多能工化のスキルマップ活用術とは?作成手順や単能工の違いを解説
従業員一人ひとりのスキルを簡単に可視化
- 多能工化とは?
- 多能工化と単能工との違い
- なぜ今、多能工化が求められるのか?(労働人口減少、生産性向上など)
- 多能工化導入の5つのメリット
- 一人ひとりの作業幅が広がり、生産性が向上する
- 作業工程を複数人でカバーでき、業務の平準化が進む
- 新しい作業に挑戦することで従業員のスキルが着実に伸びる
- 多能工としての活躍が評価につながり、モチベーションが高まる
- 多能工が増えることで配置換えの柔軟性が高まり、人件費の最適化にもつながる
- 多能工化の6つのデメリット
- 教育・研修に時間とコストがかかる
- 作業ごとの専門性が浅くなり、品質が下がるリスクがある
- 負担感が増し、モチベーション低下につながる場合がある
- 管理職・リーダーのマネジメント難易度が上がる
- 多能工化の目的が不明確だと現場の混乱を招く
- 全員が万能を求められることで、得意分野を活かしにくくなる
- 多能工化推進のためのスキルマップ活用目的と効果
- スキルマップ活用の目的・背景
- スキルマップ活用の具体的な効果
- 厚生労働省が提供するスキルマップのテンプレート
- 多能工化を実現する8ステップのスキルマップ作成手順
- 1.対象業務と職種を整理する
- 2.各業務ごとの必要スキルを洗い出す
- 3.作業レベルを定義し、習熟度の基準を設定する
- 4.現場メンバーのスキルを自己評価・他者評価で可視化する
- 5.スキルの偏りや不足を分析し、育成計画を立てる
- 6.優先的に習得すべきスキルを明確にする
- 7.定期的にスキルマップを更新・共有する体制を整える
- 8.スキル習得状況に応じた評価・報酬制度と連動させる
- 多能工化スキルマップ作成・運用における7つの注意点
- スキルマップの対象業務を過剰に広げない
- スキル習得のレベル設定が曖昧にならないようにする
- 個々のスキルアップ状況を定期的に評価・フィードバックする
- 一度作成したスキルマップを放置せず、状況に合わせて更新する
- スキルマップが育成だけに偏らず、業務の効率化や生産性向上にも結びつける
- スキル習得が一部のメンバーに偏らないよう全員参加を促す
- スキルマップの運用が属人的にならず、組織全体で共有・管理できる体制を構築する
- スキル管理ツールの3つの活用事例
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- 多能工化は、単なるスキル習得ではなく、組織全体の生産性や柔軟性を高める取り組み
近年、企業の競争力を高める施策として注目を集めているのが多能工化です。ひとりの従業員が複数の業務を担当できるようにすることで、現場の柔軟性向上や業務負荷の平準化、生産性向上など多くのメリットが期待できます。
しかし、効果的に多能工化を推進するためには、従業員のスキルを正確に把握・管理することが不可欠であり、その際に役立つのがスキルマップです。
本記事では、多能工化の基礎知識に加え、スキルマップを活用したスキル管理方法や作成手順、単能工との違いについて詳しく解説します。自社に合った人材育成と組織強化を目指すために、ぜひ参考にしてください。
多能工化とは?
多能工化とは、ひとりの作業者が複数の業務や工程を担当できるようにする取り組みを指します。特定の作業だけではなく、幅広いスキルや知識を習得することで、現場の柔軟性を高め、生産効率の向上や業務の属人化防止を図ることができます。
特に製造業においては、生産ラインの変化に柔軟に対応できる体制づくりや、作業負荷の平準化に効果を発揮します。
また、サービス業でも複数の業務をこなせる人材がいることで、業務の幅が広がり、急な欠員対応や業務改善にも効果を期待できます。
多能工化と単能工との違い
多能工化に対して、単能工は、ひとりの従業員が特定の単一業務に専門特化して従事する働き方を指します。
多能工化を進めることで、従業員は幅広いスキルや知識を習得し、担当業務だけではなく、その前後の工程や関連業務への理解を深められます。これにより、組織としては、急な欠員が発生した場合や、特定の工程に業務が集中した場合でも、他の従業員が柔軟にサポートに入ることが可能です。
一方、単能工は、特定の作業に習熟することで高い専門性と作業スピードを実現しやすいですが、担当できる業務範囲が限定されるため、状況変化への対応が難しくなる場合があります。
以下の表で、両者の主な違いをまとめます。
項目 | 多能工 | 単能工 |
---|---|---|
業務範囲 | 複数・広範囲 | 単一・限定的 |
柔軟性 | 高い(人員配置、業務変動対応) | 低い |
育成 | 時間とコストがかかる傾向 | 比較的短期間で可能 |
リスク | 専門性が深まりにくい可能性 | 属人化、欠員時の業務停止リスク |
主な目的 | 柔軟性向上、業務平準化、リスク分散 | 専門性向上、効率性追求 |
どちらの働き方が最適かは、企業の業種、規模、事業戦略によって異なります。自社の状況を分析し、多能工化の導入や、単能工とのバランスを検討することが重要です。
なぜ今、多能工化が求められるのか?(労働人口減少、生産性向上など)
現代の日本において、多くの企業が多能工化の推進に注目しています。その背景には、主に3つの大きな理由が存在します。
深刻化する労働人口の減少
生産性向上への強い要求
市場変化への迅速な対応力の必要性
ひとつ目の理由は、深刻化する労働人口の減少です。少子高齢化が進む日本では、働き手の確保がますます困難になっています。多能工化は、限られた人材で多様な業務をカバーするための有効な解決策です。ひとりの従業員が複数の業務に対応できれば、急な欠員が出ても他の従業員で補いやすく、新規採用への依存度を下げられます。
