退職代行とは?使われた際に企業が取るべき対応や注意点について解説
- 退職代行とは
- 退職代行の利用が増加している背景
- 職場でのハラスメントやいじめ
- 引継ぎが終わらず退職ができない
- 強引な引き止め
- 退職代行の形態
- 弁護士
- 退職代行ユニオン
- 退職代行サービス
- 退職代行を使われた際に企業がすべき対応
- 代行業者の身元を確認する
- 従業員が本当に依頼をしたのかを確認する
- 従業員の雇用形態を確認する
- 退職届の提出と貸出品の返却を依頼する
- 退職代行の対応を拒否できるケース
- 退職代行の対応を拒否できないケース
- 退職代行を使われた際の留意点
- 消化していない有給休暇がないか確認する
- 退職の手続きは速やかに行う
- 他の従業員に配慮する
- 退職代行を使われないためにすべきこと
- 従業員との良好な関係を維持する
- 退職代行を使われざるを得ない要因が自社にないか振り返る
- 退職代行の利用防止には企業と従業員との信頼関係が重要
退職代行とは、従業員本人に代わって弁護士やユニオンなどの業者が企業に退職の意思を伝えるサービスを指します。
この記事では、退職代行が増加している背景、退職代行業者の形態、退職代行を使われた際に企業がすべきこと、退職代行の対応を拒否できるケースとできないケース、退職代行を使われた際の留意点、退職代行を使われないためにすべきことについて解説します。
退職予兆など従業員のコンディションを見える化
退職代行とは
退職代行とは、従業員本人に代わって企業に退職の意思を伝えるサービスを指します。
退職代行は、「弁護士事務所」「退職代行ユニオン」「民間の退職代行サービス」が行っており、代行内容は業者によって異なり、退職の意思を企業側に伝えるのみの場合や、退職の意思を伝えたうえで、未払いの残業代の請求までを行う場合などがあります。
退職の際は、従業員が自分で企業に退職したい旨を伝え、退職に必要な手続きや引継ぎなどを行うのが一般的です。
従業員があえて自分で退職を伝えずに退職代行を使うということは、職場に退職を伝えづらい何らかの理由があるものと考えられます。
退職代行の利用が増加している背景
退職代行を利用する際、従業員は代行業者に費用を支払う必要があります。
費用の負担があるにも関わらず、退職代行の利用は近年増加傾向にあると言われています。
退職代行の利用増加の背景には、具体的にどのような理由があるのか確認してみましょう。
退職代行の利用が増加している背景
職場でのパワハラやいじめ
引継ぎが終わらず退職ができない
強引な引き止め
職場でのハラスメントやいじめ
退職代行の利用が増加している背景として、「職場でのハラスメントやいじめ」があげられます。
従業員が退職代行を使う理由の1つに、職場で上司や同僚からのハラスメントやいじめを受けている可能性があります。
例えば、上司から日常的に高圧的な態度を取られたり、大声で叱責されるといった状況で、上司本人に退職を申し出ることは難しいでしょう。
また、同僚からいじめを受けている場合も、退職を申し出ることによっていじめが悪化するのではないかという不安から、退職の意思を伝えづらい状況になりがちであると考えられます。
▼「ハラスメント」についてさらに詳しく
引継ぎが終わらず退職ができない
退職代行の利用が増加している背景として、「引継ぎが終わらず退職ができない」ことがあげられます。
退職を申し出て、引継ぎ後に退職することになったものの、引継ぎをなかなか終わらせてもらえないといった場合にも、退職代行が使われることがあります。
引継ぎが終わらないために退職できない状況は、業務が特定の従業員にしかできない、業務が属人化している職場で起こりやすい傾向があります。
業務が属人化していると、引継ぎのために膨大な量のマニュアルや引継ぎ書を作成したり、同じ作業ができる後任の担当者が決定するまで、退職を先延ばしにされる場合があります。
いつになれば退職できるのか目処がたたない不安から、従業員が退職代行サービスを利用する場合があります。
強引な引き止め
退職代行の利用が増加している背景として、「強引な引き止め」があげられます。
退職の意思を伝えてもさまざまな理由で引き止められ、退職を了承してもらえない場合にも、退職代行が使われることがあります。
企業が従業員の退職を引き止める理由には、人員不足を避けたいといった理由の他に、退職者を出すことによって、上司が自身の評価が下がることを避けたいと考えている場合などがあります。
「退職を思いとどまってほしい」と何度も話し合いの場を設ける、「また今度話そう」と言って何度も返答を濁されるなどの行為は、近年では「慰留ハラスメント」とも呼ばれています。
