#人材育成
2023/05/30

マトリクス組織とは?概要とメリット・デメリット、注意点についても

目次

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    皆さんはマトリクス組織をご存じでしょうか?

    働き方改革やコロナ禍の不況で、少ない人員で今までと同じかそれ以上の成果を生み出す組織づくりが進んでおり、マトリクス組織はその手段のひとつです。

    今回は、組織の底上げや従業員のレベルアップを望む企業が、マトリクス型組織の導入を検討できるように、その概要や目的、メリットとデメリットをご紹介します。

    また、マトリクス組織が注目される要因のひとつである、人材不足についても深掘りし、なぜこの時代にマトリクス組織の形成が必要なのか解説します。

    1.そもそもマトリクス組織とは何か?

    まずはマトリックス組織の概要と種類を解説します。

    マトリクス組織の概要

    マトリクス組織とは、営業や生産、人事などの部門で分ける職能別組織の要素と、エリア別、プロジェクトや製品地域別組織の要素を組み合わせた組織形態のひとつです。

    従来の職能別組織や地域別組織では、自分が所属する部門の業務を行うことに集中し、他の分野のことは他部門に任せます。

    マトリクス組織の大きな特徴は、従業員ひとりひとりが同時に複数の部門に所属し、複数の業務を遂行できる点です。

    事業規模の縮小やコストカットを試みている企業では、マトリクス組織の有効性が広く認められ始めていますが、この組織運営は難易度が高いこともあり、導入すれば必ず成長する訳ではないことをしっかりと認識した上で導入するか否かを検討しましょう。

    マトリクス組織の種類

    マトリクス組織は3つの種類に分かれており、それぞれの組織形態では、指揮を取る責任者(プロジェクトマネージャー)を誰が担当するかが異なります。

    ここからは、マトリクス組織の各種類についてご紹介します。

    ストロング型

    プロジェクトチーム全体を管理するマネージャーを設置する組織形態です。

    組織活動に必要な専門的な知識を持った人がマネージャに選出され、指示・命令を出すため、行動指針ややるべきことが明確になります。

    また、プロジェクトマネージャーが組織全体を客観視できるため、組織の成長やまとめ役としての機能が期待されています。

    ウィーク型

    ストロング型とは相反して、プロジェクトマネージャーを設置しない組織形態を取るのがウィーク型です。

    組織の決定権は、各従業員ひとりひとりにあり、プロジェクトメンバーが自らの考えやアイディアで業務を遂行します。

    実際に業務をする上で、変更した方がいいことに柔軟に反映でき、臨機応変な対応ができる一方、進行途中で業務内容が曖昧になり、業務遂行に時間を要する場合があります。

    バランス型

    バランス型では、プロジェクトメンバーの中からマネージャーが選出されます。

    一般的には、職能部門のマネージャーがプロジェクトマネージャーを兼任することが多いですが、バランス型の組織は組織の中にリーダーのようにまとめ役がいるのが特徴です。

    しかしバランス型には、組織全体を俯瞰して見るマネージャーが存在するため、多方向からの指示や意見で組織が混乱することもあるようです。

    2.マトリクス組織の形をとる目的

    ここからは、マトリクス組織の目的や目指すべきゴールについてご紹介します。

    様々な分野に対してスピーディーに対応する

    従来の職能別組織などの場合、他部門との連携に時間を要したり、片方の知識が乏しく、クオリティを維持できなかったりします。

    しかし、マトリクス組織では、一つの部署で複数の部門を担当するため、様々な分野のことを一人で完結できます。

    また、各組織で得た知識やノウハウを多くの商品やサービスに活用するのも、マトリクス組織の目的のひとつです。

    マトリクス組織では、組織Aが商品AもBも製作しており、他の商品の製作に活用できるのが特徴です。

    マトリクス型組織は、情報だけではなく、ヒト・モノ・カネ全ての経営資源を全社的に共有する働きが期待されており、市場の変化や厳しい競争に対応できる組織として注目されています。

    複数の項目を同時に遂行する

    また、従業員ひとりひとりが複数の目標に挑戦することも、マトリクス組織を取る目的のひとつです。

    従業員が抱えるタスクが増えれば、抱える負担も増えますが、個々のレベル向上につながります。

    例えば、社員Aさんが職能部門で商品開発に所属し、エリア部門で関西地域担当になったとしましょう。

    Aさんは商品開発の業務と同時に、関西地域の事業計画プロジェクトに参画します。

    事業推進プロジェクトで学んだ、地域の特徴を商品開発部門にも活用でき、Aさんがひとりが携わる業務が増加します。

    社員のスキル・知識の向上が進むことで、少ない人材で大きな事業成果を得られるでしょう。

    3.マトリクス組織にも関係する「人材不足」の背景

    日本では、働く人材が不足していることが課題となっています。そんな日本では、社員に幅広い視野を持たせ、少ない人材で今までと同じ成果を生み出そうとする動きが始まっています。こうした動きが、マトリクス組織の導入が注目される背景です。

