#人事評価
2024/11/25

人事評価の不満の放置は危険?納得いかない要因や改善策と退職を防ぐ方法を解説

目次

人事評価の不満は必ずと言って良いほど出るものです。

実際に統計によると、半数以上の従業員が人事評価制度に不満があると回答しています。

人事評価の不満は、放置していると退職につながってしまう場合もあるため、不満を解消することは極めて重要です。

この記事では、人事評価の不満要因、人事評価の不満や納得がいかない理由、退職につながる人事評価の不満、人事評価の不服申し立てなどあり得る影響、人事評価の不満をなくす方法とポイント、評価基準の3要素の見直し方法、評価者訓練の実施と人事評価エラーの防止方法、人事評価の不満をなくす評価方法について解説します。

人事評価の不満を解消する方法を解説

人事評価の不満要因

人事評価制度の不満はなぜ起こるのか、人事評価制度の仕組みを念頭に、統計をもとに人事評価制度の不満について確認してみましょう。

人事評価の基本的な仕組み

日本では、一定規模以上の企業では人事評価制度を導入しており、多くは「成果主義」の要素が含まれた人事制度です。

成果評価では、営業職や技術職などは定量的な評価が可能ですが、事務職などは定量的な評価が困難であり、定性的な評価をせざるを得ません。

また、能力評価では、評価者である上司の主観が入ったり、「期末効果」や「中央化傾向」と言われる、いわゆる人事評価におけるヒューマンエラーである「人事評価エラー」も生じやすい傾向があります。

▼「人事評価制度」についてさらに詳しく

人事評価とは?解決すべき9つの課題と人事評価制度のメリット5つを紹介

▼「成果主義」についてさらに詳しく

成果主義とは?メリットとデメリットや能力主義との違いをわかりやすく解説

▼「定量的」と「定性的」についてさらに詳しく

定量的・定性的の意味と使い分け、ビジネスや目標設定では注意も

人事評価の不満や納得がいかない理由

人事評価制度を導入している企業では、従業員は何かしらの不満を持っています。

アデコ株式会社が実施した「『人事評価制度』に関する意識調査」によると、自社の人事評価制度に不満があると回答した従業員は62.3%で半数以上という結果になっています。

人事評価に不満を感じる理由

  • 評価基準が不明確(62.8%)

  • 評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て不公平(45.2%)

  • 評価のフィードバックが不十分(28.1%)

  • 自己評価よりも低くされ、その理由がわからない(22.9%)

  • 評価結果が昇進、昇格に結びつくものではない(21.4%)

(出典)アデコ「『人事評価制度』に関する意識調査

人事評価制度への不満理由は、「評価基準が不明確」であることが最も多く45.2%という結果となっています。

評価基準が不明確である原因は、評価基準を定めていない、もしくは定めていても明文化していないことがあげられますが、被評価者は「なぜ成果を出している自分よりも他の従業員の評価が高いのか」「人の好き嫌いで評価が決まっているのではないか」と感じ、不満につながってしまいます。

続いて、「評価者による評価のばらつき」「自己評価より評価が低く理由が不明」「評価のフィードバックが不十分」「評価結果が昇進、昇格に結びついていない」が、それぞれ20%台となっています。

例えば、ある上司から高い評価を得ていた従業員の上司が変わった途端、評価が低くなるような場合、被評価者は「今まで評価されていた自分の良さを理解してくれない」「なぜ評価が低い結果となったかの説明がない」という理由から、不満を感じてしまうでしょう。

また、高い評価を受け続けても、昇進や昇格がない状況が続くようなことも、人事評価制度に対する不満につながります。

(参考)アデコ「『人事評価制度』に関する意識調査

▼「フィードバック」についてさらに詳しく

フィードバックとは?意味や効果と適切な実施方法をわかりやすく解説

評価の納得度が下がる原因について解説
⇒「納得度の高い評価とは?」資料ダウンロード

人事評価の不満は退職の要因となるため放置は危険

人事評価制度に対する不満は常々起こるものですが、見直しをせずに従来通りの制度で人事評価制度を運用し続けていると、人事評価制度に不満を持つ従業員の離職や不服申し立てなどの事態もあり得ます。