2つ目の理由は、生産性向上への強い要求です。競争が激化する市場で勝ち抜くためには、業務の効率化が欠かせません。多能工化によって、従業員は業務量の繁閑に合わせて柔軟に配置転換できます。手が空いている従業員が忙しい部署を応援することで、手待ちのムダを削減し、組織全体の業務負荷を平準化できます。
3つ目の理由は、市場変化への迅速な対応力の必要性です。顧客ニーズは多様化し、技術革新のスピードも加速しています。このような変化の激しい時代において、企業は常に新しい状況へ適応していかなければなりません。
多能工化された従業員は、様々な状況に対応できるスキルを持つため、組織全体の柔軟性と変化対応力を高めます。これにより、企業は市場の変動にすばやく対応し、競争優位性を維持することが可能です。
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多能工化導入の5つのメリット
企業が多能工化を導入することで得られるメリットは、以下の5つです。
<多能工化導入の5つのメリット>
一人ひとりの作業幅が広がり、生産性が向上する
作業工程を複数人でカバーでき、業務の平準化が進む
新しい作業に挑戦することで従業員のスキルが着実に伸びる
多能工としての活躍が評価につながり、モチベーションが高まる
多能工が増えることで配置換えの柔軟性が高まり、人件費の最適化にもつながる
多能工化のメリットを把握したうえで、導入を慎重に検討しましょう。
一人ひとりの作業幅が広がり、生産性が向上する
多能工化を進めることで、従業員一人ひとりが担当できる業務の範囲が広がります。従業員が複数のスキルを身につけることで、特定の作業が完了するのを待つ時間や、担当者間で業務を引き継ぐ時間が削減されます。たとえば、ある従業員が製品の組み立てから検査まで一貫して担当できれば、工程間の連携がスムーズになり、作業効率は向上します。
また、状況に応じて空いている従業員が他の業務をサポートすることも可能になるため、工場や店舗など、人の動きが生産性に直結する現場では特に効果を発揮します。
従業員の稼働率を高め、業務プロセス全体の流れを改善することで、無駄な時間をなくし、組織全体の生産性を高められます。
作業工程を複数人でカバーでき、業務の平準化が進む
多能工化の導入は、特定の作業や工程を複数の従業員が担当できるようになるため、業務負荷の偏りを解消し、業務の平準化を促進する効果があります。
「この作業は〇〇さんしかできない」といった業務の属人化は、その担当者に負担が集中するだけではなく、担当者が不在の場合に業務が完全に停止してしまうリスクも抱えています。多能工化を進め、ひとつの業務を複数の従業員がこなせる体制を構築することで、このようなリスクを大幅に軽減できます。
誰かが忙しいときには他の人がサポートに入り、急な休みが出た場合でも他のメンバーでカバーし合うことが可能です。これにより、特定の従業員への過度な負担集中を防ぎ、チーム全体の業務量を安定させられます。
結果として、残業時間の削減や、より計画的な業務遂行が可能となり、従業員の働きやすい環境づくりにも貢献します。
新しい作業に挑戦することで従業員のスキルが着実に伸びる
多能工化は、従業員にとって新しいスキルを習得し、自身の能力を高める絶好の機会を提供します。これまで担当したことのない業務に挑戦する過程で、従業員は新しい知識や技術を自然と身につけていきます。
OJT(On-the-Job Training)などを通じて、実際の業務の中でスキルを習得するため、座学だけでは得られない実践的な能力が養われます。
また、さまざまな業務を経験することで、仕事に対する視野が広がり、新たな興味や関心を持つきっかけにもなるでしょう。企業にとっては、従業員のスキルレベルが底上げされ、組織全体の能力向上に貢献します。
多能工化は、単に業務効率を上げるだけではなく、従業員の成長を促す人材育成の有効な手段でもあるのです。
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多能工としての活躍が評価につながり、モチベーションが高まる
従業員が多能工化を通じてスキルアップし、多様な業務で活躍することが、適切な評価や報酬に結びつく仕組みがあれば、従業員のモチベーションは大きく向上します。新しいスキルを習得するためには、従業員自身の努力が不可欠です。
その努力が認められ、できる業務が増えたから給与が上がった、複数の部署で活躍できるようになったから昇進したといった形で報われることで、従業員は達成感を得て、さらなるスキル向上への意欲を高めます。企業側としては、多能工化を推進する上で、既存の人事評価制度を見直すことが重要です。
習得したスキルのレベルや数、担当可能な業務範囲の広さ、他部署への貢献度などを評価項目に加えることや、スキルに応じた手当制度などを導入することも考えられます。
単に業務範囲を広げるだけではなく、その貢献をしっかりと評価する姿勢を示すことが、従業員のエンゲージメントを高め、多能工化を成功させるきっかけになるでしょう。
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多能工が増えることで配置換えの柔軟性が高まり、人件費の最適化にもつながる
組織内に多能工化された従業員が増えると、人員配置の柔軟性が格段に高まります。これは、結果的に人件費の最適化にもつながる可能性があります。
たとえば、ある部門の業務量が一時的に増加した場合、他の部門で比較的手が空いている多能工の従業員を応援として配置できます。繁忙期のためだけに派遣社員やアルバイトを新たに雇用する必要がなくなります。
