オンボーディングとは?意味と目的やプロセスを解説
- オンボーディング(onboarding)とは?
- オンボーディングの意味
- オンボーディングのカスタマーサクセスとしての意味
- オンボーディングの目的とは?
- オンボーディングの取り組み背景
- オンボーディングを企業が実施する目的
- オンボーディングとOJTの違い
- オンボーディングのメリットとは?
- 採用や人材育成コストの削減
- 新入社員の早期戦力化
- 従業員満足度の向上
- オンボーディングを成功させるカギ
- オンボーディングを成功させるカギ:受け入れ体制の整備
- オンボーディングを成功させるカギ:メンター制度の導入の検討
- オンボーディングを成功させるカギ:定期的なフォロー
- オンボーディングの実施のプロセス
- オンボーディングのプロセス:入社前
- オンボーディングのプロセス:入社後
- オンボーディングのプロセス:入社数か月後
- オンボーディングの実施事例
- オンボーディングの実施事例1:株式会社メルカリ
- オンボーディングの実施事例1:サイボウズ株式会社
- オンボーディングの実施事例1:株式会社博報堂
- オンボーディングを支援する「組織診断サーベイ」
- 若手の離職を防ぐためには
オンボーディングとは、新入社員の「早期離職の防止」や「定着化」などを目的として行われ、新入社員を企業にとって有用な人材に育成する施策やプロセスのことです。
新入社員が入社後、仕事へのギャップを感じたり、組織に馴染めずに、早期成長や即戦力化が出来ないことは、早期離職につながる原因にもなりかねません。
新入社員の離職率の増加や、雇用流動化に伴う中途入社者の定着率の低さが、企業にとって大きな課題となっているなか、オンボーディングは注目される施策の一つです。
この記事では、オンボーディングの意味と目的、OJTとの違い、導入のプロセス、企業の導入事例などについて解説します。
若手の早期離職の原因と対策を解説
オンボーディング(onboarding)とは?
オンボーディングとは、新入社員の「早期離職の防止」や「定着化」などを目的として行われ、新入社員を企業にとって有用な人材に育成する施策やプロセスのことです。
入社したばかりの新入社員は、周囲のサポートがなければ、企業文化に応じたコミュニケーションを取ることはできないもので、配属された職場のルールや必要な業務知識などは解るはずもありません。
オンボーディングは、入社時に行われる研修やOJTとは別に、会社やチームにいち早く馴染み、早期戦力化するための一連の取り組みで、入社後も継続的に実施される人材育成です。
オンボーディングの意味
オンボーディングは、もともと、船や飛行機に乗っているという意味の「on-board」から派生した言葉で、船や飛行機に新しく加わった乗務員を対象に、現場に早期に慣れてもらうための一連のプロセスを指します。
人事領域では、新入社員を組織や職場にいち早く慣れさせ、早期戦力化するために、企業文化やルール、個々の仕事の進め方などをサポートする教育や訓練のプログラムを指す言葉として使われています。
オンボーディングのカスタマーサクセスとしての意味
オンボーディングは、企業でいえば「従業員」を、飛行機や船でいえば「乗務員」というように、サービスを提供する側だけではなく、サービスを受ける側である「顧客」にも使われる言葉です。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングは、新規顧客などに、いち早く自社の製品やサービスを活用してもらうための一連の支援とプロセスを指します。
カスタマーサクセスとは、顧客の疑問や問題に、企業自ら能動的な支援を行うことで、成功に導き、リピーター獲得につなげる施策です。特に、継続的に利用してもらうことで収益を得るSaaSビジネスで注目を集めています。
オンボーディングの目的とは?
