#人材育成
2024/03/05

キャリアラダーとは?キャリア育成に活用するための注意点などを解説

目次

    近年、従業員のキャリアの構築や評価において、キャリアラダーの導入が有効と言われています。

    それでは、キャリアラダーとはどのようなものなのでしょうか。

    また、キャリアラダーの導入には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

    この記事では、キャリアラダーの概要や導入の流れ、活用する際の注意点などについて解説します。

    従業員の目標管理やスキル管理を効率化

    キャリアラダーとは

    キャリアラダーとは、「経歴」の意味を持つキャリアと、「はしご」の意味を持つラダーという単語を組み合わせた言葉です。

    キャリアラダーとは、従業員がひとつひとつステップを踏みながらキャリアを重ねていくためのキャリア開発制度のことをいいます。

    「はしご」、つまりひとつひとつのキャリアステップには、具体的な業務内容やそれに必要なスキル、目標などが設定されていて、設定された目標を達成すると次のステップに進める仕組みになっています。

    キャリアラダーの考え方は、1980年代のアメリカで生まれました。

    当時のアメリカでは、新自由主義の台頭によって、富裕層と低賃金層との二極化が進んでいました。

    新自由主義とは、政府の市場介入を最小限にし、民営化や規制緩和によって競争を促すべきとする考え方です。

    このような風潮の中で、極端に少なくなった中間層がスキルを持ち、労働者層全体が底上げされていくための仕組みとして生まれたのがキャリアラダーです。

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    キャリアパスとの違いとは

    キャリアラダーと意味が似た言葉に、「キャリアパス」があります。

    「キャリアパス」は、キャリアラダーとどう異なるのでしょうか。

    パスという単語に「道」という意味がある通り、キャリアパスとは、企業内で昇進する際のルート、つまりキャリアの道筋のことをいいます。

    キャリアラダーは、専門性が高い一つの職種で活用されるのに対し、キャリアパスは職種の変更や部署間の異動があっても影響しない点が特徴です。

    クリニカルラダーとの違いとは

    キャリアラダーと似た意味の言葉には、「クリニカルラダー」もあります。

    「クリニカルラダー」は、キャリアラダーとどう異なるのでしょうか。

    クリニカルという単語には、「病床の」「臨床の」という意味があります。

    クリニカルラダーは、段階的な評価基準を定め、看護師の自己学習の促進や人材育成に役立てるものです。

    段階的に評価するという点はキャリアラダーと共通していますが、クリニカルラダーは看護師の評価に特化している点が大きな特徴です。

    キャリアラダーを導入するメリットとは

    キャリアラダーは、従業員ひとりひとりが明確なキャリアビジョンを描き、ステップを踏みながら着実に成長していくために役立つものです。

    それでは、キャリアラダーを導入すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

    以下で3点に分けて説明します。

    キャリアラダーを導入するメリット

    • キャリアステップが明確になる

    • キャリアアップの客観性や公平性を保てる

    • 従業員のモチベーション向上につながる

    キャリアステップが明確になる

    キャリアラダーでは、業務における各ステップが、スキルや習熟度別に細分化されます。

    そのように、業務についての能力別のステップが明示されると、従業員にとって目指すべき目標が明確になると考えられます。

    同時に、現在の自分に何が不足しているのかについても把握できるでしょう。

    今後、どのような経験やスキルを習得すればキャリアアップしていけるのか、将来的なキャリアステップを見通すことができる点は、キャリアラダーの大きなメリットといえます。

