#人材育成
2024/12/09

アサーティブコミュニケーションとは?意味と職場での例や話し方と伝え方のポイントを解説

目次

アサーティブコミュニケーションとは、自分の気持ちや意見を「誠実」かつ「率直」に主張しつつも、相手の気持ちも尊重し、「対等」に表現することを意味しています。

「相手を尊重し、相手の意見を受け止め、自分の意見を主張できる」というアサーティブコミュニケーションを行うためには、職場のポジションを意識しすぎず、「対等なコミュニケーション」を心掛ける必要があります。

この記事では、アサーティブコミュニケーションの意味や4原則、アサーティブコミュニケーションが必要とされる背景、アサーティブコミュニケーションのメリット、アサーティブコミュニケーションの考え方、アサーティブコミュニケーションの具体例、アサーティブコミュニケーションのポイントについて解説します。

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アサーティブコミュニケーションとは

アサーティブコミュニケーションの語源は、行動療法の「アサーティブネス(Assertiveness)」で、日本語では「自己主張すること」を指します。

自己主張と聞くと、自分の意見を強く主張して押し通すように聞こえますが、そうではありません。

アサーティブコミュニケーションとは、自分の気持ちや意見を「誠実」かつ「率直」に主張しつつも、相手の気持ちも尊重し、「対等」に表現することを意味し、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」という4原則を重視しています。

つまり、アサーティブなコミュニケーション力を身に付けることで、対等なコミュニケーションができるようになります。

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アサーティブコミュニケーションが必要とされる背景

アサーティブコミュニケーションは、1950年代にアメリカの心理学者が「行動療法」の1つとして開発しました。

その後、1970年代から1980年代のアメリカにおいて、人種差別や性差別に対する新しいコミュニケーション方法として広がって行き、日本では1980年代から注目を集めるようになりました。

さらに現在では、ハラスメントへの意識の高まりや、対話力の必要性から再注目されるようになった手法です。

特に、コロナ禍でテレワークが増加したことで、社内コミュニケーションの難易度が高まったことで、マネジメントにアサーティブコミュニケーションを取り入れる企業が増えました。

また近年、「アンガーマネジメント」という怒りと上手に付き合うための心理トレーニングが注目されています。

アンガーマネジメントの次に行う「相手に伝える」具体的なコミュニケーション手法としても、アサーティブコミュニケーションは評価されています。

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アサーティブコミュニケーションのメリット

アサーティブコミュニケーションのメリットについて確認してみましょう。

アサーティブコミュニケーションのメリット

  • 良好な人間関係を構築できる

  • 組織の生産性がアップする

  • ストレスを軽減できる

良好な人間関係を構築できる

アサーティブコミュニケーションのメリットとして、「良好な人間関係を構築できる」ことがあげられます。

上司と部下で行う1on1ミーティングの際にも、アサーティブコミュニケーションを活用することができます。

アサーティブコミュニケーションを行うことで、上司は自身の考え方のバイアスに気づき、部下に対しての伝え方を工夫できるようになります。

また、アサーティブコミュニケーションはパワハラなどのハラスメントの防止にも効果的です。

一方、部下も、「こんなことを言ったら、上司はどう思うだろうか」などと萎縮することなく、素直に感情を表すことができるようになり、例え受け身の人であっても、訓練を重ねることで自分の主張ができるようになるため、良好な人間関係を構築することが可能になります。

さらにコロナ禍以降、テレワークなどオンラインでのコミュニケーションが増加しています。

画面越しでのコミュニケーションの場合、どうしてもタイムラグがあることや、相手の表情が分かりにくいため、ちょっとしたことで「相手を怒らせてしまったのだろうか?」と不安に思ってしまう場合があります。

しかし、アサーティブコミュニケーションを行うことで、オンラインでのコミュニケーションでも、バイアスを排除し、落ち着いたコミュニケーションができるようになります。

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組織の生産性がアップする

アサーティブコミュニケーションのメリットとして、「組織の生産性がアップする」ことがあげられます。

上司と部下の間だけでなく、同僚の間でもアサーティブコミュニケーションができるようになると、対等かつ「分かりあえる」関係が築けるようになり、職場の心理的安全性につながり、組織の生産性がアップします。

アサーティブコミュニケーションができるようになることで、「この組織では、例え私がどんなアイディアを出したとしても、笑われるようなことにはならない」と安心できるようになります。