オンボーディングは、特に若年層の早期離職の増加を背景に注目されている施策です。
オンボーディングの取り組み背景と、企業がオンボーディングを実施する目的について確認してみましょう。
オンボーディングの取り組み背景
新入社員の離職率は3年以内に3割といわれてます。
2022年に厚生労働省が発表した調査によると、2019年3月に卒業した新規学卒就職者の、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が35.9%、新規大学卒就職者が31.5%となっています。
若年層の早期離職問題は、企業の大きな損失といえる問題です。
加えて、雇用流動化に伴い、転職が活発化する一方で、中途入社者の定着率の低さも大きな損失の要素です。
このような、「早期離職問題」や「定着率の低さ」を背景に、新入社員に対する支援の強化施策として、「オンボーディング」の取り組みが注目されています。
参考)新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
オンボーディングを企業が実施する目的
オンボーディングを企業が実施する一番の目的は、新入社員に職場に早く慣れてもらい、早期に戦力となって、「早期離職防止」や「定着率の向上」につなげることです。
ですが、オンボーディングは新入社員だけでなく、配属先のメンバーをも対象としています。
新入社員と既存の従業員を短期間で一体化させ、生産性を高めることこそ、オンボーディングの真の目的といえます。
オンボーディングとOJTの違い
オンボーディングと混同しやすい言葉に「OJT」や「新人研修」があります。
どちらも新入社員へ向けた施策ですが、目的や教育方法が違います。
オンボーディング:企業文化や組織に馴染むことが目的
OJT:業務面での即戦力化が目的
新人研修:業務面でのスキルアップが目的
OJTや新人研修は即戦力化やスキルアップが目的のため、短期間での施策になるのに対し、オンボーディングは組織に馴染むことが目的のため、長期的な施策になることも大きな違いです。
その他にも、オンボーディングと混合しがちな言葉には、「オフボーディング」があります。
オンボーディングが新入社員へ向けた施策なのに対して、オフボーディングは退職する従業員に対する施策です。
オフボーディングは、退職者と退職後も良好な関係を継続することを目的に実施されます。
▼「OJT」についてさらに詳しく
OJTとOFF-JTとは?メリット・デメリットや活用方法を解説
オンボーディングのメリットとは?
早期離職防止や定着率向上によって、「企業の損失を抑える」重要な取り組みである、オンボーディングのメリットについて、詳しく確認してみましょう。
オンボーディングのメリット
採用や人材育成コストの削減
新入社員の早期戦力化
従業員満足度向上
採用や人材育成コストの削減
採用コストや、新入社員が戦力となるまでの育成期間は、成果を求めず育成に注力する投資期間といえます。
投資期間を終えて戦力化し、投資を回収できる期間になった段階での離職は、企業にとって大きな損失であり、影響は計り知れません。
オンボーディングによって、早期離職を防ぎ、定着率の向上を図ることで、採用や人材育成コストの削減が期待できます。
新入社員の早期戦力化
新入社員は、職場に馴染んでいないと活躍しにくいものです。
とくに、明文化されていない企業文化やルール、人的交流の仕方などは、教育や支援がないと戦力化に弊害が出てしまう項目です。
オンボーディングにより、企業文化やルールを身に付けるなど、職場に馴染むための支援施策を実施することで、早期戦力化を図ることが可能です。
従業員満足度の向上
従業員満足度は、働きがいや職場環境、人間関係のほか、報酬や福利厚生など、さまざまな要素で構成されています。
オンボーディングによる活発なコミュニケーションや、組織で活躍するための企業文化やルールの理解は、従業員満足度の向上にもつながります。
新入社員の受け入れ準備もオンボーディングの重要な一部ですが、しっかりとした受け入れ体制をとることで、組織の一員として認められたという従業員満足につながる効果もあります。
▼「従業員満足度(ES)」についてさらに詳しく
従業員満足度(ES)とは?満足度構造や各社の取り組み事例を紹介!
オンボーディングを成功させるカギ
オンボーディングは、従業員の定着率の向上や、早期離職防止のための取り組みとして実施されます。
オンボーディングを成功させるためのカギは、新入社員に「いちはやく企業文化に慣れ、組織に馴染んでもらうこと」です。
新入社員に早く組織に馴染んでもらうための、オンボーディングを成功させるためのカギを3つのポイントに分けて確認してみましょう。
オンボーディングを成功させるカギ
受け入れ体制の整備
メンター制度の導入の検討
定期的なフォロー
オンボーディングを成功させるカギ:受け入れ体制の整備
新入社員が、新たな職場でパフォーマンスを発揮するためにすべきことは、新入社員が「早期に職場に適応する」ことです。
新入社員が職場に適応するためには、組織全体で新入社員の受け入れ態勢を整えることは欠かせません。
入社初日に、名刺やメールアドレス、PCなどの必要な備品や環境を整え、入社時研修や歓迎会を行います。
