年末調整の電子化とは?メリットや申請方法を解説
入退社手続きや年末調整など、あらゆる労務業務を簡単DX
- 年末調整の電子化とは
- 年末調整の電子化は義務化されている?
- 年末調整の電子化後にデータで提出できる書類
- 企業が年末調整を電子化するメリット・デメリット
- メリット
- デメリット
- 年末調整を電子化するための準備
- 1.社内への周知・環境整備
- 2.システム・ツールの導入
- 3.税務署への申請
- 年末調整を電子化した後の申請方法
- 1.従業員に控除証明書を取得してもらう
- 2.従業員から申告書データを受け取る
- 3.システムで年税額を計算する
- 4.データの原本を保存する
- 年末調整を電子化して効率を高めよう
年末調整を電子化すれば、紙の配布・回収や手入力、保管作業が大幅に減り、担当者・従業員ともに業務負担とミスをまとめて削減できます。
近年は、マイナポータル連携やクラウド型年末調整システムの普及により、スマホやPCからの申告、控除証明書データの自動反映、年税額の自動計算などに対応する企業が増えつつあります。
本記事では、年末調整電子化の仕組みと対象書類、義務化されている電子申告との違い、メリット・デメリット、自社に合うシステム選びや税務署まわりの最新ルールまで詳しく解説します。
年末調整の電子化とは
年末調整の電子化とは、年末調整の申告書作成から提出、年税額の計算、書類保管までの一連の業務をすべて電子データで行う仕組みです。
従来のような書類の印刷・配布・回収や手入力、7年間分の紙保管などを行う必要がなく、入力チェックや計算も自動化されるため、担当者と従業員双方の負担やミスをまとめて削減できます。
2020年以降はマイナポータルなどで取得した控除証明書データをそのまま申告書へ反映できる環境が整い、多くの企業で業務効率化とペーパーレス化の中核施策として導入が進んでいます。
【関連コンテンツ】
年末調整の電子化は義務化されている?
年末調整の電子化は、従業員が提出する申告書は現時点で義務ではなく、一方で法定調書の電子提出は一定規模以上の企業で義務化されています。
従業員側の申告は、会社が一方的に電子化を強制することはできず、原則として事前の同意や就業規則での明示が必要なため、IT操作が不安な従業員には紙提出を併用する運用も選べます。
一方、源泉徴収票や支払調書などの法定調書は、前々年の提出枚数が一定枚数以上の企業(現行は100枚以上。令和9年1月1日以後に30枚以上へ引き下げ予定)では、e-TaxやeLTAXによる電子提出が義務となるため、社内フローも電子化して二度手間を避けることが重要です。
年末調整の電子化後にデータで提出できる書類
年末調整の電子化により、主要な申告書や控除証明書の多くは電子データでの提出が可能です。
電子化できる主な書類は、以下のとおりです。
区分 | 書類名 |
|---|---|
申告書 | ・扶養控除等(異動)申告書 |
控除証明書 | ・生命保険料 / 地震保険料控除証明書 |
控除証明書は、マイナポータルや保険会社から取得した電子的控除証明書等(XML形式など)であれば、原本提出は不要です。ただし、前職の源泉徴収票や初年度の住宅ローン控除など、一部の書類は引き続き書面提出が必要な点に注意しましょう。
企業が年末調整を電子化するメリット・デメリット
企業が年末調整を電子化するにあたって、メリットとデメリットが存在します。
主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
|---|---|
・業務工数とコストの削減 | ・システム導入のコスト発生 |
導入初期にはコストやサポートの手間がかかりますが、長期的な視点で見れば、業務効率化やリスク回避によるメリットがそれらを大きく上回るでしょう。
メリット
年末調整を電子化するメリットは、担当者の業務負担を劇的に減らし、正確性を担保できる点です。
具体的には、以下の3つの効果を期待できます。
メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
業務工数とコストの削減 | ・申告書の配布・回収やデータ入力の手間を削減 |
入力ミスや計算ミスの防止 | ・控除額の自動計算と必須項目チェック |
書類の紛失リスクの解消 | ・紙書類の撤廃による紛失リスクの解消 |
システム導入により、担当者はチェック作業や再提出の依頼といった定型業務から解放されます。
デメリット
年末調整の電子化には、システム導入コストと運用・サポート負担が発生する点が主なデメリットです。
専用システムやクラウドサービスを利用する場合、初期費用や月額料金が必要となり、紙運用では見えにくかったシステム費が新たな固定コストとして発生します。
また、導入初年度は従業員のITリテラシーの差による戸惑いや問い合わせが増えやすく、マニュアル整備や説明会、ヘルプ窓口の設置など一時的にサポート工数も膨らみます。
ただし、運用が軌道に乗れば、残業削減やミス削減で費用対効果を見込みやすい点も踏まえ、自社の規模や人員構成に合うペースで導入を進めることが重要です。
年末調整を電子化するための準備
年末調整の電子化導入に向けた準備は、以下の3つのステップで進めましょう。
1.社内への周知・環境整備
2.システム・ツールの導入
3.税務署への申請