たとえ、意見、考え方、価値観などに違いがあったとしても、互いに尊重し信頼できる関係が築けると、建設的な議論ができるようになります。

また、相手からも尊重されていることを実感できるため、のびのびとアイディアを出し、自分の意見を伝えられるようになります。

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ストレスを軽減できる

アサーティブコミュニケーションのメリットとして、「ストレスを軽減できる」ことがあげられます。

アサーティブコミュニケーションでは、自分が感じたことや思ったことを、素直に相手に伝えることができるため、「我慢」することが少なくなり、ストレスを軽減することができます。

また、「自分がどうしたいか」という軸を持てるようになるため、自分や相手を責めるような気持ちを抑えやすくなります。

例えば、自分と相手に価値観の違いがあったとしても、状況をそのまま受け入れて、傾聴し、尊重し、話し合うことができるようになります。

特に受け身の人は、「相手にどう思われるだろうか」という不安から解放され、発言ができるようになります。

アサーティブコミュニケーションを行うことで、話し合いの際に感じるストレスが軽くなります。

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アサーティブコミュニケーションの考え方

アサーティブコミュニケーションの考え方として、アサーティブコミュニケーションの3つのタイプについて確認してみましょう。

アグレッシブ(攻撃的タイプ)

アサーティブコミュニケーションで、自分の言い分を押し通す、攻撃的なタイプを「アグレッシブ(攻撃的タイプ)」と言います。

一見「はっきり言いたいことを言えている」と思われがちですが、裏には「自分の方が正しい」「間違いを指摘されたくない」といった心理があるため、相手を尊重する気持ちが無く、配慮ができていない状態を指し、大声で相手を言い負かすなどの威嚇的な行動によって、相手の優位に立とうとする傾向があります。

アグレッシブが上司になった場合、パワハラなどを引き起こしがちであると言えます。

ノンアサーティブ(受け身タイプ)

アサーティブコミュニケーションで、アグレッシブとは反対で、相手に合わせようとする意識が強いタイプを「ノンアサーティブ(受け身タイプ)」と言います。

心の根底に「相手に嫌われたくない」「間違っていると思われたくない」という思いが強く、主張が苦手な傾向があります。

ノンアサーティブは、素直に感情を伝えることができないため、常にモヤモヤとしたストレスを抱えがちであると言えます。

アサーティブ

アサーティブコミュニケーションで、相手を尊重、配慮しつつ、対等なコミュニケーションができるタイプをアサーティブと言います。

アグレッシブのように一方的に意見を押し付けることもなく、ノンアサーティブのように主張ができないこともありません。

アサーティブは、例え相手が違った意見や考え方であったとしても、反論することなく受け止め、そのうえで、自分の考えを相手に伝えることができます。

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アサーティブコミュニケーションの具体例

アサーティブコミュニケーションの具体的な手法について確認してみましょう。

アサーティブコミュニケーションの具体例

  • 対等なコミュニケーションを取る

  • 相手の話を聞いて理解し受け止める

  • 事実と主観を分けることで伝える

  • 抽象的な言葉を具体的な言葉に変換することで伝わる

  • 言わないという選択肢があることを知る

対等なコミュニケーションを取る

アサーティブコミュニケーションの具体例として、「対等なコミュニケーションを取る」ことがあげられます。

上司や部下のように立場が異なったとしても、対等なコミュニケーションを取ることは可能です。

対等と言うと、立場に配慮せずに馴れ馴れしい振る舞いをすることを思い浮かべがちですが、そうではありません。

対等とは、「私は立場が下なのだから、こんなに偉い人に、反対意見なんて発言できない」といった考え方に囚われない状態のことを指します。

ポジションという考え方に囚われて内心で見下したり、へりくだったりしすぎると、どうしても行動にそうした思いが現れてしまいます。

上司は部下をコントロールしようとせず、また部下は上司に対して謙遜しすぎない状態で、建設的な話し合いやコミュニケーションができる状態をともに目指すようにしましょう。

