組織開発とは?人材開発との違いや実施方法と企業事例を解説
- 組織開発とは
- 「OD」(Organization Development)とは
- 組織開発が注目される背景
- 多様化が組織に与える影響
- 組織開発と人材開発の違い
- 組織開発で人事部に求められること
- 組織開発の種類
- 診断型組織開発(Diagnostic Organization Development)
- 対話型組織開発(Dialogic Organization Development)
- 組織開発の進め方
- 目的の明確化
- 現状把握
- 課題の設定
- トライアルによるアプローチ
- 効果検証とフィードバック
- 成功事例の共有と展開
- 組織開発のフレームワーク
- OKR(目標管理)
- フューチャーサーチ
- AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
- ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)
- 7S
- ワールドカフェ
- コーチング
- 組織開発の企業事例
- 組織開発の企業事例1:ヤフー株式会社
- 組織開発の企業事例2:株式会社アイ・オー・データ機器
- 組織開発に必須の現状把握や課題設定をクラウドシステムで実施する方法
組織開発とは、組織で働く人と人との関係性や相互作用によって組織を活性化させることです。
この記事では、組織開発と人材開発との違いや、診断型組織開発と対話型組織開発、組織開発の進め方や組織開発のフレームワーク、組織開発の企業事例について解説します。
組織開発に重要な「アンケート」の実施と分析
組織開発とは
組織開発(Organization Development)とは、会社などの組織で働く人と人との関係性や相互作用によって、組織を活性化させていくことや、そのための支援を行うという考え方のことです。
組織開発は、組織の抱える課題を洗い出し、従業員ひとりひとりが当事者として、解決策を考え実行します。
「OD」(Organization Development)とは
「OD」は「Organization Development」の略称で、「O(Organization)」は「組織」を、「D(Development)」は「開発」をあらわし、「組織開発」の意味あいを持ちます。
DOは、1950年代終盤にアメリカで生まれ、欧米を中心に発展してきた手法です。
アメリカの心理学者で組織心理学の創始者である、エドガー・シャインは、1965年に発行した著書「組織心理学」で、組織について「ある共通の明確な目的、ないし目標を達成するために、分業や職能の分化を通じて、また権限と責任の階層を通じて、多くの人びとの活動を合理的に協働させることである」と定義しています。
つまり、組織開発は、組織全体をより活性化させるために、組織を構成する従業員ひとりひとりが、組織全体の問題点や課題点、改善点について考え、取り組みを行うことで、組織のさらなる発展や改革を目指すことです。
(参考)エドガー・H.シャイン「組織心理学」
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組織開発が注目される背景
組織開発が注目されるようになった背景には、「成果主義」と「働き方の多様化」があげられます。
これまで、日本の企業で当たり前となっていた、「年功序列」や「終身雇用」といった考え方から、「成果主義」や「働き方の多様化」へと変化していった結果、「事業環境の変化」や「雇用の流動化」が進み、組織が求める人材の変化や多様化への対応が必要になったため、組織開発が求められるようになりました。
多様化が組織に与える影響
組織開発が注目されるようになった一番の要因である「多様化」が、組織に与える影響について確認してみましょう。
これまで日本は、長期雇用を前提に、同じメンバーでチームワークを大切にしながら組織力を高めてきました。
しかし、近年では、性別、国籍、雇用形態や働き方に至るまで、組織の中の多様化が急速に進んでいます。
厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-」での調査では、「5年前(2013年)と比較し、企業の内部人材の多様化が進展したか」という質問に対する回答をまとめています。
「多様化が進んだ」と回答した企業の割合と、「一様化が進んだ」と回答した企業の割合の差分は、「全規模・全産業」でプラスという結果が示され、多様化が進んだと考える企業が多いことが分かります。
このように、多様化が進んだ結果、組織内にさまざまな価値観や働き方が存在するようになり、画一的だった時代と比べ、組織の方向性を統一することは難しくなったと言えます。
また、多様化に伴い、テレワークなどが増え、従来のコミュニケーションの仕組みも減少し、同僚や部下の状況の把握も難しくなる中、組織として同じ方向を向くための取り組みとして組織開発が注目されるようになりました。
(参考)厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-」