また、急な退職者が出た場合でも、既存の多能工が業務を引き継ぐことで、慌てて採用活動を行う必要がなくなり、採用コストや引き継ぎ期間中の生産性低下を抑えられます。
このように、社内の人材リソースを最大限に活用し、業務量の変動や人員の過不足に対して柔軟に対応できる体制を築くことは、無駄な人件費の発生を防ぎ、効率的な組織運営を実現するうえでメリットです。
多能工化の6つのデメリット
多能工化を進めるうえで考慮すべきデメリットや注意点を6つ解説します。
<多能工化の6つのデメリット>
教育・研修に時間とコストがかかる
作業ごとの専門性が浅くなり、品質が下がるリスクがある
負担感が増し、モチベーション低下につながる場合がある
管理職・リーダーのマネジメント難易度が上がる
多能工化の目的が不明確だと現場の混乱を招く
全員が万能を求められることで、得意分野を活かしにくくなる
多くのメリットが期待できる一方で、計画や運用を誤ると課題が生じる可能性もあります。事前にデメリットを理解し、対策を講じましょう。
教育・研修に時間とコストがかかる
多能工化を進めるためには、従業員が新しいスキルを習得するための教育・研修が欠かせません。しかし、教育や研修には相応の時間とコストがかかるという側面があります。
従業員は、OJTや集合研修、eラーニングなどを通じて新しい業務を学ぶ必要があり、その学習時間は通常の業務時間外、あるいは業務時間内に行われる場合は一時的な生産性の低下を伴います。
また、研修プログラム自体の開発費用、外部講師への謝礼、教材費、研修施設の利用料など、直接的なコストも発生します。たとえば、ある作業員に複数の機械操作を習得させる場合、それぞれの機械に関する研修時間と、場合によっては専門的な外部研修への参加費用が必要になるでしょう。
この課題に対しては、まず育成計画を慎重に立て、どのスキルを優先的に習得させるか見極めることが重要です。OJTを効果的に組み合わせたり、動画マニュアルなどを活用したりすることで、研修の効率化を図ることも可能です。
多能工化による長期的なメリットを考慮し、計画的に投資を行う視点が求められます。
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作業ごとの専門性が浅くなり、品質が下がるリスクがある
多能工化は従業員の対応範囲を広げる一方で、各業務に対する専門性が浅くなる可能性があります。ひとつの業務に特化してスキルを磨く単能工と比較した場合、複数の業務を担当する多能工は、特定のスキルを深く掘り下げる時間が限られてしまいます。
その結果、広く浅いスキルセットとなり、特に高度な専門知識や熟練した技術が求められる業務においては、品質の低下やミスを招くリスクが考えられます。たとえば、長年特定の精密加工を担当してきた熟練技術者が、多能工化によって他の軽作業も担当するようになると、精密加工に集中する時間が減り、加工精度に影響が出るかもしれません。
このデメリットを回避するためには、すべての従業員や業務に一律で多能工化を適用するのではなく、戦略的な判断が必要です。組織として高い専門性が求められる業務については、専門担当者を配置し、そのスキルを維持・向上させる仕組みを残す選択肢もあります。
多能工化を適用する業務においても、明確な作業標準や品質基準を設定し、十分なトレーニングと定期的なフォローアップを行うことで、品質レベルを維持することが求められます。
負担感が増し、モチベーション低下につながる場合がある
多能工化によって従業員が担当する業務の種類や量が増えることは、従業員にとって負担感の増加につながり、場合によってはモチベーションの低下を引き起こす可能性があります。新しいスキルを覚えるプロセス自体がストレスとなることもありますし、複数の業務を同時に管理・遂行することで、精神的な負荷や業務量が増大する場合もあるでしょう。
多能工化によって業務負担が増えたにもかかわらず、それに見合った評価や報酬が得られない場合、従業員は不公平感を抱きやすくなります。会社は単に仕事を増やしたいだけではないかといった疑念が生じると、スキル習得への意欲は大きく削がれてしまうでしょう。本人の希望や適性を無視して不得意な業務を割り当てられた従業員は、強いストレスを感じ、全体のパフォーマンスが低下するかもしれません。
このような事態を防ぐためには、まず多能工化の目的とメリットを従業員に丁寧に説明し、理解と納得を得ることが重要です。また、育成計画に従業員の意向を反映させ、十分なサポート体制を整えること、習得したスキルや貢献度を公正に評価し、処遇に反映させる仕組みを構築することが、従業員の負担感を和らげ、前向きなモチベーションの維持につながります。
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管理職・リーダーのマネジメント難易度が上がる
多能工化を推進すると、チーム内の従業員が持つスキルや担当業務が多様化するため、管理職やチームリーダーのマネジメント業務はより複雑になり、難易度が上がることが予想されます。
管理職は、部下一人ひとりがどの業務をどのレベルまで遂行できるのかを正確に把握し続ける必要があります。そのうえで、個々のスキルレベルや成長段階に合わせた適切な業務の割り当て、効果的な指導・育成計画の立案、多角的な視点からの公正なパフォーマンス評価を行わなければなりません。
メンバーごとに習得中のスキルが異なれば、それぞれに必要なサポートやフィードバックも変わってきます。プロジェクトや日々の業務において、誰にどのタスクを任せるかという判断も、メンバーのスキルセットが多様であるほど複雑になりやすいです。
この課題に対応するためには、まずスキルマップなどのツールを活用し、チームメンバーのスキル状況を可視化・共有することが有効です。これにより、客観的な情報にもとづいたマネジメントが可能になります。加えて、管理職自身が多能工チームをマネジメントするためのスキルを学ぶ機会を提供することも重要です。