相手の話を聞いて理解し受け止める

アサーティブコミュニケーションの具体例として、「相手の話を聞いて理解し受け止める」ことがあげられます。

1on1を例にすると、上司が話し過ぎてしまう傾向にあります。

相手の話を理解した気になると、ついその話を遮って結論を述べたくなる衝動にかられてしまう場合があります。

しかし、大事なことは「最後まで相手の話に耳を傾ける」ことです。

また、相手が自分の考えとまったく異なることを話している場合、反論したくなる気持ちが湧き起こるかもしれませんが、抑えるようにしましょう。

相手を尊重し、内容を正確に理解し、まずは受け止める努力をしましょう。

「きちんと相手の話を聞いている」というサインを出すことも有効です。

本人はしっかりと聞いているつもりでも、「目線が合わない」「身体の向きが正面を向いていない」など、無意識の癖が出ている場合があります。

最後まで話を聞き終わってから、もし相手と異なる意見を伝えたいと思うことがあれば、相手に配慮しながら主張するようにしましょう。

理解したからと言って、必ずしも相手の意見に「同意」する必要はないことも、アサーティブコミュニケーションのポイントです。

事実と主観を分けることで伝える

アサーティブコミュニケーションの具体例として、「事実と主観を分けることで伝える」ことがあげられます。

アサーティブに注意したい時は、「事実」と「主観」を分けることが大切です。

例えば、メールサポートを行う部署のチームリーダーがメンバーを注意する際について確認してみましょう。

事実と主観を分けた良い例の場合、「メールサポートで、お客様から2つ質問が来ていることに対して、1つの回答をして完了ステータスにしていた件が、今日を含めた3日間で10回ありました。全文を最後まで読んでから、返信をするように注意してください。お客様からの信頼を損なってしまうことにもつながるし、内容によってはクレームに発展してしまう恐れがあります。」

主観による決めつけがある悪い例の場合、「いつも的外れなことをお客様に返信していますが、ちゃんとマニュアルを読んでますか。」

事実と主観を分けることによって、「どのようにすればいいのか」を伝えることができます。

抽象的な言葉を具体的な言葉に変換することで伝わる

アサーティブコミュニケーションの具体例として、「抽象的な言葉を具体的な言葉に変換することで伝わる」ことがあげられます。

職場では世代の異なる従業員同士がコミュニケーションを行う必要があります。

また、バックグラウンドの異なる多様な人材の活用も進んでいる今、相手に「伝える」のではなく「伝わる」ためのコミュニケーションを、努力して行うことが求められています。

「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」「もっと」などの、抽象的な言葉には注意が必要です。

「いったいどのような行動をして、その状態までもっていけば良いのか」を、噛み砕いて擦り合わせる行為を、意識的に行わなければなりません。

「いつまでに」「どのような行動を行うのか」という、2点をセットにして伝えることで「ちゃんと言ったのにできていない」といったようなトラブルを防止することができます。

