#人材育成
2024/03/18

フォロワーシップとは?意味や効果と導入のポイントを解説

目次

    フォロワーシップとは、自主的かつ自律的に組織の成功や発展のために、上司やメンバーに対して支援や補佐を行う働きかけのことを指します。

    企業をとりまく環境の変化が激しい時代に、企業が生き抜くためには、経営陣や役職者、上司の立場にある人材の働きだけではなく、その下に付く部下やメンバーの働きこそが、企業に利益をもたらすために大切になります。

    そのため、部下はフォロワーシップを発揮して、部下自身の役割を果たしながらリーダーをサポートできる積極性や自律的な働き方をすることが必要です。

    この記事では、フォロワーシップの意味や定義、リーダーシップとの違い、フォロワーの種類やフォロワーシップの効果と導入方法について解説します。

    フォロワーひとりひとりの活躍や能力の可視化に

    フォロワーシップとは

    フォロワーシップとは、自主的かつ自律的に組織の成功や発展のために、上司やメンバーに対して支援や補佐を行う働きかけのことを指します。

    またフォロワーとは、上司のもとで業務を遂行する部下やメンバーのことを指します。

    フォロワーシップを発揮することで上司に頼りきりにならず、チーム全体で目的や方針を考え、成果をあげられるようになります。

    フォロワーシップは一見、部下やメンバーのみに求められる能力のように思われますが、上司を含めた組織のメンバー全員に求められる能力です。

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    フォロワーシップの意味

    フォロワーシップは、アメリカにあるカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が著書「The Power of Followership」の中で提唱したしたものです。

    フォロワーつまり部下は、リーダーへの支援やサポートを自主的、自律的に行います。

    ロバート・ケリー教授の調査によると、組織が出した結果に対して上司の影響力は10〜20%程度なのに対して、その下に付く部下の影響力は80〜90%とされています。

    つまり、部下は受動的に上司の指示に従うだけでなく、それぞれが能動的に自分の意見を述べることが大切だと言えます。

    (参考)「The Power of Followership

    フォロワーシップが注目される理由

    フォロワーシップが注目されている背景には、急速に変化するビジネス環境に加え、新型コロナ感染症の流行があげられます。

    特にこれまで日本では、上司の命令は絶対的なものであり、考えや方向性に間違いはないとされてきました。

    しかし、ビジネス環境が変化し、上司の考えの全てが顧客や世間のニーズに適応できるとは言えなくなりました。

    そのため、チーム全体で物事を考え、多様な意見を取り入れ、変化し続けるビジネス環境やさまざまなニーズに応えていくことが必要になりました。

    また、深刻な人材不足が進んでいる日本では、組織をフラットにするため中間管理職を廃止する企業が増加しています。

    そのため、部下のマネジメントをしながら自身の業務も遂行し、実績を求められるなど、リーダーポジションにある人材に大きな負担が掛かるようになりました。

    このように、目まぐるしく変化し予測困難な状況である、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれる現代に、襲ってきたのが「新型コロナウイルス感染症」です。

    新型コロナウイルス感染症は、日本はもとより世界中で生活スタイルや働き方に大きな変化をもたらしました。

    こうしたVUCA時代に、企業が生き抜くためには、経営陣や役職者、上司の立場にある人材の働きだけではなく、その下に付く部下やメンバーの働きこそが、企業に利益をもたらすために大切になります。

    そのために、部下は言われたことだけをこなしているだけではなく、部下自身の役割を果たしながらリーダーをサポートできる積極性や自律的な働き方をすることが必要です。

    これらが、「フォロワーシップ」が求められている背景です。

    フォロワーシップの種類

    フォロワーシップの種類について確認してみましょう。

    ロバート・ケリー教授はフォロワーシップを、「積極的関与」と「批判的思考」との2つの軸をもとに、5つの種類に分類しています。

    積極的関与とは、上司の指示や決定、方針に対して、部下は自身が組織の一員として当事者であることを理解し、ポジティブに捉え目標達成に向けて積極的に行動や協力できることを指します。

    批判的思考とは、上司の指示や決定、方針を自分自身で深く考え、従業員自身が意見を延べ、建設的に批判や提案をすることを指します。

    積極的関与と批判的思考の両方を持ちあわせて使い分けられるのが「模範型フォロワーシップ」です。

    逆に、どちらも持ち合わせていないのが「消極型フォロワーシップ」です。

    積極的関与と批判的思考のちょうど真ん中あたり、平均的といえるのがバランス型の「実務型フォロワーシップ」です。

    積極的関与に特化しているのが「順応型フォロワーシップ」、批判的思考に特化しているのが「孤立型フォロワーシップ」にあたります。

    5つの型ごとの得意なことや長所と短所などの特徴を把握し、部下がどの型にあてはまるかを考え理解しておくことで、仕事の指示の仕方も変わっていきます。

    フォロワーシップの種類

    1. 順応型フォロワーシップ
    2. 孤立型フォロワーシップ
    3. 模範型フォロワーシップ
    4. 実務型フォロワーシップ
    5. 消極型フォロワーシップ

