人材管理
2023/08/30
エンゲージメントサーベイとは?質問項目や実施する目的と必要性
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エンゲージメントサーベイは、従業員の視点からみた「会社とのつながりの強さ」を数値化して把握し改善するための調査ツールです。転職市場の活発化やテレワークの普及を背景に、離職防止や生産性向上への取り組みに注目が集まり、エンゲージメントサーベイが注目されるようになりました。
エンゲージメントサーベイの質問項目や実施の目的と注意点、選定方法などについて解説します。
▼エンゲージメントサーベイの実施を効率的かつ効果的に実現
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エンゲージメントサーベイの概念
エンゲージメントサーベイとは、どのようなものなのでしょうか?
エンゲージメントサーベイの概念と、エンゲージメントについて、確認してみましょう。
エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、従業員の視点からみた「会社とのつながりの強さ」を数値化して把握し改善するための調査ツールで、従業員が会社や仕事に対してどれだけポジティブな感情を持っているのかを測定することができます。
会社と従業員とのつながりの強さを、一般的には「従業員エンゲージメント」と呼びます。つまり、エンゲージメントサーベイは、従業員エンゲージメントを測定するツールです。
サーベイツールを提供する企業は多く、それぞれに異なる測定尺度や測定方法を採用しています。従来、人事部門では組織調査として従業員満足度調査(ESサーベイ)を実施してきました。
従業員満足度調査(ESサーベイ)は、主に従業員の職場環境や人間関係への満足度を調査するツールです。
しかし、近年の雇用流動性の高まりにより、離職防止の取り組みが注目されるようになったため、従業員と会社との関係性に焦点を当てた「エンゲージメントサーベイ」が使用されるようになってきました。
▼「従業員エンゲージメント」についてさらに詳しく
従業員エンゲージメントとは?向上施策・事例も紹介
従業員エンゲージメントと従業員満足度(ES)の違いとは?相関関係も紹介
「エンゲージメント」とは?
エンゲージメントサーベイの「エンゲージメント(engagement)」とは、英語で「契約」「約束」「関与」を意味する言葉で、特定の対象との「関係性」を意味しています。
ビジネスシーンでは、会社と従業員との「関係性とつながりの強さ」「組織に対する共感や愛着と貢献」を表す意味で「エンゲージメント」という言葉が用いられています。
学術的には、オランダのユトレヒト大学教授のシャウフェリが「ワーク・エンゲージメント」の概念を提唱しています。
ワーク・エンゲージメントとは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」と定義され、「活力、熱意、没頭」によって特徴づけられる概念です。
日本における、ワーク・エンゲージメント研究の第一人者である、慶應大学の島津教授によると、「エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知」と説明されています。
このように、エンゲージメントは、企業活動の中でも特に従業員の仕事や会社に対する意欲を示す概念として浸透しています。
エンゲージメントを向上させることで、離職防止や優秀な人材の確保、生産性の向上や業績アップなどの効果が期待できます。
エンゲージメントサーベイを実施する目的とは?