組織開発と人材開発の違い
組織開発と人材開発の大きな違いは、組織開発が「人と人との関係性や相互性」を対象として「組織改善を図る」のに対し、人材開発は「人(個人)」を対象として「個人の成長やスキルアップを図る」という点です。
人材開発は、もともと英語の「Human Resource Development(人的資源の開発)」から生まれた言葉で、人材を経営資源として捉えた際に、本来の能力を発揮できるように開発するという意味合いがあり、人材の持つ潜在能力の開花など人的資源を有効活用する意味が含まれています。
そのため、課題解決に対するアプローチの仕方が異なります。
人材開発の場合は「人(個人)」を対象にするため、研修やOJT、キャリア開発などにより、個人のスキルを伸ばすことによって課題の解決を試みます。
一方、組織開発の場合は「人と人との関係性や相互性」を対象とするため、上司や同僚との関係性に良い変化を起こすためのワークショップを設けるなどで課題の解決を試みます。
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組織開発で人事部に求められること
組織開発は、単なるコミュニケーションの活性化のみにとどまらず、 経営目標に向かって、価値観が共有されている状態であることが必要とされます。
そのため、組織開発は個々の組織に任せるのではなく、経営と一体となって人事部門が取り組んでいくべき課題になります。
人事部門が主体となって組織開発に取り組んでいくためには、経営目標を深く理解することはもちろん、組織への直接的な介入ができるよう、人事部門のメンバーのコーチングやファシリテーションスキルを強化することも必要です。
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組織開発の種類
組織開発のアプローチには、「診断型組織開発」と「対話型組織開発」の大きく2つの方法があります。
組織開発の種類
診断型組織開発(Diagnostic Organization Development)
対話型組織開発(Dialogic Organization Development)
診断型組織開発(Diagnostic Organization Development)
診断型組織開発とは、専門家によるインタビューやアンケートの実施よって得られたデータをもとに、組織の現状を診断し、効果的な介入手段や計画を立てるアプローチ方法です。
従業員満足度調査を実施し、データを分析して、従業員の満足度を高めるための施策を実行していく、といった取り組みも診断型組織開発の1つです。
診断型組織開発は、客観的なデータをもとに、状態を把握することができますが、対象となる組織のメンバーが受け身的な姿勢になってしまう場合もあります。
対話型組織開発(Dialogic Organization Development)
対話型組織開発とは、従業員との対話を通して、現状を把握し課題を洗い出し、自分たちの組織のありたい姿を明確にして、主体的な取り組みを生み出していくアプローチ方法です。
従業員の想いから取り組みが生まれるため、従業員のモチベーションを保ちやすくなります。
組織開発の進め方
組織開発を進めるうえで必要な、6つのステップについて確認してみましょう。
組織開発の進め方
目的の明確化
現状把握
課題の設定
スモールスタートによるアプローチ
効果検証とフィードバック
成功事例の共有と展開
目的の明確化
組織開発を行うために、まずは「組織の目的」「組織が目指すべきゴール」を明確にする必要があります。
どのような組織を目指すかは企業によって異なります。
組織の現状を踏まえ、どのような組織を目指すのか「目的の明確化」をすることが大切です。
現状把握
組織開発を進めるためには、自社の現状や問題を適切に認識し把握することが大切です。
特に、従業員同士の関係性やコミュニケーションは、目に見えないため、事実に基づいて現状を把握する必要があります。
従業員へのインタビューや従業員満足度などのサーベイや社内アンケートを活用して、情報収集をしたうえで、課題の洗い出しを行い、適切な「問題設定」を行うようにしましょう。
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課題の設定
現状把握から「問題設定」ができたら、解決すべき「課題の設定」を行います。
組織開発では、課題が従業員個人の能力や資質にある場合でも、個人の課題と捉えるのではなく、組織の仕組みや従業員や上司との関係性に注目し、組織の課題として捉えます。
そのため、課題が複雑化しやすいため、従業員へのインタビューやアンケートを実施し、調査結果を分析し、原因となる課題の仮説を設定するようにします。
トライアルによるアプローチ
課題の仮説が設定できたら、試験的な取り組みを行うための、アクションプランを設定します。
まずは、部門を限定してのワークショップの実施や、定期ミーティングの実施など、スモールスタートで着手できるアクションプランを、トライアルとして実施します。