これらを事前に整えておけば、初年度の混乱を最小限に抑えつつ、翌年以降はスムーズかつ安定した電子化運用へ移行しやすくなります。
1.社内への周知・環境整備
年末調整の電子化をスムーズに進めるには、システム導入前の周知と環境整備が重要です。
従業員の中にはIT操作に不安を抱える人もいるため、少なくとも数ヶ月前から、スマホやPCから入力できることや、手書き・押印・原本提出が減るといったメリットをわかりやすく伝えましょう。
あわせて、就業規則や社内規程に、年末調整申告は原則電子データで提出することを明記し、全社周知することで運用ルールを統一できます。
さらに、入力マニュアルやFAQ、問い合わせ窓口を用意し、年配社員や現場スタッフを含めて誰でも迷わず操作できるサポート体制を整えることが、初年度の混乱防止につながります。
2.システム・ツールの導入
年末調整を本格的に電子化するには、自社の業務フローに合ったシステムを選ぶことがポイントです。
主な選択肢として、以下の2つが挙げられます。
国税庁の「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」:コストは不要ですが、各デバイスへのインストールやデータ管理の手間が発生し、管理者側の負担が減りにくい側面があります。
有料|民間クラウド給与システム: 導入費用はかかりますが、Webやアプリで完結し操作が簡単です。給与システムとの連携やアンケート形式の入力により、大幅な業務効率化が見込めます。
選定の際は、費用の安さだけでなく、残業時間の削減効果やセキュリティ、電子帳簿保存法への対応状況などを総合的に判断しましょう。
3.税務署への申請
現在、従業員から申告書データを回収するための税務署への事前承認は不要です。
ただし、会社が作成した法定調書(源泉徴収票など)を税務署や市区町村へ電子提出する場合には、以下の準備が必要です。
e-Tax(国税)の利用準備:利用者識別番号の取得や、電子証明書の準備が必要
eLTAX(地方税)の利用準備:給与支払報告書を提出するために、利用者IDを取得
実務上は、「社内での回収・保存フローは申請ほぼ不要」「役所への提出は電子申告のための事前登録が必要」と整理しておくと社内説明がしやすくなります。
年末調整を電子化した後の申請方法
年末調整を電子化したあとの申請フローは、以下のとおりです。
1.従業員に控除証明書を取得してもらう
2.従業員から申告書データを受け取る
3.システムで年税額を計算する
4.データの原本を保存する
各ステップの具体的な進め方を順を追って解説します。
1.従業員に控除証明書を取得してもらう
まずは、従業員自身が保険会社などから控除証明書データ(XML形式など)を取得します。
最も効率的な方法はマイナンバーカードを用いた連携で、複数の証明書データを一括取得し、申告書へ自動入力できます。金額の転記ミスを防げるほか、原本(ハガキ)の提出自体が不要になります。
マイナポータルが利用できない場合は、各保険会社のWebサイトからデータをダウンロードしてもらいましょう。
データ連携に非対応の証明書がある場合は紙の提出を併用するなど、柔軟な運用ルールの設計が重要です。
2.従業員から申告書データを受け取る
従業員は、スマートフォンやPCから専用システムにアクセスし、申告データを提出します。多くのシステムはアンケート形式を採用しており、専門用語が分からなくても迷わず入力可能です。
入力内容はシステムが自動チェックするため、記入漏れや計算ミスによる差し戻しの手間が激減します。
また、管理画面では提出状況がリアルタイムで可視化されます。未提出者へのリマインドメールも一括送信できるため、回収管理にかかる工数も大幅に削減できます。
3.システムで年税額を計算する
回収した申告データに基づき、システムが年税額を自動計算します。
定額減税などの複雑な計算や、毎年の税制改正にも自動で対応するため、担当者が計算式を確認したり検算したりする手間は不要です。
確定したデータは、CSVやAPI連携で給与システムへ直接取り込めます。手入力による転記ミスをゼロにできるほか、源泉徴収票や給与支払報告書といった法定調書の作成まで一気通貫で行えます。
4.データの原本を保存する
年末調整の完了後、回収した申告データや控除証明書(XML形式など)は、電子データのまま7年間保存します。
電子帳簿保存法の要件を満たしたシステムであれば、サーバー上にデータを保管することで法的な保存義務を果たせます。
紙に出力してファイリングする必要がないため、保管スペースや管理コストを削減できるほか、紛失といった物理的なリスクも回避できます。
また、システム上の検索機能を使えば、税務調査で過去のデータを求められた際も即座に提示できるため、対応がスムーズになります。
年末調整を電子化して効率を高めよう
年末調整を電子化すれば、紙の配布・回収・保管を大きく減らしつつ、従業員の入力負担と担当者の確認工数を同時に削減できます。
近年は控除証明書のデータ取得や年税額の自動計算、電子保存まで一気通貫で対応できるシステムが整備されており、事前承認が不要なケースも増えているため、中小企業でも導入しやすい環境です。
まずは、自社の規模や人員構成、既存の給与システムとの連携可否を踏まえて、無料の公的ソフトか民間クラウドのどちらを軸にするかを検討し、社内ルールと周知・サポート体制を整えながら、次の年末調整シーズンに向けて段階的に電子化を進めていきましょう。







