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相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること

相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること

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目次

    人事が従業員を評価する方法には、『相対評価』と『絶対評価』の2種類があります。それぞれの評価方法のメリット、デメリット、使い分けや運用方法について考えてみてください。適切な評価をするための考え方も確認しておきましょう。

    相対評価とは

    日本は従来、この『相対評価』という評価方法を様々な場面で使っていました。まずは相対評価の概要や使用シーンについて解説します。

    相対的な位置や割合を手掛かりとして評価

    相対評価とは、他者との比較によって成績を決めるという評価方法です。

    例えば、Aランクが10人、Bランクが20人、Cランクが30人、とあらかじめ評価の枠を決めておき、そこに当てはめる形で従業員の成績を決定します。

    スポーツの選考において相対評価をする際、「上位○人までが予選通過」という決め方をします。

    従来の日本では、この相対評価方式がよく使われていました。

    学校での例

    学校現場においては、学力評価は5段階で、5が10%、4が20%、3が40%、2が20%、1が10%とあらかじめ決めておき、生徒の成績順に応じてそれを当てはめるという評価方法です。

    また、外部受験などで利用する偏差値についても、この相対評価の考え方がベースとなっています。

    2002年のゆとり教育から絶対評価が導入されましたが、それまでは日本の学校の多くはこの相対評価を評定に利用していました。

    会社での例

    相対評価は企業で使用されることもよくあります。チーム内の従業員の成績のみの比較で評価する方法と、平均成績を基準としてグループへの貢献度によって評価する方法の2通りがあります。

    会社で相対評価が用いられるのは、人件費を予算内に納めることができるという大きなメリットがあるからです。グループ全員が好成績を収めたとしても、順位付けによって成績が決まるため、予算を大きくオーバーすることはありません。

    相対評価のメリット

    今では絶対評価に切り替えている企業が多くなってきていますが、従来の相対評価にも良さはあります。相対評価には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

    評価者が評価しやすい

    第1のメリットは、評価をつける作業が楽だという点です。集団の中でメンバー同士を比較し、順位を割り振るので、検証の時間も必要ないでしょう。

    明確な評価基準を設ける必要もないので、導入に時間がかからないのもメリットと言えます。

    特に上司が部下の目標設定や管理などのマネジメントまで業務としている場合、全員分の評価をつける作業は重いタスクになりがちなので、作業負荷を減らすことができる相対評価は強い味方です。

    評価者の影響が少ない

    評価者の影響が少ないのもメリットです。特に評価基準が設けにくいコンサルティングやシステム運営などの作業においては、評価者が甘い場合と厳しい場合で、同じ人に対しての評価が大きく変わることも考えられます。

    相対評価はその点、順位をつけるだけなので評価者の価値基準が全体に影響を及ぼすことが少なくなるのです。加えていえば、景気などの外因による影響が小さくなります。

    競争の活発化と不均衡の防止

    企業内やチーム内で順位付けがされるため、従業員に競争意識が芽生えます。成績を自ずと競うようになり、より良い成績を収めようと努力するようになるのです。

    そのため、管理者がコーチングなどを積極的に行わずとも、モチベーションやスキルアップを自発的に行うようになります。切磋琢磨する空気が浸透しやすくなるのもメリットと言えそうです。

    そして、評価が高評価・低評価のどちらかに偏ってしまう不均衡を防止することもできます。

    実例で言うと、富士通が年功序列を廃止しようとした際に、管理職者が高評価の社員を抱えこむため、意図的に評価を甘くつけていったことで大きな問題が起きたといわれています。相対主義を活用すれば、このようなケースを防ぐことができます。

    相対評価のデメリット

    いいことばかりではありません。相対評価にもデメリットがあります。近年、絶対評価に切り替える企業や団体が多くなった理由について知っておきましょう。

    適正な評価ができなくなる

    例えば、相対評価によって優秀とされていたある生徒が、別の学校に転校した際に、評価が中位から下位になってしまう、といったケースはよくあります。

    相対評価は、あくまで 評価範囲内の順位付けによって決まります。そのため、チーム内で優秀だった者が別の部署に異動した際に能力が圧倒的に足りていない、ということになりかねません。

    そのため、人事異動などがスムーズに行えなくなる可能性が出てくるのです。

    また、同じ程度の能力を持っている社員同士であっても順位付けをしなければならず、評価の理由を聞かれた時に答えにくくなるというケースが発生します。

    特に少人数のチームの中では中間値がブレやすく、評価が適正でなくなる可能性があるのです。

    個人の成長などを汲み上げにくい

    相対的な評価であるため、個人の成長が評価に反映されにくいのもデメリットと言えるでしょう。

    個人がスキルアップや成績をあげたとしても、周囲も同様に成績があがってしまえば、逆に評価が下がるケースもあり得ます。そうなるとモチベーションの著しい低下や、企業に対する不満が発生してしまうかもしれません。