また、短期間で効果測定が行えるよう、定量的、定性的なデータを収集できるようなプランを組み立てておくようにしましょう。
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効果検証とフィードバック
スモールスタートでアクションプランを実施し、成果が出たら、得られた結果をもとに、効果検証を行い、各部署にフィードバックを行います。
効果検証とフィードバックを迅速に行うことで、組織開発に関わる従業員のモチベーションの向上が見込めるでしょう。
また、組織開発に関する取り組みに対しての、会社全体の理解や発展にもつながります。
成功事例の共有と展開
組織開発の施策での成功事例について、成功のポイントの分析と共有をしたうえで、施策を全社に展開します。
成功モデルの課題解決のためのプロセスや効果などの分析を行い、明確にポイントを伝えることで、どのように施策に取り組めば良いかが明確になります。
また、施策を全社に展開した後も、効果検証を行い、施策をブラッシュアップしていくようにしましょう。
組織開発のフレームワーク
組織開発に関するアプローチ方法として、代表的なフレームワークについて確認してみましょう。
組織開発のフレームワーク
OKR(目標管理)
フューチャーサーチ
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)
7S
ワールドカフェ
コーチング
OKR(目標管理)
OKRとは、高い目標を達成するための目標管理手法のことです。
「O(objective)」は「目標」を、「KR(key results)」は「主要な結果」を意味し、それぞれを設定し、個人と企業の目標をリンクさせ、目標設定、 進捗確認、評価という一連の流れを高い頻度で行うことで生産性を上げます。
OKRは、 目標を設定するだけでなく、その到達度などについて従業員間での情報共有も必要です。
そのため、週ごとに決まった時間を設けて、確認、共有する時間を作ります。
対話を通じて企業の目標を共有し、同じ方向を向くようにするため、組織開発の手法のひとつとして有効です。
▼「OKR」についてさらに詳しく
Googleやメルカリも導入する目標管理手法、OKRの基礎知識
目標意識を高め、飛躍的な成長を実現する「OKR」入門書
フューチャーサーチ
フューチャーサーチとは、「ホールシステム・アプローチ」とも呼ばれ、大規模な対話を通した組織開発の方法です。
テーマに関わる利害の異なるステークホルダーが一堂に会し、具体的な課題に焦点を当ててアクションプランの作成に取り組む方法です。
基本の形としては、8種類の関係者×各8名の合計64名を集め、2. 5日間のミーティングを通して、過去や現状の共有を行い、未来の姿に合意して行動計画を立てます。
企業の組織開発だけでなく、行政や地域コミュニティ、紛争解決など、世界のさまざまな領域で活用が進んでいるアプローチ方法です。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
AIとは、「Appreciative Inquiry」の略で、直訳すると「価値向上の探求」を意味します。
AIは、ポジティブな問いや探求(インクワイアリー)により、個人の価値や強み、組織における真価を発見し認め(アプリシエイティブ)、それらの価値の可能性を最大限に活かす仕組みを生み出すためのプロセスです。
AIでは、「問題は何か」を問うのではなく、「組織や人の持つ強みや潜在力は何か」を考えます。
組織や人に活力を与えているものを見つけ、強みや潜在力を発揮できる未来の姿を探求していくのがAIのアプローチ方法です。
ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)
ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)とは、それぞれの頭文字を取って、「MVV」とも呼ばれます。
MVVの3要素
ミッション(Mission):恒久的に変わらない企業の存在意義
ビジョン(Vision):中長期的に達成したい目標(目指す姿)
バリュー(Value):達成の手段(価値観や行動指針)
MVVは、企業の共通価値を表す手法の1つで、共通の価値観をより具体的な階層構造で表現
することができるため、経営陣から従業員まで、企業全体の共通認識をつくることができ、ブレない、目標の設定や、企業方針の策定が可能です。
▼「ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)」についてさらに詳しく
ミッション、ビジョン、バリューの作り方とは?具体的な事例も紹介
7S
7Sとは、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した理論で、企業には3つのハードな経営資源と、4つのソフトな経営資源があると捉えて、それら7つの資源をもとに、個々の企業に最適な事業戦略を考えることができるとされる、フレームワークのことです。
7Sの要素
ハードの3S(組織の構造に関するもの)
