#人材管理
2024/08/02

PMI(Post Merger Integration)とは?意味やM&Aとの関係性と進め方をわかりやすく徹底解説!

目次

PMIとは、「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略で、当初計画した「M&A(企業合併や統合)」後の統合効果を、いち早く最大化するためのプロセスを指します。

また、PMIを進めていくうえで、データベースがあると早く進めることが可能になります。

この記事では、PMIの意味や、PMIとM&Aとの関係、会社統合でのPMIの重要性、PMIの失敗例と成功例、PMIの進め方、PMIの具体的な手法、PMIを成功させるポイントについて、わかりやすく解説します。

PMIを推進するためのデータベースの構築

PMIとは

PMIとは、「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略で、当初計画した「M&A(企業合併や統合)」後の統合効果を、いち早く最大化するためのプロセスを指します。

PMIは、「経営統合」「業務統合」「意識統合」の3段階で実施します。

PMIの重要性

M&A統合後は会社全体が混乱し、業務上の重大なミスやシステム障害などが発生しやすい状態にあります。

この状態が続くと、顧客離れや従業員の流出、内部対立の顕在化などが起こり、業績が悪化してしまいます。

PMIは、初期段階で「統合阻害要因」に対して事前検証を行い、結果をもとに統合後の組織マネジメントを行うため、M&A後の統合効果を最大化するために重要なプロセスと言えます。

