Case

導入事例

忙しい医療現場に「文字による対話」を。佐渡総合病院が実現した、一人ひとりの成長に寄り添うキャリア支援

新潟県厚生農業協同組合連合会佐渡総合病院 病院長

佐藤 賢治 様

新潟県厚生農業協同組合連合会佐渡総合病院 管理部 看護師・キャリアコンサルタント

望月 結花 様

新潟県厚生農業協同組合連合会佐渡総合病院 看護部 看護師長

渡邊 直美 様

新潟県厚生農業協同組合連合会佐渡総合病院 看護部 看護師長

小林 真紀子 様

  • 医療
  • 501~1000名
  • 人事評価や目標管理の運用を効率化したい
  • スキル管理を行いたい
  • 人事制度の見直しをしたい
  • 社員のコミュニケーションを活性化したい
  • タレントマネジメント
  • パルスサーベイ

HRBrain導入開始:2022年08月01日

忙しい医療現場に「文字による対話」を。佐渡総合病院が実現した、一人ひとりの成長に寄り添うキャリア支援

  • 課題背景
    • 職員の資格情報や研修実績の記録が分散しており、現場での活用や面談に向けた準備に多大な労力を要していた。
    • 職員を客観的に評価する基準がなく、個々人が自身の成長を正しく認識しキャリア形成を積み上げることが困難だった。
    • 職員の心身の不調や離職の兆候を早期に察知し、適切なフォローや環境整備につなぐ仕組みが不足していた。
  • 打ち手
    • 職員情報を一つのプラットフォームに一元化し、システムを通じた「文字による対話」を日常的な業務として定着を図った。
    • 職員一人ひとりがなりたい姿を言語化して目標を管理し、部署長や支援者からアドバイスをもらえる、独自の「ゴールシート」を運用。
    • パルスサーベイを「心のバイタルチェック」として活用し、数値の急落やストレス項目が高い職員を優先介入対象として明確化した。
  • 効果
    • 事前の情報収集が効率化されて面談の質が向上し、文字でのやり取りがあることで管理職とスタッフ間の信頼関係が深まった。
    • 文字を通じた対話により職員の安心感と内省が深まることで、信頼関係に基づく成長支援が可能になった。
    • 離職を食い止めるための管理ではなく、不調の早期発見から適切なケアへ繋ぐことで、職員が健全に働き続けられる環境の整備を検討できるようになった。

「主観」から「客観」へ。病院組織をアップデートするキャリア管理の再構築

Q. まずは、佐渡総合病院の成り立ちと、今回のシステム導入の背景にあった人事課題について詳しく教えてください。

佐藤様:
当院は新潟県佐渡市において、急性期医療から救急、災害医療までを一手に担う、佐渡島の総合病院です。医師や看護師、事務職を含め約600名の職員が働いています。

人事課題として最も大きな問題だったのは、
自他ともに職員を評価する基準がなく、職員個々がキャリア形成をイメージしにくい点でした。

一般的に民間企業や一部の私立病院であれば、個人の能力や成果をスコア化し、それを給与や賞与に反映させる「人事考課」が存在します。しかし、当院を含む多くの公的病院は単純な定期昇給のみであるため、そうした意味での人事考課は実質的に存在しません。

一方で、職員への評価は自己・他者の双方で必要です。医療従事者、とくに看護師には医療行為の知識や技術だけでなく、患者さんが自分の状況に向かい合えるための「人としての関わり」が大切です。しかし、これを客観的に評価する軸がありませんでした。

結果として、部署長や同僚の「あの人は仕事ができるよね」といった主観的で根拠に乏しい評価に陥りやすくなってしまいます。
職員が自分の成長を正しく認識し、キャリアを積み上げていく実感が得られないという課題がありました。

Q. そういった課題を解決するために取り組まれたことはありますか?

佐藤様:
私が院長に就任した10年ほど前から、日本看護協会の指針に沿った「キャリアラダー」の整備には力を入れてきました。経験年数の増加に伴う、看護師のマネジメント単位の広がりを示したものと捉えています。

本来、看護師のキャリアとは単なる技術の習得ではなく、1年目、2年目と年次を重ねるごとに、後輩やチーム全体、さらには患者さんを取り巻く環境へと、マネジメントの視野を広げていくプロセスであるべきです。ところが、「責任の重い役職に就きたくないのでラダーレベルは上げない。キャリアには興味がない。」という職員さえ現れました。

