人材採用
2023/08/24
【人事監修テンプレ】ジョブ型雇用時代のジョブディスクリプションの作成法
本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。
大企業で導入が相次ぐジョブ型雇用時代のジョブディスクリプション(職務記述書)の作成と書き方について無料ダウンロードできるテンプレートと共に解説します。メンバーシップ型雇用からの移行を政府も後押し。あなたの会社も雇用制度の変更を検討しているのでは?
ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?
ジョブ型雇用制度を導入したいけれど、どうすればいいのかわからない。そもそもジョブ型が何か知りたい。そんな風にお考えの方のために、ジョブ型雇用制度の中心的なツールであるジョブディスクリプションについて解説します。
ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?
ジョブディスクリプションは、日本語では職務記述書と呼ばれます。ジョブディスクリプションには、その職務に対する仕事内容、役割、期待される成果、直属の上司などが書かれています。一言で言えば、職務を定義したものがジョブディスクリプションです。
さらにジョブ型雇用について知りたい方は「ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いやメリット・デメリットを解説」をお読みください。
目的と効果とは?
ジョブディスクリプションの目的は、その仕事(職務)の責任範囲を明確化するとともに、仕事内容に応じた報酬を支払う根拠を提示することです
職務を定義するという考え方は、メンバーシップ型雇用を採用する日本企業が多い為、馴染みがないかも知れません。しかしジョブ型雇用制度が主流の海外では、仕事内容と報酬が厳密に連動しているため、職務を定義することは報酬支払い根拠として重要な取り組みなのです。
日本企業と海外企業との違いとは
ジョブ型雇用制度は、従来の人を起点としたメンバーシップ型雇用制度と異なり、業務を起点に雇用する制度です。業務を起点に雇用するということは、会社の中にどのような業務があり、その業務を遂行するためにはどのような能力を持った人材が必要かを定義することです。
日本企業と海外企業では、どのようにジョブディスクリプションが異なるのでしょうか。海外の企業では業務に対して報酬が決まります。報酬には仕事の難易度、業務量が加味されます。そのため、ジョブディスクリプションは細かい業務内容が記されます。
また、労働者はジョブディスクリプションに書かれていない仕事はやらなくてもいいことになっています。例えば、あるグローバルな日本企業で外資系企業から転職してきた従業員に書類をコピーすることを頼んだら「私のジョブディスクリプションに書かれていない」という理由で仕事を断られたそうです。それくらい外資系企業ではジョブディスクリプションは労働者にとって厳密なものなのです。
一方で、日本企業でジョブディスクリプションを厳密に運用した場合、仕事の属人化が進み日本企業の良さである助け合いの文化が失われる可能性があります。
日本企業でジョブ型雇用制度を導入する際は、外資系企業のように厳密な運用ではなく、ある程度の自由度と柔軟性を持たせたジョブディスクリプションの運用方法がよいでしょう。
ジョブディスクリプションテンプレートの活用シーン
ここまでジョブディスクリプションの目的と効果、日本と海外との違いについて説明しました。ここからはジョブディスクリプションテンプレートの活用シーンについてご紹介します。
ジョブ型雇用制度の導入時の参考資料
ジョブ型雇用制度を導入する企業にとってジョブディスクリプションは必要不可欠なツールです。しかし、ジョブ型雇用を導入するにしても何から検討すればよいかわからない方もいらっしゃるでしょう。そこで今回のテンプレートをジョブ型雇用制度の導入提案の参考資料として使って一度社内で自社におけるジョブディスクリプションやジョブ型雇用はどのようなものか議論していただくのがおすすめです。
求人票の作成
ジョブディスクリプションの作成が必要になるのはジョブ型雇用制度を導入する時だけではありません。ジョブディスクリプションテンプレートは、特に中途採用において求人票の作成を行う際にも便利です。