    キャリアアップの客観性や公平性を保てる

    キャリアアップには、上司からの評価や、評価による昇進が伴います。

    しかし、評価や昇進に関する基準が明確ではない場合、自身や同僚などへの評価に納得感が得られない場合もあると考えられます。

    キャリアラダーにより、キャリアアップのための基準が明示されていれば、どのようなスキルでどのような評価を得られるかが明確になるでしょう。

    キャリアラダーでは、所定の基準をクリアしていないと次の段階に進めないため、評価者によって評価にばらつきが出ることも防げると考えられます。

    明確な指標があることにより、客観的で公平なキャリアアップが可能になる点は、キャリアラダーを導入する大きなメリットの一つといえるでしょう。

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    従業員のモチベーション向上につながる

    上で述べた通り、キャリアラダーを導入すると、キャリアアップするためには自分にどのようなスキルや経験が必要なのかを把握することができます。

    また、評価基準が明示されることによって、自身や同僚への評価内容に納得感を得やすくなるでしょう。

    このようにステップアップへの道筋が示されると、従業員が自主的に能力開発に取り組むなど、モチベーションが向上することが期待できます。

    この点は、キャリアラダーを導入する大きなメリットの一つといえるでしょう。

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    キャリアラダーを導入するデメリットとは

    キャリアラダーを導入すると、キャリアステップが明確になる、人事評価の公平性を保てるなど、多くのメリットがあります。

    それでは逆に、キャリアラダーを導入するデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

    主に以下の2点が挙げられます。

    キャリアラダーを導入するデメリット

    • 導入に時間と手間がかかる

    • 職種によっては導入が難しい

    導入に時間と手間がかかる

    キャリアラダーを導入する際は、職種別にキャリアステップを設定する、人事評価制度を整えるなど、決めなければいけない項目や整備するべき制度が多くあります。

    それらの項目や制度の詳細は、人事部だけでは決めることができません。

    業務内容や各部署の実情に則した制度を作るためには、現場の従業員にヒアリングしたり助言を得たりしながら決める必要があります。

    自社内の部署や職種の数が多いほど、キャリアステップの設定や人事制度の整備に多くの時間と工数がかかるでしょう。

    導入の準備に多くの時間や手間が必要な点は、キャリアラダーの大きなデメリットの一つといえます。

    職種によっては導入が難しい

    キャリアラダーの導入に向いているのは、一般的に専門性が高く、部署間の異動が少ない職種といわれています。

    キャリアラダーが、看護師などの医療業界の職種で特に活用されているのは、この理由による所が大きいと考えられます。

    一方で、キャリアラダーの導入が難しい職種もあります。

    キャリアラダーに不向きな具体的な職種には、以下のようなものがあります。

    • 総合職

    • 総務

    総合職は、部門間や部署間での異動が比較的多く、一つの部署で長期にわたって専門性を高めることが難しいことから、キャリアラダーの導入に向いていないと考えられます。

    また、総務は社内のあらゆる場面でオールマイティーに対応する機会が多い反面、専門性が高い業務を行う機会は少ない場合が多く、キャリアラダーの導入に向いていないと考えられます。

    総合職や総務などの職種でも、キャリアラダーを導入することはもちろん可能です。

    しかし、他の専門性が高い職種と比較すると、有用なキャリアラダーを構築する難易度が高くなるといえます。

    キャリアラダーを導入する流れとは

    キャリアラダーは、従業員のキャリアステップを明確にし、モチベーションを向上させるなど、多くのメリットがある制度です。

    それでは、自社でキャリアラダーを活用したいと考えた場合、どのような流れで導入すると良いのでしょうか。

    以下で5つの段階に分けて説明します。

    キャリアラダーを導入する流れ

    • キャリアステップを構築する

    • 評価システムを整備する

    • キャリア研修を実施する

    • マネジメントや面談の場で活用する

    • 効果を検証する

    キャリアステップを構築する

    まずは、自社でキャリアアップするためにはどのように段階を踏んでいくべきかを、従業員に対して明確にする必要があります。

    そこで、各職種におけるキャリアステップの構築を行います。

    最初に、各職種ごとに必要なスキルや経験を、漏れや重複がないように留意しながら洗い出します。

    次に、洗い出した項目をキャリアアップの流れに沿うよう、適切な順序に並べ替えましょう。

    最後に、並べ替えたすべての項目を各段階に分け、まとまりごとに階層化を行います。

    この階層は、非正規雇用からその職種の最上の職位まで、途切れず続くようにしましょう。

    評価システムを整備する

    次に、人事評価を行うシステムを整備する必要があります。

    評価システムは、キャリアステップと連動するものである必要があります。

    キャリアステップが進んだのに、評価が上がっていないということになると、従業員に不満感が生まれるためです。

    一方で、キャリアステップや人事評価システムには現れない、従業員の普段の様子を見落とさないことも大切です。

    丁寧な電話対応を行っている、後輩社員に積極的に声かけをしているなど、毎日職場で共に過ごすからこそ気づける点が、それにあたります。

    スキルや知識などで判断できないこれらの要素については、上司などの管理者が日々の従業員ひとりひとりの様子を十分に観察することが重要です。

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    キャリア研修を実施する

    キャリアステップの構築や人事評価システムの整備ができたら、キャリアラダーの土台ができあがりつつある状態といえます。

    次は、職位などのそれぞれの単位において、キャリア研修を実施すると良いでしょう。

    キャリア研修は、従業員ひとりひとりが現在の自身のキャリアを見つめ直し、次のキャリアステップに進みたいという意欲を持てるものであることが理想的です。

    そのためにはまず、キャリア研修を行うのに適切な指導者を選ぶことが大切です。

    セミナーなどでの講師経験者や実務経験者など、自社の実務に精通していて、説得力がある人を選ぶと良いでしょう。

    また、キャリア研修に参加はしたものの、研修内容についていけない従業員がいることも考えられます。

    そのような場合でも、従業員が研修への参加を辞めてしまったりキャリアアップを諦めてしまったりしないように、各種のサポート体制を整えることが重要です。

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    マネジメントや面談の場で活用する

    キャリアラダーを導入した効果は、キャリアステップに基づいた従業員の成長を支援することができて、初めて得られるものです。

    そのため、各部署の管理者層は、従業員ひとりひとりのキャリアステップを意識しながら日々のマネジメントを行うことが大切です。

    また、キャリアラダーは評価面談や1on1ミーティングなどの場でも活用できます。

    管理者は、従業員の現在のキャリアステップを踏まえた上で、次のステップに進むために身につけるべきスキルなどについて助言すると良いでしょう。

    普段の業務におけるフィードバックに加えて、キャリアラダーに基づいた具体的な助言を得られることにより、従業員ひとりひとりが自身の改善点や必要なスキルを総合的に認識できると考えられます。

