#人材管理
2023/09/15

製造業がタレントマネジメントを活用するメリット・デメリットとは

目次

    近年、製造業でのタレントマネジメントが注目を浴びています。
    製造業でタレントマネジメントはどのように活用されているのでしょうか。
    その必要とされる背景、導入のメリット・デメリットなどについて紹介します。

    製造業でタレントマネジメントが必要とされている背景

    タレントマネジメントは、スキル・ノウハウなど従業員データを一元的に集約し、異動・人材育成、評価などの人事戦略に反映させ組織成長・業務効率化を目指すプロセスを指します。
    詳細:【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説

    製造業でタレントマネジメントが必要とされる理由の筆頭は、「高齢化による熟練社員の退職」です。自社内において高いスキルを持つ従業員の把握ができず、その技術を継承させるなどの積極的な施策が行えないことは、製造業にとって大きなリスクであると言えるでしょう。加速する高齢化によって先達の技術者から充分なスキルの伝達がなされず、経験・知識が不足している状態の従業員が増えることは、問題です。

    自社に習熟したスキルを持つ人材が不在になることで、会社の優位性・競争力が失われるだけではありません。「どんなときにエラーが起こりやすいか」「機械のメンテナンスはどのくらいの周期で行うべきなのか」など、商品の品質・工場の安全性を保つためのノウハウが失われてしまう恐れがあるからです。

    また、近年、消費者のニーズは多様化しています。1つの商品を大量生産するような以前のやり方は、通用しなくなってきていると言えるでしょう。

    同時に、多様化するニーズに対応できるスキルを持った技術人材の付加価値は、年々上昇しています。

    このように自社の競争力を上げるためにも、高いスキルを持った人材を把握をすることは、製造業にとって喫緊の課題と言えるでしょう。これが、製造業でタレントマネジメントの活用に注目が集まっている背景です。

    製造業でタレントマネジメントを導入するメリット

    次に、製造業でタレントマネジメントを導入するメリットについて紹介します。

    製造業の場合、現場で業務を行っているため、必ずしも一人1台のパソコンが支給されているわけではありません。また、従業員の人事情報などは、紙で管理しているケースが多いのが現状です。

    タレントマネジメントの中には、パソコンに加えてスマホなどからの入力に対応しているシステムもあります。そうしたシステムを導入すれば、紙からデジタルの管理が比較的容易にできます。

    システム導入をすることで、業務の効率化がアップするだけでなく、人材データの検索性が高まります。つまり、従業員が保有しているスキル・資格が可視化・一元管理されるだけでなく、重要なスキルを持つ社員を見つけることが可能となります。

    またエクセルで人事情報を管理している場合、フォルダ内に似た名前のファイルが重複し、「どれが最新なのかわからない」といった問題が発生しがちです。

    タレントマネジメントシステムを導入した場合、誰しもが常に最新のデータを閲覧することが可能になります。そのため、最適な人員配置が可能になると言えるでしょう。

    現在の状況だけでなく、年代によるスキルの分布の分析も可能です。たとえば、「定年退職が間近のAさんが、実は社内で唯一の資格保持者だった」ということも可視化されます。現在不足している、また将来不足する可能性のあるスキルや人材がわかる点も、タレントマネジメントシステムの特徴です。

    重要なスキルを持つ人材が不足する前に、採用による人材の補充・後進の教育など、積極的な施策を行うことができます。

    製造業でタレントマネジメントを導入する際のデメリットと注意点

    どのサービス導入についても言えることですが、タレントマネジメントの導入にはコストがかかります。

    しかし、近年ではライトプランなどお試ししやすいプランのほか、従業員の人数に応じて月額サービス料が変わるサービスなど、導入しやすいタレントマネジメントシステムが増えています。

    自社に保管してある紙の人事情報を移行するのは手間がかかりますが、入力代行などのプランが用意されているサービスもあります。また、カスタマーサクセスなど導入後のサポートが充実しているタレントマネジメントシステムを選ぶと、スムーズな運用が可能となります。