    ここからは、そもそもなぜ人材不足が起こっているのかを深掘り、人材不足が発生している日本で事業運営するためのヒントを考えます。

    少子化と人口減少

    人材不足の根本的な原因は、少子高齢化と人口の減少と言われています。

    日本の人口は年々減少しており、総務省が提示したデータでは、2060年に人口が1億人を下回り、9千万人になる見込みです。

    人口が減るだけではなく、2060年に65歳以上は人口の40%ほどを占めるとされており、働く人材不足はさらに深刻化します。

    近年ではAIの技術が進んでおり、今まで人がやっていたことをAIに任せる動きも見せています。

    自社内の業務を少しずつAI化、機械化させ人口が減少している日本で生き残る準備を進めましょう。

    従業員の高齢化が加速

    日本の人口が高齢者に偏っている日本では、社員でも従業員の高齢化が加速しています。

    スキルと経験を積んでいるベテラン社員が減っていくことで、雇用する人数を増やし、抜けた穴を埋める必要がある会社も少なくありません。

    従業員の高齢化が進んでいる企業では、ベテラン社員が培った知識やスキルを若手社員に伝承したり、人材育成資料内に盛り込んだりする準備が必要です。

    現在の日本では、定年後のシニア雇用も進んでいます。

    人手不足の穴を埋める目的や、若手社員の人材育成講師として知識とスキルの伝承を進めている企業も少なくありません。

    多様な働き方が促進

    働き方改革やコロナ禍による働く環境の変化は、ある一定の地域の働き手を減少させる1つの要因となっています。

    特に近年では、テレワークが普及し、会社以外の場所で働く動きが加速しており、「わざわざ首都圏に住まなくてもいい」という考えが広まりつつあります。

    こうした考えの変化により、近年では「Uターン転職」や「Jターン転職」などの地元に戻って就職する動きが加速しました。

    首都圏をはじめとした地域で働き手が減少傾向にあり、地方で生活しながら首都圏に拠点を置く企業の業務ができる仕組みへと変化させる必要があります。

    コストを抑えることによる人員削減

    この2〜30年間の日本では、景気の低迷が続いており、新型コロナウイルスが日本の景気をさらに停滞させました。

    不景気が続く日本企業は、人材コストを中心にあらゆるコストカットに尽力する必要があり、少ない人で事業運営せざるを得ない状況に追い込まれています。

    人員を増やす必要があるものの、企業が支払える人件費で働いてくれる人材が少なく、採用に苦労している企業も多く存在します。

    4.マトリクス組織のメリット

    ここからは、マトリクス組織のメリットをご紹介します。

    以下のような効果を求める企業や、課題を抱えている企業はマトリクス組織を取ることを検討してみてはいかがでしょうか。

    業務効率が向上する

    マトリクス組織の特徴は、一つの組織と従業員ひとりひとりが行う業務の幅が広いことです。

    従来の職能別組織や地域別組織では、他部署・他部門との連携が必要なケースで時間を要してしまいます。

    一方マトリクス組織では、他分野の知識に触れることが多く、他部署と垣根を超えて調整することも多いため、効率的に業務を進められます。

    また、多くの知識を蓄え、様々な部門の人とコミュニケーションを取りながら業務を遂行するため、業務の全体像や前・後工程を把握でき、業務のスムーズな進行につながるでしょう。

    社員の能力が高くなる

    業務を行うことで、従業員の視野が広がり、業務で活かせる知識やノウハウが豊富になります。

    広い視野を持った従業員同士がお互いに協力しながら、時には切磋琢磨してお互いを高め合う関係が構築できれば、従業員の更なる育成に効果的です。

    こうした従業員のスキル・能力の向上は、結果的に商品やサービスの質向上にも貢献でき、企業の事業運営にも高い効果が期待できます。

    ・トップマネジメントの負担が軽減できる

    マトリクス組織を採用している企業では、ある程度の決定権を組織の管理者やプロジェクトマネージャーに委ねていることが多く、経営層のマネジメントにかかる負担を軽減できます。

    また、組織の管理者やプロジェクトマネージャーなどの組織にとって身近な人が決定権を持つことで、現場の作業者との意思疎通が図りやすく、組織にとって必要な環境づくりが実現することもあります。

    時としてプロジェクトマネージャーがトップマネジメントとのコミュニケーションを取る必要がありますが、現場の声を共有でき、効率的で効果の大きい組織運営が可能になるでしょう。

