#人材育成
2023/12/14

インテグリティとは?組織に求められる「誠実さ」の重要性

目次

    インテグリティは「誠実さ」を意味する言葉で、組織のリーダーやマネジメントに求められる重要な資質のひとつとして注目されています。

    なぜ今、インテグリティが重要な資質としてあげられるようになったのか、インテグリティがマネジメントに重要な理由、インテグリティな人になるための6つの資質、インテグリティ浸透に取り組む企業事例について解説します。

    インテグリティ育成に大切な「納得度の高い評価」を行う方法

    インテグリティとは

    インテグリティとは

    インテグリティ(integrity)とはもともと、「誠実」「真摯」「高潔」などの概念を意味する言葉です。

    主に欧米企業で経営方針や従業員が持つべき価値観として頻繁に使われるようになり、次第に企業経営や組織マネジメントの領域でも使われる用語となりました。

    近年では特に、組織を率いるリーダーやマネジメント層に求められる重要な資質である「誠実さ」を示す表現として用いられています。

    企業経営におけるインテグリティという用語の定義や解釈はさまざまですが、代表的な解釈について確認してみましょう。

    インテグリティについてのドラッカーの定義

    経済学者のピーター・ドラッカー氏は、「インテグリティこそが組織のリーダーやマネジメントを担う人材にとって決定的に重要な資質である」と述べています。

    ただ、インテグリティの定義についてはドラッカー氏本人も「難しい」と語っており、インテグリティが欠如している人物を例示することで、逆説的にインテグリティの定義を浮かび上がらせようとしています。

    インテグリティが欠如している人物の例として、ドラッカーは著書「現代の経営」の中で、「人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者」「冷笑家」「『何が正しいか』よりも『誰が正しいか』に関心をもつ者」「人格よりも頭脳を重視する者」「有能な部下を恐れる者」「自らの仕事に高い基準を定めない者」などをあげています。

    (参考)ピーター・ドラッカー「現代の経営(上)」「現代の経営(下)

    インテグリティのある人になるための定義と6つの資質

    アメリカの自己啓発作家で精神科医のヘンリー・クラウドは、著書である「リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質」で、インテグリティを備えた人とは「人格として統合されており、個々の部分がすべてうまく機能し、目指す効果を上げている」人物のことと定義しています。

    インテグリティな人になるための定義

    インテグリティのある人になるための6つの資質

    1. 信頼を確立する
    2. 現実と向き合う
    3. 成果を上げる
    4. 逆境をうけとめ問題を解決する
    5. 成長・発展する
    6. 自己を超え、人生の意味を見つける

    さらにクラウド氏は、「個々の部分」として、インテグリティな人になるための6つの資質を「信頼を確立する」「現実と向き合う」「成果をあげる」「逆境を受けとめ、問題を解決する」「成長・発展する」「自己を超え、人生の意味を見つける」と解説しています。

    (参考)ヘンリー・クラウド(著)、中嶋秀隆(訳)「リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質

    インテグリティが重要な理由

    世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェット氏は、人材に求める3つの資質として「知性」「エネルギー」「誠実さ(インテグリティ)」をあげ、「誠実さ(インテグリティ)」が伴わずに「知性」と「エネルギー」を持つ人材はいないと、インテグリティの重要性を述べています。

    「Somebody once said that in looking for people to hire, you look for three qualities: integrity, intelligence and energy. And if they don’t have the first, the other two will kill you. You think about it, it’s true. If you hire somebody without the first, you really want them dumb and lazy.」

    「誰かがかつて人を雇う時には、3つの素質を探すべきだといった。それは誠実(インテグリティ)さ、知性、そしてエネルギーだ。もし誠実(インテグリティ)さを持っていなければ、知性とエネルギーはあなたを破滅させるだろう。このことについて考えてみてほしい、事実なのだ。もし誠実(インテグリティ)さを持っていない人を雇うなら、あなたは彼らが愚かで怠け者であることを本当に望んでいるはずだ。」

    (参考)Quote Investigator®「Quote Origin: Look for Three Qualities: Integrity, Intelligence and Energy. And If They Don’t Have the First, the Other Two Will Kill You

    ドラッカーもマネジメントにおけるインテグリティの重要性を述べています。

    インテグリティが重要な理由について確認してみましょう。

    インテグリティが重要な理由

    • コンプライアンス経営の実践のため

    • 健全な組織運営の推進のため

    コンプライアンス経営の実践のため

    日本では1990年代から、年功序列から成果主義へとシフトする動きが始まりました。

    しかし、業績に応じて評価される成果主義が過度に進んだ結果、不正や不祥事が明るみになったり、その場しのぎの対応で信用を失ったりといった弊害も出てきました。

    こうした状況の反省から、企業経営やマネジメントにおけるインテグリティが注目されるようになったのです。

    さらに、企業のインテグリティを最優先し、法令遵守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と企業倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営のことを、「インテグリティ・マネジメント」と呼びます。

