#労務管理
2023/12/14

ワークライフインテグレーションとは?考え方と具体例を解説

目次

    ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートの双方が相乗するという考え方で、「従業員の仕事とプライベートの両方を充実させること」を目的としています。

    日本ではまだ認知度は低いものの、働き方改革が進む中で重要な考え方です。

    この記事では、ワークライフインテグレーションの概要やメリットとデメリット、導入する際のポイントや実際に企業で実施されている具体例について解説します。

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    ワークライフインテグレーションとは

    ワークライフインテグレーション(Work-Life Integration)とは、「仕事(ワーク)」と「プライベート(ライフ)」を「統合する(インテグレーション)」という意味です。

    仕事とプライベートの双方が相乗するという考え方で、従業員の仕事とプライベートの両方を充実させることを目的としています。

    働き方改革が謳われる時代で注目が集まっています。

    ワークライフインテグレーションを導入する方法はいくつかありますが、企業ごとに、必要な制度や仕組みを取り入れる必要があります。

    具体的には、働く時間を柔軟にする「フレックスタイム制」や「裁量労働制」、働く場所を柔軟にする「テレワーク」や「ワーケーション」もライフワークインテグレーションのひとつとしてあげられるでしょう。

    また、「リエントリー制度」などを導入することで、例えば子育て期間は家庭に専念して、子育て期間が終わった後に再び働き始めるといった柔軟な働き方ができます。

    ワークライフインテグレーションは、まだ認知度が高くないものの、企業の中には育児や介護を目的とした導入事例もあり、今後導入する企業が増える可能性があるでしょう。

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    ワークライフインテグレーションとワークライフバランスの違い

    ワークライフインテグレーションと似た言葉に、「ワークライフバランス」という言葉があります。

    「仕事もプライベートも両方充実させる」という目的があるという意味では、ワークライフインテグレーションとはワークライフバランスと同じと言えるでしょう。

    しかし、「仕事とプライベートを線引きしているか」どうかという点で、ワークライフインテグレーションとはワークライフバランスは異なります。

    ワークライフバランスとは、仕事とプライベートのバランスを調整して豊かに暮らせるように工夫する意味を持っています。

    例えば、「子供を迎えに行くから仕事を早く終わらせる」「仕事を成功させたいからプライベートの時間を削る」などで調整をすることです。

    一方で、ワークライフインテグレーションは、「仕事もプライベートも生活の一部であり両方が充実することで人生が豊かになる」という考え方で、仕事とプライベートを線引きしていません。

    そのため、ワークライフインテグレーションはワークライフバランスを発展させた考え方とも言えるでしょう。

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    ワークライフインテグレーションが注目される背景

    ワークライフインテグレーションが注目されている背景について確認してみましょう。

    ワークライフインテグレーションが注目される背景

    • 働き方改革が進んでいる

    • 労働人口が減少している

    • 働き方のニーズが多様化している

    働き方改革が進んでいる

    厚生労働省が2019年に働き方改革に関する法案を発表し、現在では多くの企業で働き方を見直す動きがはじまっています。

    働き方改革の広がりによって、「フレックスタイム制」や「裁量労働制」などの働く時間を柔軟にした働き方を導入する企業が多く存在します。

    働く時間を柔軟にするだけではなく、働く場所を柔軟にする「テレワーク」や「ワーケーション」などを導入する企業も珍しくありません。

    このように、働き方改革の広がりによって、人々の働く意識も変化し、仕事とプライベートを両立させられる働き方へのニーズが高まり、ワークライフインテグレーションが注目されるようになりました。