    5.マトリクス組織のデメリット

    次にマトリクス組織を導入することで生じるデメリットもご紹介します。

    デメリットを抑えるコツも併せて紹介しますので、自社内で導入できるか、課題を克服できるか検討してみてください。

    ・パワーバランスが維持しづらい

    組織や従業員が抱える分野の幅が広がるのは、マトリクス組織のメリットでもあり、デメリットでもあり、諸刃の剣と言えるでしょう。

    抱える分野の幅が広がることで、組織間や従業員間で作業量に差が生まれてしまい、組織のバランスが乱れてしまうことがあります。

    多くの業務を抱える従業員は、残業時間が増えてしまい、不公平と感じてしまうかもしれません。

    残業時間の増加は、離職率を高めたり、従業員の健康を脅かしたりするため大変危険です。

    組織間で業務量に差が生まれてしまう場合は、他部門と業務を共有できるような仕組みづくりをしてみて、手の空いた組織が手助けできる体制にしましょう。

    また、組織内で業務量の差が生まれる場合は、組織を管理するプロジェクトマネージャーが業務の振り分けを調整し、仕事が従業員ひとりに偏らないような工夫が必要です。

    ・命令系統が二元化する

    マトリクス組織では、職能部門と地域部門などの複数の部門がひとつの組織内に在籍するのが特徴です。

    しかし、複数のマネージャーで意見の食い違いが発生しやすく、組織への指示・命令が衝突する場合があります。

    この意見の食い違いが時に対立を生み、組織運営に悪影響をもたらすことがあるため、注意が必要です。

    組織の分裂や部門間の対立を生まないためにも、日頃から各マネージャーの意思疎通を活発にさせ、組織として取るべき意思決定は何かを考えさせましょう。

    また、プロジェクトマネージャーと各部門のマネージャーを選出する際に、あらかじめ組織全体の利益を考えられる人や、お互いの領域に精通している人を選ぶのもおすすめです。

    ・ストレスが溜まりやすい

    マトリクス組織に所属する従業員は、決定権を持つプロジェクトマネージャーや、各部門のマネージャーなど、気を使うべき相手が複数いることでストレスを感じやすい環境におかれています。

    また、お互いのマネージャーが対立関係にあった場合、従業員にかかるストレスはさらに大きくなり、従業員の健康状態や企業の離職率にも悪影響をもたらすでしょう。

    マトリクス組織を採用する場合、従業員がストレスを抱えやすい環境にあるということをしっかりと認識し、従業員のストレスを軽減できるよう工夫する必要があります。

    例えば、従業員とマネージャーが気を使わずに会話できる機会を設けたり、イベントなどで従業員の緊張をほぐす機会を設けたりしましょう。

    6.マトリクス組織に関する注意点

    ここからは、マトリクス組織を採用した際の注意点を解説します。

    マトリクス組織を採用した場合、特に気をつけるべきポイントは以下の2点です。

    従業員への業務の偏り

    マトリクス組織を採用した場合、従業員の業務量に偏りが生じることがあります。

    業務量に偏りが出る原因のひとつには、膨大な作業を従業員に課しているケースもあります。また、従業員が多くのタスクを抱えたことによって、どう進めていいか分からなくなり、業務が滞るケースもあり、プロジェクトマネージャーの管理が重要です。

    中には要領よくタスクを終わらせる従業員もいるかもしれませんが、全ての従業員がマトリクス組織の働き方に順応できるわけではありません。

    プロジェクトマネージャーを担当する人は、組織内の従業員の業務量が適切かどうかを確認することと同時に、業務を遂行する上で困っていないかを確認しましょう。

    業務が偏っているからと言って、他の人に業務を振るばかりでは従業員の成長につながらないこともあるため、バランスを見ながら采配する必要があります。

    従業員のストレス

    マトリクス組織に所属する従業員は、ストレスを抱えやすい傾向にあります。

    上述したように、気を遣う相手が多いことも要因のひとつですが、抱える業務量が多いことや、残業時間が増えることもストレスの要因になるでしょう。

    マトリクス組織を採用する際に、従業員はストレスを抱えやすいことを認識し、ストレス対策を講じる必要があります。

    ストレス対策の例として、ストレスチェックやセルフケア研修などがあります。

    ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を定期的に確認し、数値が高い従業員には注意を促したり、休ませたりすることでストレスによる体調不良を未然に防ぐのに効果的です。

    またセルフケア研修では、ストレスを軽減させるために何をしたらいいのかを従業員に教育します。

    ストレスチェックと併用し、全社的に数値が高い場合は、セルフケア研修を開けばストレス対策に効果的です。

    まとめ

    今回は、マトリクス組織の概要と目的、メリットとデメリットを紹介しました。

    働き方が変化する日本で、より少ない従業員で大きな成果を生みたいと思うのは自然な事ではないでしょうか。

    マトリクス組織は、従業員の知識やスキルの向上に効果があり、従業員のレベル底上げを望む企業にはおすすめの組織形態です。

    しかし、マトリクス組織の管理は難しく、取り入れることで組織がまとまらなくなることもあるので、今回紹介した注意点を意識しながら取り入れてみましょう。

    HR大学編集部
    HR大学 編集部

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