エンゲージメントサーベイを実施する目的とは、いったいなんでしょうか。
エンゲージメントサーベイを実施するうえで、まずは実施の目的を明確にすることが大切です。
エンゲージメントサーベイを実施する、4つの目的について確認してみましょう。
- 組織課題を可視化する
- 従業員と企業とのギャップを把握する
- データを人事施策に活かす
- データをチーム運営に活かす
組織課題を可視化する
エンゲージメントサーベイを実施する目的の1つ目は、「組織課題を可視化する」ことです。
エンゲージメントサーベイを実施することで、本来数値化できない従業員のエンゲージメントを数値化やグラフ化し、可視化することができます。
エンゲージメントサーベイを定期的に行い、数値の変化を確認することで、従業員のモチベーションや、会社に対する愛着度の変化などを、察知することができます。
エンゲージメントサーベイで、適切なデータを収集するためには、従業員の率直な意見を収集できるよう、エンゲージメントサーベイ実施前に、従業員に対して、十分な説明を行ったり、回答しやすい環境を整えることも大切です。
場合によっては、匿名のサーベイを実施するのもよいでしょう。
従業員と企業とのギャップを把握する
エンゲージメントサーベイを実施する目的の2つ目は、「従業員と企業とのギャップを把握する」ことです。
エンゲージメントサーベイを実施することで、従業員が企業や組織へ求める期待と現状とのギャップを把握することができます。
また、エンゲージメントサーベイに回答することで、上司や同僚との関係や、自己成長などについて、従業員自身の期待と現状とのギャップに気付くこともできます。
データを人事施策にいかす
エンゲージメントサーベイを実施する目的の3つ目は、「データを人事施策にいかす」ことです。
エンゲージメントサーベイを実施することで、従業員の「モチベーション」「コミュニケーション」「マネジメント」などに対する、人事上の課題を発見し数値として明確に提示することができます。
エンゲージメントサーベイでの調査結果を分析し、「1on1ミーティングの実施」「評価制度の見直しや改善」「組織開発」「環境整備」などに活用することができます。
データをチーム運営にいかす
エンゲージメントサーベイを実施する目的の4つ目は、「データをチーム運営にいかす」ことです。
エンゲージメントサーベイでの調査結果を、管理職に共有しチーム内で議論することで、企業や組織が抱える課題を、従業員ひとりひとりが「自分事」として考えることができるようになるため、ポジティブなコミュニケーションが増えたり、エンゲージメントにも良い影響を与えます。
エンゲージメントサーベイを実施するメリットとは?
エンゲージメントサーベイを実施することで得られるメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
エンゲージメントサーベイを実施することで得られる、5つのメリットについて確認してみましょう。
- モチベーションの維持と向上
- 生産性の向上
- 離職率の低下と定着率の向上
- リファラル採用の活性化と人員確保
- 人事トラブルの防止
モチベーションの維持と向上
エンゲージメントサーベイを実施するメリット1つ目は「モチベーションの維持と向上」です。
働き方の多様化や、テレワークの普及により、対面でのコミュニケーションが減り、従業員の特性や業務状況を把握することが難しくなってきています。
エンゲージメントサーベイを定期的に実施することで、従業員のモチベーションの変化を把握することができます。
また、テレワークでのコミュニケーション不足や孤独感、異動などの環境の変化によるモチベーションの低下など、従業員のコンディションの変化を察知することもできます。
エンゲージメントサーベイのスコアによって、従業員のモチベーションに変化が見られた際は、1on1ミーティングや人事面談などの適切なフォローを行い、モチベーションの維持や向上にむけた対策を実施することができます。
▼「1on1ミーティング」についてさらに詳しく
1on1とは? 従来の面談との違いや効果を高めるコツ
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生産性の向上
エンゲージメントサーベイを実施するメリット2つ目は「生産性の向上」です。
エンゲージメントサーベイのデータをもとに、人事施策の見直しの実施や、課題解決に向けた施策の実施、コミュニケーション方法の見直し、適材適所の人事配置や、得意領域への異動などを行うことで、従業員の「働きがい」が上がり、生産性も向上します。