では、退職につながる人事評価の不満や不服申し立てには、どのようなケースがあるのかを確認してみましょう。

退職につながる人事評価の不満

人事評価制度の改善をすることなく制度に対する不満を放置していると、要因によっては退職につながってしまうことがあり、特にコア人材にその傾向が見受けられます。

採用から育成段階まで多くの時間やコストを投入して育成してきた従業員の退職は、企業にとって大きな痛手であり、コア人材であればダメージはなおさらです。

人事評価の不満が退職の要因であれば、早急に改善する必要があります。

退職につながる主な人事評価の不満

  • 人事評価に納得感がなく不当に評価が低いと感じる

  • 能力や成果が評価に反映されず、評価基準に納得できない

  • 評価者の評価能力にばらつきがある

  • 評価者とそりが合わない

退職につながる主な人事評価の不満は、共通して「評価基準が明確でない」「評価訓練が不十分」ということが起因しています。

人事評価制度の見直しは労力を要するものであり、先送りしがちですが、特に不当に評価が低いなど退職につながるといった人事評価の不満は早急に改善することが必要です。

▼「コア人材」についてさらに詳しく

コア人材とは?育成のポイントや離職を防ぐための注意点について解説

▼「離職の原因」についてさらに詳しく

離職の原因TOP3!特に気をつけたい若者・新卒の離職理由も詳しく解説

▼「離職防止」についてさらに詳しく

離職防止に効果的な施策9つ!離職の原因とその影響も解説

離職の原因と対策について解説
⇒「若手の離職を防ぐためには」資料ダウンロード

人事評価の不服申し立てなどあり得る影響

不当に低い評価をされ続けている従業員などから、人事評価に対する不服申し立てがなされることも考えられます。

特に、人事評価によって降格がされるようなケースは、トラブルに発展することが多くあります。

また、過去判例では、不当な人事評価に対して不法行為が認められたケースも多くあります。

人事評価の不服申し立てがされる主なケース

  • 法令違反があった場合:男女雇用機会均等法や育児介護休業法などの強制法規違反

  • 人事権の濫用があった場合:成果主義人事における人事権の逸脱による不法行為

  • 人事考課と賃金決定に著しく均衡を失する場合:極端に賃金減額幅が大きいなど

  • 目標管理の不適切な運用があった場合:目標が高すぎる、十分な能力開発がなされていない

性別を基準に一律的に低い評価を与えるといった強制法規違反や、従業員の業績や能力に関係ない基準で不当な評価を行うといった人事権の濫用など、人事考課が法的に公正性でない場合、訴訟に発展する恐れもあります。

コンプライアンスの観点でも、人事評価の不満を解消し、公正性を担保することが求められます。

▼「人事考課」についてさらに詳しく

人事考課とは?人事評価との違いや目的と評価基準を解説

人事評価の不満をなくす方法とポイント

人事評価制度に対する不満の最大の要因は、「評価基準が不明確」であることでした。

人事評価制度に対する不満を解消するためには、評価基準の見直しや整備をすることが最大のポイントです。

そして、次の不満要因としてあげられた、「評価者による評価のばらつき」「自己評価より評価が低く理由が不明」「評価のフィードバックが不十分」という要因に対する対処としては、評価者訓練が不可欠です。

人事評価の不満をなくす方法とポイントについて確認してみましょう。

人事評価の不満をなくす方法とポイント

  • 評価基準の3要素の見直し

  • 評価者訓練の実施

  • 十分なフィードバックの実施

  • 被評価者訓練の実施

評価基準の3要素の見直し

人事評価の不満をなくす方法とポイントとして、「評価基準の3要素の見直し」があげられます。

人事評価の評価基準は主に、仕事の成果を評価する「成果評価」、従業員の職務能力やスキルを評価する「能力評価」、仕事に対する姿勢やプロセスを評価する「情意評価」の3要素で構成されます。

成果評価

成果評価の基準は、職種によって定め方が大きく変わります。売り上げや特許申請数など定量的な評価が可能な営業職や開発職は目標設定の基準を明確にすることができますが、成果を数値で表すことが難しい事務職などは、評価基準の設定に工夫が必要です。

定性的な評価基準を定める場合、「何を」「いつまでに」「どのように」を明確にし、全てができて100%達成とします。

例えば、100%達成していたとしてもB評価というような定め方が考えられます。100%を上回る評価であればA評価、著しく上回る評価であればS評価、逆に100%を下回る評価であればC評価、著しく下回る場合はD評価とすると良いでしょう。