▼「退職の相談をされた際の対応」についてさらに詳しく
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退職代行の形態
退職代行は、パワハラや長期化する引継ぎなどによって退職できずにいる従業員にとって、心強い味方になるサービスと言えます。
退職代行には、具体的にどのような形態のものがあるのか、退職代行の形態について確認してみましょう。
退職代行の形態
弁護士
退職代行ユニオン
退職代行サービス
弁護士
退職代行の形態として、「弁護士」による代行があります。
弁護士は、退職の意思を企業へ伝える他、退職に関する条件の交渉を行ったり、退職に必要な事務手続きを代行したりすることができます。
また、弁護士という立場から、従業員と企業との間にトラブルがあった場合に、企業側へ損害賠償請求を行うことも可能です。
企業との交渉やトラブルにも対応できることから、スムーズに退職できない複雑な理由がある場合の利用に向いていると言えます。
一方で、弁護士という高度な資格を持つ人が代行を行うため、費用が比較的高額であることが多く、通常の費用の他に、成功報酬が発生する場合もあります。
退職代行ユニオン
退職代行の形態として、「退職代行ユニオン」による代行があります。
ユニオンとは、特定の企業に属していない社外の労働組合であり、自社に労働組合が無い従業員が正規雇用か非正規雇用かに関わらず加入できるものです。
退職代行ユニオンは、退職の意思を企業へ伝える他、退職に必要な事務手続きを代行することができます。
また、労働組合には団体交渉権があるため、企業とのさまざまな交渉にも対応することができます。
一方で、交渉が難航して裁判に移行した場合は、弁護士のように代理人となることはできません。
退職代行サービス
退職代行の形態として、「退職代行サービス」による代行があります。
退職代行サービスは一般的に民間企業が実施しており、近年、退職代行サービスの数が増えてきています。
民間企業による退職代行サービスは、退職の意思を企業へ伝えることはできますが、弁護士や退職代行ユニオンのように、企業と交渉をする権利は持っていません。
退職代行サービスは、費用が比較的安価で、スピーディーに対応できる点を強みとしている場合が多いです。
退職代行を使われた際に企業がすべき対応
退職代行を行う業者は、弁護士から民間企業まで形態も多岐にわたります。
企業が退職代行の業者から連絡を受けた際、どのように対応すべきなのか、退職代行を使われた際の企業の対応について確認してみましょう。
退職代行を使われた際に企業がすべき対応
代行業者の身元を確認する
従業員が本当に依頼をしたのかを確認する
従業員の雇用形態を確認する
退職届の提出と貸出品の返却を依頼する
代行業者の身元を確認する
退職代行を使われた際に企業がすべき対応として、「代行業者の身元を確認する」ことがあげられます。
退職代行業者から連絡を受けた際は、まず連絡をしてきたのがどのような業者なのかを確認します。
退職代行業者の形態の中で、企業と交渉をする権利を持つのは弁護士とユニオンのみです。
従業員に代わって交渉を行う旨を伝えられた際は、交渉を行える資格を持った業者であるかどうかを確認する必要があります。
具体的な身元確認の方法としては、まず業者の名称や氏名、連絡先を聞きます。
そして、当該業者が本当に存在するか、弁護士を名乗る場合は正規の資格を持つ弁護士であるか、ユニオンを名乗る場合は労働組合法に則った組織であるかどうかなどを確認しましょう。
正当な業者と確認できた場合は、改めてこちら側から連絡を入れます。
従業員が本当に依頼をしたのかを確認する
退職代行を使われた際に企業がすべき対応として、「従業員が本当に依頼をしたのかを確認する」ことがあげられます。
退職代行業者から連絡を受けた際は、当該従業員が本当に退職代行の依頼をしたのかどうかを確認することが大切です。
従業員の委任状を持っているか、本人確認のための運転免許証や保険証の写しを持っているかどうかなどを、確認すると良いでしょう。
稀ではありますが、第三者が当該従業員になりすまして、嫌がらせのために退職代行を利用している可能性もゼロではありません。
余計なトラブルを避けるためにも、最初に従業員本人の依頼であるかどうかを明確にすることが重要です。
従業員の雇用形態を確認する
退職代行を使われた際に企業がすべき対応として、「従業員の雇用形態を確認する」ことがあげられます。
従業員本人の代行依頼であることを確認できた場合は、従業員の雇用形態を確認します。
雇用形態の確認が必要な理由は、一般的に従業員から一方的に退職を申し出ることができるのは、無期雇用であることが前提であるためです。