さらに、生産性が高まることで、質のよいサービスや商品が生まれやすくなり、企業としての利益が増え、業績向上につながっていくでしょう。
離職率の低下と定着率の向上
エンゲージメントサーベイを実施するメリット3つ目は「離職率の低下と定着率の向上」です。
エンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメント向上に向けた施策を実施することで、従業員の会社やチームへの帰属意識が高まり、離職率の低下や定着率の向上につながるでしょう。
また、エンゲージメントサーベイを実施することで、離職の予兆を発見することができます。
これまで育成してきた従業員や、高い業績を残してきた従業員、幹部候補の従業員などが、突然退職する、「びっくり退職」を防ぐこともできるでしょう。
離職の予兆を見逃さないためにも、エンゲージメントサーベイの実施を定期的に行うことが大切です。
エンゲージメントサーベイのデータから、従業員に離職の予兆が見られた場合は、人事面談を実施するなど、適切なフォローを行うことで、離職率の低下や定着率の向上につなげることができるでしょう。
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リファラル採用の活性化と人員確保
エンゲージメントサーベイを実施するメリット4つ目は「リファラル採用の活性化と人員確保」です。
リファラル採用とは、自社の従業員の紹介によって、人材を採用する手法です。
従業員は、企業が求めている人材やスキルに合致する人材を、企業に対して紹介します。
エンゲージメントの高い従業員は、自社を他の人に推奨する可能性も高いため、リファラル採用との相性が良く、紹介制度の活性化にもつながります。
また、エンゲージメントの高い従業員と似た人材を採用することができる可能性があるため、企業とのマッチングも高まり、採用での人員確保の確率も高まります。
エンゲージメントサーベイを実施することで、リファラル採用の活性化や、成果を向上させることができるでしょう。
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リファラル採用とは?導入のメリット・デメリットや注意点について
人事トラブルの防止
エンゲージメントサーベイを実施するメリット5つ目は「人事トラブルの防止」です。
エンゲージメントサーベイの質問や設計にもよりますが、企業や組織内で発生する、人事トラブルの予兆を発見することができます。
人間関係でのトラブルや、パワハラ、セクハラなど、なかなか上司や同僚に相談できない悩みを打ち明けることができます。
エンゲージメントサーベイを実施する際に、「アンケートの匿名性をしっかりとアナウンスすること」「フリーコメント欄を設けること」が大切です。
また、エンゲージメントサーベイの調査結果から、人事トラブルを発見し、調査を行う場合は、必ず「守秘すること」「信頼性を損なうようなことをしないこと」に気をつけるようにしましょう。
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エンゲージメントサーベイとその他のサーベイの違い
これまでも企業の中では、さまざまな「サーベイ」が実施されているかもしれません。
エンゲージメントサーベイ以外の、4つの代表的なサーベイについて、どのようなものがあるのか確認してみましょう。
- 組織サーベイ
- 従業員サーベイ
- モラールサーベイ
- パルスサーベイ
組織サーベイ
「組織サーベイ」は、人事領域でよく使われる、組織の状態を測定するためのツールで、「組織調査」とも呼ばれます。
経営目標達成のため、各組織のチームマネジメントが機能しているか、事実情報を集め、組織状況を把握するために行う調査です。
組織サーベイの専用ツールを使用する他に、人事コンサルティング会社へ依頼して調査する場合も多いでしょう。
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組織サーベイとは?目的や従業員満足度調査・社内アンケートとの違いを解説
【実践編】組織サーベイを成功させるポイントや事例を解説!
従業員サーベイ
「従業員サーベイ」は、人事の現場でよく使われるサーベイで、人事制度や就業規則を改定する際、人事が仮説として立てた課題を検証するための事実情報を集めるために使用するツールです。
