人材管理
従業員エンゲージメント指標とは?測定方法や重要性、メリットを紹介
目次
日々の事業を支える従業員がどれほど会社のことを理解し、意欲を持って仕事をしているのか、またユーザーがどれほど会社や製品を好み、愛着を持ってくれているのかを測るものとして従業員エンゲージメント指標があります。
エンゲージメントを測定し、その結果を活かした施策や改善を行うことにより、会社と従業員、会社とユーザーの関係をより良いものにできると考えられています。
しかし、エンゲージメント指標とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
そしてエンゲージメントを向上させる要因には、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事では会社におけるエンゲージメントの重要性、エンゲージメントにおける具体的な指標、またエンゲージメントを向上させる要素などについて説明します。
従業員エンゲージメント指標とは
会社や仕事への「熱意・信頼・意欲」を示すもの
人事領域において「エンゲージメント」とは、「従業員が会社に対して愛着を持っている」という意味を持っています。
従業員エンゲージメント指標はそのような会社への信頼度・愛着度を指標化し、会社と従業員間の関係性を数値で表したものです。
会社への信頼・愛着を表すものとして似たものに「従業員満足度」がありますが、この「従業員満足度」は労働条件・環境などについて、従業員から会社へ一方的に評価をする意味合いが強いものです。
それに対して従業員エンゲージメント指標は、双方向的な取り組みによって会社と従業員との結びつきを強めていけるものである点で「従業員満足度」とは異なります。
従業員ではなく顧客に向けたエンゲージメントも
エンゲージメントには、従業員エンゲージメントの他に「顧客エンゲージメント」と呼ばれるものもあります。
従業員エンゲージメントが会社と従業員間の関係性を示すものであるのと同じように、顧客エンゲージメントは会社とその会社の商品を購入・使用する顧客間の信頼関係を示すものです。
顧客エンゲージメントを向上させることで顧客が自社の商品・サービスを選び続けてくれれば、会社の市場での競争力が高まることに繋がります。
従業員エンゲージメント調査は従業員に会社に対する信頼・愛着を持ち続けてもらうために、顧客エンゲージメントは顧客に自社の製品を愛し、使い続けてもらうために行うものであり、両者の目的は基本的には同じであると言えます。
なぜ従業員エンゲージメントが重要なのか
従業員エンゲージメント指標は近年、多くの企業における採用・組織開発の領域において注目を集めています。
従業員エンゲージメント指標がそのように注目されているのには、以下のような理由があると考えられます。
少子化などによる人材確保の難しさ
久しく知られているように、日本では近年少子化が進んでいます。
少子化に伴い、会社にとっては今後ますます人材の確保が難しくなってくることが予想されます。
今いる従業員に長く働き続けてもらうためには、会社が従業員にとって働きやすく、個人の力を発揮できる場所であることが理想的です。
従業員エンゲージメント指標を測定することによって自社における改善点や課題を抽出し、より従業員から選ばれる会社を目指すことが重要なのです。
会社が行う施策の効果・影響の検証
会社では従業員に対して業務上の教育・研修を始めとした、各種の福利厚生や働き方についての施策を行なっています。
従業員エンゲージメント指標の測定は、そのような各施策によって会社が従業員にとって働きやすく愛着のある場所となっているかを検証できる機会でもあります。
測定した従業員エンゲージメント指標の結果は、今後どのような施策を行い、どの施策を止めるべきなのかを会社が判断する際の重要な材料になるのです。
会社の事業の業績・成長への影響
従業員エンゲージメント指標を測定し、それを向上させるための施策を行なっていけば、会社は従業員にとってより働きやすく、個人のパフォーマンスを発揮しやすい場所になっていくと考えられます。
各従業員が自身の能力を十分に発揮できれば、結果的に会社全体の業績が向上していくことが期待できます。
このように従業員エンゲージメント指標を測定することは、将来的な生産性の向上や事業の成長にも影響を及ぼすと考えられるのです。
従業員エンゲージメントの調査指標とは
従業員の会社に対するエンゲージメントを測定するためには、具体的にどのような指標を用いるのでしょうか。
ここでは3つの指標について説明します。
エンゲージメント総合指標
エンゲージメント総合指標は、従業員が会社に対してどのような印象を抱いているかについて、総合的な評価を示すものと言えます。
具体的な項目として、以下のようなものが挙げられます。
- eNPS(employee Net Promoter Score):自分が勤める会社を勤務先として友人や知人に勧められる度合いを問います。
