#人材育成
2025/12/24

業務の属人化を解消する方法とは?原因や組織にもたらす影響も解説

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業務の属人化とは、ある業務・作業が特定の社員や担当者にだけ依存しており、他の人に引き継ぎや共有がされていない状態のことです。業務が属人化されていると、企業の成長を妨げる可能性があるだけでなく、担当者の休暇中に顧客対応ができず、クレームに発展するケースもあります。

本記事では、属人化が生じる根本的な原因を明らかにし、組織全体で業務を共有できる体制を構築する方法を紹介します。業務の属人化を解消したい場合は、最後までご覧ください。

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業務の属人化とは

業務の属人化とは、特定の人だけが業務の手順やノウハウ、進捗を理解しており、他の人では代替できない状態のことです。

たとえば、あるベテラン担当者が、書類作成について暗黙のうちに手順を理解しており、そのやり方がマニュアル化されていないとします。もしその担当者が休んだり異動したりすると、残された人たちはその書類の作成方法がわからず、納期遅れやミスにつながるケースがあります。

この状態では、業務の再現性を損ね、組織を継続的に運営するための基盤が弱くなってしまいます。組織を運営するうえでは、業務の属人化を解消し、誰が欠けても業務が止まらない体制を目指すことが重要です。

業務の属人化が起こる原因

業務の属人化は、以下のような要因によって発生します。

  • 従業員間で情報共有やコミュニケーションが不足している

  • 業務の専門性が高い

  • 業務フローが整備・可視化されていない

  • メンバーの育成が十分にできていない

これらの原因は独立しているのではなく、相互に影響し合っています。以下ではそれぞれの背景を詳しく解説します。

従業員間で情報共有やコミュニケーションが不足している

業務の属人化は、情報共有やコミュニケーションの不足から生まれることが多くあります。特に、近年のリモートワークの普及により、雑談や立ち話から得られていた暗黙知の共有機会は減少しました。

その結果、「こういうときはこうする」という経験則が、先輩から後輩へ伝わりにくくなりました。

定期的な情報交換の場を設けても、形式的な報告に終始し、実務で役立つノウハウが共有されないまま終わってしまいます。

特に柔軟な働き方を採用している企業では、組織として意図的に情報共有の仕組みを構築しない限り、属人化は自然に進行してしまうでしょう。

業務の専門性が高い

高度な専門知識や長年の経験が必要な業務では、属人化が避けられません。

たとえば、技術的な知識や過去の取引経験、顧客のクセなど長年の暗黙知が担当者の頭の中だけにあると、他のメンバーに引き継ぎが難しくなります。

また、専門性の高い業務を担当する社員は、試行錯誤を重ねて独自のノウハウを蓄積しており、その知識を言語化すること自体が困難です。

実際には、専門業務でも手順を細分化すれば標準化は可能ではあるにもかかわらず、専門性の高さを理由に属人化を放置すると、担当者への依存度や組織の脆弱性の高まりは避けられません。

業務フローが整備・可視化されていない

業務フローが整備・可視化されていない状態は、属人化を生む要因のひとつです。

「いつ、誰が、何を、どのように行うか」が明確でないため、担当者の判断にすべてが委ねられます。結果として、同じ業務でも人によってやり方が異なり、品質にもばらつきが生じます。

また、業務フローの可視化がなされていないと、問題が発生した際にも原因の特定が困難です。業務の全体像が見えないため、改善点を見つけることも効率化を図ることもできません。

仮に新しいメンバーが加わった際も、体系的な教育ができず、先輩の背中を見て学ぶしかない状況が続くため不満が発生するリスクもあります。

メンバーの育成が十分にできていない

計画的な人材育成が行われていないと、特定の社員だけにスキルが集中し、社員の成長速度にも差が生じます。

積極的に学ぶ姿勢のある社員は独自に知識を吸収しますが、そうでない社員はいつまでも昇給・昇進できません。また、育成に必要なマニュアルや教育プログラムが整備されていないため、指導する側も何をどう教えればよいかわからない状態に陥ります。

たとえば、多忙な現場では、「OJT(現場での実務を通じたトレーニング)で学べ」と言われても、実際には担当者が目の前の業務に追われ、後輩への指導時間を確保できない可能性もあります。

