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キャリアデザインシートの書き方やプロセスを解説!NG例も紹介

キャリアデザインシートの書き方やプロセスを解説!NG例も紹介

目次

    本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。

    「キャリアデザインシート」とは、キャリアデザインの考えをまとめ可視化するためのツールです。キャリアにおける「過去・現在・未来・課題」を書き出すことで、自分と向き合いながら具体的な目標設定ができます。

    キャリアデザインシートは近年、学校や企業でも取り入れられていますが、最近ではメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手が取り入れていたことでも知られています。大谷選手が高校1年生のときに作成した「
    マンダラチャート」も、今回紹介するキャリアデザインシートのひとつです。最終的な目標を「8球団からドラフト1位指名」と設定し、そのために必要なものを8つに分けてさらに細分化、64個の小さな目標を立てていました。

    キャリアデザインシートはスポーツ選手だけでなく、社会人にも有効です。最終的な生き方や働き方を定め、達成するための目標を設けることでキャリアや人生への漠然とした不安を取り除けます。また、企業がキャリアデザインを取り入れることで、従業員の育成や人材採用にも効果を発揮します。

    そもそもキャリアデザインとは何か

    「キャリアデザイン」とは、将来どのような仕事をしてどのような働き方・生き方がしたいかを考えることです。しかし、ただ漠然と未来を見据えるだけではありません。自分が培ってきた経験やスキルを振り返り、現在地を理解したうえで数年後・十数年後の自分を具体的に考えます。

    これまでの日本では、新卒で入社した会社に一生を捧げる「終身雇用」が当たり前の時代でした。時代の変化とともに働き方や仕事に対する価値観・考え方が大きく変わったことにより、仕事における選択肢が広がりました。自由なキャリア選択が可能になったため、今後は将来を見据えた主体的かつ具体的なキャリアデザインが必須となりつつあります。

    キャリアデザインの重要性

    キャリアデザインをおこなわなくとも働き続けることは可能です。終身雇用の時代は年功序列制が一般的で、会社での出世ルートはある程度決まっていました。現代でも年功序列制が残る会社は多く存在します。また、年功序列制がない会社であろうと、日々の業務をこなしていれば基本的に働き続けられるでしょう。

    与えられた業務を淡々とこなせることもひとつのスキルといえますが、この先何十年と働き続けることを考えるとどうでしょうか。人生100年時代といわれる今、自分で自分を成長させなければいつか時代の流れに追いつけない日が訪れるかもしれません。

    また、企業にとっても従業員のキャリアデザインにはメリットがあります。キャリアデザインは自分の得意不得意や能力を把握できるため、自分に求められているものやとるべき行動を理解できます。目標ができると、そこに向かうための努力ができ、前向きな気持ちで業務に取り組めます。また、不足しているスキルや経験を積極的に補おうとする意識も芽生えるため、主体的な業務遂行に期待できるといえます。従業員のモチベーション向上も期待できるほか、主体的に行動できる従業員が増えることで、企業全体のの生産性アップにもつながります。キャリアデザイン支援は従業員だけではなく、企業側にも意味のあるものといえるでしょう。

    キャリアパスとは違う?

    キャリアデザインに似た用語にキャリアパスがあります。「キャリアパス(career path)」の「path」には、道・経路といった意味があるため、キャリアを実現するための道といった意味合いになります。キャリアデザインは個人が主体的にキャリアをプランニングする一方で、キャリアパスの主体はあくまで企業です。会社に存在するさまざまなポジションや部署に就くための経路を用意することが、キャリアパスに該当します。たとえば、あるポジションに就くために必要な社内検定を設けたり、必須スキルや実績・経験を明示したりといったことです。また、キャリアパスのことを「キャリアステップ」と呼ぶ企業もあります。

    キャリアデザインはキャリアプランとも似ていますが、キャリアプランはキャリアに特化した目標や計画を立てるのが特徴です。一方でキャリアデザインは、結婚や子育てといったライフイベントも含めながら総合的な計画を立てるという違いがあります。

    キャリアデザインを実施する方法について

    キャリアデザインを従業員に実施させたい、あるいは自主的にキャリアデザインに取り組みたいものの、どう取り組むべきかわからないと悩む方も多いでしょう。キャリアデザインのプロセスは、大きく分けて以下の4つがあります。

    • これまでの人生を見つめ直す
    • 理想像を明確にする
    • 現状を把握・整理する
    • 目標を計画・整理する

    それぞれのプロセスについて解説しましょう。

    これまでの人生を見つめ直す

    ただ闇雲にこれからのことを考えても、その内容は現実的なものにはなりません。まずはこれまで自身が歩んできたことを振り返りましょう。まずは社会人になってから経験したこと、獲得した資格やスキルなど自分の持っている能力を書き出してみてください。やりがいを持って取り組めた仕事と、反対に自分には向いていないと感じた仕事も洗い出します。また、得意ではあるものの好きではない仕事、得意とはいえないまでも好きな仕事なども振り返りましょう。これまでの経験を通じた自分の適正を理解できることで、どのような働き方がしたいかが明確になります。

