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ワークライフインテグレーションとは?注目される背景と導入事例をご紹介

ワークライフインテグレーションとは?注目される背景と導入事例をご紹介

目次

    本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。

    皆さんは「ワークライフインテグレーション」という言葉をご存じでしょうか?

    ワークライフインテグレーションは、日本ではまだ認知度は低いものの、働き方改革が進む日本において重要な考えです。

    今回この記事では、ワークライフインテグレーションの概要やメリット・デメリット、導入する際のポイントをご紹介します。

    また、実際に企業で取り入れられている事例も紹介しているため、導入に課題を感じた場合は併せて確認してみましょう。

    ワークライフインテグレーションとは?

    まずは、ワークライフインテグレーションの概要を解説します。

    概要

    インテグレーション(integration)とは、「統合」や「融合」という意味があります。

    ワークライフインテグレーションには、「仕事とプライベートを統合する」という意味があり、働き方改革が謳われる時代で注目が集まっている仕事の考え方です。

    ワークライフインテグレーションを導入する方法はいくつかあり、その企業で必要な制度や仕組みを取り入れる必要があります。

    働く時間を柔軟にする「フレックスタイム制」や「裁量労働制」、働く場所を柔軟にする「リモートワーク」や「ワーケーション」もライフワークインテグレーションのひとつとしてあげられるでしょう。

    また、「リエントリー制度」などを導入することで、例えば子育て期間は家庭に専念して、子育て期間が終わった後に再び働きはじめるといった柔軟な働き方ができます。

    現在ではまだ認知度が高くないものの、企業の中には育児や介護を目的とした導入事例もあがっており、今後導入する企業が増える可能性があるでしょう。

    ワークライフバランスとの違い

    ワークライフインテグレーションと似た言葉で、ワークライフバランスという言葉も耳にする機会が増えました。

    仕事もプライベートも両方充実させるという目的があるという意味では、このふたつの言葉は同じと言えるでしょう。

    しかし、このふたつは、仕事とプライベートを線引きしているかどうかが異なります。

    ワークライフバランスとは、仕事とプライベートのバランスを調整して生活が豊かに暮らせるように工夫する意味を持っています。

    例えば、「子供を迎えに行くから仕事を早く終わらせる」や「仕事を成功させたいからプライベートの時間を削る」などで調整することです。

    一方、ワークライフインテグレーションは、「仕事もプライベートも生活の一部であり、両方が充実することで人生が豊かになる」という考え方で、仕事とプライベートを線引きしません。

