特徴で、コンピテンシー評価や行動評価とも呼ばれます。ただし、評価者の主観が入りやすいため、「なぜこの評価なのか」という評価基準を明確にする工夫が求められます。

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定量評価は数値化できるものに対する評価

定量評価とは、売上高や契約件数、納期遵守率など、具体的な数値で測定できる成果を評価する手法です。

たとえば「四半期で新規顧客を20社獲得した」「コスト削減率15%を達成した」「プロジェクトを予定より3日早く完了させた」といった実績が評価されます。

数値という客観的な基準があるため、評価者による判断のブレが少なく、従業員にとっても評価基準や達成状況が分かりやすい点が特徴です。

ただし、事業目標と個人目標を連動させやすく取り入れやすい一方で、長期的な成長やチーム貢献が軽視されるリスクもあるため、定性評価とのバランスを考えた運用が求められます。

定性評価のメリット・デメリット

定性評価は数値化が難しい行動や姿勢を評価できる一方で、運用方法を誤ると評価の信頼性を損なうおそれがあります。以下では、定性評価を導入する際に押さえておくべきメリットとデメリットを解説します。

これらを理解したうえで、適切な評価基準を設けることが制度設計のポイントです。

メリット

デメリット

・成果に至るまでのプロセスや努力の質を評価できる
・多種多様な働き方をする職場でも評価しやすい
・従業員のモチベーション維持や向上が期待できる

・評価者の主観や好みが入りやすく評価の公平性を保ちにくい
・昇進や報酬と結びつけにくい
・評価のばらつきにより不満が出やすい

メリット

定性評価には、以下のメリットがあります。

  • 成果に至るまでのプロセスや努力の質を評価できる

  • 多種多様な働き方をする職場でも評価しやすい

  • 従業員のモチベーション維持や向上が期待できる

仮に、営業で目標を達成できなかった従業員でも、新規開拓に積極的に挑戦した姿勢や、顧客との関係構築に尽力した行動を正当に評価できます。

そのため、結果だけでは測れない「成長の兆し」や「チームへの貢献」を可視化できることで、従業員のモチベーション維持につながります。

また、管理部門やサポート職など成果を数値化しにくい職種でも、業務への取り組み方を適切に評価できる点も利点です。リモートワークのメンバーや複数の職種が混在する組織でも、行動基準を明確にすれば一貫した評価が可能になります。

デメリット

一方で、定性評価には以下のデメリットもあります。

  • 評価者の主観や好みが入りやすく評価の公平性を保ちにくい

  • 昇進や報酬と結びつけにくい

  • 評価のばらつきにより不満が出やすい

「積極性」や「協調性」などの抽象的な評価項目では、評価者によって解釈が異なり、同じ行動でも評価が分かれる可能性があります。

たとえば、ある上司は、発言が多い部下を「積極的である」と評価する一方で、別の上司は「チームの調和を乱している」と捉えるケースがあります。

このように評価にバラつきが生じれば、昇進・昇給といった結果に結び付かなかった従業員は不信感を招き、評価制度そのものへの疑念を抱くことになるでしょう。

対策としては、評価基準を具体的な行動レベルまで落とし込み、評価者間で認識を揃える研修を実施することが有効です。

定量評価のメリット・デメリット

定量評価は客観的な数値で成果を測定できる一方で、数字に表れない重要な要素を見落とす危険性があります。以下では、定量評価を導入する際に知っておくべきメリットとデメリットを解説します。

適切に評価制度を運用するうえでは、定性評価とのバランスを取ることが重要です。

メリット

デメリット

・誰が見てもわかる客観的な基準で評価できる
・数値で判断できるため公平性がある
・自分で目標設定しやすい

・職種によっては公平性が保ちにくい
・数値に依存しすぎることでプロセスや感情を見落としやすい

メリット

定量評価には、以下のメリットがあります。

  • 誰が見てもわかる客観的な基準で評価できる

  • 数値で判断できるため公平性がある

  • 自分で目標設定しやすい

定量評価は、「売上1,000万円達成」「新規顧客50社獲得」といった明確な数値目標があるため、評価者による判断のブレが生じにくく、従業員も自分の達成度を正確に把握できます。

また、事業目標と個人目標を数値で紐づけられるため、会社の業績向上に直結する行動を促しやすい点も利点です。

たとえば、部門のコスト削減目標が10%であれば、個人目標も自身で具体的な数値を設定でき、組織全体の方向性を統一できます。さらに、評価結果を報酬や昇進に結びつける際も、数値という客観的根拠があるため、従業員への説明がしやすく納得感を得やすくなります。