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    効果を検証する

    キャリアラダーは一度導入すれば終わりというものではなく、何度も運用と検証を繰り返して、より良いものへとブラッシュアップしていくことが大切です。

    そのため、キャリアラダーの導入から一定の期間が経過したら、その効果を検証します。

    検証の際は、下記のような項目をチェックすると良いでしょう。

    • 導入したキャリアラダーは、やりづらい点や分かりづらい点などなくスムーズに運用できているか

    • 設定したキャリアステップは、自社の実情に合ったものだったか

    • キャリアラダーは、自社の人材育成に役立っているか

    思ったような効果が得られていない、当初の目標達成に貢献できていないと感じる項目がある場合は、その原因を追求します。

    そして、どうすればその状態を改善できるか、対応方法を考えましょう。

    キャリアラダー導入時の注意点とは

    キャリアラダーは、導入に多くの時間や手間がかかりますが、それ以上のメリットがあるものです。

    それでは、キャリアラダーを導入する際に注意するべき点には、どのようなものがあるのでしょうか。

    以下で3点に分けて説明します。

    キャリアラダー導入時の注意点

    • 導入する目的を明確にする

    • 評価のハードルを上げすぎない

    • 内容を頻繁に変更しない

    導入する目的を明確にする

    キャリアラダーを導入する際は、キャリアラダーによって最終的に何を達成したいのか、目的を明確にしておくことが大切です。

    目的のない状態でキャリアステップの構築や評価制度の整備を行っても、一貫性のない仕組みになってしまう可能性があります。

    自社に足りない点や、今後強化していきたい点を整理し、それを踏まえてキャリアラダーを導入しましょう。

    たとえば、自社には営業力が足りないと感じる場合は、営業系の職種に関しては特に、営業スキルを磨けるような項目での階層化を行うことが有効と考えられます。

    評価のハードルを上げすぎない

    キャリアラダーを導入する際は、次のキャリアステップに進むためのハードルを高くしすぎないことが重要です。

    従業員に早くスキルや経験を身につけ、成長してもらうためには、ハードルを高めに設定したくなる場合もあるでしょう。

    しかし、次のステップに進むためのハードルがあまりにも高いと、従業員のモチベーションが低下してしまう可能性があります。

    モチベーションが低下した結果、キャリアアップはほどほどに、現状維持で良いと考える従業員もいるでしょう。

    そのような流れを避けるためにも、キャリアステップ間のレベルの差を大きくしすぎないよう、留意することが大切です。

    内容を頻繁に変更しない

    キャリアステップの項目や人事評価制度の内容を決定した後は、内容を頻繁に変更しないように留意しましょう。

    キャリアステップに関して変更を行うと、変更内容によっては、従業員が目指すべき目標が変わる場合があります。

    目標が変わるということは、習得するべきスキルや経験も変わる可能性があります。

    そのため、あまり頻繁にキャリアラダーの内容を変更すると、従業員が一貫したスキルアップを行いづらくなると考えられます。

    そのことにより、従業員のキャリアアップへの意欲が削がれるといった状況は避けたいものです。

    また、上司などの指導者層にとっても、キャリアラダーの内容の変更は、指導方法の変更などの負担が生じます。

    このように、キャリアラダーの内容の変更は、従業員の成長を止めることにつながりかねません。

    本当に必要な場合を除いては、キャリアステップに関する内容は、頻繁に変更しないよう留意することが大切です。

    キャリアラダーの導入をより効果的に

    キャリアラダーとは、従業員が段階的に成長していくためのキャリアアップの仕組みです。

    キャリアラダーを導入すると、従業員ひとりひとりが次に目指すべき目標が明確になる、キャリアアップや人事評価に関する公平性が高まるなど、多くのメリットがあります。

    一方で、キャリアラダーは目的を明確にした上で導入しなければ、そのメリットを十分に発揮することができません。

    また、従業員がキャリアアップへのモチベーションを維持するためには、キャリアステップのハードルを上げすぎないこと、内容を頻繁に変更しないことなどに留意することが大切です。

    加えて、キャリアラダーを導入する際には、従業員の目標管理や自社の人事評価に合わせて検討することが重要になってきます。

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