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    健全な組織運営の推進のため

    組織を牽引するリーダーやマネジメント層が率先してインテグリティに基づく行動をとることは、健全な組織運営にもつながります。

    状況判断に迷う部下に対して、自らの考えや行動を示すことで、部下自身ひいては組織や企業のインテグリティを保つことに貢献します。

    部下の立場に立って考えると、どんなに知識や経験が豊富で仕事ができる人物だとしても、誠実さに欠けるリーダーには「ついていきたい」とは思えないでしょう。

    誠実さに欠けたリーダーのもとでは、部下は仕事に自信が持てず、仕事に対するモチベーションが下がってしまう可能性もあります。

    また、一定の業績を上げたとしても、部下は疲弊し、組織全体の力が弱まってしまうこともありえます。

    インテグリティを推進している企業事例

    企業としてインテグリティを保つためには、従業員ひとりひとりが誠実で真摯な行動を実践し、さらに組織を牽引するリーダーやマネジメント層が自ら手本となって周囲から信頼される行動を示すことが必要です。

    特にグローバル企業では、法律や慣習が国によって異なるうえ、従業員が持つ価値観が多様であるため、インテグリティを全世界の従業員が共有すべき価値観として明記しているケースが多くあります。

    グローバル企業がインテグリティをどのようにして従業員に共有、浸透させているのかについての具体例について確認してみましょう。

    インテグリティを推進している企業事例:ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)

    GEは、世界で約30万人の従業員を抱えています。

    GEの企業活動のベースには「インテグリティ」があり、その上に企業価値を置いているといわれています。

    また、GEにとってのインテグリティとは、全ての従業員に求める最上位の「行動指針」でもあります。

    企業価値を浸透させるために重視していることのひとつが「リーダー育成」です。

    その背景には、リーダーを通じて従業員が企業価値を共有する流れをつくることで、インテグリティが浸透した組織や会社をつくっていくという考えがあります。

    また、インテグリティに違反するような行為をした従業員には、会社から極めて厳しい対処が下され、違反行為をした従業員だけでなく、リーダーも組織においてインテグリティ文化を作れなかったことによる責任を問われます。

    また、自らの仕事の進め方を振り返るために、「もし自分の仕事が明日の新聞に掲載されるとしたら、すべての人に対して誇りをもってその記事を見せられるか」と問いかける方法がよく使われているそうです。

    この問いかけを通して、客観的に見ても自分の仕事がインテグリティを保てているかどうかを確認することができます。

    ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)

    インテグリティを推進している企業事例:メルセデス・ベンツグループ

    メルセデス・ベンツグループ(旧ダイムラーグループ)における業務活動の基本となる価値観はインテグリティです。

    メルセデス・ベンツグループでは基本理念や従業員の行動原則、倫理的な行動のための指針を「インテグリティ規程」としてまとめ、全世界の従業員に適用しています。

    また、メルセデス・ベンツグループでは「公正であるとして認められている倫理理念に従って企業活動がなされる場合にのみ経済的な成功が永続して可能になる」という考えに基づき、公正にビジネスを推進するために法律や企業内部の規則を遵守する必要があるとしています。

    この規則は、すべての従業員が自由にかつ自信を持って自らの責任で行動することを後押しするものです。

    規則の実践が、職場におけるインテグリティ実践につながるという考え方です。

    (参考)メルセデス・ベンツ「私たちのインテグリティ規定 正しい行い

    メルセデス・ベンツグループ

    インテグリティを推進している企業事例:シスコシステムズ合同会社

    シスコシステムズ合同会社では、企業カルチャーとして「ゆるぎないインテグリティ」を掲げています。

    シスコの「2018年ビジネスに関する行動規範」には、ビジネスの継続的な成功は「社員が当社の中心的な価値観に合った決定をできるかどうかにかかっています。どのような状況で何をするにも、正直さや誠実さを貫きましょう」とあります。

    他にも、困難な状況に直面したときに役立つツールとして、「自分自身に疑問を投げかけるー倫理的意思決定ツリー」(行動に迷った際に、「はい」「いいえ」を選択することでどう行動すれば良いかがわかるフローチャート)も掲載されています。

    「その行動は自社のポリシーに合っているか」「その行動には自社の価値観や風土が反映されているか」などの問いかけは、あらゆる企業で応用できるものといえます。

    (参考)シスコ「2018年ビジネスに関する行動規範

    シスコシステムズ合同会社

    インテグリティは健全な組織づくりに欠かせない

    企業にとってインテグリティは、健全な組織を運営し、公正なビジネスによって成果を上げるために欠かせない要素です。

    社内にインテグリティを浸透させるためには、社内の行動規範にインテグリティが求められることを明確にするとともに、組織を率いるリーダーやマネジメント層へのインテグリティ教育も必要です。

    誠実で信頼される組織をつくるために、インテグリティ教育を実践してみましょう。

    インテグリティな従業員を育成をするために

    インテグリティは「誠実さ」を意味する言葉で、組織のリーダーやマネジメントに求められる重要な資質のひとつとして注目されています。

    また、常にインテグリティに基づく行動を取る従業員を育成することは、企業が「コンプライアンス経営の実践」や「健全な組織運営の推進」を目指すうえで欠かせない要素です。

    インテグリティ教育による人材育成は、公正かつ納得感のある人事評価から始まります。

    「HRBrain タレントマネジメント」目標に対する進捗状況や達成度、評価プロセスや評価の見える化を行い、公正かつ納得感のある人事評価を実現します。

    従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、研修などの育成履歴や、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、1on1やフィードバックなどの面談履歴、OKRなどの目標設定と進捗管理などを一元管理します。

    HRBrain タレントマネジメントの特徴

    • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

    運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

    • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

    従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

    • 人材データの見える化も柔軟で簡単に

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    HR大学編集部
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