HRBrain

HR大学

人材管理

新たな働き方「ABW」とは?メリットや導入手順、メリットを紹介

新たな働き方「ABW」とは?メリットや導入手順、メリットを紹介

目次

    本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。

    皆さんは、ABWという言葉をご存じでしょうか?
    ABWは、時間と場所にとらわれない働き方を指します。

    働き方改革により、仕事をする時間と場所が大きく変化しようとしている日本では、ABWの働き方がふさわしいかもしれません。
    今回は、ABWにスポットライトを当て、その概要や注目される背景、メリットや導入方法について解説します。

    また、ABWが抱える課題についても触れ、導入時に注意すべきポイントもご紹介します。

    そもそもABWとは?

    まずはABWの概要と注目される背景について解説します。

    ABWの基本情報

    ABW(Activity Based Working)とは、自分の気分や仕事内容に応じて働く場所と時間を自由に選択できる働き方です。

    この働き方は、オランダが発祥と言われており、4〜5年前から一部の業界で取り入れられ、普及しはじめています。

    「仕事は毎日同じ場所で、同じ時間帯に行うのがいい」と思われる方もいるかもしれませんが、仕事内容に応じて働く場所を変えることで効率的に業務が進むこともあります。
    例えば、若い女性に人気がある日用雑貨のデザイン担当が、他にはない新しいアイデアを集めているとしましょう。

    いつも働いているオフィスで仕事をするより、若い女性が集まるカフェで仕事をした方が、斬新なアイデアが生まれるかもしれません。
    ABW制度を導入するためには、社員がいつどこで仕事をしているかを管理職が把握できる仕組みを取り入れることが重要です。

    また、社内にもひとり用から、数人用、大人数用などのバリエーション豊かなワーキングスペースを導入するといいでしょう。

    ABWが注目されている背景

    ABWが注目される背景には、働き方改革とコロナ禍が大きく関係しています。
    日本人は、残業時間が多く働く時間が世界トップクラスとも言われています。
    しかし、長時間労働にもかかわらず、労働生産性の低さが日本社会全体の課題です。
    そこで働き方改革を皮切りに、コロナ禍の影響も受けてリモートワークなどの柔軟な働き方が広まっています。

    ABWを導入することで、集中・リフレッシュしやすい環境を整えられ、仕事に合わせた働きやすさを実現できるため、労働生産性が上がると予想されます。
    今後も、こうした働き方の変化は起こり続けると予想されており、より柔軟で自由な働き方が求められるでしょう。

    こういった働き方に対するニーズに対応するためにも、ABWは導入が必要とされ、現代にふさわしい働き方であると注目が集まっています。

    フリーアドレスとは違う?

    好きな場所で働けるスタイルと聞いて、フリーアドレスを思い浮かべる方もいるかも知れません。
    フリーアドレスとは、社員ひとりひとりに決まったデスクを用意せず、その日に応じて好きなデスクで働けるスタイルです。
    好きな場所で働けるという意味では、ABWとフリーアドレスは共通していますが、フリーアドレスはあくまでも社内で働くときに限ります。
    ABWは社内で働くことも、社外の好きな場所で働くことも許されており、より自由な働き方であることが特徴です。

    コロナ禍におけるABW

    コロナ禍の今、人々の働き方は大きく変わろうとしています。
    働く環境が著しく変化するコロナ禍にこそABWのような柔軟な働き方が必要なのかもしれません。
    ここからは、コロナ禍での働き方の変化をふりかえり、なぜ今ABWが必要なのかを解説します。

    コロナ禍で生じた働き方の変化

    コロナ禍では、社会全体の感染状況に応じて、働き方を柔軟に切り替える必要があります。
    緊急事態宣言の発令と解除を繰り返すたびに、リモートワーク勤務が増加したり減少したりしているのではないでしょうか。

    一方で、コロナ禍の働き方に慣れてきていることもあり、アフターコロナ時代を迎えてもリモートワークを継続したいと考える人も少なくありません。
    今後も柔軟な働き方、自由な働き方が求められるでしょう。
    コロナ禍でABWを導入する意義

    上述したように、アフターコロナ時代を迎えた後も働く環境へのニーズはより多様化する可能性があります。
    コロナ禍での働き方に慣れてきた今だからこそ、ABWを取り入れ、多様なニーズに応えられる会社制度を整えておきましょう。

    ABWの種類

    ここからは、実際にABWを導入している企業が、どういったワーキングスペースを社内に取り入れているのか、具体例をご紹介します。

    オフィスラウンジ

    オフィスラウンジとは、複数人の社員とコミュニケーションを図りながら仕事ができ、時にはひとりのためのワーキングスペースとしても利用できます。
    イメージ的には、カフェのような空間です。

    社員がリラックスできる空間でありながら、ひとりで黙々と集中して作業ができる空間でもあり、機能的なワーキングスペースといえます。
    オフィスラウンジには、おしゃれでゆったりとできる家具や、落ち着いた色の照明、観葉植物などを置くといいでしょう。