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多能工化の目的が不明確だと現場の混乱を招く
多能工化を進めるにあたって、なぜ多能工化を行うのかという目的が組織全体、特に現場の従業員に明確に伝わっていない場合、現場での混乱や反発を招き、取り組み自体が進まなくなる可能性があります。
目的が曖昧なまま「多能工化しなさい」という指示だけが現場に下りてくると、従業員は何のために新しい業務を覚えたり、担当業務を変えたりする必要があるのか理解できません。その結果、単に仕事が増えるだけではないか、会社はコスト削減をしたいだけではないかといった憶測や不信感が広がり、新しいスキル習得への抵抗感や、変化に対する不安感が増大します。
たとえば、会社が人手不足解消のために多能工化を目指しているにも関わらず、その背景を説明せずに研修だけを実施した場合、従業員は目的を理解できず、研修への参加意欲も低下するでしょう。
このような事態を避けるためには、多能工化を導入する背景、具体的な目的、従業員にとってのメリットを、経営層や管理職が率先して、具体的に伝えることが重要です。
全員が万能を求められることで、得意分野を活かしにくくなる
多能工化は柔軟な人材活用を可能にしますが、その運用方法によっては、すべての従業員に画一的に万能性を求めることになり、個々人が持つ特定の強みや深い専門性を活かしきれなくなるというデメリットも考えられます。従業員にはそれぞれ得意な分野、興味を持てる分野があり、すべての業務に対して同じように高い適性や意欲を持つわけではありません。
多能工化を全員が何でもできるようになることと捉え、一律にさまざまな業務を担当させようとすると、本人の適性に合わない業務に時間を費やすことになったり、本来なら得意分野で高いパフォーマンスを発揮できるはずの従業員の専門性を磨く機会を奪ったりする可能性があります。
たとえば、卓越したデザインセンスを持つデザイナーに、本人が苦手意識を持つ経理業務を長時間担当させた場合、デザイン業務に集中できなくなり、組織全体のクリエイティビティが低下するかもしれません。
この課題への対策としては、多能工化を柔軟に捉え、従業員一人ひとりの適性やキャリア志向を尊重することが重要です。全員に同じレベルの多能工化を求めるのではなく、個々の強みを活かしつつ、関連性の高い業務や本人が関心を持つ業務からスキルを広げていくといった個別最適化のアプローチが求められます。
多能工化推進のためのスキルマップ活用目的と効果
多能工化を効果的に推進するためにスキルマップがどのように役立つのか、その活用目的や背景、具体的な効果を解説します。
厚生労働省が公開しているテンプレートも紹介しているため、スキルマップがどのようなものか知りたい方や、すぐに使ってみたい方はぜひチェックしてみてください。
スキルマップ活用の目的・背景
多能工化を成功させるうえでスキルマップを活用する主な目的は、従業員一人ひとりのスキルを正確に見える化し、それにもとづいて計画的かつ戦略的な人材育成・配置を行うことです。
多くの企業が多能工化の必要性を感じながらも、どの従業員にどのスキルをどの順番で育成すればよいかわからないという課題に直面します。従来の勘や経験に頼った育成方法では、育成に偏りが生じたり、現場のニーズと乖離したりする可能性があります。
スキルマップによって、組織全体で従業員のスキル保有状況を客観的に把握することで、多能工化に向けて強化すべきスキルギャップを正確に特定しやすくなるのがメリットです。場当たり的ではない、データにもとづいた育成計画の立案が可能となり、多能工化の取り組みを効率的に進めるための羅針盤としての役割を果たします。
現代の労働人口減少や生産性向上の要請といった背景も、こうした計画的な人材活用を後押ししており、スキルマップ活用の重要性を高めています。
スキルマップ活用の具体的な効果
スキルマップを多能工化推進に活用することで、企業は多岐にわたる具体的な効果を期待できます。
育成の効率化と質の向上
柔軟な人員配置と業務効率の改善
公平な評価とモチベーション向上
スキルマップによって、どの従業員がどのスキルをどの程度習得しているか、次に何を学ぶべきかが明確になるため、一人ひとりのレベルに合わせた的確な研修やOJTを計画・実施できます。これにより、育成コストの無駄を省き、効果的なスキルアップを促進します。
また、スキルマップを見れば、必要なスキルを持つ人材を容易に見つけ出せるため、繁忙期や欠員発生時に迅速かつ適切な人員配置が可能となり、業務の停滞を防ぎやすいのも効果のひとつです。
さらに、習得したスキルや対応可能な業務範囲が客観的なデータとして示されるため、多能工としての貢献度を人事評価に反映しやすくなり、従業員の納得感と学習意欲を高めます。キャリアパスの明確化により、従業員は自身の成長目標を設定しやすくなり、主体的なスキルアップを促す効果も期待できます。
厚生労働省が提供するスキルマップのテンプレート
これからスキルマップを作成しようと考えている企業にとって、厚生労働省が提供しているスキルマップはフォーマットのひとつとして便利です。
キャリアマップや職業能力評価シートといった名称で、さまざまな業種・職種に対応したテンプレートが公開されています。これらの資料には、それぞれの職務に必要な標準的なスキル項目や知識がリストアップされているだけでなく、以下のように具体的な能力レベルの定義や評価基準の例も含まれています。
レベル1:指示のもとでできる
レベル2:一人でできる
レベル3:後輩を指導できる