    労働人口が減少している

    日本では、少子高齢化社会が進んでおり、人口が減少し続けています。

    また人口だけではなく、労働人口も減少しているのも事実です。

    総務省統計局の「労働力調査 令和3年平均結果の概要」によると、15歳〜64歳の労働人口は、2021年平均で5,931万人と前年に比べ15万人減少しています。

    労働人口の減少は、企業の人材確保に影響し、採用活動をしても希望する人数の募集が集まりにくい状態に陥っています。

    そのため、仕事とプライベートを両立させられる働き方である、ワークライフインテグレーションが注目されるようになりました。

    (参考)総務省統計局「労働力調査 令和3年平均結果の概要

    働き方のニーズ多様化している

    近年では、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響で、働き方のニーズが多様化しています。

    企業としては、多様化した働き方のニーズに応えなければ、求職者の募集が集まりにくくなったり、従業員の満足度が低下したりする恐れがあり、ワークライフインテグレーションが注目されるようになりました。

    ワークライフインテグレーションのメリット

    ワークライフインテグレーションのメリットについて確認してみましょう。

    ワークライフインテグレーションのメリット

    • 仕事とプライベートの両立

    • D&Iの導入につながる

    • 従業員のモチベーションアップにつながる

    仕事とプライベートの両立

    ワークライフインテグレーションを導入する最大のメリットは、「仕事とプライベートの両立」ができるという点です。

    従来の働き方では、人生の中で仕事とプライベートのどちらかが犠牲になるケースが多く発生していました。

    しかし、ワークライフインテグレーションは、仕事もプライベートも生活の一部という考えのため、どちらかを犠牲にするという考えはありません。

    そのためワークライフインテグレーションを導入している企業では、仕事とプライベートの両立が可能です。

    もし会社の中で、従業員のワークライフバランスに課題がある場合は、「テレワーク」や「フレックスタイム制」など、ワークライフインテグレーションにつながる制度や仕組みを取り入れてみましょう。

    D&Iの導入につながる

    ワークライフインテグレーションを導入するメリットは、「D&Iの導入につながる」という点です。

    D&Iとは、多様化する考えや価値観を受け入れ、新しい価値を創造したり、それぞれの個性の良いところを活かしたりするという考え方で、近年広まりつつある考え方です。

    現在、多くの企業で障害を持った人の採用を強化したり、あらゆる人の考え方に合う制度を導入したりとD&Iに関わる取り組みが行われています。

    ワークライフインテグレーションという考え方も、人々の生活に合わせた仕事が実現することから、D&Iにつながる考え方と言えるでしょう。

    D&Iの導入を強化している企業や、これから導入を考えている企業は、ワークライフインテグレーションの導入もあわせて検討してみると良いでしょう。

    人々の考え方や価値観の多様化にあわせて、企業としての考え方も多様化していく必要があります。

    また、従業員の働きやすさや、生活スタイルに合わせた制度や仕組みを取り入れることで、社内に新たなアイデアや考え方が生まれるかもしれません。

    従業員のモチベーションアップにつながる

    ワークライフインテグレーションを導入するメリットは、「従業員のモチベーションアップにつながる」という点です。

    ワークライフインテグレーションの考え方では、仕事とプライベートのどちらかを犠牲にする必要はありません。

    従業員が自分のライフスタイルに合わせて仕事のやり方を設定できるため、従業員は仕事へのモチベーションを維持しながら仕事ができるでしょう。

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    ワークライフインテグレーションのデメリット

    ワークライフインテグレーションのデメリットについて確認してみましょう。

    ワークライフインテグレーションのデメリット

    • マネジメント管理が難しい

    • 人事評価が難しい

    • 制度を理解してもらうのが難しい

    マネジメント管理が難しい

    ワークライフインテグレーションを導入するデメリットは、「マネジメント管理が難しい」という点です。

    コロナ禍で普及した「テレワーク」は、導入する企業が急増したワークライフインテグレーションのひとつですが、従業員の「労務管理」や「業務進捗管理」が難しいという課題も浮き彫りになっています。

    その他の制度である、「フレックスタイム制」や「裁量労働制」に関しても同様の課題が存在します。

    こうした課題を解決するために、従業員とのコミュニケーションや業務進捗を管理するために「1on1ミーティング」の実施や、「労務管理システム」の導入を検討してみるのも良いでしょう。