キャリアラダーはすべての看護師が自分の立ち位置を意識し、目標を持って自発的に研鑽を積む仕組みとして整備したつもりでした。しかし、実際に運用すると、
「必要な研修にだけ出て認定を受けるだけ」と形骸化してしまい、本質的なキャリア形成にはなかなか繋がりませんでした。また、目標到達度はまず自身で評価し、他者が過大・過小になっていないかを評価する方針としましたが、「評価者は部署長」の流れになってしまいました。

そのため、
自己評価を必須作業としたうえで他者が、その人の良い部分やこれから頑張っていくべき部分をフィードバックし、自身の現在の役割や成長を認識させるためのツールとして、タレントマネジメントシステムの導入を検討しました。

Q. 「HRBrain」を選んだ理由や期待したことを教えてください。

佐藤様:
導入当時、病院という組織で本格的なタレントマネジメントシステムを導入している事例は、ほとんどありませんでした。そのため職員にタレントマネジメントという概念を理解してもらうことからスタートしました。

HRBrainは手厚い伴走支援をしていただけるとのことで、その点は期待をしていましたね。実際、導入から現在に至るまで、長年色々な相談に乗っていただけているので、非常に助かっています。

望月様:
現場の管理視点でも、データの一元化を強く求めていました。

以前は、職員の資格情報や研修参加の実績、キャリアラダーの進捗状況などが、
エクセルや管理者しか見られない別々のシステムにバラバラに保管されており、現場で共有して活用することができていませんでした。これを一つのプラットフォームに統合して見える化し、職員本人が自分のキャリアデータをいつでも振り返り、定期的に棚卸しができる状態にしたかったという背景もあります。

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職員の「心」の変化にいち早く気づく仕組みとは

Q. 導入後、具体的に現場ではどのような運用を行っているのでしょうか。

望月様:
現在、看護部ではHRBrainの「人事評価機能」を活用し、独自の「ゴールシート」という目標管理シートを運用しています。

かつては、部署の目標を達成するために自分が何をすべきかという「役割」に偏った目標設定になりがちでした。しかし現在は、
まず自分が看護師としてどうなりたいか、組織の中でどのような貢献をするのか、という中長期的なビジョンを掲げ、そこから逆算して、「今年1年で何を、どのようなスモールステップで達成するか」を書く形式に改めています。

その人自身のなりたい看護師の姿を基本において、それを目指すならどのようなスキルを身につける必要があるのかを考え、部署長や支援者からアドバイスをもらう。
シートは毎年更新して蓄積されていきますので、経時的にどんな成長をしたのかを本人が振り返ることもできますし、異動した際はその部署の部署長も確認ができます。こうやって院内に在籍している間は継続的に自己学習ができ、そのための支援も受けられるというような形を整えたところです。

渡邊様:
職員が自分の目標や研修の状況をあらかじめシステムに打ち込んでくれることで、面談の前に「この人は今こういうことで悩んでいて、こんな目標を持っているんだな」と事前に把握でき、職員への理解が深まりました。

これにより、限られた面談時間を非常に濃密なものにできています。30人以上の職員を抱える師長にとって、
事前の情報収集を効率化し、優先順位をつけて個別に介入できるようになったメリットは計り知れません。

Q. システム上での「コメント」のやり取りには、どのような効果がありましたか?

佐藤様:
忙しい医療現場では、お互いの予定を合わせて対面での時間を確保すること自体が非常に難しい。しかし、職員が自分の考えをHRBrainのシートに文字にして打ち込み、管理者が都合の良い時間にそれを見てコメントを返すことで、コミュニケーションが可能になります。この文字を通じた対話、つまり言語化することそのものが、主観に頼らない客観的な自己評価やキャリア形成の第一歩になると実感しています。

望月様:
佐藤院長が言っている「文字による対話」の効果は、想像以上でした。

師長がスタッフの入力した内容に対して、「しっかり読んでいるよ」「あなたのこういう頑張りを見ているよ」とコメントを一言返すだけで、反応が大きく変わるスタッフが出始めています。

「見てくれている」という安心感が生まれ、システム上のコミュニケーションが現場の信頼関係の醸成に貢献していると思います。文字にすることで自分の考えを言語化するプロセスそのものが、職員一人ひとりの内省と成長を促していると感じます。

Q. 「パルスサーベイ」の活用について、月一回の簡易アンケートを、どのように離職防止や組織改善につなげているのでしょうか。

小林様:
パルスサーベイは、当初はシステムにログインする抵抗感をなくし、職員に定着させるきっかけとして導入した側面もありましたが、今では職員の「心のバイタルチェック」として機能しています。