デメリット

定量評価には、以下のデメリットがあります。

  • 職種によっては公平性が保ちにくい

  • 数値に依存しすぎることでプロセスや感情を見落としやすい

たとえば、売上目標を達成していても、顧客からのクレーム対応を後回しにしていたり、チームメンバーへの協力を怠っていたりした従業員がいたとします。数字だけを追求すると、短期的な成果を優先して、長期的な信頼関係の構築や従業員の教育が疎かになることが懸念されます。

また、管理部門や人事部門など成果を数値化しにくい職種では、適切な目標設定が難しく、評価の公平性が損なわれることも少なくありません。

こうした問題を防ぐには、定性評価を組み合わせて「どのように目標を達成したか」というプロセスも評価対象に含める取り組みが必要です。

人事評価における定性評価と定量評価の使い分け

職種や業務内容によって数値化できる要素は異なるため、画一的な運用ではなく柔軟な設計が求められます。そのうえで、目標設定や評価のタイミングに応じて適切な使い分けが必要です。

以下では、目標設定時と評価時に分けて、実務で活用できるポイントを解説します。両者をバランスよく取り入れることで、公平性と納得感を兼ね備えた評価制度を構築できます。

ステップ

ポイント

目標設定

・職種や業務内容の特性に応じて、定量と定性の評価比率を調整する
・定量目標は具体的な行動や基準を明確に記載する

評価

・目標達成までのプロセスや周囲への影響を考慮する
・同僚や部下の評価も取り入れる

目標設定時のポイント

目標設定時には、職種や業務内容の特性に応じて定量目標と定性目標の比率を調整することが効果的です。

営業職やマーケティング職など成果を数値化しやすい職種や、短期的な目標を設定する際には、定量目標の割合を高めに設定し(例:定量70%、定性30%)、売上高や顧客獲得数などの明確な数値目標を掲げます。

一方、管理部門やサポート職など数値化が難しい場合や、中長期的な視点での目標設定時には定性目標の比率を高め(例:定量30%、定性70%)、業務改善への取り組みやチームへの貢献度を評価項目に加えます。

また、定量目標を設定する際は「後輩を3名以上育成する」「顧客満足度アンケートで80%以上の高評価を得る」など、できるだけ具体的な行動や基準を明記しましょう。そうすることで、評価のバラつきを防げます。

評価時のポイント

評価実施時は、定量目標の達成度だけでなく、目標達成に至るプロセスや周囲への影響も考慮して総合的に判断することが重要です。評価の際には、行動の根拠を示せる証拠があればより適切な評価が可能です。

たとえば、売上目標を120%達成した従業員がいても、顧客への過剰な営業で信頼を損ねていたり、チーム内で情報を独占していたりする場合は、定性評価でマイナスをつける必要があります。

逆に、目標達成率が90%でも、新規市場の開拓に挑戦した姿勢や、チームの売上向上に貢献した行動があれば、定性評価でプラスを加えます。

また、リモートワークや異動などがある環境では、上司による直接観察が難しいため、同僚や部下からの評価を取り入れることで、多角的な視点から公平な評価を実現できるでしょう。

定性評価と定量評価を組み合わせて納得感のある評価制度を!

人事評価の公平性と納得感を高めるには、定性評価と定量評価の両方を適切に組み合わせることが重要です。

定量評価だけでは数字に表れない努力や貢献を見落とし、定性評価だけでは主観的な判断によるバラつきが生じやすくなります。

職種や業務の特性に応じて両者のバランスを調整し、具体的な評価基準を設けることで、従業員が納得できる制度を構築できるでしょう。

また、評価制度は一度作って終わりではなく、評価者への研修を定期的に実施したり、運用したりしながら改善を重ねていくことで、組織の成長や従業員のモチベーション向上につながります。

今回紹介したポイントを参考に、自社に最適な評価制度の設計を進めてみてください。

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株式会社HRBrain 東本真樹
東本 真樹
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

2008年、デジタルマーケティングを支援する企業に入社。
企業ブランディングを活かしたマーケティング支援を経験した後、人事コンサルティング事業の立ち上げに参画。
主に300名未満の中小企業に向けた人事評価制度設計・運用支援・研修企画/実施を行う。

その後、1,000名規模の上場企業にて人事ポジションを経験し事業会社人事としての職務にも従事。

人事評価制度の運用、サーベイによる組織傾向分析、人材データベースの運用管理を経験。
現在は、HRBrainコンサルティング事業部にて組織人材コンサルタントとして活躍中。
人事評価制度の設計から定着に向けたコンサルティングまで各企業のフェーズに沿った支援を行っている。

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