    順応型フォロワーシップ

    順応型フォロワーシップは、協調性の高さと従順さが特徴で、上司の出す指示や考えに対して意見を述べることなく、出された指示を受け止め遂行します。

    素直かつ真面目である一方、指示がないと動けない面があり、良くいえば使いやすいタイプですが、受動的なため提案力や率先した行動力などには欠けます。

    自分の意見を言えるように提案力を磨くことで、上司にとってもチームにとっても欠かせない存在になれるでしょう。

    孤立型フォロワーシップ

    孤立型フォロワーシップは、批判力の高さが特徴です。

    フォロワーシップでの「批判」とは、上司の提案や決定に対して、意見ができる力を指します。

    その一方で、協調性のなさが欠点といえ、組織に貢献したいという思考を持ち合わせていないため、積極性や行動力に欠けるところもありメンバーから疎まれやすい存在です。

    しかし、業務遂行においてのスキルやポテンシャルは高いことが多く、組織への貢献意欲を持たせられれば有能なフォロワーになれるでしょう。

    模範型フォロワーシップ

    模範型フォロワーシップは、業務においてのポテンシャルの高さだけでなく、まわりを見て行動できる総合力の高さが特徴です。

    リーダーポジションに就いてもおかしくないほど、すでに出来上がっているようなフォロワーで、上司の右腕や側近的な存在で、上司の決定や指示に対しても臆することなく意見を述べられます。

    また、意見する内容も非常に建設的なもので、組織に対する貢献度も高いといえるでしょう。

    チーム全体をまとめられる力もあり、上司が不在のときは代理も努められるほど理想的なフォロワーといえます。

    実務型フォロワーシップ

    実務型フォロワーシップは、任務においての高い遂行力が特徴で、「順応型」の上位互換のようなタイプで、言われた業務は確実にこなしますがそれ以上のことはしません。

    仕事をこなすスキルや能力は持っていますが、その一方で、積極性に欠け失敗を恐れるタイプが多いと言えます。

    組織への貢献度や提案力はある程度持っているため、バランス型と言えるでしょう。

    指示された業務をこなす力はあるため、少し高めの目標設定や若干難易度の高い業務を割り振り、達成時に自信を付けさせるとよいでしょう。

    消極型フォロワーシップ

    消極型フォロワーシップは、組織への貢献度や業務に対する積極性、協調性など総合的な意識の低さが特徴で、上司から与えられた仕事も、最低限しかこなしません。

    上司の決定や方針に対して、基本的に意見することも提案することもなく、そもそも、組織にもチームにも興味を持っておらずただそこにいるだけ、というタイプです。

    消極型フォロワーに対しては、まず業務遂行や目標達成の喜び、価値を伝える必要があります。本人の長所や得意を見出し、その力を発揮できる役割を与えることで仕事への意欲や興味が湧いてくるでしょう。

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    フォロワーシップとメンバーシップとの違い

    フォロワーシップとは、部下が上司の補佐や支援することを指します。

    一方でメンバーシップとは、自分の役割を果たして組織への貢献に努め、組織全体を支援することを指します。

    つまり、フォロワーシップはメンバーシップの一部といえます。

    フォロワーシップとリーダーシップとの違い

    リーダーシップとは、リーダーという立場において必要な能力を指します。

    例えば、組織を導く力や決断力、コミュニケーション能力といったフォロワーをまとめるために必要不可欠な能力です。

    これまでは、カリスマ的なリーダーがリーダーシップを発揮するとされてきましたが、ビジネス環境の変化や時代の流れによって、リーダーの力だけでは成果を上げることが難しくなってきました。

    そこで注目されているのが、フォロワーシップです。

    フォロワーである部下が、積極的関与や批判的思考を持ってリーダーを支援することで組織全体に貢献し成果をあげられます。

    リーダーシップとフォロワーシップが相互に働くことで、より効果的な影響をもたらします。

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    フォロワーシップの効果

    フォロワーシップは導入することでさまざまな効果が期待できます。フォロワーシップの効果について確認してみましょう。

    フォロワーシップの効果

    • モチベーションアップにつながる

    • 組織全体が活性化する

    • 信頼関係が構築できる

    モチベーションアップにつながる

    フォロワーシップを導入することで、フォロワーひとりひとりが当事者意識を持って上司を支援することができ、「自分の働きが組織に貢献している」と実感できるようになります。