中途採用では、仕事内容に合致する人材を採用する必要があります。よくある中途採用の失敗事例が、仕事内容を曖昧に定義したことで採用のミスマッチが起きてしまうことです。
そこでジョブディスクリプションテンプレートを使用して採用する職種の仕事内容を整理すれば、求人票の内容をより具体的にできるでしょう。
社内の職務整理
社内にどんな仕事が存在しているのか、業務の棚卸をする際にも今回のテンプレートは有効です。「記述法」を用いて、従業員に各自の仕事を記入してもらえば、社内の仕事が把握できます。その上で不要な業務を整理することもできるでしょう。
経営陣へのジョブディスクリプション提案時の初期資料
急に経営陣から「ジョブ型雇用制度を検討したいから、ジョブディスクリプションのサンプルがほしい」と言われた場合にもぜひこのテンプレートをお使いください。会議の場にそのままサンプルとして提示できるようになっています。
ジョブディスクリプションテンプレートをあなたの会社の人材管理を加速させるツールとしてぜひお使いください。
ジョブディスクリプションの作成方法【テンプレート付
では実際にジョブディスクリプションを作成するにはどうすればよいのでしょうか。ジョブディスクリプションをゼロからつくるのは大変ですよね。そこで今回はすぐに使えるジョブディスクリプションのテンプレートをご用意しました。
合わせてジョブディスクリプションの作成方法をご紹介します。
職務分析を行う「面接法」
ジョブディスクリプションはひとつひとつの仕事内容を定義したものです。つまり、ジョブディスクリプションの作成には、ひとつひとつの職務がどのような業務内容なのかを分析する必要があります。職務分析の方法には、人事担当者が従業員全員と面談を行って全ての仕事を記述する「面接法」があります。面接法は、客観的に職務定義ができる一方で担当者の負担が大きい点がデメリットです。
職務分析を行う「観察法」
また、職場で上司や人事担当者が実際の仕事を観察して職務定義を行う「観察法」もあります。観察法は客観的かつ正確で詳細な職務定義ができる一方で、面接法よりも担当者の負担が大きくなります。
職務分析を行う「記述法」
最も担当者の負担が少なく簡単に実施できるのが「記述法」です。記述法は、その職務を担当する従業員自身が自分で自分の業務内容をジョブディスクリプションに入力します。従業員に入力を依頼するため、人事担当者はジョブディスクリプション作成の手間が省けます。一方で客観的な情報ではないため、業務内容の抜け漏れや他の職務との重複が発生する可能性があるでしょう。予め入力内容のガイドラインやテンプレートを用意しておけば、記述内容を揃えることができます。今回ご用意したテンプレートを使用するのもおすすめです。
ジョブサイズとジョブグレード
職務分析が完了したら、報酬水準を決定するためにその職務のジョブサイズとジョブグレードを決めます。ジョブサイズはその職務の仕事内容の難易度、業務量、会社への貢献度から総合的に判定した仕事の「レベル」です。一般的にジョブサイズが大きいほど報酬が高くなります。
ジョブグレードは、ジョブサイズを基準に、さらに役職や職位を加えて報酬レンジを定めたものです。企業によって制度が異なりますが、例えば、ジョブサイズ「1」でジョブグレード「3」の場合は年俸XXX万円と定められます。具体的には、同じ「部長」でも事業部門の部長と総務部長では会社への貢献度や仕事の難易度が異なるでしょう。
この場合は「部長」というジョブグレードに対して、「ジョブサイズ」によって報酬が決定されます。このように、自社の状況に合わせながらジョブサイズ、ジョブグレードの両方またはいずれかを導入するのがおすすめです。
なお、企業によってジョブグレードやジョブサイズの設計が大きく異なるため、今回のテンプレートは汎用的に使用できるものにしています。
ジョブディスクリプションをデータベースに登録する
職務分析によってジョブディスクリプションは、どの部門にどの仕事が存在するのかを明確に整理しておく必要があります。万が一、欠員が出た場合はどの職務に補充が必要なのか、すぐにわかるようにしておきましょう。また、職務と報酬を連動させる必要もあります。こうしたジョブディスクリプションの整理と報酬との連動は、人事システムを活用するとよいでしょう。
さらに人事システムについて詳しく知りたい方は「人事システムとは?できることやメリットを具体的に解説」をご確認ください。
ジョブディスクリプションを更新する