    理想像を明確にする

    次に、将来の理想像を明確にします。すでにやりたいことが明確であればスムーズですが、明確ではない人もいるかもしれません。将来なにがしたいのか明確ではないという場合は、「どう生きたいか・どんな暮らしがしたいか」と、ライフプランから考えてみるのもひとつの手です。たとえば、都会を離れ地方に暮らしたい、在宅で仕事をしながら家族との時間を大切にしたいといったことです。

    また、ロールモデルを探すのもよいでしょう。憧れの先輩や上司、有名人のキャリアを参考にして自分の理想像を明確にしましょう。特に二十代、三十代の場合はさまざまなライフイベントを控えているため、仕事も家庭も両立しているロールモデルを見つけられるとモチベーションも高まります。また、憧れの上司などに話を聞いてみるのもおすすめです。

    現状を把握・整理する

    ゴールが定まったら、自分のキャリア的現在地を確認します。現在のポジションやおこなっている業務と将来の理想像を比較しましょう。現在地の確認と将来像を比較することで、理想を叶えるために足りないものや課題が見えてきます。たとえば、最終的な理想が「海外で働くこと」であれば、海外で働くために必要な英語力や、海外転勤に必須の資格・経験が不足している場合などが該当します。また「在宅で働くこと」を理想とする場合は、完全リモートワークが可能な職種を考えたうえで、自分自身の現状を見つめ直して身につけるべきスキルなどを洗い出しましょう。

    目標を計画・整理する

    現在地とゴールを明確にできたら、あとはゴールまでの道のりを考えるのみです。ゴールについて考えるプロセスが、キャリアデザインでもっとも重要です。キャリアデザインは、職業人生を具体的にプランニングすることが大切なため、設定する目標や課題が曖昧だと意味がありません。

    現状を把握して整理した内容をもとに、解消すべき課題をリストアップします。たとえば、海外勤務に最低限必要といわれる「TOEIC730点以上」、完全リモートワークが可能なエンジニアであれば「各プログラミング言語取得」などがあるでしょう。リストアップした課題を目標に置き換え、達成時期を設定します。「来年はTOEIC500点以上、3年後には800点以上」、「働きながら資格スクールに通い、1年で習得する」など具体的な目標設定が重要です。ただし、大きすぎる目標ばかりではモチベーションを維持できません。自身の性格にあわせて、達成しやすい目標も組み込むことで理想に近づいていることを実感できます。モチベーションを高い状態で維持できることにもつながるでしょう。

    キャリアデザインシートの役割

    ここまで「キャリアデザイン」について解説しましたが、各プロセスで役立つのが「キャリアデザインシート」です。キャリアデザインシートとは、キャリアデザインの各プロセスを整理しやすくするためのツールです。シートに設定された項目を埋めていくことでキャリアデザインを可視化します。また、担当者が管理やフィードバックしやすいのもキャリアデザインシートのメリットといえるでしょう。

    厚生労働省では「ジョブ・カード」とも呼ばれており、キャリア形成や求職活動・能力開発に活用されています。もちろん白紙に書き出すことも可能です。ただし、キャリアデザインシートを用いることで大まかな書き方や流れを把握できるため、よりスムーズなキャリアデザインを実施できます。企業が従業員に対しキャリアデザインを実施する場合は、オリジナルのキャリアデザインシートを用意することで従業員も取り組みやすくなります。

    キャリアデザインシートの書き方

    キャリアデザインが4つのプロセスで分けられるように、キャリアデザインシートも「振り返り・現状把握・理想像の設定・目標設定」の4つに分類されます。1枚に全プロセスをまとめても問題ありませんが、プロセスごとにシートを分けたほうが見やすく、その後の振り返りもスムーズにおこなえます。

    キャリアデザインシートには文章でまとめたり、箇条書きで書き出したりなどの決まりはありません。また、ペーパーシートだけでなくデジタル管理も可能です。パソコン上であれば表やグラフも挿入しやすく、画像も取り入れやすいのが魅力です。

    キャリアデザインシートが思い浮かばない場合は、インターネットで「キャリアデザインシート」を検索するとさまざまなテンプレートや作成例があがっているため、参考にするとよいでしょう。