PMIの重要性についてさらに詳しく確認してみましょう。

PMIの重要性

  • シナジー効果を最大限に発揮するため

  • リスクを事前に回避するため

  • 組織の成長促進のため

シナジー効果を最大限に発揮するため

PMIが重要な理由の1つ目は、「シナジー効果を最大限に発揮するため」という点があげられます。

M&Aでは企業価値の向上、シェアの拡大、経費削減、質の向上など、さまざまなシナジー効果が期待できます。

PMIを怠るとシナジー効果を得るまでに時間が掛かったり、シナジー効果を得られない可能性があります。

リスクを事前に回避するため

PMIが重要な理由の2つ目は、「リスクを事前に回避するため」という点があげられます。

徹底したPMIを進めることで、M&A後のリスクや問題が見えてきます。

リスクや問題を事前に予測し対応することで、リスク回避に手を打つことができます。

組織の成長促進のため

PMIが重要な理由の3つ目は、「組織の成長促進のため」という点があげられます。

PMIを進めることで、M&Aがどれだけ自社の成長や存続に必要かが、理解できるようになります。

また、他社と比較して自社の「良い点」と「悪い点」も見え、将来に向けてどうして行くべきかについての視野が広がります。

PMI(M&A)の失敗例と成功例

PMIの失敗例と成功例について確認してみましょう。

PMI(M&A)の失敗例

PMIの失敗例として、2009年のパナソニックによる三洋電機の子会社化の事例について確認してみましょう。

2009年当時、リチウム電池市場のシェアは三洋電気が23%、パナソニックが8%でした。

パナソニックによる三洋電機の子会社化は、両社の統合によるリチウム電池市場のシェア拡大と、その他の製品でもシナジー効果を生む事が目的でした。

しかし、子会社化の結果、リチウム電池市場における米国参入の遅れを発端に、円高や中国、韓国の台頭を生み、三洋電気の競争力の低下となってしまいました。

また、技術面によるシナジー効果も見込んでいましたが、思った通りのシナジー効果が得られず、逆に事業の売却や人材流出に繋がってしまいました。

経営統合や業務統合で失敗に陥ってしまった事例の1つと言えます。

(参考)パナソニック ホールディングス「パナソニック電工と三洋電機を完全子会社化

PMI(M&A)の成功例

PMIの成功例として、2014年のサントリーホールディングスによるビーム社の買収の事例について確認してみましょう。

サントリーホールディングスによるビーム社の買収は、両社の強力なブランド展開と、販売網や技術交流を通してのシナジー効果が目的でした。

トップが衝突を恐れず、徹底的に現場とのコミュニケーションを取ったことが成功に繋がりました。

意識統合では経営陣のリーダーシップ、両社を含めたコミュニケーションが大切になります。

(参考)サントリーホールディングス株式会社「LEARN ABOUT サントリー『やってみなはれ』の歴史

PMIの進め方

PMIの進め方について確認してみましょう。

PMIの進め方

  1. 統合方針の決定
  2. ランディング・プランの策定
  3. 具体的なプランの策定
  4. 統合の実施と効果の検証

統合方針の決定

PMIを進めるうえでの1つ目のステップは、「統合方針の決定」です。

M&A対象企業をどの程度の早さで、どのような手順やスキームを踏んで統合していくのか、統合方針の枠組みを検討します。

経営統合の枠組みは、経営の自主性を維持する「連邦型統合」、対象企業を子会社として残し積極的に関与していく「支配型統合」、吸収合併・吸収分割・事業譲渡を用いて対象企業の組織を吸収し一体化する「吸収型統合」の3つに分かれます。

ランディング・プランの策定

PMIを進めるうえでの2つ目のステップは、「ランディング・プランの策定」です。

ランディング・プランとは、M&Aクロージング後数ヶ月以内に行うべき「統合作業計画」のことを指します。

譲渡側だけでなく、譲受側での作業も含めて、すべき作業を実行計画に落としこみます。

主に、管理と事業の両面で見直しを行い、管理では「組織・規定、人事・労務面」の変更、経営管理、「経理・財務、庶務・その他」での見直しを、事業では原材料費や研究開発投資といった原価の見直しと、販管費の見直しを行います。

具体的なプランの策定

PMIを進めるうえでの3つ目のステップは、「具体的なプランの策定」です。

具体的に期限を設けて「100日プラン」に落とし込みます。

100日プランとは、M&Aクロージング後100日間で策定する被買収企業の中期事業計画です。

M&Aは中長期的な経営効果が求められるため、100日プランの策定によって中期的な課題を整理しておくことが重要です。

統合の実施と効果の検証

PMIを進めるうえでの4つ目のステップは、「統合の実施と効果の検証」です。

事前に立てた計画の成果をモニタリングします。

詳細なアクションプランの進捗管理、シナジー効果の達成具合も、定量定性の両面からKPIを設定し、定期的にモニタリングを行います。

▼「定量定性」についてさらに詳しく
定量的・定性的の意味と使い分け、ビジネスや目標設定では注意も

▼「KPI」についてさらに詳しく
KPIとは?KGIとKFSの違いについても解説

PMIの具体的な手法

PMIでは、全体の統合方針の枠組みから詳細部分を決め、実行項目とスケジュールを明確にします。

PMIの実行項目は多岐にわたりますが、その中でも「管理面」と「販売面」に関する項目について確認してみましょう。

PMIの具体的な手法

  • 経営体制と組織の統合

  • 事業や取引先の精査

  • 業績評価制度の見直し

  • 制度面の統合

  • 業務システムの統合

経営体制と組織の統合

PMIの具体的な手法の1つ目は、「経営体制と組織の統合」です。

PMIでは、M&Aの目的である「企業価値の向上」を判断軸として、従業員が納得できる体制、組織にしていくための、難易度の高い意思決定を行います。

具体的には、統合後の経営、重要な意思決定プロセスと伝達、リーダーシップ、意思決定機関のあり方、人員配置、情報伝達と共有の仕組みなどを検討します。

▼「人員配置」についてさらに詳しく
適材適所を実現する「人材配置」とは?実践的な方法とポイントを人事目線で解説

最適な「人員配置」の実現に

⇒「『最適配置』実現のキーポイント」資料ダウンロード

事業や取引先の精査

PMIの具体的な手法の2つ目は、「事業や取引先の精査」です。

PMIでは、統合によるシナジー効果が大きな事業と小さな事業とで、選択と集中が必要となる場合があります。

また、類似品を製造・販売している場合、製品やサービスの統廃合を行って、スケールメリットを追及し取引先を見直すことで、シナジー効果をあげる事ができる場合もあります。