    1on1スペース

    1on1スペースとは、その名の通り1対1で向き合ってコミュニケーションが取れるスペースです。
    机1つにイスが2つで1on1スペースが完成するため、比較的簡単に取り入れられます。
    もし可能であれば他の人に会話が聞かれないような、密室空間の1on1スペースを作れば、人に聞かれたくないような相談をするスペースとしても活用できます。

    また、上司が部下の業務の業務進捗や悩みを把握するための定期的な1on1ミーティングとしても活用でき、上司と部下の距離を縮めたい会社におすすめです。

    ミーティングスペース

    ミーティングスペースと聞くと普通の会議室を思い浮かべるかもしれませんが、ABWで取り入れられるミーティングスペースはそれとは異なります。
    近年では、オープンスタイルのミーティングスペースを取り入れる会社が多く、2人〜10人ほどの打ち合わせに快適です。

    また、机とイスを組み替えることで人数に応じたミーティングスペースに変更ができます。
    ただしオープンスタイルのスペースのため、人に聞かれてはいけない秘匿性の高い会話は適しません。

    もし、大事な話をする場としても使用したい場合は、サウンドマスキングシステムという音が漏れないシステムを導入するといいでしょう。

    Webミーティングブース

    Webミーティングブースとは、オフィスで働く人と、リモートワークや外出先で働く人をWebでつないでミーティングを行うことができます。
    ブース内には、大きなモニターや参加者を写すカメラが設置されており、全員がWebミーティングに入らなくても会議ができるような仕組みが特徴です。

    リモートワークが普及した現代では、Webミーティングブースの利用頻度が高まっており、周囲の人を気にせずミーティングが行えます。

    集中ブース

    集中ブースとは、机とイスが1つずつ置かれた完全個人利用型のワーキングスペースです。
    作業に集中したいときや、周りの人に気を使わずに仕事をしたいときに使用するのがおすすめです。

    ABWの導入手順

    ここからは、実際にABWを導入する手順について解説します。
    ABW導入の目的を設定する

    最初のステップとして、ABWを導入する目的を明確にしましょう。
    ABWというのはあくまで働く手段であり、それ自体が目的ではありません。
    目的が明確になっていないままABWを取り入れても、社員は施設として利用するだけで、ABW本来の効果は得られない可能性があります。

    例えば、「社員に豊かな想像力を発揮してもらいたい」や「コミュニケーションを活発にさせたい」などABWを導入してどういう会社を作りたいかを明確に設定しましょう。

    現在のオフィス環境などを調査する

    ABWを導入する目的が明確になった後、現在のオフィス環境と、社員がどのようなオフィス・働く環境を望んでいるのか、意見を集める作業に取り掛かります。

    社員からの意見を集める際は、「現在のオフィスで不便に思うことは?」や「オフィスに必要な施設は?」など、オフィスに関わる内容と、「どういう働き方を望んでいるか?」などのワークスタイルについても質問しましょう。

    ABWはオフィスを変化させるためだけのものではありません。
    ワークスタイルや働く場所についても、社員の意見を取り入れ、社員が望む働き方を導入しましょう。
    意見を集める際は、アンケートツールを使用するのがおすすめです。

    オフィスレイアウトを考案する

    社員からの意見を集約し、社員が望むオフィスの施設が把握できた後は実際のレイアウトを考案しましょう。
    1on1スペースやミーティングスペース、集中ブースは現在のオフィスレイアウトを少し改装すれば容易に確保できるかもしれません。

    しかし、オフィスラウンジやWebミーティングブースはオフィスの大きな変更が必要になることもあるため、しっかりとレイアウト構築を行いましょう。

    また、各施設の広さ・大きさだけ検討するのではなく、社員が落ち着いて仕事ができる環境や、機能的に活用できる設備の検討も同時に行うことが重要です。

    既存の制度を見直す

    オフィスレイアウトの検討と同時に、社内制度の見直しも行いましょう。
    社内制度の見直しは、社員からアンケートで得た結果を基に、現在の制度の改良と新規制度の設定が必要です。

    働き方によっては、社員の業務進捗を確認できるツールやコミュニケーションツールを新たに導入する必要があるため、具体的な管理方法についても検討しましょう。

    環境整備を実施する


    上記の準備が完了した後、実際に環境整備に取り掛かりましょう。
    オフィスの改装や制度の整備、新規システムやツールの導入には時間がかかることもあります。

    事前にスケジュールを立てて、段階を踏んで環境整備に取り組むのがおすすめです。

    ABWを導入した際に見られる効果

    ここからはABWを導入するメリット・得られる効果について解説します。
    ワークライフバランスを実現できる
    ABWの最大の利点は、社員のワークライフバランスを実現できる点です。
    働き方改革で、ワークライフバランスを重視する動きが始まっています。

    ABWは、働く場所と時間に囚われない働き方を実現し、就業時間は仕事に集中し、就業後はプライベートを楽しむ時間に使えます。特にワークライフバランスの実現が課題となっている企業におすすめです。

