人材管理
2022/04/26
人的資本とは?注目される背景と開示効果、高める方法をわかりやすく解説
目次
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人的資本とは
人的資本とは他の資本とは何が違うのでしょうか。まずは人的資本について、基礎からわかりやすく解説します。
資本とは
人的資本の前にそもそも資本とは何か解説します。資本とは、一般的に事業を行うために必要となる資金を指します。ただし、学問分野によって厳密には意味が異なり、近代経済学においては土地と労働に並ぶ生産三要素の1つとして定義されています。
人的資本の定義
では、人的資本はどのような定義なのでしょうか。人的資本の定義については、各国の国際機関や会計基準等において様々な定義がされており、確固たる定義はありません。1つ例を挙げると、経済協力開発機構(OECD)では、「個人の持って生まれた才能や能力と、教育や訓練を通じて身につける技能や知識を合わせたもの」と定義されています。
(※参考)経済協力開発機構(OECD)「人的資本:知識はいかに人生を形作るか」
人的資源との違い
似た言葉に人的資源があります。人的資源と人的資本の違いは、「資源」と「資本」の違いにあります。
・資源:人の活動に役立つモノ全て
・資本:企業活動に役立つモノ
という意味となっており、資本は資源をより限定した意味となっています。このことから、人的資源は企業活動によらず人の活動に役立つ個人の能力を指し、人的資本は企業の活動に役立つ個人の能力を意味することになります。
人的資源について、さらに詳しく知りたい方は、「人的資源管理とは?コーポレートガバナンス・コードやISO30414も解説」をご覧ください。
人的資本の歴史
人的資本の概念の起源は、18世紀の経済学者アダム・スミスの研究にまで遡ることができます。アダム・スミスは「すべての住民や社会構成員の獲得した有用な能力」の重要性を訴えました。その後、経済学的概念として重要視され始めたのは、1950年代末から1960年代になってからになります。セオドア・シュルツ等経済学者によって、アダム・スミスが提唱した考え方を人的資本として再定義しました。
人的資本が注目される背景
人的資本は年々注目度が上がってきています。人的資本が注目される背景を解説します。
人材の多様性の高まり
グローバル化や女性の社会進出に伴って、人材の多様性が加速しています。また、世代による働き方への考え方、価値観の違いなども生まれています。このような人材の多様性の高まりに対して、人材を効果的に活用し、企業価値向上を計るために人的資本という考え方は重要視されているのです。
ESG投資への関心
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って生まれた言葉です。ESG投資とは、環境や社会、ガバナンスに配慮した企業に対する投資を意味します。人的資本への投資は、ESG投資の中の社会(Social)に該当することからESG投資への関心が人的資本への投資の注目に繋がっています。
ESG投資について、さらに詳しく知りたい方は「ESG投資は指標の事前理解が大事!3つの指標を解説」をご覧ください。
アメリカでの人的資本開示の義務化
アメリカでは2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)がアメリカの上場企業に対して人的資本の開示を義務化しました。ここでは定性情報だけではなく、定量情報の開示も義務化されています。人的資本情報の開示が義務化されたという事実は、投資家が人的資本情報を重要視しているという意味に他なりません。市場環境の変化が激しいため、経営における人的資本の重要性が高まり、投資判断においても人的資本情報が重要になっているのです。
人的資本開示とISO30414
人的資本と同様に注目されているのがISO30414です。ISO30414とはどういう意味なのでしょうか。人的資本開示とISO30414の関係と併せて解説します。
ISO30414とは
ISO30414は国際標準化機構(ISO)が制定するマネジメントシステム規格で、「社内外に対する人的資本の情報開示のガイドライン」です。2018年12月に制定されました。その内容は、11領域49項目にわたり、人的資本の情報開示規格を制定しています。ISO30414に則って人的資本の情報開示を行うことで、世界のどの国の企業であっても同じように人的資本状況を把握することが可能になります。
・ISO30414の11領域
ISO30414では11の領域において人的資本の情報開示を求めています。
1.コンプライアンスと倫理
2.コスト