1.戦略(Strategy):事業の方向性
2.組織(Structure):組織の構造や形態
3.システム(System):組織の制度やルール
ソフトの4S(人に関するもの)
4.スキル(Skill):組織に備わっている能力、競合優位性
5.人材(Staff):個々の人材の本質や能力
6.スタイル(Style):社風や組織文化
7.価値観(Shared Value):会社のビジョン
ワールドカフェ
ワールドカフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中、少人数に分かれたテーブルで20分〜30分程度自由に対話を行い、メンバーをシャッフルしながら3回程度実施し、対話を発展させていくフレームワークのことで、1,000人以上の参加者でも実施が可能なフレームワークです。
ワールドカフェは、少人数に分かれ、テーブルを移動しながら対話をするため、相手の意見を聞きやすく、自分の意見も伝えやすいため、相互理解を深め、集合知を生み出すことができます。
コーチング
コーチングとは、「答えは対象者のなかにある」ことを前提として、目標達成に向けて対象者の能力や気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法のことです。
コーチングは、自主的に取り組む姿勢や、ポジティブな気持ちを促すことから、組織開発においても活用されるフレームワークです。
組織開発の企業事例
実際に企業で行われている、組織開発の取り組み事例について確認してみましょう。
組織開発の企業事例1:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社の組織開発は、2012年の経営改革から始まりました。
専門チームによる各部門への課題解決の介入を経て、最終的に全社に展開するというように時間をかけて、組織開発に取り組んでいます。
この取り組みの中で始まったのが「1on1ミーティング」です。
「1on1ミーティング」とは、人材育成を目的とした施策の1つで、月1回や週1回などの短いスパンで上司と部下が 1対1で行う面談のことです。
「1on1ミーティング」の実施による成果で、上司と部下、つまり縦の関係が強くなっていきました。
また、「10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功」を掲げる同社は、組織開発の取り組みの中で、成功事例だけでなく、失敗事例についても社内イントラ上に掲載して横展開し、失敗をあえて見える化することで、経験から学び取る組織文化を根付かせました。
(参考)ダイヤモンド・オンライン「ヤフー流・新サービスを生む人材が育つ「組織開発」の仕組み」
▼「1on1」についてさらに詳しく
1on1とは? 従来の面談との違いや効果を高めるコツ
1on1ミーティング入門書
組織開発の企業事例2:株式会社アイ・オー・データ機器
株式会社アイ・オー・データ機器は、2013年の大規模リストラ後、「自主性を発揮できる組織づくり」を目指しました。
最初に人事スタッフがセミナーに参加して組織開発について勉強をし、徐々に社内に組織開発の取り組みを広めましたが、従業員の意識変革は困難でした。
その後、まずは現状を知るために、全従業員を対象に「組織行動調査」を実施したところ、現場と人事スタッフとの価値観のズレが明らかになりました。
外部の専門家と共に調査結果についての議論と分析を繰り返した後、その結論に基づき「OKRの導入」「カンバセーション」「評価制度の変更」の3つの人事施策を立案しました。
また、組織開発の施策が組織に望ましい影響を与えることができているかを、定期的に調査を行って検証しています。
(参考)産労総合研究所「【事例 No.205】アイ・オー・データ機器| 組織開発 | 企業事例集」
▼「評価制度」についてさらに詳しく
会社の評価制度の実態とこれから求められる評価制度とは
組織開発に必須の現状把握や課題設定をクラウドシステムで実施する方法
組織開発には、さまざまな手法があり、企業によって抱える「課題」も異なります。
組織開発を進めるうえで、自社の組織開発の目的の明確化と、組織の現状の把握、課題の設定は重要です。
また、組織開発に関わる、従業員同士の関係や、コミュニケーション、企業と従業員との認識のギャップなど、目には見えないものを数値化し把握するためには、社内アンケートの実施と分析が欠かせません。
組織開発に必須である、「現状把握」や「課題設定」も、タレントマネジメントシステムを利用することで適切に把握し設定することが可能になります。
また、組織開発のフレームワークや施策として実施した、「OKR」や「1on1」などの管理もシステム上で簡単に行え、データ収集や分析の効率化が図れます。
HRBrainタレントマネジメントの特徴
検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
▼「タレントマネジメント」についてさらに詳しく
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