    タレントマネジメントシステムの活用が一般的になったこともあり、導入に対するハードルは年々低くなっていると言えるでしょう。

    製造業の場合、タレントマネジメントを導入するには、パソコン作業に慣れていない現場従業員へのサポートが重要になります。

    また、システム導入前には現場のキーパーソンに説明し、協力を得ることも、スムーズな運用には欠かせない手順と言えるでしょう。人事部では、そうした現場従業員の質問に応えられるリソースを準備しておくこと、また保有資格などの情報を常に最新の状態に保つための体制を作る必要があります。

    製造業では1人に1台パソコンがあるわけではなく、1拠点に1台ずつ、というケースも多くあります。その場合、スマホの入力・閲覧に対応しているタレントマネジメントシステムを選ぶことが有効です。

    製造業でタレントマネジメントを実施する具体的な流れ

    では、製造業でタレントマネジメントシステムを導入するには、どのような手順で行えばよいのでしょうか。

    まず、自社内において人事情報・保有資格・スキルがどのように保有されているか把握・整理する必要があります。それらのデータを整理したのち、タレントマネジメントの社員名簿に、人事情報を紐づけて登録します。自社にデータがない場合は、従業員自身にイチから情報を記入してもらうこともできます。従業員にタレントマネジメントシステムにログインしてもらい、スキル・資格などを入力してもらいましょう。

    製造業のタレントマネジメント導入事例

    一般的に、製造業では紙で人事情報が管理されることが多いという現状があります。また、拠点にパソコンをはじめとしたデジタル機器が、従業員の人数分揃っていないことも珍しくありません。

    「システム導入をしてペーパーレスでの管理に移行したことで、業務効率化が図れた」「スマホからの入力ができることで、拠点にパソコンがなくても助かった」「離れた拠点でも顔写真が掲載されているから従業員の情報が把握しやすい」など、製造業においてタレントマネジメントが活用される事例は、年々増加傾向にあります。

    以下、タレントマネジメントについて、具体的な活用事例を抜粋してご紹介します。

    分散する社員情報の可視化によるタレントマネジメントへの第一歩|ホクト株式会社

    ホクト株式会社は、エリンギ、マイタケ、ブナシメジなどを主力商品としてきのこの種菌開発から生産・販売までのすべての工程を自社で行っています。

    くるみん、えるぼしマークの認証制度や健康経営など、企業データを分析し情報開示する機会が増え、社員情報の可視化の必要性が高まったほか、人事評価の効率化にも課題を感じていました。

    課題

    • 社員の情報が人事部に属人化しており、役職者が部下の情報を正確に把握できていなかった

    • 人事評価をエクセルで実施しており、回収や集計に時間がかかる

    課題解決のカギ

    • 人材データを一元管理できるタレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入

    • 役職に応じて人材データの閲覧権限を設定し、より透明度の高い人材管理に

    • 人材管理がすべてWeb上で完結するため、人事評価が大幅に効率化

    人材データを一元管理できるタレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入。役職に応じて人材データの閲覧権限を設定し、現場にとってもより透明度の高い人材管理を実行できました。人材管理がすべてWeb上で完結するため、人事評価の効率化も実現できました。

    システム導入効果

    • 社長や役職者がいつでも対象者の情報を確認でき、より会社と従業員の相互理解が深まった

    • 今まで人事評価にかかっていた膨大な工数がなくなり、すべてWEB上で完結し、人事評価の効率化を実現できた

    ホクト株式会社 導入事例」より

    人事評価コンサルティング導入で、新しい等級制度の運用が可能に|株式会社イズミテクノ

    株式会社イズミテクノは、アルミニウムの表面に加工処理をしたアルマイトの提供、またアルマイトを中心とした技術相談・新規開発の対応をしています。

    積極的な事業拡大を行う方針に大きく転換したことから会社の規模が急激に拡大し、評価基準が統一されていないことやExcelでの評価制度の運用に課題を感じていました。

    課題

    • 評価基準が統一されておらず、登用する人材の能力にばらつきがあった

    • 能力が給与に反映されておらず、「感覚」に頼った給与の設定になってしまっていた

    • Excelでの評価制度の運用において、集計作業自体の限界を感じていた

    課題解決のカギ

    • 元々導入していたタレントマネジメントシステム「HRBrain」に合わせ人事評価コンサルティングも導入

    • HRBrain 人事評価コンサルティング主導で等級制度・人事制度の再編成を行った

    • 「役職」と「等級」それぞれに求められるものを明文化した

    もとより等級・評価制度そのものに課題に感じていたため、すでに導入していた「HRBrain」に合わせ、人事評価コンサルティングも導入。HRBrain 人事評価コンサルティングが主導となり、等級制度と人事制度の再編成を行いました。また、役職者としての意識付けのため「役職」と「等級」それぞれに求められるものを明文化しました。