こうして、新入社員を組織の一員として受け入れる体制を整えることで、「ウェルカム感」を出すことが、新入社員のリテンションに大きな効果を与えます。
先輩社員や上司が目の前の仕事に翻弄され、新入社員を放置することのないよう、新入社員に対する教育マインドを醸成させることもポイントとなります。
オンボーディングを成功させるカギ:メンター制度の導入の検討
新入社員の離職率は、3年以内に3割といわれています。
新入社員のなかには、悩みを誰にも相談出来ずに孤立し、離職するケースも多くあります。
中途採用での新入社員は、新卒社員のように同時期に入社する同期社員が少ないほか、周囲から即戦力として見られていることから、フォローがされずとくに孤立しやすいといえます。
厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、中途採用者の「前職の離職理由」は男女ともに、「職場の人間関係が好ましくなかった(男性:8.1%、女性:9.6%)」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった(男性:8.0%、女性:10.1%)」「給料等収入が少なかった(男性:7.1%、女性:7.7%)」が上位を占め、特に「人間関係」が原因での転職が多いことが分かっています。
職場の「人間関係」についての悩みは、周囲が忙しく放置されてしまい、相談しづらいなどの理由が考えられます。
新入社員の仕事に関する悩みや、心理的なサポートを行う「メンター制度」を導入することで、こうした理由での離職を防ぐことが期待できます。
参考)厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」
▼「離職理由」についてさらに詳しく
離職の原因TOP3!特に気をつけたい若者・新卒の離職理由も詳しく解説
▼「メンター制度」についてさらに詳しく
メンター制度のメリットは?運用時のステップと導入例・注意点も紹介
オンボーディングを成功させるカギ:定期的なフォロー
定期的なフォロー面談は、新入社員の定着に、大きく寄与しています。
人材大手エン・ジャパンの調査によると、従業員の「定着率への影響度」は、「定期に行う人事(第三者)面談」が、最も高い影響があり、ついで「定期に行う上司面談」があげられています。
新入社員は、企業文化やルールを知らない状況の中で悩みがあっても、どこまで何を聞いて良いかが分からず、悩んでしまっていることがあるでしょう。
「上司面談」では、業務面で他の従業員には相談しづらい、「周囲の従業員に放置されて行き詰まっていること」などを吸い上げてフォローすることで、躓く要因を解消します。
また、今後のキャリアなどをサポートすることも、重要なポイントです。
「人事面談」では、配属部門でのフォロー状況や、困っていることなどをヒアリングします。
入社前後のギャップや、直近の仕事への取り組みや悩みなども聞き取ることで、「退職の予兆」を察知することが可能です。
引き出した悩みや改善要望などは、配属先の上司にフィードバックし、課題解決に応じることが大切です。
▼「1on1」についてさらに詳しく
1on1とは? 従来の面談との違いや効果を高めるコツ
1on1ミーティング入門書
オンボーディングの実施のプロセス
新入社員へむけた施策であるオンボーディングですが、取り組みは、入社前から行うことが大切です。
オンボーディングの実施プロセスとして、入社前、入社後、入社数か月後の3つの段階に分けて確認してみましょう。
オンボーディングのプロセス:入社前
離職理由の大きな要因の一つとなっている採用ミスマッチの防止や、内定者に入社意欲を固めてもらうためにも、入社前のオンボーディングは大切です。
また、入社する企業に対する不明点や疑問点をあらかじめ解決するために、入社前から人事部門が新入社員と十分なコミュニケーションを取っておき、疑問点や不安を取り除き、信頼関係を構築しておくことがポイントです。
入社前に押さえておくべき、オンボーディングについて確認してみましょう。
入社前のオンボーディング
企業文化や価値観などのすり合わせ
自社のメリットとデメリットの理解
先輩社員との接点を作る
社内報の送付
懇親会の実施
定期面談の実施
オンボーディングのプロセス:入社後
入社前のオンボーディングで、採用のミスマッチをなくす施策を行った後は、入社後のオンボーディング施策で、離職防止や定着率の向上を図ります。
入社直後は、職場に馴染めず、右も左も分からない、不安が大きい時期です。
この時期に、新入社員を放置することは、早期離職の原因にもなるため、避けるべきです。
即戦力として中途入社した新入社員でも、企業文化やルール、個々の仕事の進め方など、既存の従業員が当たり前と認識している企業独自の文化やルールがわからず、苦悩することが多くあります。
入社直後のオンボーディングは、企業独自の文化やルールなどの職場環境に慣れてもらうほか、業界や業務内容の理解を身につけてもらうことが重要です。
入社後のオンボーディング
企業理念や社内規則などのルールの説明
企業文化や暗黙知の説明
業界知識や業界用語の説明
社内用語の説明
配属先へのスキルや評価の共有
配属先への教育方針の共有
研修やオリエンテーションの実施
オンボーディングのプロセス:入社数か月後
早期離職の危険性がある入社数ヶ月後は、オンボーディングによる支援が必須事項です。