    こうした要素を持っていることから、ワークライフインテグレーションはワークライフバランスを発展させた考え方とも言えるでしょう。

    ワークライフバランスについてさらに詳しく知りたい方は、リモートワークでも実現!ワークライフバランスのとれた働き方とは?もご覧ください。

    ワークライフインテグレーションが注目される背景

    ここからは、ワークライフインテグレーションが注目される背景について解説します。

    働き方改革が進んでいる

    厚生労働省が2019年に働き方改革に関する法案を発表し、現在では多くの企業で働き方を見直す動きがはじまっています。

    この働き方改革の広がりによって、「フレックスタイム制」や「裁量労働制」などの働く時間を柔軟にした働き方を導入する企業が多く存在します。

    働く時間を柔軟にするだけではなく、働く場所を柔軟にする「リモートワーク」や「ワーケーション」などを導入する企業も珍しくありません。

    この働き方改革の広がりによって、人々の働く意識も変化し、仕事とプライベートを両立させられる働き方のニーズが高まりました。

    労働人口が減少している

    現在の日本では、少子高齢化社会が進んでおり、人口が減少し続けています。

    また人口だけではなく、20代〜60代の働ける人口も減少しているのも事実です。

    この労働人口の減少は、企業の人材確保に影響しており、採用活動をしても希望する人数の募集が集まりにくい状態に陥っています。

    働き方のニーズ多様化している

    近年では、働き方改革やコロナの影響で、働き方のニーズが多様化しています。

    企業としては、この多様化した働き方のニーズに応えなければ求職者の募集が集まりにくくなったり、実際に働いている従業員の満足度が低下したりする恐れがあるでしょう。

    ワークライフインテグレーションのメリット

    ここからは、ワークライフインテグレーションのメリットについて解説します。

    仕事とプライベートの両立

    ワークライフインテグレーションを導入する最大のメリットは、仕事とプライベートが両立できる点です。

    従来の働き方では、人生の中で仕事がメインとなり、プライベートの時間を削って仕事にあてる人が多いのではないでしょうか。

    しかし、ワークライフインテグレーションは、仕事もプライベートも生活の一部という考えのため、どちらかを犠牲にするという考えはありません。

    そのためワークライフインテグレーションを導入している企業では、仕事とプライベートの両立が可能です。

    もし会社の中で、従業員のワークライフバランスに課題がある場合は、ワークライフインテグレーションにつながる制度や仕組みを取り入れてみましょう。

    「リモートワーク」や「フレックスタイム制」は、コロナ禍で多くの企業が取り入れはじた制度です。

    導入事例や導入方法について紹介している記事も豊富に出回っているため、それらを参考にして取り入れてみましょう。

    D&Iの導入につながる

    近年では、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という考え方が広まりつつあります。

    このD&Iは、多様化する考えや価値観を受け入れて新しい価値を創造したり、それぞれの個性のいいところを活かしたりする考え方です。

    現在、多くの企業で障害を持った人の採用を強化したり、あらゆる人の考え方に合う制度を導入したりとD&Iに関わる取り組みが行われています。

    ワークライフインテグレーションという考え方も、人々の生活に合わせた仕事が実現することから、D&Iにつながる考え方と言えるでしょう。

    D&Iの導入を強化している企業や、これから導入を考えている企業は、ワークライフインテグレーションの導入も併せて検討してみてはいかがでしょうか。

    人々の考え方や価値観が多様化する現代では、企業の考えも多様化していく必要があります。

    従業員の働きやすさ、生活スタイルに合わせた制度や仕組みを取り入れることで、社内に新たなアイデアや考え方が生まれるかもしれません。

    従業員のモチベーションアップにつながる

    ワークライフインテグレーションを導入するメリットの3つ目は従業員のモチベーションアップにつながる点です。

    記事の冒頭で述べたように、ワークライフインテグレーションの考えでは、仕事かプライベートかどちらかを犠牲にする必要はありません。

    従業員が自分のライフスタイルに合わせて仕事のやり方を設定できるため、従業員は仕事へのモチベーションを維持しながら仕事できるでしょう。

    ワークライフインテグレーションのデメリット

    次にワークライフインテグレーションのデメリットについても解説します。

    マネジメント管理が難しい

    ワークライフインテグレーションのデメリットのひとつ目は、マネージメント管理が難しい点です。

    コロナ禍で普及したリモートワークは、近年で導入する企業が急増したワークライフインテグレーションのひとつでありますが、従業員の労務管理や業務進捗管理が難しいという課題も浮き彫りになっています。