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    人事評価が難しい

    ワークライフインテグレーションを導入するデメリットは、「人事評価が難しい」という点です。

    従来の働き方のように、従業員が決まった時間に決まった場所で働くということは、従業員の勤務態度や業務遂行スキルを管理しやすい環境にあるといえます。

    従業員の働き方の自由を認めることで、上司と部下が同じ場所で働く機会も減ります。

    このように、従業員の様子をしっかりと把握できない環境の中で、公平な人事評価を行う必要があります。

    こうした課題を解決するために、目標設定や評価プロセスの可視化ができる「人事評価システム」を導入し、従業員が納得する人事評価を行うようにしましょう。

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    制度を理解してもらうのが難しい

    ワークライフインテグレーションを導入するデメリットは、「制度を理解してもらうのが難しい」という点です。

    ワークライフインテグレーションに関する制度や仕組みは、従業員の自由度が増す一方で、従業員自身の業務を管理する能力が問われます。

    従業員の中には、導入した制度を使いこなせずに従来と変わらない働き方を続ける人もいるでしょう。

    特に初めてワークライフインテグレーションを取り入れる場合は、最大限の効果を発揮できるようにその効果と目的を従業員に説明する必要があります。

    ワークライフインテグレーション推進のポイント

    ワークライフインテグレーションを推進する際のポイントについて確認してみましょう。

    ワークライフインテグレーションを推進するためには、従業員へのアプローチと組織全体のアプローチが異なるため、従業員へのアプローチと組織全体へのアプローチとに分けて確認してみましょう。

    従業員へのアプローチ

    ライフワークインテグレーションを推進するための従業員へのアプローチとして、従業員の「働き方を改める」必要があります。

    従業員の働き方を改めるために、従業員に対して「生産性向上を意識する」「自主性を高める」「長時間労働や残業をなくす」という3点についての教育を実施するようにしましょう。

    • 生産性向上を意識する

    ライフワークインテグレーションを実現させるためには、従業員の「生産性向上」が必要です。

    生産性の向上をせずに、従業員に自由な働き方を許してしまうと、それまで企業としてあげてきた成果を果たせずに企業の業績にも影響します。

    企業の生産性を下げずに従業員に自由な働き方をしてもらうためには、従業員ひとりひとりがこれまで以上に高い生産性を出すことが求められます。

    そのため、ワークライフインテグレーションを導入する前から従業員に対して、業務の効率の向上や、生産性を上げる教育をしておきましょう。

    • 自主性を高める

    ワークライフインテグレーションを推進するためには、従業員ひとりひとりが「自主性を持って業務にあたる」姿勢が重要です。

    従来は、会社のオフィスで上司と部下が一緒に仕事をして、業務の遂行方法の伝達や業務進捗管理を行っていたかもしれません。

    しかし、ワークライフインテグレーションのような従業員に自由な働き方を認める制度を導入する場合は、従業員が自分で考えて自分で行動するスキルが必要です。

    • 長時間労働や残業をなくす

    ワークライフインテグレーションは、従業員が「短い時間で高い生産性を生む」ことで大きな効果を発揮します。

    残業が多い職場は、長時間労働で生産性を確保している組織かもしれません。

    ワークライフインテグレーションを導入する前に、まずは残業時間を減らし、限られた時間の中で業務を遂行できるスキルを従業員に身に着けさせましょう。

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    組織へのアプローチ

    ライフワークインテグレーションを推進するための組織へのアプローチとして、「テレワーク環境の整備」「人事評価制度の見直し」という2点について対応する必要があります。

    • テレワーク環境の整備

    ワークライフインテグレーションを導入するためには、従業員がテレワークをすることができる環境が必要不可欠です。

    例えば、「会社のメールを社外では見られない」「業務用パソコンの社外への持ち出しを禁止している」など、テレワークができる環境にない企業は早急に改善する必要があります。