ジョブディスクリプションは一度作成したら終わりではありません。仕事内容は経営環境の変化によって毎年変わるものです。そのため少なくとも年単位でジョブディスクリプションを見直して更新を行いましょう。更新方法は、「記述法」が最も簡単です。
従業員にジョブディスクリプションを確認のうえ、更新する部分がないかを申告してもらいます。もしくは上司による年次目標設定の面談の際に、更新内容を上司から確認してもらうのもよいでしょう。
適正に報酬を支払うためには、常に最新のジョブディスクリプションがあることが欠かせません。面倒でも必ず更新作業を行う必要があります。
ジョブディスクリプションの注意点
ジョブディスクリプション運用には注意点があります。注意するべき点を理解していないと、最悪の場合、従業員のモチベーション低下や離職につながることもあります。具体的には、どのようなことを気をつければよいのでしょうか。
業務実態をヒアリングする
日々、それぞれの業務を取り巻く環境は変化し続けるものです。気づけばジョブディスクリプションと業務内容が乖離している場合もあります。
また仕事内容が同じでも、会社の方針変更によりジョブサイズが変更になることもあるでしょう。今までは貢献度が低かった仕事が、新しい市場を開拓することになったことで重要な仕事になることもあり得ます。
万が一、ジョブディスクリプションと実際の業務が乖離すると、報酬と業務内容との乖離が発生し、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。最悪の場合、離職につながることもあるでしょう。離職防止のためにも、常に業務実態をヒアリングしてジョブディスクリプションを最新の状態に維持してください。
ジョブディスクリプションに基づいた評価をする
ジョブ型雇用制度は、ジョブディスクリプションに基づいて評価を行います。そのためジョブディスクリプションには、その仕事に対して期待される成果を明記する必要があります。複数の業務内容がある場合は、Aの仕事に対しては報酬の30%、Bの仕事に対しては報酬の70%といったようにそれぞれの業務の比重を決めて報酬を決定します。もし業務内容が変更になり、期待される成果の比重が変わった際はすぐにジョブディスクリプションを更新しなければなりません。もし更新を行った場合、適切な評価ができなくなります。優秀人材の離職を防止するためにも、ジョブディスクリプションは常に最新の状態にしておきましょう。
ジョブディスクリプションと人材育成
日本企業でジョブ型雇用制度を導入するには、もう一つ重要な点があります。それは人材育成の視点です。
日本型ジョブ型雇用では、人材育成が重要
日本企業ではこれまでメンバーシップ型雇用制度を背景に「職能等級制度」が運用されてきました。まず人を採用して育成したうえで最適な仕事へ配置する人材活用の考え方です。そのため日本企業では人材育成が人材マネジメントの中心的な取り組みであることが少なくありません。また日本銀行副総裁の中曽氏のレポートによれば、日本は欧米と比べ人材の流動性がかなり低いため、社外から人材を調達することはまだまだ有効な手段ではありません。そのため、当面は人材育成を重視した日本ならではのジョブ型雇用制度が運用されると考えられます。
参考:日本銀行「日本経済の底力と構造改革 1.日本経済の再評価 」
ジョブ型雇用では「ターゲットジョブ」に対して能力開発を行う
日本型ジョブ型雇用制度では、社内での能力開発が重視されます。まず対象となる職務として「ターゲットジョブ」を決め、ターゲットジョブに対して不足しているスキル・知識を従業員に習得させていくのです。こうすることで、雇用の流動性が低い日本企業でジョブ型雇用制度を導入しても、社内で人材を補充できるようになります。特にジョブ型雇用制度の導入初期には、ジョブに対する人材が不足する可能性が高くなるでしょう。そのため初期から不足するジョブをターゲットジョブとして、一定数の人材を育成する取り組みを行っておくのがおすすめです。
【まとめ】ジョブディスクリプションのテンプレート活用でジョブ型雇用をスムーズに
今回は実務で本当に使える知識を学んでいただくことを目的として、ジョブディスクリプションについて解説しました。テンプレートもご用意しましたので、ぜひ積極的にご活用ください。ジョブディスクリプションテンプレートをダウンロードする
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