    システム導入効果

    • 役職者が役職に見合った仕事をしているかどうかが明らかになり、役職者に「会社が求めていること」が根付いてきた

    • 「会社が求めること」にマッチする人材を採用するという意識づけができた

    株式会社イズミテクノ 導入事例」より

    ただのシステム化では終わらない、人事DXへの挑戦|高砂電気工業株式会社

    高砂電気工業株式会社は、ソレノイドバルブ(電磁弁)およびポンプを中心とする流体制御機器等の設計・製造・販売を行っています。

    昨年はインドで新卒採用も行うなど、グローバル化も推進しています。Wordなどのファイルと紙の記録がバラバラに保管されているなど、人事データの紐づけや活用の難しさに課題を感じていました。

    課題

    • 従業員情報や人事評価の結果が、Wordや紙などにバラバラに保管されている

    • バラバラに保管されたデータの紐づけができておらず、人事データの活用ができてなかった

    • 20年前に導入したコンピテンシーのブラッシュアップもできておらず、時代に合わせた人事評価の運用を目指していた

    課題解決のカギ

    • UIが優れており直感的に操作できるタレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入

    • 評価軸・性格の異なるカンパニーを、柔軟にカスタマイズできる「HRBrain」の人事評価機能を活用し包括的に管理

    UIが優れており、マニュアルを見ずとも直感的に操作できるタレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入。

    柔軟にカスタマイズできる「HRBrain」の人事評価機能を活用し、ホールディングスとして統一した制度やメッセージの発信をしつつ、「流体制御システムカンパニー」と「未来創造カンパニー」という、評価軸・性格の異なるカンパニーそれぞれに評価の付け方を柔軟に設定し、包括的に管理することができています。

    システム導入効果

    • 従業員情報が一つにまとまったことで、内容の確認やリマインドなど、人事評価に関わる業務が効率化された

    • 蓄積した従業員情報の分析により、会社の未来を見据えた人事制度を作り始めることができた

    高砂電気工業株式会社 導入事例」より

    株式会社フルハートジャパン

    ある技術の資格取得者が弊社には1人しかいなくて、数年前からこの人に資格を取得してもらう、という話が出ていたのですが、結局やれていなかったということがありました。今回HRBrainを使って、資格を取れていないことを可視化した上で1on1を実施して、「なぜできていないのか」「時間がないからです」「それなら時間をつくろう」というコミュニケーションができて、資格を取得することにつながりました。
    株式会社フルハートジャパン 導入事例」より

    日進精機株式会社

    「日進精機における『HRBrain』の活用方法」

    自社の強みである「高い技術を持った従業員」の育成強化
    技術力が強みである日進精機は、十分な技術を持った従業員を育成する必要があります。HRBrainを使った、従業員のスキル管理で、各従業員がどの程度のスキルを保持しているかを可視化。人材育成を強化します。
    日進精機株式会社が『HRBrain』を導入、情報セキュリティ強化の施策」より

    製造業のタレントマネジメントまとめ

    製造業では、熟練したスキルを持った従業員の高齢化による退職により、自社の強みであるスキルが失われる危機に直面しています。
    商品のクオリティを保ち、安全な作業環境を確保するためにも、自社で保有するスキル・資格の可視化・把握は大きな課題と言えるでしょう。
    そのために活用できるのがタレントマネジメントシステムです。
    紙からデジタルの移行により、人材のスキル・資格などの検索性が高まります。
    「どのスキルを持っている人材が不足しているのか」という課題が可視化され、戦略的に人材の配置・教育が可能になります。
    タレントマネジメントはスマホ入力に対応したシステムもあります。
    拠点ごとにパソコンが1台しかないケースが多い製造業では、より活用しやすいシステムであると言えるでしょう。

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    HR大学編集部
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