私たちの運用では、
パルスサーベイの結果に「急落」のサインが出たり、特定のストレス項目が数ヶ月間高いままだったりする職員を「優先介入対象」としています。

望月様:
師長会では、単に数値を見るだけでなく、「なぜスコアが落ちているのか」、業務状況や職場環境等の情報も共有します。ある時、スタッフ本人から師長に対して「実は業務の中でストレスを感じたことがあって、ちょうどその日に回答したからスコアが落ちていたんです。だから気にしないでください」といったように、自発的に背景を話してくれる関係性が生まれるようになりました。

重要なのは、サーベイの結果をきっかけに「最近どう?大丈夫?」と声をかける、そのスピード感です。あらたまった面談場面を設定しなくても、立ち話程度の声かけで「実は…」と本音を吐き出せる機会が生まれています。必要に応じて、当院に設置されているカウンセリング窓口「こころの保健室」へ迅速に繋ぐことができたケースもあります。

離職者のデータも蓄積できるようになってきており、離職する数ヶ月前からスコアが落ちていたり自由記述欄のコメントが辛辣な表現になっていたりと、傾向を掴み始めています。このような
職員のコンディションの変化を早期に察知できるように、パルスサーベイを役立てていきたいと考えています。

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Q. 佐藤院長は、パルスサーベイを「離職防止」という文脈で語ることについて、独自の考えをお持ちだそうですね。

佐藤様:
はい。多くの組織では「離職を食い止めるため」にこうしたツールを使おうとしますが、私はあえて「離職防止を前面に出すべきではない」と言っています。経営層や管理者が離職率という数字ばかりを追ってしまうと、現場に「辞めさせないための管理」を強いることになり、本質を見失いますから。

目的はあくまで、職員がメンタル面も含めて「健全に業務を続けられる状態」をどう守るかです。早期に介入し、不満や悩みのポイントを探し出し、適切なケアを行う。その結果として「辞めずに済んだ」という結果が付いてくるだけです。パルスサーベイは、離職という「手遅れ」の状態になる前に、その前兆をキャッチするためのセンサーであるべきだと思っています。

相互育成の文化を広げ、「対話を大切にする組織」へ

Q. 今後の展望として、さらにどのような活用をイメージされていますか?

望月様:
看護部では現在、「他者の目標を知る」取り組みを強化したいと思っています。今はプロフィール公開を始めた段階ですが、今後はチームリーダーや2年目看護師など、メンバーそれぞれが掲げる目標をチーム内で共有できれば良いと考えと考えています。同じ立場の仲間が何に挑戦しているのか、憧れの先輩がどんな研鑽を積んでいるのかが分かれば、互いに刺激になり、助け合いながら成長する「相互育成」の循環が生まれます。職員一人ひとりが目指す「なりたい看護師像」を尊重し合える組織を目指しています。

多忙な現場だからこそ、価値観や目標を短時間で見える化し共有できるタレントマネジメントシステムを活用し、コミュニケーションの活性化とチーム力向上につなげたいと考えているところです。

佐藤様:
現在は看護部を中心に先行導入していますが、今後は事務職を含めた多くの職種に展開したいと考えています。実は、病院組織において最もタレントマネジメントが必要なのは、医師でも看護師でもなく、事務職かもしれません。

医師は専門医の資格取得など、放っておいても自分でキャリアを磨いていきますが、事務職には国家資格のような明確な指標がありません。だからこそ、
システムを使って「職員一人ひとりがこの1年で何を学び、どんなスキルを身につけたか」を可視化してあげることが、みなさんの存在価値とやりがいを守ることに直結すると考えています。

Q. 最後に、IT化や組織改善に悩まれている他の医療機関や企業の担当者の方へ、メッセージをお願いします。

佐藤様:
システムというのは、あくまで「ツール」です。「自分たちはこのツールを使って、職員にどんな変化を起こしたいのか」という強い意志と目的意識がなければ、効果が得られないどころか、ただの出費になります。

私たちは、
単なる事務の効率化ではなく、「職員一人ひとりの成長を、対話を通じて、温かみを持って支えたい」という目的のためにHRBrainを選びました。最初は抵抗感を持つ職員もいるかもしれませんが、使い始めれば「こういうことをやってみよう、こんな工夫もできる」と、活用のアイディアは現場から湧いてくるはずですし、そうなる努力が必要です。

HRBrainに伴走支援してもらいながら、私たちが目指したい姿に向かってツールの使い方を探っていく。その試行錯誤のプロセスこそが、組織をアップデートするエネルギーそのものになっていくと思います。

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※掲載内容は、取材当時の2026年4月時点のものです。

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※2026年4月時点