専用ツールを使った調査だけではなく、メールやチャットを使用した簡単なアンケートも含まれます。
▼「従業員サーベイ」についてさらに詳しく
【基礎編】従業員サーベイとは?メリット・デメリットと実施時の注意点を解説
モラールサーベイ
「モラールサーベイ」は、経営目標達成に必要な、社員ひとりひとりのパフォーマンスを向上させるために、どのような要素が影響しているか、事実情報を集めるために使用するツールです。
専用ツールを使用する他に、人事コンサルティング会社へ依頼して調査する場合も多いでしょう。
▼「モラールサーベイ」についてさらに詳しく
【基礎編】モラールサーベイとは?メリット、活用方法を解説
パルスサーベイ
「パルスサーベイ」は、従業員に対して簡易的な質問を短期間に繰り返し実施する意識調査方法の一つです。
従業員に対して、1〜5分程度で回答できる簡単な質問を、毎日・週1・月1と定期的に行うため、従業員意識を常にリアルタイムでチェックできる点が特徴的です。
短期間で高頻度の調査が可能になるため、従業員の短期の変化を発見し、すぐに対処が可能になります。アメリカを中心に活用がはじまり、近年は日本でも徐々に活用され始めています。
▼「パルスサーベイ」についてさらに詳しく
【事例あり】パルスサーベイとは?目的から実施・活用のポイントまで
エンゲージメントサーベイを実施する際の注意点
エンゲージメントサーベイを実施する際に注意すべき、4つのポイントについて確認してみましょう。
- 実施目的を明確にする
- 何を測定したいのかを明確にする
- 分析の際は他のデータとの相関関係も考慮する
- 従業員へのフィードバックを忘れずにする
実施目的を明確にする
エンゲージメントサーベイを実施する際に注意すべきポイント、1つ目は「実施目的を明確にする」ことで、最も重要なポイントです。
エンゲージメントサーベイでは、ついツールの導入や調査することが目的になってしまい、調査で収集したデータが活用されないケースが多々あります。
調査をしたとしても、その後データが活用されなければ、エンゲージメントサーベイを実施した意味がありません。
エンゲージメントサーベイを実施する前に、どんな問題を解決したいのかを考えましょう。
何を測定したいのかを明確にする
エンゲージメントサーベイを実施する際に注意すべきポイント、2つ目は「何を測定したいのかを明確にする」ことです。
目的に応じて、エンゲージメントサーベイで何を測定したいのかを明確化します。
離職防止を目的とするなら、離職のトリガーとなりそうな「上司や同僚との関係」「賃金や職場への満足度」などを測定すると良いでしょう。
また生産性向上が目的なら、「同僚との信頼関係」「残業時間」「仕事への満足度」などについてヒアリングしましょう。
このように目的に応じて何を測定するかを考え、サーベイの設問項目を検討するようにしましょう。
分析の際は他のデータとの相関関係も考慮する
エンゲージメントサーベイを実施する際に注意すべきポイント、3つ目は「分析の際は他のデータとの相関関係も考慮する」ことです。
エンゲージメントサーベイの結果が出たら、その結果をすべて鵜呑みにするのはよくありません。結果はあくまでも組織の一側面を表しているだけだからです。
例えば離職防止が目的であれば、エンゲージメントサーベイの結果だけではなく、世間との賃金水準比較や同業界の求人状況など外部環境データも必ず参照しましょう。
また、残業時間や人事評価の履歴など関連しそうなデータを調べ、離職と相関性の高いデータをピックアップします。
エンゲージメントサーベイの結果だけではなく、関連データも参照することで、より精度の高い問題解決が可能になるでしょう。
従業員へのフィードバックを忘れずにする
エンゲージメントサーベイを実施する際に注意すべきポイント、4つ目は「従業員へのフィードバックを忘れずにする」ことです。
人事部がよくやってしまいがちなのが、従業員へのフィードバックを忘れることです。
「調査に協力したけれどもその結果が何に使われているのかが分からない」という状態であれば、従業員は調査へ協力しなくなってしまいます。場合によっては、調査自体が従業員のモチベーションを下げる要因になってしまうこともあるでしょう。
調査結果が出たら、従業員にきちんと分析結果を伝え、会社として改善に取り組む姿勢を伝えるべきです。
結果を社内報に掲載してみるのもおすすめです。ぜひサーベイ結果を会社の一体感づくりに活用しましょう。
▼「人事におけるデータ活用」についてさらに詳しく
【人事必見】データドリブン人事(HR)の導入方法・成功ポイント・事例とは?