ふわっとした言葉を使って「伝えた」気になるのではなく、具体的な言葉で相手に「伝わる」ことを心掛けるようにしましょう。

言わないという選択肢があることを知る

アサーティブコミュニケーションの具体例として、「言わないという選択肢があることを知る」ことがあげられます。

相手に「伝える」ことも重要ですが、時には「言わない」という選択肢があるということを理解しておく必要があります。

言わないということは、何でも心の内に溜め込んで、言わないでいるということとは異なります。

「後で振り返った際に、自分が後悔しないか」というポイントが、発言の軸になります。

自分が主体的に判断した結果として言わないことを選択したのであれば、これもアサーティブな取り組みであると言えます。

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アサーティブコミュニケーションのポイント

アサーティブコミュニケーションのポイントについて確認してみましょう。

アサーティブコミュニケーションのポイント

  • 自分の思考のクセやバイアスを知る

  • 伝える内容と表情を一致させる

  • 相手への伝え方を言語化し繰り返し練習する

  • アサーティブでない相手を責めない

自分の思考のクセやバイアスを知る

アサーティブコミュニケーションのポイントとして、「自分の思考のクセやバイアスを知る」ことがあげられます。

「〇〇なのだから〇〇に違いない」といった自分のバイアスに自覚を持つことが、アサーティブコミュニケーションのポイントです。

「相手のために」と配慮したつもりが、バイアスの決めつけによって、かえって相手を傷付けてしまう場合があります。

例えば、実家で不幸があった従業員に対して、「出張が頻繁にある負担の多い仕事からは外してあげよう」と考えたとします。

しかし相手によっては、「キャリアを築く機会から外された」と感じてしまう可能性もあります。

気遣いであっても本当に相手が望んでいるものであるかは、当人以外は分かりません。

まずは、決めつけずに相手に提案してみましょう。

また、相手が微妙な反応をした際に、素直に聞いてみることで、自分のバイアスに気付けることもあります。

他にも、「過去〇〇したけれど、失敗してしまった」と、以前に起こった出来事に対して必要以上に自分の中で重み付けをしてしまうこともバイアスと言えます。

過去は過去、今は今、と区別する考え方が大切です。

伝える内容と表情を一致させる

アサーティブコミュニケーションのポイントとして、「伝える内容と表情を一致させる」ことがあげられます。

「注意しているのに笑ってしまう」といった、ちぐはぐな行動は、相手を混乱させることにつながります。

特にノンアサーティブの場合は、「相手に嫌われたくない」という気持ちを強く持っているため、「こんな事を言ったら嫌われてしまうから、キツいことを言ったと認識されないためにも、柔らかい表情で伝えよう」と考えた結果、伝える内容と表情が一致しない状態を引き起こしてしまう場合があります。

言われた相手は「笑っているということは、たいした内容ではないんだ」と判断してしまったり、ちぐはぐな態度に「何か裏があるのかもしれない」と勘ぐってしまったりと、混乱してしまいます。

注意する内容に合致した表情や態度で相手に臨むことで、正しく伝えたい内容を伝えることができます。

相手への伝え方を言語化し繰り返し練習する

アサーティブコミュニケーションのポイントとして、「相手への伝え方を言語化し繰り返し練習する」ことがあげられます。

アグレッシブに対して何かを伝える場合、「萎縮してしまって伝えたいことを口に出せない」という事があるかもしれません。

まずは、相手へのモヤモヤした思いを言語化します。

書き出すことで、不満だけではなく「自分が相手にどうして欲しいのか」という建設的な意見が明らかになります。

そして、相手への要望や伝えたいことを書いた紙を持ったまま、口に出して練習し、いざというときに発言できるよう練習しましょう。

次第に相手に言いたいことが言えるようになります。

アサーティブでない相手を責めない

アサーティブコミュニケーションのポイントとして、「アサーティブでない相手を責めない」ことがあげられます。

自分がアサーティブに行動できたからといって、相手も同じことをできるとは限りません。

「自分がこんなに相手に配慮して行動したのだから、相手も同じように行動してくれるはずだ」と期待してしまうと、もし期待と異なった場合に裏切られたような気持ちを抱いてしまいます。

あくまで「相手が」ではなく、「自分」がアサーティブなコミュニケーションができることをゴールにしましょう。

アサーティブでない相手であったとしても、相手を責める気持ちは持たないように心掛けましょう。

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アサーティブコミュニケーションは「対等なコミュニケーション」を心掛ける

アサーティブコミュニケーションとは、自分の気持ちや意見を「誠実」かつ「率直」に主張しつつも、相手の気持ちも尊重し、「対等」に表現することを意味します。

アサーティブ コミュニケーションには、「アグレッシブ(攻撃的タイプ)」「ノンアサーティブ(受け身タイプ)」「アサーティブ」の3つのタイプがあります。

「相手を尊重し、相手の意見を受け止め、自分の意見を主張できる」というアサーティブタイプになるためには、職場のポジションを意識しすぎず、「対等なコミュニケーション」を心掛ける必要があります。

また、テクニックとして、自分のバイアスに自覚的になること、伝える内容と態度を一致させることなど、相手にどうやったら「伝わる」のかを意識するようにしましょう。

そして、自分がアサーティブに行動できたからといっても、相手にも同じような行動を期待することはやめましょう。

あくまで「自分」を主体にして、「自分がアサーティブなコミュニケーションを行う」ことをゴールとして定める必要があります。

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株式会社HRBrain 宮本幸輝
宮本 幸輝
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

大学卒業後、コンサルタント企業に入社し、大手家電メーカーや製薬企業に人材マネジメントや研修を提供。また50名〜500名規模企業への⼈事評価制度構築⽀援など組織開発領域を幅広く携わる。

その後、医療業界のネットベンチャー2社のジョイントベンチャーの立ち上げに携わり、自社組織の開発にも貢献。

総合経営コンサルティング会社に移り、50名の⽼舗企業からベンチャー企業、IT(2000名)規模の⼈事制度構築⽀援を複数経験。その他にも経営戦略コンサルや⼤⼿⽯油卸企業の店舗組織変⾰プロジェクトにも参画。

現在は、HRBrain コンサルティング事業部で組織人事コンサルタントとして活躍中。
人事戦略策定から人事評価制度コンサルティング領域まで年間約20社以上を支援する。

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