自社の業務内容、使用している技術・設備、組織の特性に合わせて、スキル項目を追加・修正したり、評価基準を調整したりするなど、カスタマイズを行うことが、現場で実際に役立つスキルマップを作成する上で重要です。

(引用:厚生労働省|キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード)
多能工化を実現する8ステップのスキルマップ作成手順
多能工化を効果的に推進するためのスキルマップ作成手順を、具体的な8つのステップに分けて解説します。
<多能工化を実現する8ステップのスキルマップ作成手順>
- 対象業務と職種を整理する
- 各業務ごとの必要スキルを洗い出す
- 作業レベルを定義し、習熟度の基準を設定する
- 現場メンバーのスキルを自己評価・他者評価で可視化する
- スキルの偏りや不足を分析し、育成計画を立てる
- 優先的に習得すべきスキルを明確にする
- 定期的にスキルマップを更新・共有する体制を整える
- スキル習得状況に応じた評価・報酬制度と連動させる
上記のステップにしたがって進めることで、自社の状況に合った実用的なスキルマップを作成し、多能工化の取り組みを具体化していきましょう。
1.対象業務と職種を整理する
スキルマップ作成の最初のステップは、多能工化を進めたい対象範囲を明確にすることです。どの部門の、どの職種の、どの業務を多能工化の対象とするのかを具体的に定義します。
最初から会社全体を対象にするのではなく、特定の製造ライン、店舗、チームなど、限定的な範囲からはじめましょう。範囲を絞ることで、スキルマップ作成の目的がより明確になり、作業の焦点が定まります。
対象範囲が決まったら、その中で行われている主要な業務やタスクをリストアップし、整理します。この段階で、多能工化によって解決したい課題を意識することで、より効果的な対象範囲の設定が可能になります。
まずはスコープを定めることが、効率的なスキルマップ作成の基礎となります。
2.各業務ごとの必要スキルを洗い出す
対象とする業務が決まったら、その業務を遂行するために必要なスキルを具体的に洗い出します。ひとつの業務は、複数のスキル要素から成り立っています。
たとえば、顧客からの電話問い合わせ対応という業務には、以下のようなスキルが含まれているでしょう。
基本的なビジネスマナー
製品知識
ヒアリング能力
PC操作スキル
丁寧な言葉遣い
クレーム対応スキル
ここでは、機械の操作や専門知識といった技術的なスキルだけではなく、コミュニケーション能力、問題解決能力、協調性といった非技術的スキルも、業務の性質に応じてリストアップすることが重要です。
洗い出しにあたっては、実際にその業務を担当している従業員や、管理職、経験豊富なベテラン社員などにヒアリングを行うと、より現場の実態に即した、具体的で網羅的なスキルリストを作成できます。
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3.作業レベルを定義し、習熟度の基準を設定する
洗い出したスキル項目ごとに、従業員の習熟度を客観的に評価するための基準とレベルを定義します。
単にできる・できないの二段階評価ではなく、スキルをどの程度習得しているかを多段階で評価することで、従業員の能力をより正確に把握し、育成目標を具体的に設定できます。以下のように、3段階から5段階程度のレベルを設定する場合が一般的です。

重要なのは、それぞれのレベルが具体的にどのような行動や成果を示す状態なのかを、誰が評価しても同じ判断ができるように、客観的かつ具体的に記述することです。「〇〇の手順を理解し、正確に実施できる」「△△のエラーに対して、原因を特定し対処できる」のように、観察可能な行動で定義することが望ましいです。
4.現場メンバーのスキルを自己評価・他者評価で可視化する
設定したスキル項目と評価基準にもとづいて、対象となる従業員一人ひとりの現在のスキルレベルを評価し、その結果をスキルマップに記録していきます。
これにより、チームや個人のスキル保有状況が見える化されます。評価の方法としては、まず従業員本人による自己評価を行うことで、本人のスキルに対する認識や学習意欲の把握が可能です
次に、直属の上司が日々の業務遂行状況の観察や面談を通じて、客観的な視点から評価を行います。自己評価と他者評価を組み合わせることで、評価の精度を高められるでしょう。必要に応じて、同僚からの評価や、特定のスキルに関する実技テスト、資格の保有状況などを評価に加えることも効果的です。
収集した評価データは、Excelやスプレッドシート、専用のスキル管理システムなどを用いて作成したスキルマップに入力し、全体像が一目で把握できるように整理しましょう。
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5.スキルの偏りや不足を分析し、育成計画を立てる
スキルマップが完成したら、そのデータを分析し、組織やチーム、個人レベルでのスキルの偏りや不足を特定します。
多能工化の目標達成に向けて、現状のスキルレベルと、あるべきスキルレベルとの間にどのような差があるのかを明確にする作業です。例えば、「チーム全体として〇〇スキルを持つ人が少ない」「重要業務△△を担当できるのがベテランのAさんだけである」「若手のBさんは□□スキルを集中的に伸ばす必要がある」といった具体的な課題が見えてきます。
このスキルギャップ分析の結果にもとづいて、具体的な育成計画を策定します。誰に、どのスキルを、いつまでに、どのレベルまで引き上げるのか、そのためにどのような育成手法を用いるのかを計画に落とし込みましょう。
スキルマップを活用することで、勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータにもとづいた、的確で効率的な育成計画を立てられるようになります。