エンゲージメントサーベイの「質問項目」参考例
エンゲージメントサーベイは、実際にどのような質問項目で調査するのでしょうか。
エンゲージメントサーベイの質問項目の参考例について、代表的な3つの調査の質問項目について確認してみましょう。
- Q12(キュートゥエルブ)
- ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)
- 一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感)尺度(GSES)
Q12(キュートゥエルブ)
Q12(キュートゥエルブ)は、米ギャラップ社がアメリカの心理学者フランク・L・シュミット博士とともに開発したエンゲージメントサーベイです。
従業員に対して、全世界1,300万人を調査し導きだした「12の質問」を行うことで、従業員のエンゲージメントを測定します。
実際に「12の質問」がどのようなものなのか、確認してみましょう。
- Q01.職場で自分が何を期待されているのかを知っている
- Q02.仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
- Q03.職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
- Q04.この1週間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
- Q05.上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれている
- Q06.職場の誰かが自分の成長を促してくれる
- Q07.職場で自分の意見が尊重されているようだ
- Q08.会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
- Q09.職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
- Q10.職場に親友がいる
- Q11.この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
- Q12.この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった
「12の質問」に対して、回答は5つの選択肢から行います。5つの選択肢の配点について確認してみましょう。
また、「12の質問」への回答の点数を合計して、平均スコアを計算してみましょう。
平均点は「3.6点」で、「3.8点以上」はエンゲージメントが高め、「3.2以下」は要注意となっています。
- 完全にあてはまる(5点)
- ややあてはまる(4点)
- どちらともいえない(3点)
- やや当てはまらない(2点)
- 完全に当てはまらない(1点)
また、「12の質問」の質問内容は、大きく4つに分類することができます。
- Q01~Q02:仕事をするための基本事項である、動機や環境が整っているか
- Q03~Q06:仕事への貢献度や、周囲にどう評価されているか
- Q07~Q10:「職場」への帰属意識と、同僚への信頼感
- Q11~Q12:「職場」での自身の成長性や、発展への意識
ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)
ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)は、国際的に信頼性と妥当性が検証されているエンゲージメント尺度の一つです。日本では、慶應大学の島津明人教授によって日本語化されています。
ワーク・エンゲージメントとは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」をさします。
ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)は、ワーク・エンゲージメントの3要素である、「活力」「熱意」「没頭」を17問の設問で計測することで、「仕事に対するエンゲージメント」を測ることができます。
ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)の設問は、日本語版では、17項目と、短縮版の9項目、3項目の3種類があります。
商用利用は原著者である、ユトレヒト大学のシャウフェリ教授に許可を得る必要がありますが、研究目的であれば無料で使用可能です。
ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)は、、エンゲージメントの考え方の基本的な概念であるため、関連する論文を読めば、エンゲージメント調査の設問設定の参考として大いに役立つでしょう。
一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感)尺度(GSES)
一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感)尺度(GSES)は、「自己効力感」を測定する尺度として最も一般的な測定尺度です。
自己効力感とは、「自分はできる」という感覚をさし、GSESはこの「できる」という感覚を測定します。
GSESスコアが高いほど自己効力感が高く活動的であり、スコアが低いほど自己効力感が低く、パフォーマンスが低下している可能性があります。
GSESは、もともとはうつ状態に対する医療現場での使用を想定して作られました。
そのためスコアが10点未満の被験者には、何らかの抑うつ傾向がみられる可能性があります。