有期雇用の従業員は原則、雇用契約によって決められた期間内に退職をすることはできません。
ただし、有期雇用の従業員であっても、病気などで療養が必要な場合や著しいパワーハラスメントが行われていた場合などは、雇用期間内に退職できる場合もあります。
また、雇用期間が1年を超える契約の場合は、雇用開始から1年が過ぎた後であればいつでも従業員側から退職を申し出ることができます。
退職届の提出と貸出品の返却を依頼する
退職代行を使われた際に企業がすべき対応として、「退職届の提出と貸出品の返却を依頼する」ことがあげられます。
従業員が退職する際は、書面で退職届を提出してもらう必要があります。
口頭の伝達のみで退職手続きを進めると、後々トラブルになってしまう可能性があるため、必ず従業員本人か窓口である代行業者に退職届の提出を依頼しましょう。
退職代行業者が退職届を送ってきた場合は、内容に不備がないかを確認し、退職届を受理したことを従業員側へ連絡します。
制服や名刺などの貸出品がある場合は、返却を依頼しましょう。
また、スマートフォンやパソコンなどで使用していた業務用のアカウントなども、忘れずに削除します。
退職代行の対応を拒否できるケース
退職代行業者への対応を企業側が拒否できるケースとして、「非弁行為の場合は拒否することができる」ということがあげられます。
非弁行為とは、弁護士法で定められている行為を弁護士資格を持っていない者が行うことを指します。
退職代行に関しては、資格を持っていない代行業者が、代理人として退職の手続きを進めることなどが、非弁行為にあたります。
非弁行為があったにも関わらず手続きが進み、退職届が受理された場合は、退職自体が無効になる可能性があります。
退職自体が無効になってしまうと、その後の手続きのやり直しが非常に複雑になるため、不要な手続きを避けるためにも、最初に退職代行業者の身元を十分に確認することが大切です。
退職代行の対応を拒否できないケース
退職代行業者への対応を企業側が拒否できないケースとして、「法律を遵守している場合は原則拒否できない」ということがあげられます。
退職代行業者が法律に則って手続きをしているかどうかを確認し、非弁行為などが無く、法律を遵守した手続きがなされている場合は、退職代行業者への対応を拒否することはできません。
民法では無期雇用の従業員はいつでも退職の申し出ができ、退職を申し出た日から2週間経つと雇用契約を解消できるとされています。
企業側は法律に反することのないよう、慎重に手続きを進める必要があります。
また、弁護士などの代理人が従業員側の窓口になっている場合、企業側は代理人を窓口として手続きを進める必要があります。
代理人に無断で従業員本人と連絡を取ってしまうと、従業員の利益を損ねることにつながりかねません。
従業員本人や代理人とのトラブルを避けるためにも、連絡の取り方について企業側は十分に配慮することが必要です。
退社手続きにおけるよくあるトラブルについて解説
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退職代行を使われた際の留意点
退職代行業者から連絡があった際、法律の観点で問題が無ければ、企業は丁寧に対応する必要があります。
退職代行業者への対応の際に、企業が特に気を付けるべき点にはどのような点があるのか、退職代行を使われた際の留意点について確認してみましょう。
退職代行を使われた際の留意点
消化していない有給休暇がないか確認する
退職の手続きは速やかに行う
他の従業員に配慮する
消化していない有給休暇がないか確認する
退職代行を使われた際の留意点として、「消化していない有給休暇がないか確認する」ことがあげられます。
退職の申し出があった際、企業は従業員本人が消化していない有給休暇が無いかを確認することが必要です。
退職する前に、残りの有給休暇を全て使って休みを取りたいと考える従業員は多く、従業員が有給休暇の取得を希望した場合、企業は原則拒否できないとされています。
また、未消化の有給休暇日数が多く、退職日までに消化できないことも起こり得ます。
未消化の有給休暇の買い取りなどを巡って争いになるケースもあるため、退職予定の従業員とは、未消化の有給休暇の取り扱いについて早めに話し合うことが重要です。
退職の手続きは速やかに行う
退職代行を使われた際の留意点として、「退職の手続きは速やかに行う」ことがあげられます。
退職代行業者を通じて、従業員本人の退職の意思を確認したら、手続きを速やかに行うことが大切です。
通常の退職と異なり、退職代行を使った従業員本人は、自社に対してネガティブな気持ちを持っていると考えられます。