6.優先的に習得すべきスキルを明確にする
スキルギャップ分析によって育成が必要なスキルが明らかになったら、次はその中でどのスキルから優先的に取り組むべきかを決定します。
すべてのスキルギャップを同時に埋めようとすると、時間やコスト、指導者のキャパシティなどのリソースが分散し、効果的な育成が難しくなる可能性があります。
そのため、戦略的な視点から優先順位を設定することが重要です。優先順位を決める際の考慮事項としては、以下のような点が挙げられます。
考慮事項 | 詳細 |
---|---|
事業目標達成への貢献度 | そのスキルが会社の目標達成にどれだけ重要か |
業務への影響度 | そのスキル不足が業務遂行や品質維持にどれだけ影響するか |
緊急性 | 欠員リスクなど、そのスキルを早急に習得する必要があるか |
習得の難易度と期間 | 比較的容易に習得できるスキルか、時間のかかるスキルか |
他のスキルとの関連性 | 他のスキルを習得するための前提となる基礎スキルか |
これらの要素を総合的に評価し、組織としてもっとも効果的かつ効率的に多能工化を進められるように、育成するスキルの優先順位を決定し、育成計画に反映させましょう。
7.定期的にスキルマップを更新・共有する体制を整える
スキルマップは、一度作成したら完成ではありません。従業員のスキルは日々変化し、組織が求めるスキルも事業環境の変化とともに変わっていきます。
そのため、スキルマップが常に現状を正確に反映し、実用的なツールであり続けるためには、定期的な見直しと更新が必要です。一般的には、半年に1回や年に1回など、定期的な評価サイクルに合わせてスキルマップの更新を行うことが推奨されます。
更新の際には、従業員のスキルレベルの変化だけではなく、スキル項目自体の見直しや、評価基準の妥当性の確認も行います。更新されたスキルマップは、従業員本人や上司、人事担当者など、関係者間で適切に共有されなくてはいけません。
共有フォルダでの管理やスキル管理システムの活用など、アクセスしやすく、常に最新の情報を確認できる仕組みを整えることが重要です。更新と共有のプロセスを明確に定め、継続的に運用していく体制を構築することで、スキルマップを形骸化させずに活用し続けやすくなります。
8.スキル習得状況に応じた評価・報酬制度と連動させる
多能工化を組織に根付かせ、従業員のスキルアップへの意欲を継続的に引き出すためには、スキルマップで可視化されたスキルの習得状況や活用度合いを人事評価や報酬制度に連動させることが有効です。
従業員が努力して新しいスキルを身につけ、対応できる業務範囲を広げたことが、昇給・昇格や賞与などの処遇に具体的に反映される仕組みは動機付けとなります。たとえば、人事評価の項目に保有スキルのレベルや数、担当可能業務の多様性、他業務への貢献度などを加えたり、スキルマップ上のレベルアップを昇格要件のひとつとしたりすることが考えられます。
また、特定の重要スキル保有者に対して資格手当やスキル手当を支給することも有効な方法です。重要なのは、多能工としての貢献を会社が正当に評価しているというメッセージを従業員に明確に伝えることです。
既存の人事制度を見直し、多能工化の推進と従業員の成長を後押しするような評価・報酬体系を検討・導入することが、多能工化の取り組みを推進するうえで重要な要素となります。
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多能工化スキルマップ作成・運用における7つの注意点
多能工化を推進するためにスキルマップを作成し、運用していく上で、特に注意すべき7つのポイントを解説します。
<多能工化スキルマップ作成・運用における7つの注意点>
スキルマップの対象業務を過剰に広げない
スキル習得のレベル設定が曖昧にならないようにする
個々のスキルアップ状況を定期的に評価・フィードバックする
一度作成したスキルマップを放置せず、状況に合わせて更新する
スキルマップが育成だけに偏らず、業務の効率化や生産性向上にも結びつける
スキル習得が一部のメンバーに偏らないよう全員参加を促す
スキルマップの運用が属人的にならず、組織全体で共有・管理できる体制を構築する
スキルマップは有効なツールですが、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの落とし穴を避ける必要があります。注意点を理解し、適切な対策を講じることで、スキルマップの導入・運用を成功に導きましょう。
スキルマップの対象業務を過剰に広げない
スキルマップを作成する際、意欲的に多くの業務を対象にしたくなるかもしれませんが、最初から対象範囲を広げすぎることは避けるべきです。
対象とする業務や職種、部門が多岐にわたると、洗い出すべきスキル項目が膨大になり、スキルマップ自体の作成と管理が非常に複雑化します。また、対象が広すぎると、マップの焦点がぼやけ、どのスキルが本当に重要なのかが見えにくくなる可能性もあり、運用負荷だけが高まり、現場での実用性が低下してしまうおそれがあるのです。
まずは特定の部署やチーム、特定の重要な業務プロセスなど、範囲を限定してスキルマップ作成に着手し、運用を通じてノウハウを蓄積しながら段階的に対象を広げていくアプローチが、結果的にスムーズな導入と定着につながります。
スキル習得のレベル設定が曖昧にならないようにする
スキルマップの中核となるのが、各スキルの習熟度を測るレベル設定とその評価基準です。このレベル設定が曖昧だと、スキルマップ全体の信頼性が揺らぎ、効果的な活用が難しくなります。
例えば、「レベル2:だいたいできる」「レベル3:かなりできる」といった抽象的な定義では、評価者によって解釈が異なり、評価結果にばらつきが生じてしまいます。