    加えて、全体の評価とチーム内評価が乖離してしまう可能性があります。実は優秀な能力があったとしても、チームの能力が高いと評価が低くなってしまうので、適正な評価に結びつかないこともあり得るのです。

    一体感に欠ける可能性

    チーム内で競争意識を誘発するのはメリットでもありますが、同時にデメリットにもなり得ます。自分の評価を上げるために「周りの足を引っ張る」という選択が成り立ってしまうからです。

    競争意識が煽られすぎた結果、チーム内の適切な情報共有がなされない、アイディアがあっても提示しないといった、チームよりも個人を優先する体制が生まれやすくなる可能性があります。

    絶対評価とは

    続いては絶対評価の概要や学校や会社での使用例について確認しましょう。

    予め決めておいた評価基準に則って評価

    絶対評価とは、あらかじめ決めておいたノルマや数値を達成できたかどうかによって、評価を決定する評価方法です。

    この評価方法は、評価対象者1人1人に対して客観的な評価を下すことができます。個人のスキルやキャリア、実績に基づいた評価ができるので、組織内の適正な評価にもつなげやすいのが特徴です。

    日本は年功序列制をメインとしていた頃は相対評価が主流でしたが、成果主義の導入などによって絶対評価に切り替えている企業も多く現れています。

    学校での例

    2000年頃のゆとり教育の導入によって、学校教育の場でも絶対評価が導入され始めました。これによって生徒一人一人の学習能力に応じた学習方法や課題の提示、指導ができるようになったのは大きな変化です。

    かつては、点数があがっても、同じように周囲が点数が上がれば成績に反映されることがなかったので、子どもの学習意欲が削がれていた可能性があります。絶対評価に変わったのは教育上大きなメリットがあったのではないでしょうか。

    ただし、絶対評価の評価基準はあくまで学校内限定です。学校が変わるとテストの難易度も評価基準も変わってくるため、他の学校に移ると評価が変わってしまうこともあります。

    会社での例

    年功序列制の廃止に伴い、近年、絶対評価を導入している企業は増えています。絶対評価によって、従業員の規模や他者の成績とは無関係に評価されることにもなるので、モチベーションやスキルアップに繋がりやすいという面もあります。

    しかしながら、人件費の拡大や偏った評価になりやすいなどといった、絶対評価の導入によってかえって組織の雰囲気が悪くなった例も多く、導入には慎重を期さなければなりません。

    成功している会社の例を見ると、業績や数字のみだけではなく、能力や景気、部署ごとの成績を鑑みるなど、相対評価と組み合わせているケースも多いようです。

    絶対評価のメリット

    絶対評価を導入する際には、次の特性を考慮した上での評価制度を作ると良いでしょう。

    納得を得やすい

    相対評価の場合は、成績があがったとしても、他の人の成績もあがれば評価が下がります。しかし、絶対評価の場合、具体的な評価を得るための基準が決まっているため、評価をされた側が納得しやすい評価理由を提示することができるのです。

    相対評価とは違い、理由を問われた時にも「この部分は優れていたが、この部分が至らない」というように明確に説明出来るため、評価の透明度をあげることにもつながります。

    相対評価の内容が不透明だったこともあって、絶対評価に切り替えるべきだという意見も増えているのです。

    個人の成長を汲み上げやすい

    評価基準が大きく変動することは基本的にないので、評価対象者が成長すれば、その分評価があがることになります。個人の成長がそのまま評価に反映されやすいのは、従業員にとって仕事をがんばる理由になるでしょう。

    また組織としては、社内全体を通してどの部署や従業員が成長しているかなどの成長率や成績のデータを相対評価よりも分析しやすくなり、人事異動などの参考にできます。

    課題が分かりやすい

    評価基準が明確なので、次に何をすべきか対象者の課題や目標が見えやすいのがメリットです。これは、OKRやMBOなど、目標管理に主軸を置く現在の日本企業の評価制度と非常に相性が良いと言えます。

    上司が部下にヒアリングをする際にも明確に課題についてアドバイスできるため、従業員の成長速度も向上することが見込めるでしょう。

    また、企業全体の施策としても、従業員全体を見て足りない要素を発見しやすく、新しい制度や体制を作るための一助にもなります。

    絶対評価のデメリット

    一方、絶対評価だけに頼りすぎるのも危険です。多くの企業が成果主義の導入や組織作りに失敗しているからです。なぜ、絶対評価のみに頼ると問題が発生するのでしょうか?