業績評価制度の見直し

PMIの具体的な手法の3つ目は、「業績評価制度の見直し」です。

PMIでは、統合の効果が当初の計画通り現れているか、原因を測定し分析できる仕組みを構築する必要があります。

具体的には、KPIの設定、定期的なモニタリングを通じ、PDCAサイクルを回す仕組み作りを行います。

▼「PDCAサイクル」についてさらに詳しく
PDCAサイクルとは?基本のやり方と時代遅れと言われる理由を解説

制度面の統合

PMIの具体的な手法の4つ目は、「制度面の統合」です。

PMIでは、総務、法務、人事などの領域での統合も必要になります。

特に人事評価制度、報酬制度、退職金制度は、M&A後に格差を生む要因になり得るため、早めに着手が必要です。

また、M&A後の環境変化に対応できるように研修などの見直しも検討しましょう。

▼「人事評価制度」についてさらに詳しく
人事評価とは?解決すべき9つの課題と人事評価制度のメリット5つを紹介

▼「報酬制度」についてさらに詳しく
報酬制度(報酬管理)とは?目的や種類と人事管理や評価制度との関連性や適切な運用方法を解説

▼「研修」についてさらに詳しく
社員研修とは?内容やプログラム例、おすすめサービスを解説

「評価制度」や「報酬制度」など人事制度の設計や見直し

⇒「ゼロから作る人事制度設計マニュアル」資料ダウンロード

業務システムの統合

PMIの具体的な手法の5つ目は、「業務システムの統合」です。

PMIでは、販売、購買などでの業務システムのオペレーション統合、管理部門の制度統合が考えられます。

また、ITシステムに莫大な投資が必要になることもあります。

統合の範囲、実施時期は、効果とのバランスを見ながら検討するようにしましょう。

PMIを推進するためのデータベースの構築

⇒「HRBrain タレントマネジメント」資料ダウンロード

PMIを成功させるポイント

PMIでは、M&Aによるシナジー効果を得て、組織が成長できるかどうかが一番重要です。

統合する両社の状況も鑑み、PMIを成功させるにはどうすれば良いのかについて確認してみましょう。

PMIを成功させるポイント

  • PMIの方向性を定める 

  • PMIを進めていくスピード

  • 従業員が理解し納得すること

PMIの方向性を定める 

PMIを成功させるポイントは、「PMIの方向性を定める」ことです。

企業価値をあげるためにどの領域に対する変革を重点的に行うか、方向性とスピードを定めます。

将来像と経営ビジョンを、買収側と非買収側の双方の経営幹部と幹部社員が、十分なコミュニケーションを取り、認識を共有することが重要です。

▼「ビジョン」についてさらに詳しく
ミッション、ビジョン、バリューの作り方とは?具体的な事例も紹介

PMIを進めていくスピード

PMIを成功させるポイントは、「PMIを進めていくスピード」です。

PMIを進めるスピードが速いと、現場の従業員が付いて行けず、労働に対するモチベーションや現場のオペレーションに混乱が生じることも想定されるため、組織の現状、実力をしっかりと見極めて進める必要があります。

▼「モチベーション」についてさらに詳しく
仕事のモチベーションを上げる方法とは?元人事が実体験をもとに解説

従業員が理解し納得すること

PMIを成功させるポイントは、「従業員が理解し納得すること」です。

M&A実施する際は、経営陣が衝突や摩擦を恐れない姿勢を見せ、M&Aを「成功させるぞ!」という意識を従業員に伝えることが大切です。

買収側と非買収側の幹部同士で膝を付き合わせ、衝突や摩擦を恐れずに徹底的に議論し、コミュニケーションを深め、PMIの精度を上げるようにしましょう。

PMIの推進をサポートするデータベース

PMIとは、当初計画した「M&A(企業合併や統合)」後の統合効果を、いち早く最大化するためのプロセスを指します。

PMIを進めていくうえで、タレントマネジメント、人事評価などの、データベースがあるとPMIを早く進めることが可能になります。

「HRBrain タレントマネジメント」は、PMIに必要なデータベースの構築と見える化を、シンプルで使いやすいデータ管理で実現します。

さらに、従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、育成履歴、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、OKRなどの目標管理、1on1やフィードバックなどの面談履歴などの一元管理も可能です。

HRBrain タレントマネジメントの特徴

  • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

  • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

  • 人材データの見える化も柔軟で簡単に

データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。

▼「タレントマネジメントシステム」についてさらに詳しく
【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
タレントマネジメントシステムの課題とは? 目的・導入の課題と成功事例まで

▼「タレントマネジメント」お役立ち資料まとめ
【人事担当者必見】タレントマネジメントに関するお役立ち資料まとめ

HR大学編集部
HR大学 編集部

HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

\ この記事をシェアする /

  • X
  • LinkedIn

おすすめ記事