3.ダイバーシティ
4.リーダーシップ
5.組織文化
6.組織の健康・安全・福祉
7.生産性
8.採用・異動・離職
9.スキルと能力
10.後継者育成
11.労働力確保
の11領域です。各領域にさらに複数項目が存在し、全て合わせて11領域49項目になります。
ISO30414について、さらに詳しく知りたい方は「ISO30414とは?49項目の人事情報開示規則と導入企業を解説」をご覧ください。
人的資本開示とISO30414の関係
人的資本開示とISO30414は、ISO30414が人的資本開示のガイドラインという関係になっています。ISOは国際的な規格を決める機関ですので、今回策定されたISO30414に則って開示を行うことで、グローバルに対して人的資本情報の開示を行うことができます。つまり世界の投資家に向けて、幅広く投資を募ることができるようになるのです。今後、人的資本開示を検討する際には、ISO30414に準拠して情報開示を行うと良いでしょう。
人的資本を高める方法
投資家からも重視される人的資本情報は企業価値向上を図る上で、高めていくことが非常に重要です。ここでは人的資本を高める方法を現状の課題から解説します。
日本における人的資本の課題
日本においては、人的資本への投資がこれまであまりされてきませんでした。新卒採用といった画一的な採用や終身雇用制、年功序列といった日本独特の制度のためです。終身雇用制を前提とした就職のため人材の流動性も低く、人的資本への投資が重要視されていなかったのです。市場環境の変化が激しく、人材の多様性の高まりや能力を持った個人の力が大きくなる中で、徐々に人材への投資が進んでいます。さらにその動きを加速するための3つの方法を解説します。
戦略人事の推進
1つ目は「戦略人事の推進」です。戦略人事とは、経営戦略を実現するために、人材という資源をどのように活用するのかを考えていくことです。従来のオペレーション的な人事とは異なり、経営戦略の実現を第一に人的資本の活用を戦略的に考えます。そのためには人的資本への投資も必要となるため、人的資本を高めることにもつながります。
戦略人事について、さらに詳しく知りたい方は「【人事部必見】「戦略人事」とは?経営戦略を実現する人事を徹底解説します」をご覧ください。
人材育成の取り組み
2つ目が「人材育成の取り組み」です。人材育成の取り組みは人的資本への投資に他なりません。従業員の能力向上やスキル習得等に積極的に投資することで、人的資本を高めることができます。また、人材育成に力を入れることで、求職者にとっても魅力的な職場環境になるため採用競争力の強化にもつながります。優秀な人材の獲得によって、人的資本をさらに高めることができるでしょう。
人材育成について、さらに詳しく知りたい方は「人材育成に重要なポイントとは?若手や部下を育てる人材育成の考え方」をご覧ください。
HRテクノロジーの活用
3つ目が「HRテクノロジーの活用」です。HRテクノロジーとは、人事分野をサポートするテクノロジーの総称です。採用・育成・労務など各領域において、様々なサービスが存在します。HRテクノロジーサービスを活用することで、
・人事業務の効率化
・実効性の高い人事施策の実行
・定量的な人事分析
ができるようになります。これらによって人的資本をより効率的に高めることが可能です。
HRテクノロジーについて、さらに詳しく知りたい方は「HRテック(HR Tech)とは?人事がいま知っておくべき知識と導入方法」をご覧ください。
【まとめ】人材管理・タレントマネジメントをカンタン・シンプルに
今回は、人的資本について解説しました。人的資本の重要性が高まる昨今、人的資本を高め、社内外に向けてその情報を開示していくことが重要です。経営戦略の実現、さらには企業価値の向上を目指して人的資本を高めていきましょう。
人的資本の高める方法の1つとして、HRテクノロジーの活用を挙げました。数多くのHRテクノロジーサービスがある中で特に人的資本を高める上でおすすめになるのが、タレントマネジメントシステムです。
タレントマネジメントシステムは人材データベースの構築から、人事情報の活用までを一気通貫で行うことができます。
HRBrainは、従業員の目標設定から評価までのオペレーションの全てをクラウド上のソフトウエアで効率化するタレントマネジメントシステムです。MBOやOKR、1on1などの最新のマネジメント手法をカンタン・シンプルに運用することができます。
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HR大学 編集部
HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。