    社外から会社のシステムにアクセスできるようにしたり、クラウドサービスを活用して会社のメールを確認できるようにしたりを、できるところから改善するようにしましょう。

    従業員が柔軟な働き方をできるように、テレワーク環境の整備を進めましょう。

    • 人事評価制度の見直し

    ワークライフインテグレーションを取り入れた場合、従業員の仕事ぶりや勤務態度を見る機会が減ることもあります。

    そのため、直接顔を合わせなくても従業員の働きぶりを評価できる仕組みや制度を取り入れましょう。

    近年では、テレワークの普及により、人事評価を容易にできるツールも出回っているため、それらを取り入れて評価制度を見直すことも可能です。

    ワークライフインテグレーションの具体例

    ワークライフインテグレーションの具体例について、企業の導入事例をもとに確認してみましょう。

    ワークライフインテグレーションの具体例:オリンパス株式会社

    オリンパス株式会社では、ワークライフインテグレーションの取り組みとして、様々な制度を導入しています。

    取り入れている制度は、「テレワーク勤務制度」「リエントリー制度」「役割フレックス制度」「労働時間短縮制度」などです。

    オリンパスがワークライフインテグレーションを導入した背景には、「育児や介護などの家庭の事情があっても従業員の能力を発揮できる職場環境をつくる」という目的があります。

    (参考)オリンパス「コーポレートガバナンス報告書

    オリンパス株式会社

    ワークライフインテグレーションの具体例:アディダス(ドイツ本社)

    アディダスのドイツ本社でもワークライフインテグレーションが取り入れられています。

    アディダスでは、「週40時間であれば自由に勤務時間を変更できる制度」や、「1ヶ月の20%は好きな場所で仕事ができる制度」を導入しています。

    海外の大手企業でもワークライフインテグレーションが取り入れられて、多様な働き方が認められた事例でもあります。

    (参考)朝日新聞GLOBE+「WLBはもう古いアディダスが挑む「働き方革命」は仕事とプライベートの融合

    (参考)adidas Annual Report 2022「Work-life-and Health Management

    アディダス ジャパン株式会社

    ワークライフインテグレーションの具体例:日本アイ・ビー・エム株式会社

    日本アイ・ビー・エムでは、1999年に現在のテレワークとなる「e-ワーク制度」を導入しています。

    この制度は、子育てをする女性従業員の意見で取り入れられました。

    また、その他にも「短時間勤務制度」と呼ばれる家庭の事情で長時間働けない従業員のために作られた制度もあります。

    (参考)IBM「IBM ダイバーシティー&インクルージョン:ワーク ライフ バランス

    日本アイ・ビー・エム株式会社

    ワークライフインテグレーションを実現するクラウドシステム

    ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートの双方が相乗するという考え方で、「従業員の仕事とプライベートの両方を充実させること」を目的としています。

    ワークライフインテグレーションは、日本では未だ認知度は低いものの、働き方改革や働くニーズが多様化する現代において必要な考え方といえます。

    ワークライフインテグレーションを取り入れる最大のメリットは、仕事とプライベートの両立ができることで、従業員のモチベーションアップにもつながることです。

    日本でワークライフインテグレーションを導入している企業は、「テレワーク」を中心に働きやすい環境を整えており、その他にも一度退職した後に再度同じ会社の応募ができる「リエントリー制度」などを導入している企業があります。

    ワークライフインテグレーションでの最大の課題は、さまざまな働き方をする従業員がいる中で、いかにコミュニケーションを取るか、納得度のある人事評価を行うか、ということにあります。

    また、労務管理の点でも、従業員がひとつの場所に出社しなくて良い環境の中では、クラウドシステムの導入などによる管理が必要となってきます。

    「HRBrain タレントマネジメント」は従業員ひとりひとりのあらゆるデータをクラウド上で一元管理し可視化します。

    従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、研修などの育成履歴や、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、1on1やフィードバックなどの面談履歴、OKRなどの目標設定と進捗管理などを一元管理します。

    また、目標設定や進捗管理、評価プロセスの見える化やフィードバックの管理ができるため、評価に対する従業員の納得度を上げることも可能です。

    HRBrain タレントマネジメントの特徴

    • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

    運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

    • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

    従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

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    HR大学編集部
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