    また、自分の提案が反映されるなどの経験で組織に参加していることを実感できるようにもなるため、モチベーションの向上へとつながります。

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    組織全体が活性化する

    フォロワーシップを導入し、フォロワーのモチベーションが向上することで、フォロワーひとりひとりがイキイキと業務に取り組めるようになります。

    また、フォロワーだけでなく上司も円滑に業務を遂行しやすくなるため、チームの空気感や環境も良くなり組織全体の活性化が期待できるでしょう。

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    信頼関係が構築できる

    上司の存在は、部下のようなフォロワーがあってこそと言えます。

    リーダーはフォロワーの活躍、才能、努力を認める、フォロワーがリーダーの実績や存在を認めるなど、お互いを尊重し認め合うことで信頼関係を築けます。

    例えば、上司はフォロワーの述べる意見や提案を正面から受け止める力を持つことが大切です。

    そうでなければ、フォロワーは意見しづらくなり、上司に対して不信感を抱いて、円滑な業務遂行もままならなくなってしまい、良い成果もあげられないでしょう。

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    フォロワーシップを導入し浸透させる方法

    フォロワーシップを導入し組織に浸透させるための5つのポイントについて確認してみましょう。

    フォロワーシップを導入し浸透させる方法

    1. 研修を実施する
    2. 上司自身の人間力を高める
    3. 上司について理解や把握をする
    4. コミュニケーションを活性化させる
    5. 決定や考えに対し批判的思考を持つ

    研修を実施する

    まずは、フォロワーシップがどのようなものであるのか、従業員に知ってもらう必要があります。

    フォロワーシップの概要や期待できる効果についての座学研修やeラーニングを実施します。

    上司を支援することが目的であるフォロワーシップは、フォロワーである部下が上司の求めることを理解しておくことも大切です。

    また、ロールプレイングを通して、フォロワーが上司側の仕事を体験する機会を設けるのも効果的といえます。

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    上司自身の人間力を高める

    フォロワーにフォロワーシップを発揮してもらうためには、フォロワーばかりに学ばせるだけでは、フォロワーシップは実現できません。

    フォロワーが「上司を支援したい力になりたい」と思えるように、上司自身が人間力を高める必要があります。

    上司は、上司が身に付けておくべき「傾聴力」「判断力」「責任を取る力」「気づく力」などを伸ばすようにしましょう。

    また、フォロワーひとりひとりを尊重し、上司自身に対する意見や批判を受け止められる力も必要です。

    フォロワーが付いて行きたくなるような、ヒューマンスキルの高い上司を目指しましょう。

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    上司について理解や把握をする

    上司を自律的に支援するためには、フォロワーは上司やリーダーの求めることや何をしているのかを理解し把握しておく必要があります。

    そもそも、上司とはどのような役割を持った存在なのかということを、フォロワーが理解しておかなければ、いつまでたっても積極的で自律的な支援は行えません。

    上司を理解するために、ロールプレイングなどの研修でリーダーの仕事を体験する機会を設けると良いでしょう。

    実際に上司の立場に身をおくことで、本当の意味での上司への支援がどのようなものなのかが理解できます。

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    コミュニケーションを活性化させる

    フォロワーシップには、上司とフォロワーの信頼関係が最も重要だと言えます。

    目的を達成するためには、上司だけではなくフォロワーを含めたチーム全員の協力が必要です。

    そのためには、上司の指示や決定に対してフォロワーが意見することもあるでしょう。

    しかし、上司とフォロワーの間でコミュニケーションが不足していると、円滑な業務遂行は期待できません。

    上司からはもちろん、フォロワーからも積極的なコミュニケーションを図ることが大切です。

    上司と部下とのコミュニケーションの活性化には、1on1を取り入れてみると良いでしょう。

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    決定や考えに対し批判的思考を持つ

    フォロワーシップでは、リーダーの決定や考えに対してフォロワーが批判的思考を持つことも大切です。

    批判的とは言っても、頭ごなしに否定するわけではありません。

    リーダーの意見を丸ごと受け止めて従うのではなく、「間違いがあるのではないか」「もっと他によい考えがあるのではないか」と客観的なものの見方を保ち、さらによい成果へとつなげようとすることです。

    このような、批判的思考のことを「クリティカルシンキング」と呼び、フォロワーシップの特徴とも言えます。

    フォロワーシップは企業成長に大きく影響するもの

    フォロワーシップとは、自主的かつ自律的に組織の成功や発展のために、上司やメンバーに対して支援や補佐を行う働きかけのことを指します。

    企業をとりまく環境の変化の激しい時代に、企業が生き抜くためには、経営陣や役職者、上司の立場にある人材の働きだけではなく、その下に付く部下やメンバーの働きこそが、企業に利益をもたらすために大切になります。

    そのため、部下はフォロワーシップを発揮して、言われたことだけをこなしているだけではなく、部下自身の役割を果たしながらリーダーをサポートできる積極性や自律的な働き方をすることが必要です。

    「HRBrain タレントマネジメント」は、フォロワーシップを発揮するフォロワーのスキルや能力の把握や研修履歴などの従業員データをクラウド上でカンタンかつシンプルに管理することが可能です。

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    HR大学編集部
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