    キャリアデザインシートを書くうえでのポイント

    キャリアデザインおよびキャリアデザインシートへの記入において、大切なポイントを2つ紹介します。

    • キャリアとライフイベントの視点で考える
    • より明確な将来像を立てる

    2つのポイントをおさえておくと、より充実したキャリアデザインがおこなえます。

    キャリアとライフイベントの視点で考える

    とくに女性は、妊娠・出産や子育て、介護の比重が男性よりも大きいためキャリアデザインを実施するうえでライフイベントの考慮は欠かせません。人はただ仕事をするだけではありません。結婚や転勤、両親の介護などさまざまなライフイベントが発生します。

    すでにパートナーがいる場合は、パートナーともよく話し合い、出産後の働き方や子育ての方針を大まかにでも決めておきましょう。たとえば、産休・育休はいつからいつまで取得しいつから職場復帰するか、子どもの送り迎えはどう担当するかを考えておきます。ライフイベントを考慮せずにキャリアデザインを実施してしまうと、実際にイベントを迎えた際に綿密に計画していたプランを練り直すことになります。お互いの将来像や希望を共有しておくことも、キャリアデザインの大切なポイントのひとつといえるでしょう。

    より明確な将来像を立てる

    キャリアデザインは具体性が重要です。目指す将来像をはじめ、叶えるための目標や課題設定も細かく考えましょう。将来像が「海外で働くこと」であれば、日系企業の海外支社で働くのか、現地の企業で働くのか、フリーランスとして働きながら海外で暮らすのかといったようにさまざまな働き方が考えられます。漠然とした将来像では、目指す過程も曖昧なものになるためキャリアデザインの意味をなしません。キャリアデザインに取り掛かる際は、はじめは大まかな将来像を定めたうえで、最終的に辿り着きたいキャリアを細かく作り込みましょう。

    キャリアデザインシートのNG例をご紹介

    キャリアデザインシートに書き込むうえで、避けたいNG例を3つ紹介します。

    • 具体性がない
    • 対象となる企業の方向性とかけ離れている
    • 実現へのビジョンが見えづらい

    キャリアデザインシートのポイント2つとあわせて意識しましょう。

    具体性がない

    もっとも避けたいのは「具体性に欠ける」ことです。極端な例ですが、たとえば将来像を「年収800万円」とだけ設定し、そのために日々の業務を頑張るというようなものです。これでは具体性のかけらもなく、キャリアデザインとはいえません。はじめはどこから手をつけて良いのか分からず、キャリアデザインシートが埋まりにくいでしょう。まずは大まかなところだけを決め、それぞれを細分化すると具体的な内容がみえてきます。

    「年収800万円」であれば、単純に計算すると月収約66万円です。所属している企業で月収66万円が可能か、もしくは叶えられる企業や業界はどこかを調べ、転職に必要な経験やスキルを洗い出し足りないものを整理します。それをもとに、課題をリストアップして目標を設定しましょう。1年後・3年後・5年後と具体的な計画を立てることで充実したキャリアデザインシートに仕上がります。

    対象となる企業の方向性とかけ離れている

    キャリアデザインは、就職活動や転職活動の一環としてもおこなわれます。とくに学生の場合、就活のひとつとしてキャリアデザインシートを作成することも多く、それをもとにした面接対策も少なくありません。しかし、作成したキャリアデザインシートの内容と入社を希望する企業の方向性が合致していなければ、逆効果になるといえます。企業の事業計画では既存店舗の持続をメインとした展開であるのにも関わらず、自分のキャリアデザインでは新店舗・新事業の立ち上げに挑戦し多く携わりたいといったことです。これでは、企業と自分が全く異なる方向を向いているため、内定は難しいでしょう。入社したとしても、自分のやりたいこととは異なるためにやりがいを感じられない可能性もあります。他の企業を視野に入れるか、企業にあわせたキャリアデザインへと方向転換しましょう。

    実現へのビジョンが見えづらい

    高い目標や理想を掲げることは悪いことではありません。目標が高ければ高いほど、やりがいやモチベーション向上につながるという人もいるでしょう。一方で、自分のレベルや現在地からかけ離れすぎた目標ばかりだと、達成に時間がかかり自信もやる気も失う人も少なくありません。「来年までに社内成績1位」「半年でTOEIC300点アップ」など、無理のある計画は避け、自分のレベルに合わせて実現可能な計画を立てましょう。大きな目標をひとつ達成するよりも、小さな目標を多く達成する方が自信へとつながりモチベーション維持に効果的です。

    まとめ

    キャリアデザインは、人材育成や人材採用のひとつとして多くの企業が取り入れています。従業員の意識向上や成長目的、人材採用において企業の方針や環境と相性の良い人材を選ぶ方法としても有効です。

    キャリアデザインは、キャリアプランを形成して終わりではありません。立てた計画を実行し、定期的に見直すことも必要です。また、新たな経験や環境で理想にも変化が訪れるでしょう。その時々で自分と向き合い、キャリアデザインシートを更新するとより一層充実した内容になるでしょう。

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    HR大学編集部

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