これでは、従業員のスキルレベルを客観的に比較したり、育成目標を明確に設定したりすることが困難です。従業員自身も、何を達成すれば次のレベルに進めるのかがわからず、モチベーションを維持しにくくなるでしょう。
レベルを定義する際は、「レベル2:マニュアルを見ながら一人で作業を完了できる」「レベル3:マニュアルなしで作業を完了でき、簡単なトラブルにも対応できる」のように、具体的な行動や達成可能な成果を基準として設定することが重要です。
個々のスキルアップ状況を定期的に評価・フィードバックする
スキルマップを作成し、それにもとづいて育成計画を実行するだけでは十分ではありません。従業員一人ひとりのスキルが実際にどの程度向上したのかを定期的に評価し、その結果を本人に具体的にフィードバックすることが重要です。
このプロセスを怠ると、育成計画が計画倒れになったり、従業員の成長実感やモチベーションが低下したりする可能性があります。定期的な評価は、育成の進捗状況を確認し、必要に応じて計画を修正するための重要な情報源です。
また、従業員にとっては、自身の努力や成長が認められていることを実感し、次のステップへの意欲を高める機会となります。たとえば、半期ごとや四半期ごとの目標設定面談や1on1ミーティングの場で、スキルマップを使いながら、「〇〇スキルが計画通りレベルアップしましたね。」「次は△△に挑戦しましょう」「◻︎◻︎スキルはもう少しOJTが必要なので、来月は重点的にサポートします」といった具体的な対話を行うことが効果的です。
継続的な評価と丁寧なフィードバックを通じて、従業員の着実なスキルアップを支援していく姿勢が求められます。
一度作成したスキルマップを放置せず、状況に合わせて更新する
組織を取り巻く環境や従業員のスキルは常に変化するため、一度作成したスキルマップをそのまま放置してしまうと、すぐに実態と合わなくなり、その価値を失ってしまいます。
新しい技術が導入されれば新たなスキルが必要になりますし、業務プロセスが変更されれば求められるスキルも変わります。従業員は日々の業務や研修を通じてスキルを向上していくため。これらの変化を反映せずに古いスキルマップを使い続けると、誤った情報にもとづいて人材配置や育成計画を行ってしまうリスクがあるのです。
スキルマップを生きたツールとして活用し続けるためには、定期的な見直しと更新が欠かせません。年に1回、半期に1回など、頻度とタイミングを決め、スキル項目や評価基準の妥当性、従業員のスキルレベルの情報を最新の状態に保つ運用ルールを確立しましょう。
スキルマップが育成だけに偏らず、業務の効率化や生産性向上にも結びつける
スキルマップは人材育成のための強力なツールですが、その活用が育成計画の策定や研修管理だけに留まってしまうのはもったいない状態です。
スキルマップ本来の目的は、従業員の能力向上を通じて、組織全体の業務効率化や生産性向上といった事業成果につなげることにあります。そのため、スキルマップで可視化された情報を、日々の業務運営や改善活動に積極的に結びつけていく視点が重要です。
たとえば、スキルマップの情報にもとづいて、「この工程には〇〇スキルを持つ人員が不足しているから応援を配置しよう」「△△のスキルを持つメンバーが増えたから、新しい業務プロセスを導入しよう」といった具体的なアクションを立案できます。
また、複数の業務スキルを持つ従業員だからこそ気づく業務間の無駄や改善点などを吸い上げ、プロセス改善に活かすことも有効でしょう。スキルマップ導入の効果測定においても、生産性指標やリードタイム、コスト削減効果といったビジネスへの貢献度を測る視点を持つことが望ましいです。
スキル習得が一部のメンバーに偏らないよう全員参加を促す
多能工化を進める際、スキルアップの機会や育成リソースが、特定の優秀な従業員や、意欲の高い一部のメンバーだけに集中してしまうことがあります。しかし、このような偏りは、組織全体の多能工化レベル向上を妨げるだけではなく、育成対象から外れた従業員の不公平感やモチベーション低下を招くリスクがあります。
多能工化は、一部のエースを育成するだけでなく、チーム全体の底上げを図ることで、組織全体の柔軟性や対応力を高めることを目指すべきです。
そのため、スキルマップを活用した育成計画においては、対象となる従業員ができるだけ幅広くスキルアップの機会を得られるように配慮することが重要です。もちろん、個々の適性やキャリアプラン、役割に応じて、目指すスキルレベルや習得するスキルの種類に差をつけることは合理的です。
しかし、基本的なスキル習得の機会や、新しい業務に挑戦するチャンスは、公平に提供されるべきでしょう。多能工化の方針や研修機会に関する情報をオープンにし、全ての対象従業員が自分も参加できる成長できると感じられるような環境づくりを心がけることが大切です。
スキルマップの運用が属人的にならず、組織全体で共有・管理できる体制を構築する
スキルマップの作成・更新・管理といった一連の運用業務が、特定個人の経験や努力に依存している状態は、長期的な運用において大きなリスクとなります。
人事部の一担当者だけがスキルマップのファイル管理や更新方法を熟知しているといった状況では、その担当者が異動や退職した場合、スキルマップの運用が停止してしまったり、情報が引き継がれずに失われてしまったりする可能性があります。
また、情報が一部の人にしかアクセスできない状態では、他の管理職や従業員がスキルマップを日々の業務や自身のキャリアプランニングに活用できません。
このような属人化を避け、スキルマップを組織の共有財産として安定的に運用するためには、組織的な管理体制の構築が必要です。スキルマップのデータは、共有サーバーやクラウドサービス、専用のスキル管理システムなどで一元管理し、適切なアクセス権限を設定します。