- 総合満足度:総合的に見た会社への満足度を問います。
- 継続勤務意向:現在勤めている会社で今後も働き続けたいかを問います。
また、それらの指標を調査するための具体的な設問例として、以下のようなものがあります。
- 「求職中の友人や家族に、自社をおすすめしたいと思いますか?」
- 「自社で自分の成長を感じられる機会がありましたか?」
- 「職場に自分を気遣ってくれる上司や同僚はいますか?」
ワークエンゲージメント指標
ワークエンゲージメント指標は、従業員の仕事への熱意・やりがいの有無、仕事を楽しめているかどうかを測る指標です。
具体的には仕事に対する「活力」「熱意」「没頭」という3つの要素に焦点を当てた設問を設定します。
具体的な設問としては以下のようなものが多くなっています。
- 「仕事をする上で「この仕事は自分が得意とすることだ」と感じる機会はありますか」
- 「仕事を行うのに必要な資料や機材、環境などが整っていると感じますか?」
エンゲージメントドライバー指標
エンゲージメントドライバー指標は、今後の従業員エンゲージメントを向上させる要因を示すものです。
具体的には以下の項目によって測られます。
- 組織ドライバー:職場の人間関係や環境など、会社と従業員間の状態に関する内容
- 職務ドライバー:職務に対する満足度や難易度、当事者意識に関する内容
- 個人ドライバー:個人の資質によって業務に及ぼされる影響に関する内容
また、これらの指標を調査するためには、具体的には以下のような設問が問われます。
- 「自分の仕事を褒められたり認められたりする機会はありますか?」
- 「自分が所属する部署や会社全体の目標や戦略を理解していますか?」
日本の従業員エンゲージメント指標
近年の日本企業の従業員エンゲージメントの傾向は、どのようになっているのでしょうか。
海外のいくつかの企業が世界各国の企業・従業員に対して行なった調査によると、日本の従業員エンゲージメント指標は残念ながら非常に低いとされています。
例えば、ある企業の調査において「仕事に熱意が持てない」という項目について「はい」と答えた人の割合は、欧米を始めとした諸外国では20%台半ばが平均的であるのに対し、日本では48%と非常に高くなっています。
その他の調査においても、日本人の仕事に対するやる気や熱意は、諸外国と比較して低いことが分かっています。
従業員が仕事に対して熱意を持てなければ、本来持っている能力を十分に発揮することも難しいでしょう。
これらのことからも日本の企業にとって従業員エンゲージメント指標は、働きやすい職場づくりや会社の事業の発展のために、今後ますます重要な指標になっていくと考えられます。
従業員エンゲージメント指標に影響する要素とは
従業員にとって会社をより働きやすく能力を発揮しやすい場所にし、従業員エンゲージメントを高めていくためにはどのような点が重要なのでしょうか。
こちらでは3つの要素について説明します。
1.働きやすさ
従業員が個々の能力を活かして最大のパフォーマンスを発揮するために、会社が働きやすい環境であることは非常に重要です。
特に以下のような条件は個人の働きやすさに大きく影響します。
- 個人として尊重されているか
- プライベートと仕事が両立できているか
- 知識を増やし、能力を高めるための学習の機会が十分に用意されているか
業務を取り巻くこれらの要素についての満足度が高ければ、自然と従業員エンゲージメントも高くなると考えられます。
従業員エンゲージメントを高めるためには、上司と従業員ひとりひとりが円滑なコミュニケーションを取れる風土を構築し、プライベートを大切にできる労働環境、知識を高めたいと考える従業員の熱意に応えられる学習体制を整えることなどが大切です。
2.やりがい
自分が従事した業務において明確な結果・成果が表れ、やりがいを感じられることも従業員エンゲージメントに大きく影響します。
社会人として仕事をしている上で、自分の業務が会社や事業の成長に繋がり、それを同僚や上司に認めてもらえることはこの上ない達成感を得られるものでしょう。
良い仕事ができていると感じることによって従業員の自己肯定感が高まれば、従業員エンゲージメントが高まることが期待できます。
そのためには個人の業務内容や成果を把握し、それを適切に認められる風通しの良い職場づくりが大切です。
3.ビジョン
企業が掲げるビジョンと従業員の方向性が一致していることは、事業の成長にとっても従業員の働きやすさにとっても理想的な状態です。
従業員ひとりひとりが将来に対して持つ目標・人生設計と会社の将来像がマッチしていれば仕事に対する目的意識が高まり、日々の業務に情熱を持って取り組めるでしょう。
従業員とビジョンを共有できるよう、会社側は明確な経営方針を定めた上で従業員に対して十分に説明し、伝えていくことが大切です。
4.従業員の入社時とのギャップ
大半の従業員は会社の理念や事業に共感し、期待を持って入社してくるものです。
