#人材育成
2023/09/06

アシミレーションとは?部下の本音をファシリテーターを介して伝える

目次

    アシミレーションとは新しく異動してきた上司と部下の相互理解を「強烈に」促す組織開発の手法の1つです。
    この記事では、アシミレーションのメリット、やり方、注意点について紹介します。

    アシミレーションとは

    アシミレーションとは上司と部下の間に生じた溝を早期に解決するための組織開発の方法です。
    アシミレーション(Assimilation)は、日本語では「同化」と訳される言葉です。
    その言葉のとおり、一般的に、外から異動でやってきた上司が新しい組織で3カ月~6カ月ほど過ごしたのち、行われるセッションです。
    部下がファシリテーターを通して、上司に「変えてほしいこと」「質問」などを伝えることによって、上司は今まで「どう見られていたのか」ということに気づくことができます。
    そうした相互理解の取り組みによって、よりよい組織作りに効果があるとされています。

    もし、新しい上司に対して部下の不満が溜まっている場合は、ファシリテーター役を上司の上司が行う、「スキップレベル」という方法もあります。

    上司・部下との相互理解以外にも、企業のビジョンを浸透させたいときや、チームの活性化をはかりたいときに活用されることがあります。

    アシミレーションのメリット

    アシミレーションのメリットについて説明します。

    早期のフィードバックによるミスマッチの解消

    異なる部署からやってきた上司は、以前の部署での成功体験から知らず知らずのうちに、そのやり方を通そうとする傾向があります。
    部署の部下は、そのような上司に対して「もっとこうしてほしい」と思うこともあるでしょう。
    そうした互いのミスマッチについて、アシミレーションは効果を発揮します。

    上司の異動からちょうど3カ月~6カ月の時期に行われることで、その「違和感」が消えないうちにアシミレーションを行うことが可能です。

    早いタイミングで行うことによって、上司と部下の間のミスマッチを解消することができます。

    チームの中で一体感が生まれる

    上司と部下がファシリテーターを介して素直に互いを理解しようと試みることによって、チームには一体感が生まれます。
    「同じ目的に向かって努力をする仲間」だという意識が芽生えることは、より一層組織を強固なものにします。
    たとえ困難があったとしても、「やり遂げよう」とチームで対処することができるようになります。

    生産性がアップする

    部下は、ファシリテーターを介して上司に自分の意見が聞き入れられたことによって、「自分の意見が尊重されている」という体験ができます。

    そうした体験によって、「自分は、例えリスクのある発言・行動をしたとしても、この組織の中では安全である」という心理的安全性が得られます。

    心理的安全性が高まった職場では、活発なコミュニケーションが生まれるため、結果として生産性がアップすることがわかっています。

    アシミレーションのやり方

    では、具体的なアシミレーションのやり方について紹介します。

    アシミレーションの計画を立てる

    アシミレーションを行うにあたり「いつ行うのか」「どこまで関係者を集めるのか」「どこで行うのか」などの計画を立て、スケジュールを確定させます。
    先に述べましたが、実施時期は上司が異動してから3カ月~6カ月の間に行われることが一般的です。
    また、ファシリテーターについてもアサインします。
    ファシリテーターには部下の質問・意見を上司に伝えるという重要な役目があります。
    場を調整する力量が求められるため、注意深くアサインしましょう。

    上司は退席し、ファシリテーターが部下から質問・意見を引き出す

    アシミレーションを行うにあたって、「ファシリテーター」「上司」「部下(複数人)」を集めます。
    アシミレーションを行う目的を確認しあったのち、いったん上司は退席します。
    上司の退席後、ファシリテーターは部下から上司に対する質問・意見を引き出します。

    <部下に対する質問例とその回答例>

    上司について知りたいこと

    • どのようなコミュニケーション方法(チャット・メール・電話・対面)が好きか。もし、案件によって異なるのであれば、具体的なレベルを知りたい

    • 休日はどのように過ごしているのか

    • 最近読んで面白かったビジネス書はあるか

    • 尊敬している人は誰か(社内外問わず)