結果として、経験豊富な社員だけが業務をこなし、若手は簡単な作業しか任されないという悪循環が発生するでしょう。

業務の属人化による組織への影響

属人化を放置すると、組織運営に深刻な問題が発生する可能性があります。表面的には業務が回っているように見えても、実際には以下のような影響があります。

  • 業務の効率やクオリティが落ちる

  • ノウハウやナレッジを社内に蓄積できない

  • 負担が大きいメンバーの離職につながる

これらの影響は徐々に拡大するため、気づいた時に早めに対処することが重要です。

業務の効率やクオリティが落ちる

属人化が進むと、担当者が不在の際に業務が停滞し、効率が低下します。

たとえば、特定の営業担当者が突発的に休むと、その顧客への対応が完全にストップします。何か問題が発生した際に代わりに対応しようとしても、過去の経緯や顧客の細かい要望がわからず、的外れな提案になるケースも少なくありません。結果として、顧客満足度が下がり、商談・契約の機会を逃すことにつながるでしょう。

また、属人化した業務では、同じ業務でも担当者によって成果物のレベルが異なり、組織として一定の品質を保証できなくなります。業務プロセスが標準化されていないため、改善や効率化も進まず、組織全体の生産性が停滞します。

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ノウハウやナレッジを社内に蓄積できない

属人化した業務のノウハウは担当者の頭の中にしか存在せず、組織の資産としては蓄積されません。ベテラン社員が長年かけて培った効率的な作業手順や、トラブル対応のコツなどは、文書化されなければ失われてしまいます。

実際に、優秀な社員が退職した後、同じ業務に新しい担当者が就いても、以前と同じレベルの成果を出すまでに数年かかるケースもあります。

また、ノウハウが共有されないと、他のメンバーが同じ失敗を繰り返したり、既に解決された問題に再び取り組んだりする無駄が生じる可能性もあります。組織全体で知識を共有できれば、誰もが最善な業務に取り組めるため、業務の質が底上げされるはずです。

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負担が大きいメンバーの離職につながる

属人化が進むと、特定の社員に業務が集中し、過度な負担がかかります。「自分にしかできない業務がある」という状況は、存在価値を感じられるように思える一方で、実際には休暇も取りづらく、常にプレッシャーにさらされます。

体調不良や家庭の事情があっても、業務を他の人に任せられないため、無理をして出社せざるを得ません。

このような状態が続くと、心身の健康を損ない、最終的には離職につながる可能性もあります。優秀な人材ほど多くの業務を任されるため、属人化のリスクも高くなります。

業務の属人化を解消する方法

属人化を解消するには、体系的なアプローチが必要です。以下の5つの方法を実行することで、組織全体で業務を共有できる体制を構築できます。

  • 属人化が発生している業務を洗い出す

  • 業務マニュアルや手順書を作成する

  • 責任や権限を分散させる

  • 情報共有をする仕組みを構築する

  • 業務の可視化やナレッジ共有に強いITツールを導入・活用する

属人化が発生している業務を洗い出す

属人化を解消するには、現状を正確に把握することが重要です。

まず、すべての業務をリストアップし、担当者が不在の場合に対応できない業務を特定します。具体的には、各部署で業務棚卸を実施し、業務ごとに「対応可能な人数」「引き継ぎの難易度」「業務が停止した場合の影響度」を評価しましょう。

たとえば、顧客対応で特定の営業担当者しか過去の経緯を知らない案件や、システム設定で特定のエンジニアしか操作方法を理解していない業務などが該当します。

この洗い出し作業では、担当者へのヒアリングだけでなく、実際の業務フローを観察することも効果的です。属人化度合いを数値化すると、優先的に対処すべき業務が明確になります。

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業務マニュアルや手順書を作成する

洗い出した属人化業務について、誰でも実行できるようマニュアルを整備します。マニュアル作成では、手順を細かく分解し、判断基準や注意点まで明記することが重要です。

たとえば、「顧客からクレームがあった場合の対応手順」であれば、クレーム受付時の確認事項やエスカレーションの判断基準、報告フォーマットまで具体的に記載します。文章だけでなく、スクリーンショットや動画を活用すると理解しやすくなります。

マニュアルは作成して終わりではなく、実際に活用しながらフィードバックを集めて継続的な改善が必要です。業務の変更があった際は速やかに更新し、常に最新の状態を保ちましょう。