しかし実際に仕事をしてみて、業務内容や社内の風土が事前に思い描いていたものと違っていれば、会社に対する信頼度・愛着度や仕事への熱意が低くなってしまう場合もあるでしょう。
そのような入社時と現在の仕事・会社に対するギャップも従業員エンゲージメントに影響するものと考えられます。
もし従業員が入社時に描いていたイメージと実際の仕事内容・会社の風土との間にギャップを感じているのであれば、それをしっかりと深掘りし、仕事に前向きに取り組めるような対策を取っていくことが大切です。
従業員ひとりひとりの期待値と実感値を収集してそのギャップを可視化、個人の課題を分析・実行するまでの流れを管理できるツールにHRBrainが提供する『EXintelligence』があります。
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従業員エンゲージメント指標の調査方法
従業員の働きやすさや仕事への熱意を測り、会社の成長にも大きく影響する従業員エンゲージメント指標ですが、実際に測定するにはどのような方法があるのでしょうか。
ここでは調査を自社で行うか外部の機関に委託するか、具体的な調査の方法にはどのようなものがあるのかについて説明します。
自社で従業員エンゲージメント調査を行う場合
外部機関に委託せず自社でエンゲージメント指標の調査を行う場合のメリットは、以下のような選択肢を自社内で設定でき、自由度の高い調査が行える点です。
- アンケートを紙で行うかWebツールを使って行うか
- アンケートの設問をどのように設定するか
自社が特に掘り下げて知りたい項目や分野に焦点を当てるなど、柔軟に調査を行えることが自社で調査を行う場合の大きなメリットと言えるでしょう。
また、外部へ委託する場合と比較してコストが抑えられる点も大きなメリットです。
その反面、調査のプロである外部機関の知見を借りることができないため、専門性に欠ける調査になりがちであるというデメリットもあります。
専門会社に従業員エンゲージメント調査を依頼する場合
外部の専門機関に調査を委託するのも一つの方法です。
専門機関に調査を委託することの最大のメリットは、従業員エンゲージメント調査の実績や知見を持つ専門家がアンケートの設問を設定してくれることから、専門性の高い調査を行える点でしょう。
また、多忙な人事部門の担当者が一から準備を行わずに済むため、社内での工数が削減できる点も魅力的です。
その反面、当然ながら自社で調査を行うよりもコストがかかる点がデメリットと言えます。
ここからは従業員エンゲージメント調査の具体的な測定方法について説明します。
1.従業員エンゲージメントサーベイ
「従業員エンゲージメントサーベイ」では一般的に半年〜1年に1回程度、定期的に従業員にアンケートを実施します。
アンケートは「自社で働くことに誇りを持っているか」「会社の目標・戦略を理解しているか」などを中心としたボリュームの大きい項目数になっており、従業員の会社への貢献意欲や満足度を細かくチェックできるようになっています。
1回の設問数が多いことからあらゆる角度での調査結果が得られますが、回答者への負担が大きい点がデメリットでもあります。
2.従業員パルスサーベイ
「従業員パルスサーベイ」は、「パルス=脈拍」という意味を持っているように、週に1回〜月に1回程度の短い間隔で行う調査方法です。
「従業員エンゲージメントサーベイ」と比べて頻繁に行うため、アンケート内容は5~10分程度で回答できる簡単なものです。
社員の負荷が少ないため回答率が高くなりやすく、調査結果が早く得られることが特長です。
ピンポイントでの満足度などが分かるため、社内で使用するシステムが変更されたときや新入社員が入社したときなど、限定的な場面でのチェックにも有効と言えます。
また、アンケート調査以外にも
- キーボードタイピングの様子から業務への集中度を測定する
- 顔認証機能を使い、従業員の表情から仕事への没頭度を測定する
など、ITツールを使用した調査が行えることも「従業員パルスサーベイ」の特長です。
まとめ
事業を円滑に運営し、会社全体が安定して発展していくためには従業員ひとりひとりが会社への信頼や愛着、仕事に対する熱意を持つことが大切です。
そして従業員がそのような信頼や熱意を持つためには、会社が働きやすく、個人のパフォーマンスや業務への姿勢を認めてもらえる場所であることが必要です。
日々さまざまな要因によって目まぐるしく移り変わる世界の中で、会社が従業員にとって仕事をしやすく、働き続けたいと思える場所であるために従業員エンゲージメント指標は今後ますます重要になっていくと考えられます。
職場の課題・改善点を把握することによって従業員・会社間の良い関係性を構築し、会社を発展させていくためにも、継続的な従業員エンゲージメント指標の測定を行なってみてはいかがでしょうか。
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