職場にも慣れ、自身のキャリアの方向性が見えてくる入社数か月後ですが、新入社員に対するコミュニケーション不足で、意図しない早期離職のリスクが潜んでいる場合もあります。
また、入社から数か月を経て、配属された部署への不満や、自身が描くキャリアとのギャップなど、採用のミスマッチを原因として離職する可能性もあります。
このような離職を防ぐためには、キャリア面談を行うことも必要です。
配属先部署では相談できない事柄などについて、人事部門が相談に乗ることも大切です。
入社数か月後のオンボーディング
キャリア面談の実施
人事面談の実施
フォローアップ研修の実施
懇親会の実施
オンボーディングの実施事例
オンボーディングは、自社に適した実施方法を見つけることが大切です。
オンボーディングの施策として、他社はどのような施策を実施しているのかを確認し、参考にしてみましょう。
オンボーディングの実施事例1:株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、ITを駆使したオンボーディングを実施しています。
新入社員が欲しい情報が、「オンボーディングポータル」にアップされており、新入社員は「オンボーディングポータル」にアクセスすれば、何をすれば良いかが分かるようになっています。
「入社日〜3日以内」「1週間以内」「1ヶ月以内」というように、やるべきチェックリストなども準備されているほか、個人毎にKPIを設定し、サーベイで進捗度合いを確認しています。
また、社内Wikiを見れば、大抵のことがわかることも、離職防止に大きな効果がある施策です。
オンボーディングの実施事例1:サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、入社3ヶ月で独り立ちを実現する、オンボーディングを実施しています。
1ヶ月目は、サイボウズの組織、製品の学習、2ヶ月目は、提案パターンの学習と提案現場への同行研修、3ヶ月目は、販売やパートナーについて学びます。
研修最終日には、社内メンバーを相手にプレゼン形式での課題発表を行い、オンボーディング研修後に、本部長面談の上で配属が決定されます。
研修期間後も、「サイボウズアカデミア」という、新入社員以外の従業員でも学びたい時に学ぶことができる環境があり、社内コミュニケーションをより一層図ることができる施策になっています。
オンボーディングの実施事例1:株式会社博報堂
株式会社博報堂は、「On Board School」など独自の施策を導入する、オンボーディングを実施しています。
新入社員の声に耳を傾けて、博報堂独自の企業文化やルールなどを言葉にして研修するほか、新入社員へのウェルカム感を大切にし、毎月懇親会を行うなど、従業員の定着に注力しています。
注目すべき取り組みは「On Board School」です。
年2回、4月と10月スタートの2回に分け、3ヶ月間、隔週金曜日に、必須と任意のテーマをもとにした教育プログラムを実施しています。
「On Board School」は、新入社員が「キャリア同期」とつながる効果があるほか、配属後の様子を人事か観察する場としても、有意義な施策となっています。
また、OJTの具体的な取り組みとして、グループワークを活用した「OJTトレーナーガイダンス」というガイダンスを行うほか、同社で働く上で必須の知識を習得する「コアスキルプログラム」など、新入社員がスキル面でも躓かないような、フォロー体制を整えています。
オンボーディングを支援する「組織診断サーベイ」
従業員の離職防止と定着率向上を実現するためには、従業員の「離職予兆の分析」や「離職防止対策をデータ」をもとに実施することが大切です。
「HRBrain 組織診断サーベイ」は、人事・現場が使いやすい組織診断サーベイです。
豊富な分析軸で全社課題から部署/年代別の詳細課題までを把握することができます。
「HRBrain 組織診断サーベイ」の詳細についてもっと知りたい方はこちらからご覧ください。
また、オンボーディングの実施にあたり、パルスサーベイによる支援も有効です。
パルスサーベイは、短期間で繰り返し従業員の状態や意識を調査できるため、パルスサーベイで把握した従業員のデータをもとに、オンボーディングをすすめることで、早期退職や予期せぬ退職を防げます。
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▼「離職防止・定着率アップ」についてさらに詳しく
離職防止・定着率アップ | HRBrain
▼「パルスサーベイ」についてさらに詳しく
【事例あり】パルスサーベイとは?目的から実施・活用のポイントまで
パルスサーベイの実施
若手の離職を防ぐためには
原因と対策を考える 若手の離職を防ぐためには
若手人材の離職は非常に重要視される課題です。
入社から3年以内で離職する若手も多く、離職率を下げるために奮闘している会社も多いかもしれません。
若手の離職を防ぐために、主な離職の原因や対策を考えたうえで、離職率の改善に取り組んでいる会社の事例をご紹介します。
この資料で分かること
一般的な離職の原因
離職防止に向けた取り組み
離職防止、定着率向上の成功事例
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