また、更新手順や評価基準などを明記した運用マニュアルを作成・共有し、担当者が変わっても運用が継続できるようにします。組織として責任を持ってスキルマップを管理・運用する体制を整えることが、その持続的な活用を支えます。
スキル管理ツールの3つの活用事例
スキル管理ツールを導入し、人事評価や情報管理における課題を解決した企業の具体的な活用事例を3つご紹介します。
<スキル管理ツールの3つの活用事例>
福島トヨタ自動車株式会社:紙ベースの評価・情報管理業務からの脱却
株式会社日比谷花壇:長年変わらなかった人事評価制度の刷新とタレントマネジメントの推進
株式会社メディカルリンク:目標設定・評価プロセスの透明化による従業員のモチベーション向上
これらの事例を通じて、ツールがどのように組織の成長や従業員の活躍を支援するのか、具体的なイメージを膨らませましょう。
買い物かご一杯の紙束から解放。評価・情報管理のペーパーレス化を実現

福島トヨタ自動車株式会社では、人事評価や昇給対象者抽出に膨大な工数がかかっており、入退社者対応を含む社員情報管理も煩雑化していました。紙ベースでの運用により、作業負担やセキュリティ面の課題も抱えていました。
HRBrainを導入し、人事評価や社員情報をシステム上で一元管理できる環境を整えたことで、役職者が必要な情報を即座に確認できる仕組みを構築し、ペーパーレス化を推進しています。
全従業員がシステム利用に適応し、ペーパーレス運用を100%達成しました。社員情報の可視化により人事業務の効率化が進み、健康診断フォローや人員配置検討など、さまざまな人事施策の基盤となるデータ管理体制を構築できた事例です。
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20年ぶりの人事評価制度刷新とタレントマネジメントの活用

株式会社日比谷花壇では、20年以上人事評価制度の見直しが行われず、評価基準があいまいで、上司による評価のばらつきが課題となっていました。また、従業員の資格やスキル情報の管理が不十分で、適材適所の人材配置が難しい状況にあるだけではなく、入力システムの利便性の低さもあり、従業員のキャリア形成支援が進まないという問題も抱えていました。
設立72年を迎える節目に、人事評価制度を20年ぶりに刷新しました。同時に、タレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入し、スマホからの入力を可能にするなど、従業員が使いやすい環境を整備しています。従業員のスキル・資格情報をHRBrainに一元管理し、可視化することで、適切な人材配置とキャリア形成を支援する体制を構築しました。
HRBrain導入により、設立以来はじめて対象従業員全員が目標入力を完了することができました。従業員が自ら資格取得やキャリア形成に向けた行動を起こすなど、主体的なキャリア自律が促進されたとともに、役職者は全国の従業員情報を簡単に把握できるようになり、評価の質も向上しました。
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HRBrainの活用で薬剤師のモチベーションをUP!地域密着型の調剤薬局の挑戦とは

株式会社メディカルリンクは、地域密着型の調剤薬局として、従来型の薬局の枠を超えたサービス提供を目指していました。しかし、医療業界特有の仕組みにより、積極的な業務遂行が直接的な成果に結びつきにくく、医療職の努力を正当に評価できる制度が不足しており、従業員のやりがいやモチベーション向上に課題を感じていました。
医療職のプロセス評価を重視した新しい人事制度を設計し、その運用を支援するためにHRBrainを導入しました。HRBrain上で1on1面談を記録し、日々の業務プロセスを可視化・評価する仕組みを構築したほか、資格取得状況の一元管理やマネージャー教育など、従業員の成長を促す人材戦略を推進しています。
HRBrainの導入によって、従業員管理の効率化に成功し、薬剤師のモチベーションが向上しました。結果として、「日本でいちばんありがとうをいただける健康サポート薬局」という企業ミッションに向けた、従業員一人ひとりの主体的な行動を促進する組織づくりに向けて大きく前進しています。
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おすすめのスキル管理ツール「HRBrain」

多能工化を成功させるには、従業員のスキルを可視化・管理することが不可欠です。そこでおすすめなのがHRBrainです。
HRBrainを活用することで、以下のような効果が期待できます。
スキルの見える化:誰がどの業務に対応できるかを一目で把握
育成計画の立案:習得すべきスキルや優先度を整理しやすい
適材適所の配置:スキルマップをもとに最適な人員配置が可能
属人化防止:業務を特定の個人に依存しない体制づくりに貢献
多能工化を推進したい企業にとって、HRBrainは強力なパートナーになるでしょう。
多能工化は、単なるスキル習得ではなく、組織全体の生産性や柔軟性を高める取り組み
多能工化は、単なるスキル習得を超え、組織全体の生産性や柔軟性を高める重要な取り組みです。そのためには、まず従業員一人ひとりが持つ資格や経験、技能を正しく可視化し、スキル情報を管理・活用することが不可欠です。
スキルの見える化により、人材配置の最適化や育成計画の策定が可能になり、戦略的人事を実現できます。スキルマップの活用をさっそくはじめ、スキルデータを積極的に活用して、強い組織づくりに取り組みましょう。
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