組織パフォーマンスの状態を調べるとともに、メンタル不調者を見つけることができる優れた測定尺度です。GSESは引用元を明記すれば無料で使用できるので、ぜひ活用してみてください。
エンゲージメントサーベイの分析と活用
エンゲージメントサーベイを実施してみたものの、エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析や活用に悩んでいる場合もあるかもしれません。
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析と活用方法を、6つのステップに分けて解説します。
- サーベイ結果を読み解く
- エンゲージメント低下の「問題設定」を行う
- エンゲージメントに影響を及ぼす変数を見つける
- 分析結果をもとに施策を検討する
- 調査結果を従業員に必ずフィードバックする
- エンゲージメントサーベイでの調査を繰り返し行う
結果を読み解く
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析と活用のステップ、1つ目は「サーベイ結果を読み解く」ことです。
エンゲージメントサーベイを実施したら、まずは結果を読み解きます。
エンゲージメントサーベイの結果自体は重要ではなく、結果からどんなことが言えるのか仮説を立てることが大切です。
例えば、ある従業員のエンゲージメントが著しく低下していたとします。低下していることは単なる事実であるため、低下自体は問題ではありません。
そこにある背景や変化の原因を考えることが、エンゲージメントサーベイの結果を読み解くポイントになります。
エンゲージメント低下の「問題設定」を行う
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析と活用のステップ、2つ目は「エンゲージメント低下の問題設定を行う」ことです。
エンゲージメントサーベイの結果を読み込んで、仮説立てをしたら、問題設定を行います。
例えば、特定部署で従業員のエンゲージメントが低下しているなら、まずは何が問題なのかを洗い出しましょう。
上司との関係が悪化しているのかもしれませんし、急に忙しくなったのかもしれません。
問題となりうる仮説を洗い出したら、事実を確認していきます。
対象部署にヒアリングするだけではなく、残業時間や勤怠情報など関連するデータも参照します。
その結果、例えば上司との関係性悪化がエンゲージメント低下のトリガーだとわかったら、上司と部下との関係改善を問題として設定し、課題解決に取り組むことがポイントです。
エンゲージメントに影響を及ぼす変数を見つける
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析と活用のステップ、3つ目は「エンゲージメントに影響を及ぼす変数を見つける」ことです。
エンゲージメントは、さまざまな変数によって左右されます。
従業員のストレス、上司や同僚からの支援の有無、従業員の健康上の問題など、多くの要因が関係しています。
こうした変数を集め、最もエンゲージメントに影響を及ぼす変数を見つけます。
変数の分析には、統計ツールを使用するのもよいですが、タレントマネジメントシステムを活用すれば簡単に分析できる場合もあります。
分析の際には、エンゲージメントサーベイの各質問項目と、他のデータとの相関関係を個別に分析する方法もおすすめです。
例えば、「ワーク・エンゲージメント」の調査であれば、活力・熱意・没頭の3分類の質問項目に対して上司や先輩社員との関係性に関わるデータをかけ合わせることで、仕事の面白さに上司との関係が影響する可能性がわかるかもしれません。
分析結果をもとに施策を検討する
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析と活用のステップ、4つ目は「分析結果をもとに施策を検討する」ことです。
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析から、問題に対して影響を強く及ぼす変数が判明したら、その変数をどう変えるか施策を検討します。
例えば、従業員の健康状態が悪化しているなら、「健康指導を行う」「従業員を休ませる」「職場環境を変える」といった対処が考えられます。
この時、問題に対して最も効果的な施策を検討することが重要です。
健康状態の改善であれば、単に休ませるだけでは、良い効果がでない場合もあります。
従業員に健康指導を行ったうえで、しばらく休暇を与えるなど、根本的に解決ができる方法を検討するようにしましょう。
近年では、「従業員が職場での全ての時間で得られる価値経験」をあらわす、「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」の考え方が浸透し始めています。
従業員が、高いエンゲージメントを維持して働ける会社づくりを行うには、単発的な職場環境の改善ではなく、従業員目線で「働く体験」の満足度を向上させる取り組みが必要です。
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調査結果を従業員に必ずフィードバックする
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析方法のポイント、5つ目は「調査結果を従業員に必ずフィードバックする」ことです。
エンゲージメントサーベイを実施したら、調査結果と改善策について従業員へ共有するようにしましょう。
課題によっては、すぐに解決策を打ち出すことが難しい場合もあります。そのような状況でも、現時点での意向を発信することが重要です。