    その他の制度の「フレックスタイム制」や「裁量労働制」に関しても同様の課題が存在します。

    こうした課題を解決するために、従業員とのコミュニケーションツールや業務進捗を管理できるツールの導入がおすすめです。

    こうしたツールやシステムについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご確認ください。

    人事評価が難しい

    人事評価が難しい点もワークライフインテグレーションの課題のひとつです。

    従来の働き方のように、決まった時間に決まった場所で働くことで従業員の勤務態度や業務遂行スキルが管理しやすい状況にあります。

    しかし、従業員の働き方の自由を認めることで、上司と部下が一緒に働く機会が減ってしまうでしょう。

    従業員の様子をしっかりと把握できない環境の中、不公平とならないような人事評価を行う必要があります。

    この課題を解決するために、マネジメント管理と同様に人事評価ツールを用いて従業員が納得する人事評価を行いましょう。

    人事評価ツールについて詳細を知りたい方は、こちらの記事も併せて御覧ください。

    制度を理解してもらうのが難しい

    3つ目の課題は、導入する制度や仕組みを従業員に理解してもらうのが難しい点です。

    ワークライフインテグレーションに関する制度や仕組みは、従業員の自由度が増す一方で、従業員自身の業務を管理する能力が問われます。

    従業員の中には、導入した制度を使いこなせずに従来と変わらない働き方を続ける人もいるでしょう。

    特に初めてワークライフインテグレーションを取り入れる場合は、最大限の効果を発揮できるようにその効果と目的を従業員に指導する必要があります。

    ワークライフインテグレーションを推進する際のポイント

    ここからは、ワークライフインテグレーションを推進する際のポイントをご紹介します。

    ワークライフインテグレーションを推進するためには、従業員へのアプローチと組織全体へのアプローチが異なるため、それぞれ解説します。

    従業員へのアプローチ

    ライフワークインテグレーションを推進するために、働き方を改める必要があります。

    従業員に対して教育を行うべき項目は以下の通りです。

    生産性向上を意識する

    ライフワークインテグレーションを実現させるには、従業員の生産性向上が必要です。

    生産性を向上させず、従業員に自由な働き方を許してしまうと、それまで企業としてあげてきた成果を果たせずに企業の業績にも影響します。

    企業の生産性を下げずに従業員に自由な働き方をしてもらうには、従業員ひとりひとりがこれまで以上に高い生産性を出すことが求められます。

    そのため、ワークライフインテグレーションを導入する前から業務の効率の向上や、生産性を上げる教育をしておきましょう。

    自主性を高める

    次に、ワークライフインテグレーションを推進するためには、従業員ひとりひとりが自主性を持って業務にあたる姿勢が重要です。

    従来は、会社のオフィスで上司と部下が一緒に仕事をして、業務の遂行方法の伝達や業務進捗管理を管理職が行っていたかもしれません。

    しかし、ワークライフインテグレーションのような従業員に自由な働き方を認める制度を導入する場合は、従業員が自分で考えて自分で行動するスキルが必要です。

    長時間労働や残業をなくす

    ワークライフインテグレーションを取り入れる場合、従業員が短い時間で高い生産性を生むことで大きな効果を発揮します。

    現在の職場で残業が多い職場では、長時間労働で現在の生産性を確保している組織かもしれません。

    ワークライフインテグレーションを導入する前に、まずは残業時間を減らし、限られた時間の中で業務を遂行できるスキルを従業員に身に着けさせましょう。

    組織へのアプローチ

    次に、組織に対して必要なアプローチ項目についてです。

    リモート環境の整備

    ワークライフインテグレーションを導入するためには、従業員がリモートワークできる環境が必要不可欠です。

    例えば、「会社のメールを社外では見られない」や「業務用パソコンを社外に持ち出し禁止」など、リモートワークができる環境にない企業は早急に改善に取り掛かりましょう。

    社外から会社のシステムにアクセスできるようにしたり、クラウドサービスを活用して会社のメールを確認できるようにしたり、できるところから改善が必要です。

    従業員が柔軟な働き方をできるように、リモート環境の整備を進めましょう。

    人事評価制度の見直し

    次に組織として見直す必要があるのが人事評価制度です。

    ワークライフインテグレーションを取り入れた場合、従業員の仕事ぶりや勤務態度を見る機会が減ることもあります。

    そのため、直接顔を合わせなくても従業員の働きぶりを評価できる仕組み・制度を取り入れましょう。

    近年では、リモートワークの普及により、人事評価を容易にできるツールも出回っているため、それらを取り入れて評価制度を見直すことも可能です。

    ワークライフインテグレーションの導入事例

    最後に、ワークライフインテグレーションを取り入れている企業の導入事例をご紹介します。

    オリンパス株式会社での導入事例

    電子機器メーカーであるオリンパスでは、ワークライフインテグレーションの取り組みとして、様々な制度を導入しています。

    取り入れている制度は、「テレワーク勤務制度」や「リエントリー制度」、「役割フレックス制度」、「労働時間短縮制度」などです。

    オリンパスがワークライフインテグレーションを導入した背景には、育児や介護などの家庭の事情があっても従業員の能力を発揮できる職場環境をつくる目的があります。

    オリンパスが導入している制度について、さらに詳しく知りたい方はオリンパスの公式サイトをご覧ください。

    アディダス(ドイツ本社)での導入事例

    これは日本の事例ではないものの、アディダスのドイツ本社でもワークライフインテグレーションが取り入れられています。

    アディダスでは、「週40時間であれば自由に勤務時間を変更できる制度」や、「1ヶ月の20%は好きな場所で仕事ができる制度」を導入しました。

    海外の大手企業でもワークライフインテグレーションが取り入れられた事例で、多様な働き方が認められた事例でもあります。

    日本アイ・ビー・エム株式会社での導入事例

    日本アイ・ビー・エムでは、1999年に現在のテレワークとなる「e-ワーク制度」を導入しています。

    この制度は、子育てをする女性従業員の意見で取り入れられました。

    また、その他にも「短時間勤務制度」と呼ばれる家庭の事情で長時間働けない従業員のためにつくられた制度も導入しています。

    日本アイ・ビー・エムで導入している制度について、さらに詳しく知りたい方は公式サイトをご覧ください。

    まとめ

    今回は、ワークライフインテグレーションに焦点を当て、その概要とメリット・デメリット、導入時のポイントについて解説しました。

    日本では未だ認知度は低いものの、働き方改革や働くニーズが多様化する現代において必要な考え方と言えます。

    ワークライフインテグレーションを取り入れる最大のメリットは、仕事とプライベートの両立ができることで、これによって従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

    日本で導入している企業は、「リモートワーク」を中心に働きやすい環境を整えており、その他にも一度退職した後に再度同じ会社の応募ができる「リエントリー制度」などを導入している企業もあります。

    従業員の働き方改革を進めたい企業は、まず導入できる制度を取り入れ、従業員の声を聞きながら徐々に拡大しましょう。

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    HR大学編集部

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