    • どんな想いでこの会社に入社し、何を成し遂げたいと思っているのか

    • 大切にしていること・ものは何か

    上司に何をしてほしいか

    • 〇〇という取引先の間に入って〇〇について調整してほしい

    • 〇〇の部署の上司から「評価はされないが、どちらかの部署がやらなくてはならない仕事」を押し付けられているので、調整してほしい

    上司に何をやめてほしいか

    • 〇〇のときに〇〇する癖がある。威圧的に感じられるのでやめてほしい

    • 途中までは話を聞いてくれるが、「わかった」と思った瞬間に先回りして話し始めるのをやめてほしい

    • 外部から電話があったとき、「〇〇社の〇〇様からお電話です」と繋いでも、しばらく電話を取らずにいるのが気になってしまう。すぐに取ってほしい。忙しいなら「10分後に折り返し電話する」など、具体的な指示がほしい。

    • 席でパチンパチンと爪を切る音が気になるので、やめてほしい。

    上司に何を知ってほしいか

    • この部署では定期的に〇〇をしている。外からやってきた上司には意味のない行為に思えるかもしれないが、〇〇という背景があり、〇〇という効果があるので、ぜひ一緒に取り組んでほしい。

    部下が退出し、上司が入室する

    ファシリテーターは、部下の誰が何の発言をしたのかを伏せたうえで、質問・意見の内容のみを上司に伝えます。
    上司は、ファシリテーターからの説明を受けます。
    上司は、部下の率直な意見や、無自覚な自身の癖に直面することになります。

    もしかしたら、動揺から、つい「誰が言ったのか」と感情的になって、ファシリテーターにその質問をぶつけてしまうこともあるかもしれません。
    上司には、アシミレーションの内容を受け止める度量・器の大きさが求められます。

    また、ファシリテーターは動揺せずに、そうした上司に対してアドバイスを行うなど、中立の立場を崩さずに、役に徹することが必要とされます。

    部下が入室し、上司は質問・意見にコメントする

    部下が入室したあと、上司は質問・意見に対してコメントを行います。

    もし、上司が「自分は〇〇という意図で行ったことが、どうやら部下には〇〇だと誤解されているようだ」と感じた場合は、その内容を率直に伝えます。

    「やめてほしい」ことに対しても、「このように改善を行うよう努力する」など、思っていることを伝えます。

    そうした取り組みによって、上司と部下の間で相互理解を深めることができます。

    アシミレーションのポイント

    アシミレーションのポイントについて説明します。

    部下の意見の匿名性を守る

    ファシリテーターは、ときによって上司にネガティブなフィードバックをする必要があります。
    その際に、必ず守らなければならないことは部下の匿名性です。

    意見を述べる部下に対しても、匿名性を守ることを確約して安心させましょう。

    ファシリテーターの人選

    部下の本音を引き出すための傾聴力だけでなく、上司のアドバイザーとしてのスキルも必要となります。
    アシミレーションが成功するかどうかは、ファシリテーターの手腕にかかっているといっても過言ではありません。

    ファシリテーターの人選は慎重に行いましょう。

    アシミレーションの目的を適切にインプットする

    アシミレーションは、決して上司の悪口をいう場ではありません。
    建設的な取り組みにするために、あらかじめ目的を適切にインプットする必要があります。

    導入前に、自社のカルチャーにマッチするか検討する

    アシミレーションは、割り切ったドライな社風の企業や、外資系の企業には効果的ですが、そうでない企業においては慎重に導入する必要があります。

    特に上司にとっては耳の痛いことを直接フィードバックされる機会であるため、メンタルのケアも必要となるでしょう。
    間違っても、上司へ苦言を呈した部下の「犯人探し」が起こるような事態は避けなければなりません。

    まとめ

    アシミレーションとは、外から異動でやってきた上司が新しい組織で3カ月~6カ月ほど過ごしたのち、行われるセッションです。
    上司とのミスマッチを早期解決する方法として活用されています。
    ファシリテーターを介して、部下は上司に「質問」のほか「やめてほしいこと」「してほしいこと」などを伝えます。
    アシミレーションは、上司の悪口をいう場ではないことを部下にきちんとインプットし、力量のあるファシリテーターをアサインすることが肝要です。

    HR大学編集部
    HR大学 編集部

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