エンゲージメントサーベイで調査を実施した後に、何のアクションもないと、「アンケートに強力した意味はあったのか?」と従業員のモチベーションを下げてしまったり、今後調査を実施する際に、従業員の協力を得ることが難しくなってしまう場合があります。
エンゲージメントサーベイでの調査をを繰り返し行う
エンゲージメントサーベイで収集したデータの分析方法のポイント、6つ目は「エンゲージメントサーベイでの調査をを繰り返し行う」ことです。
エンゲージメントサーベイで集めたデータをもとに、課題を見つけ出し、さまざまな施策を行っていく中で、時間が経つとまた新たに別の課題が発生する場合もあります。
その場合、さらに改善施策を行う必要があるかもしれません。
また、従業員のエンゲージメントは一定ではないため、その都度分析や施策の実行を繰り返し行い、エンゲージメントを改善、向上させていく必要があります。
そのため、エンゲージメントサーベイは一度の調査結果だけではなく、半年〜1年の一定期間で、定期的に行う必要があります。
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エンゲージメントサーベイ機能を持ったツールの選び方
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際、数多くのツールが出ているために、どれを選べばいいか分からないという悩みを持つ場合もあるでしょう。
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際の、4つのポイントについて確認してみましょう。
- ツールを使用する目的を明確にしてツールを選ぶ
- 目的に応じてツールを選ぶ
- 高度な分析ができ操作性がよいツールを選ぶ
- レポート機能があるツールを選ぶ
ツールを使用する目的を明確にしてツールを選ぶ
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際のポイント1つ目は、「ツールを使用する目的を明確にしてツールを選ぶ」ということです。
エンゲージメントサーベイツールを使用したいと考えている時点で、アンケートだけでは実現できない課題があるのではないでしょうか。
簡単な調査であれば、Googleフォームなどの無料のアンケートツールと、質問項目の組み合わせで充分です。
一方で、エンゲージメントサーベイツールには、高度な分析機能やレポート作成機能などが付属している場合があります。
エンゲージメントサーベイツールを使う背景には、例えば「集計の手間を省きたい」「調査に客観性を取り入れたい」といった何らかの目的があるはずです。
まずは、エンゲージメントサーベイツールを使用する目的について検討しましょう。
目的に応じてツールを選ぶ
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際のポイント2つ目は、「目的に応じてツールを選ぶ」ということです。
エンゲージメントサーベイツールを使用する目的が明確化されたら、目的に対応できるものを選びます。
サーベイに客観性を持たせたいのであれば、大学等が監修したサーベイ項目を搭載する、エンゲージメントサーベイツールを選びましょう。
分析やレポートの手間を省きたいのであれば、分析機能が充実した、エンゲージメントサーベイツールがおすすめです。
高度な分析ができ操作性がよいツールを選ぶ
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際のポイント3つ目は、「高度な分析ができ操作性がよいツールを選ぶ」ということです。
エンゲージメントサーベイツールの中で、どのようなエンゲージメントサーベイツールを選べばよいか分からない場合は、「高度な分析ができ操作性がよい」ツールを選ぶのがおすすめです。
特に操作性は重要です。高度な機能を持つエンゲージメントサーベイツールを選んだものの、使いこなせないケースがよくあります。
もし、担当者がITやPC操作に不慣れであれば、「操作性の高い」ツールを選びましょう。
レポート機能があるツールを選ぶ
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際のポイント4つ目は、「レポート機能があるツールを選ぶ」ということです。
エンゲージメントサーベイツールを選ぶ際は、レポート機能が搭載されているツールを選ぶことを強くおすすめします。
一部のエンゲージメントサーベイツールでは、調査を実施したものの、結果の集計やレポートにまとめるのは手動という場合もあります。
高度なレポート機能のあるツールであれば報告書の作成も印刷も不要になり、ツールの画面を共有するだけで報告が完了します。
業務工数を削減するためにも、レポート機能のあるツールを選ぶようにしましょう。
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おすすめのエンゲージメント測定ツールは?活用のコツや背景も紹介
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組織サーベイにおすすめのツールを紹介!実施メリットやポイントも
エンゲージメントサーベイ研究事例
エンゲージメントサーベイの傾向について、研究事例とあわせて確認してみましょう。
エンゲージメントサーベイ研究事例:ギャラップ
米ギャラップ社は、2017年に「熱意にあふれる社員」の国際比較調査を行いました。
その結果、日本は調査した139カ国中132位と低水準であることがわかりました。
ギャラップ社のエンゲージメントサーベイである、「Q12(キュートゥエルブ)」は、たった12問の設問だけで、「従業員エンゲージメントがわかる」優れたものです。