    コスト削減につながる

    ABWでオフィスのコスト削減につながることもあります。
    働く場所をオフィスに限定しないため、オフィスを使用する際にかかる光熱費が削減できます。
    また、オフィス以外で働く社員が増えることで、現在のオフィスから規模を縮小することも可能です。

    借りているオフィスの場合、オフィスの借りるエリアを縮小・変更することで大きなコスト削減につながるでしょう。

    生産性が向上する

    集中できる場所・業務が捗る場所は人それぞれです。
    ABWは働く場所を限定しないため、社員は集中力を高められる場所を自由に選択して業務に取り組むことができます。

    また、社員ひとりひとりに主体性を持った仕事を意識させることもでき、業務管理や調整能力を持った社員を育成できるかもしれません。

    モチベーションアップにつながる

    社員が自由な働き方を選択できることによって、会社・業務への満足度の向上が期待できます。
    働く時間を自由に変更できることで、繁忙期に業務時間を増やし、閑散期に減らすなどの柔軟な勤務形態も実現可能です。

    また、自分で考えたやり方で業務を遂行し、仕事がうまくいった場合、得られる達成感も大きくなるでしょう。

    質の高い人材確保ができる

    社員のモチベーションがアップすることで、働きやすい会社という印象が求職者に与えられるかもしれません。
    採用者募集の際に、多くの応募者が集まることで、より優秀な人材を選んで獲得できます。

    また、自由な働き方や業務効率化システムを導入することで、より多くのタスクをこなせる質の高い社員に成長できるでしょう。

    こうしたサイクルが、次の優秀な人材確保にもつながり、会社全体として質の高い社員が集まる会社になるでしょう。

    ABWに関する課題

    最後にABWのデメリット・課題をご紹介します。

    準備や浸透に時間がかかる

    1つ目のABWの課題は、準備から整備、新しい制度の浸透に時間を要する点です。
    アイデアの考案やレイアウトの作成に多くの時間を費やしますが、社員にとって働きやすい環境や働き方を整備するためには欠かせません。

    ABWを取り入れる際は、スピードを重視するのではなく、社員の働く環境に重心をおいて調整を進めましょう。

    働く場所が一定でないゆえのデメリットがある

    自由な働き方を取り入れることで、業務の進捗状況や社員の勤務時間を把握することが困難になります。
    社員が業務中であることはわかっていても、「どこで仕事をしているかわからない」といった事態を引き起こしかねません。

    出社する機会が少なくなった社員とは、日常的な会話が減ってしまうこともあり、業務管理・勤務管理には注意が必要です。

    近年では、社員の業務進捗を管理できるツールを提供している企業が豊富にあるので、ABW導入時に併せて取り入れることをおすすめします。
    管理職の業務負担を減らすためにも、業務進捗管理や勤務管理を簡単に行えるツールの活用も併せて検討しましょう。

    仕組み自体を理解しないと生産性が向上しない

    多くの時間とコストをかけたにもかかわらず、社員にABWの導入意義や効果を理解してもらえなければ従来どおりの働き方になってしまう場合があります。
    働き方が変化しなければ、ABWのメリット・効果は得られないといった事態になりかねません。
    ABWを導入する際は、社員にABWを導入する目的をしっかりと共有しておく必要があります。

    また、ABWは社員ひとりひとりが主体性を持った仕事をする必要があるため、個人で業務を管理できるよう人材教育も進めましょう。

    働く場所によっては思うような効果が得られない

    働く場所によってはABW本来の効果が得られない場合があります。
    例えば、カフェを働く場所として設定したとしましょう。
    リラックスした環境としては適した場所になるかもしれませんが、社外秘情報を含んだ資料の取り扱い業務には向きません。

    1日の中で行う業務が変わるごとに働く場所を変更しなければいけない場合は、業務を効率的に遂行できないことがあります。
    働き方が自由になった分、会社の顧客情報の管理や守らなければいけないルールの管理が困難になるため、注意が必要です。

    まとめ

    今回は、ABWに焦点を当て、その概要や得られるメリット、導入方法について解説しました。
    社員が働きやすい場所で、自由な働き方ができれば業務効率とモチベーションアップにつながります。

    一方で、ABWを初めて導入する場合、準備や新しい働き方の浸透に多くの時間を要します。
    しかし、社員が働きやすい環境に整えるためには社内の活発なコミュニケーションと意見交換が欠かせません。
    焦らずに1つずつ段階を踏んで進めていきましょう。

    ▽HRBrainの詳細はこちら▽
    • 人材業務の効率化から人材データの一元管理・活用まで HRBrain
    • Twitterでシェア
    • Facebookでシェア
    • はてなブックマークでシェア
    HR大学編集部

    HR大学 編集部

    HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

    • ゼロから作る人事制度設計マニュアル
    • 「1on1ミーティング」入門書〜1on1を雑談で終わらせないためには〜

    おすすめ記事