引き止めたり、無理に退職を思いとどまらせたりしても、周囲との人間関係や業務へのモチベーションなどの観点から、良い結果になることは難しいでしょう。
また、間もなく退職する職場であることから、SNSなどで自社のネガティブな情報を拡散されてしまう可能性もあります。
従業員本人と自社の双方の利益のためにも、手続きを速やかに進めることが重要です。
▼「モチベーション」についてさらに詳しく
他の従業員に配慮する
退職代行を使われた際の留意点として、「他の従業員に配慮する」ことがあげられます。
従業員が退職する場合、退職する従業員の業務を他の従業員が引き継ぐ場合が多々あります。
一般的な退職の場合は、マニュアルや引継ぎ書などによる引継ぎを行いますが、退職代行を使った退職の場合は、通常の引継ぎを行うことがほぼできません。
後任の担当者が突然任された業務に戸惑ったり、残業過多で疲弊したりすることが無いよう、面談を行うなどしながら企業側が丁寧にフォローすることが重要です。
▼「残業時間」についてさらに詳しく
長時間労働のリスクについて解説
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退職代行を使われないためにすべきこと
従業員に退職代行を使われることは、企業にとって避けたいものです。
従業員に退職代行を使われないために、企業はどのような点に気を配ると良いのか、退職代行を使われないためにすべきことについて確認してみましょう。
退職代行を使われないためにすべきこと
従業員との良好な関係を維持する
退職代行を使われざるを得ない要因が自社にないか振り返る
従業員との良好な関係を維持する
退職代行を使われないためにすべきこととして、「従業員との良好な関係を維持する」ことがあげられます。
従業員が退職代行を使うことを避けるためには、日頃から従業員と上司が良い関係でいることが大切です。
ただし、場合によっては上司と従業員の気が合わない、業務上の困り事や悩みがあっても話しづらいといったこともあります。
従業員が1人で悩みを抱え込むことが無いよう、企業が対策をすることが重要です。
具体的な対策として、上司以外の人に相談ができる社内専用の相談窓口を設置する、社外の相談窓口についての情報を日頃から提供することなどがあげられます。
退職代行を使われざるを得ない要因が自社にないか振り返る
退職代行を使われないためにすべきこととして、「退職代行を使われざるを得ない要因が自社にないか振り返る」ことがあげられます。
従業員に退職代行を使われてしまった場合、なぜ従業員が直接自社に退職を申し出ず、退職代行業者に依頼したのか、要因を考えることが大切です。
従業員が退職代行を使う主な原因
人手不足や長時間労働、ハラスメントなどのため、退職を言い出しにくい
一度退職を申し出たが、上司や人事担当者などから強く引き止められた
職場の人間関係に問題がある
有給休暇に関する手続きや未払いの給料の請求をする必要がある
退職を言い出しづらい要因があればできる限り特定し、要因に応じた対策を講じることが重要と言えます。
▼「従業員情報の可視化」についてさらに詳しく
退職代行の利用防止には企業と従業員との信頼関係が重要
退職代行とは、従業員本人に代わって弁護士やユニオンなどの業者が企業に退職の意思を伝えるサービスを指します。
退職代行業者から連絡を受けた際は、本当に従業員本人が依頼をしたかどうか、従業員の雇用形態や勤続期間、未消化の有給休暇の有無などを確認することが必要です。
また、退職の手続きや企業との交渉ができる業者であるかどうかを判断するため、代行業者の身元も確認するようにしましょう。
企業にとって退職代行は、できる限り従業員に使ってもらいたくないサービスです。
普段から従業員と上司が良好な関係を築く努力をする他、残念ながら退職代行を使われることがあった場合は、何が要因だったのか、改善するためにどのような対策を講じるべきかを考えることが大切です。
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また、改善施策に直結した独自の設問設計によって、改善アクションを明確にし、従業員エンゲージメントの向上を実現します。
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人的資本の情報開示にも対応したデータの収集から活用
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▼「組織サーベイ」についてさらに詳しく
▼「従業員満足度」についてさらに詳しく
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