全世界3,000万人以上が受検したデータをもとにした調査であるため、信頼性が高いだけではなく、実務的なアドバイスを得られるのも大きな特徴です。
エンゲージメントサーベイ研究事例:リクルート
リクルートは、「ワーク・エンゲージメント実態調査」を2020年に実施しました。
調査は、従業員規模300名以上の企業で働く624名の会社員を対象に行われました。
その結果、高いワーク・エンゲージメントは、個人と組織の両方に良い影響を与えることがわかったそうです。
特に、ワーク・エンゲージメントを高める職務や職場の特徴、制度や仕組みとして有効なのは、「経営や仕事に関する情報の共有」と結論づけています。
この結果からも、組織内のコミュニケーションがエンゲージメント向上に有効だといえるのではないでしょうか。
エンゲージメントサーベイの導入事例
エンゲージメントサーベイを導入した事例についてご紹介します。
エンゲージメントサーベイ導入事例:株式会社鴻池組
創業150年のゼネコン株式会社鴻池組の「従業員エンゲージメント業界No.1」実現に向けた、エンゲージメントサーベイ導入事例について確認してみましょう。
エンゲージメントサーベイ導入背景
- 入社後のミスマッチによる早期離職がある
- 理念の浸透度が低い
株式会社鴻池組では、入社後のミスマッチによる早期離職がありました。
また、会社として、社員に向けて理念やサステナビリティレポートなど、メッセージを頻繁に出しているつもりでも、「会社が思っているよりも、理念が浸透していない」ことがありました。
そうした理念の浸透や伝達の問題を洗い出すヒントになると思い、エンゲージメントサーベイの導入を決めました。
エンゲージメントサーベイ導入後の施策
- 従業員満足度ではなく「エンゲージメント」を調査
「業界No.1のエンゲージメントを目指す」ためにも、まずは自社の従業員のエンゲージメントを調査する必要があるとため、以前実施していた「ESサーベイ(従業員満足度調査)」から、エンゲージメントサーベイに切り替え、KPI化することにしました。
エンゲージメントサーベイ導入後の効果
- 実感値だけではなく期待値も取得することで、施策優先度の議論がしやすくなった
- 経営層や現場へ具体的なフィードバックができるようになった
- 中期経営計画における組織のKPIとして、羅針盤となる指標ができた
エンゲージメントサーベイの終了日からすぐに、課題分析や施策検討ができるので、経営層への報告や社員へのフィードバックにもスピード感があります。
エンゲージメントサーベイの結果をもとに、経営や現場へ具体的なフィードバックができるようになりました。
また、エンゲージメントサーベイ実施後、「具体的な課題」まで明確になったため、結果から得られた示唆をもとに若手研修に活用するなど、実行に移すことができています。
以前の従業員満足度の場合は、「満足している」「満足していない」という一方向的な考えになりますが、従業員エンゲージメントは「会社と社員の双方向のかかわり」を重視しています。
エンゲージメントサーベイ結果で得られたスコアを、「羅針盤」として活用していきたいです。
実際に、中期経営計画における組織状態のKPIとして、エンゲージメントサーベイのスコアを目標として置くよう、経営企画部とともに進めています。
▼「エンゲージメントサーベイツール」導入事例ついてさらに詳しく
株式会社鴻池組 導入事例
エンゲージメントサーベイの導入はエンゲージメントの理解から
エンゲージメントサーベイを導入する前に、まずはエンゲージメントがどのような概念かを理解することが重要です。
「従業員エンゲージメント」は「会社と従業員との関係性」を示した考え方ですが、「ワーク・エンゲージメント」のように「仕事と従業員との関係性」を示す概念も含まれています。
エンゲージメントの調査や把握には、日頃から従業員データを一元的に管理するようにすると良いでしょう。従業員データの管理には、人事系システムの導入を検討することをおすすめします。
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【人事基礎】従業員満足度(ES)調査とは?サーベイの種類、生産性向上の要素
エンゲージメントサーベイを「EX Intelligence」で始めてみませんか?
「EX Intelligence」は、人事・経営・現場のすべての方が活用でき、改善につながる、組織診断サーベイです。
「EX Intelligence」は離職防止やエンゲージメント向上を目的とした組織診断サーベイです。
組織全体の状態の可視化はもちろん、従業員ひとりひとりにフォーカスした分析が可能なため、離職予兆を早期に把握する事が出来ます。
また、状態を把握するだけではなく、改善施策に直結した設問項目になっているため、現場や人事、経営層にとって離職防止に向けた施策を打ちやすいのが特徴です。
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株式会社HRBrain 執行役員 / ビジネス統括本部 本部長 / 人的資本TIMES編集長 新卒で東証プライム 総合人材サービス企業に入社。2020年HRBrainに入社。 人事制度コンサルティング部門の立ち上げから大手企業向けのクラウド営業に従事。 また社内タレントマネジメントのユニットの立ち上げと運営を担当。 以後、事業企画にてゼネラルマネージャーとして全社戦略の策定・推進を担当。 その後、組織診断サーベイ「EX Intelligence」を提供しているEX事業本部を管掌。 2022年4月に執行役員へ就任。2023年4月よりビジネス統括本部の本部長として全体を統括。「人的資本TIMES」の編集長も兼務。