    全体のバランスを欠きやすい

    極端な話、評価対象者全員が評価基準を達成してしまえば、全員が最高評価になり得ます。そうなると評価としての機能を失ってしまうでしょう。

    また評価によって給与を決定する場合、人件費の予算の予測が立てづらいのもデメリットです。全員が高評価を得ればその分人件費や報酬が膨らんでしまいます。

    加えて従業員一人一人を細かく評価していくシステムのため、全体評価にまでリソースを割く余裕がありません。全体から見るとバランスを欠きやすいのも欠点と言えます。

    評価者に左右されやすい

    絶対評価は評価者によって評価が揺れやすいのが欠点です。達成目標が売上額や成約数などの目に見えるものなら良いですが、そうでない評価の場合は、評価者の観念が基準となってしまいます。

    例えば勤務態度やコミュニケーション能力などは、明確に数値として示せるものではありません。そうなると評価者に左右されるので、評価者が変わるたびに、同じ仕事をしていてもまったく異なる評価をされてしまうことがあり得るのです。

    評価者の傾向をどのように補整して平均値にすりあわせていくかが、絶対評価において大きな課題と言えます。

    評価基準の設定が難しい場合がある

    そもそも評価基準をどう設けるかが難しいところです。簡単すぎて誰でも達成できてしまう基準では意味がありませんし、難しすぎても評価基準としては不適切です。

    平均的な評価に多くの人が集まるよう、適切な評価基準を設定する必要があります。

    また、評価基準を設定するためには過去のデータの分析や、現在の社員の実力を考慮するための、データやさまざまな基準による判断が必要です。この作業を誰にいつやらせるのかが、組織として大きな課題でしょう。

    評価基準には人事部や経営社が何らかの形で携わるのは間違いありません。しかし、評価対象者の仕事を知らない第三者がデータだけを見て決定すると、評価基準の全てが目に見える数値だけになってしまうため、健全とは言えません。

    評価基準の決定と、その作業を誰が行うのか、そして作業者は評価基準を決められるだけの知識や現場について把握しているといったスキルが求められるため、非常に難しい作業になってしまうのです。

    人事で求められる評価

    人事制度は、組織形成における根幹とも言える制度です。人事制度は組織運営にとって何が求められるのかを解説します。

    人事制度の基本

    人事制度とは、人材の募集や採用、賃金、人事異動や昇給、教育などの人材に関わるあらるゆ施策を扱う制度のことです。

    人事制度は基本的に『等級制度』『人事評価制度』『報酬制度』の三つによって成り立っています。社員の持つ能力や成績を査定する人事評価を行い、評価から等級を決定し、そして等級に沿った報酬を決定します。

    その他には、福利厚生や教育制度、労務管理も人事制度に含まれるものです。

    納得感が重要

    評価基準は業績や経済状況によっても見直しを図らなければなりません。絶対的な評価基準ではありませんし、取引先の経営状況や日本の経済状況などの外的要因によっても評価が左右されることがあります。

    複雑な要因が絡み合ってくるため、すべての従業員に納得してもらう評価制度の作成はそもそも不可能と言えます。

    重要なのは、精度の高い評価基準を作ることではなく、作成した評価基準でいかに従業員から納得が得られるかです。

    そのためにやるべきことは、上司によるマネジメントや第三者による監視、評価対象者に自身の課題や目標を自覚してもらうためのマネジメントです。

    評価制度に納得してもらうための体制を築くことが、評価制度を成功させるためのポイントになります。

    柔軟な評価制度を設ける

    絶対評価と相対評価、どちらか一方が優れているというわけではありません。絶対評価を採用する企業が多いのも、現状の日本の経済状況や社会と相性がいいというだけです。

    そのため、どちらか一方を採用するより、柔軟に両方を取り入れていきましょう。

    すでに行われている試みとしては、営業など評価基準がわかりやすい業種には絶対評価を、システム課や法務課など数値の見えにくい業種は相対評価にするといったハイブリッドな制度を設けている会社もあります。

    環境や業種に合わせた評価制度の導入が重要です。

    特徴を理解して評価を

    かつては相対評価が主流だった日本社会ですが、めまぐるしい経済状況の変化やグローバルな働き方に対応するために、絶対評価を取り入れている企業が増えてきました。

    だからといって絶対評価の方が優れているというわけではありません。それぞれの評価制度の特徴を理解した上で、業種や役職によって評価制度を使い分けることが大切です。

    一つの評価制度にこだわらずに、最適な評価方法を検証することが、信頼性の高い評価制度の制定へとつながります。

    HR大学 編集部

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