責任や権限を分散させる

業務の属人化を解消するには、特定の人物に業務が集中しないよう、役割分担を見直しましょう。ここで有効なのが、「誰が責任者で、誰が実行者で、誰に相談し、誰に報告するか」を明確にする手法です。

たとえば、これまで1人の担当者がすべて行っていた顧客対応業務を、「主担当」「副担当」「承認者」に分けることで、主担当不在時も業務を継続できます。

権限についても、承認や決裁のルールを明文化し、担当者以外でも判断できる基準を設けます。ただし、責任を分散させる際は、各メンバーの業務量や能力を考慮し、新たな負担の偏りが生まれないような配慮が必要です。

情報共有をする仕組みを構築する

日常的に情報が共有される環境を整えることで、暗黙知の形式知化を促進できます。

具体的には、週次のチームミーティングで各自の業務進捗だけでなく、「今週学んだこと」や「困ったことと解決方法」を共有する時間を設けます。また、プロジェクト完了時には必ず振り返りを行い、成功要因や失敗から得た教訓を文書化しましょう。

情報共有時は、一方的な報告に終わらせず、質問や議論を促すことが効果的です。社内SNSやナレッジベースを活用し、いつでも過去の情報にアクセスできる状態を作っておくと、全社員がすぐに確認できます。共有された情報は整理・分類し、必要な時に検索できるよう管理しましょう。

業務の可視化やナレッジ共有に強いITツールを導入・活用する

属人化解消を効率的に進めるには、適切なITツールの活用が欠かせません。

業務管理ツールを使えば、業務の担当者や進捗状況を可視化できます。ナレッジ共有ツールでは、マニュアルやノウハウを一元管理し、全社員がいつでもアクセス可能になります。

ツールを選定する際には、解決したい課題を明確にし、費用対効果を試算してから導入を決めましょう。

まずは無料プランやトライアルで操作性を確認し、現場の社員が実際に使えるかを検証するのがおすすめです。

情報の一元管理と見える化で属人化を解消|株式会社カントウ流通

株式会社カントウ流通_導入事例

食品を中心とした輸送事業を営むカントウ流通では、従業員情報が社内に散在し、特定の担当者しか把握できない属人化が発生していました。ドライバーの喫煙有無や制服サイズ、面談記録などがExcelで管理されるも、更新状況が不明瞭で情報活用ができない状態でした。

そこでHRBrainを導入し、従業員情報を一元管理するプラットフォームを構築。ドライバーの詳細情報や面談記録をシステムに集約し、誰でも必要な情報にアクセスできる体制を整備しました。

その結果、情報の「見える化」により検索性が向上し、業務の属人化が解消されました。喫煙率55%というデータから、新人教育時の先輩ドライバーとの同乗指導時に喫煙の有無を確認したうえで組み合わせを考える細やかな配慮が可能になり、業務効率も改善しました。

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業務の属人化解消には「HRBrain」の活用がおすすめ

属人化を根本から解消するには、業務や人の情報を一元管理しながら、組織全体で「見える化」する仕組みを構築する必要があります。

その手段として有効なのが、人材マネジメントシステム「HRBrain」です。HRBrainでは、従業員のスキルや評価、目標・進捗などを一つのプラットフォームで管理でき、誰がどの業務を担当し、どこまで進んでいるかを可視化できます。

これにより、担当者にしか対応できない属人化された業務をなくし、チーム全体で情報を共有できる環境構築が可能です。

さらに、評価データやスキル情報をもとに適材配置や育成計画を立てることで、人材の偏りや担当者依存を防ぐ効果も期待できます。

属人化を防ぐ仕組みを自社で確立したい企業は、まずHRBrainを活用して、人と業務の情報を資産として蓄積する体制を整えることからはじめてみましょう。

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株式会社HRBrain 中野 太朗
中野 太朗
  • ISO30414リードコンサルタント/アセッサー

  • ビジネス統括本部 エンタープライズセールス

新卒で大手総合人材サービス会社にて新卒採用のコンサルティング営業に従事し、スタートアップ〜ナショナルクライアントまで数百社を担当。2023年にHRBrainに入社。上場企業中心に組織診断サーベイ、タレントマネジメント等を提案。

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