定性的な評価基準例

  • S評価:期待を著しく上回った成果

  • A評価:期待を上回った成果

  • B評価:期待通りの成果(100%)

  • C評価:期待を下回った成果

  • D評価:期待を著しく下回った成果

能力評価

能力評価の基準は企業によって異なりますが、主に職務に関するスキルや知識の他、どの職務にも共通する業務遂行力、改善力、企画力などが対象とされることが多いです。

階層別に見合った能力要件に見直し、職務に有効なスキルや知識を棚卸しして、各々の職務に見合った要件を整理します。共通する業務遂行力や改善力、企画力などについては会社が望む要件を定義しましょう。

これらの要件を評価基準として明文化し、人事評価シートに落とし込むことが有効な手段です。

▼「人事評価シート」についてさらに詳しく

人事評価シートとは?書き方とテンプレート作成方法を紹介

▼「スキルマップ」についてさらに詳しく

スキルマップとは?目的とメリットや作り方の手順とテンプレートについて解説

▼「スキル管理」についてさらに詳しく

スキル管理とは?目的や方法とスキルマップについて解説

情意評価

情意評価の基準は、主に仕事に対する姿勢やプロセスを指します。メンバーとのチームワークや自己の責任感、仕事に対する意欲などが評価項目になりますが、階層によって求める水準が大きく変わります。

階層が上位になるほど、情意評価に対する項目はできて当たり前である一方、成果の比重が大きくなることが一般的です。

若年層では、情意評価項目の比重を大きくしてプロセス重視の評価を行うことがポイントです。

会社が従業員に求める行動や姿勢を情意項目として定め、どのような行動や姿勢を取る従業員が高評価者の対象となるかを明確化することで、評価に対する不満の解消につなげることができます。

▼「チームワーク」についてさらに詳しく

チームワークとは?仕事での意味や高めるためのポイントについて簡単に解説

評価者訓練の実施

人事評価の不満をなくす方法とポイントとして、「評価者訓練の実施」があげられます。

評価者訓練が不十分、あるいは行っていない場合、評価者基準にばらつきが発生し、退職につながる不満に発展してしまいます。

評価者訓練は、評価制度の仕組みや評価基準など人事評価制度の理解度を深めるとともに、評価者が陥りやすい人事評価エラーを防ぐなど、人事評価方法を訓練するものです。

恣意的な評価とならないように、自社の評価基準を十分に理解してもらうよう、人事評価の手引きなどを作成することが考えられます。手引きには、人事評価エラーが起きないように対策を記すことも有効です。

主な人事評価エラーと対策

主な人事評価エラーと対策

▼「人事評価エラー」についてさらに詳しく

ハロー効果とは?例やピグマリオン効果との違いと人事評価エラーについてわかりやすく解説

▼「評価者研修」についてさらに詳しく

評価者研修とは?人事評価の必要性と期待されることやメリットを解説

評価者に求められる3つの要素について解説
⇒「評価者研修に盛り込むべき必須コンテンツ」資料ダウンロード

十分なフィードバックの実施

人事評価の不満をなくす方法とポイントとして、「十分なフィードバックの実施」があげられます。

人事評価に対して十分なフィードバックをしていない場合、納得感を得られずに不満につながってしまうため、改善することを心掛けるようにしましょう。

人事評価の具体的な不満として、「自己評価より評価が低く理由が不明」「評価のフィードバックが不十分」という理由があげられています。

評価結果に対して、なぜこのような結果となったのかフィードバックを十分に行うことで、人事評価に対する不満を低減させることができます。

被評価者訓練の実施

人事評価の不満をなくす方法とポイントとして、「被評価者訓練の実施」があげられます。

評価者訓練を行うことは一般的ですが、評価を受ける側の被評価者訓練がされていないケースは多いでしょう。

人事評価の不満要素は、評価基準が不明確であることが大きな要因であることから、評価者だけでなく、被評価者に対しても評価基準の理解浸透に努めることが有効です。 

被評価者自身が人事評価制度の理解を深めることで、透明性の高い公平な人事評価制度を運用することができます。

評価の納得度改善のためのアクションについて解説
⇒「納得度の高い評価とは?」資料ダウンロード

人事評価の不満をなくす評価方法

360度評価とコンピテンシー評価について確認してみましょう。

人事評価制度の不満をなくすためには、評価基準を見直し、評価者訓練や被評価者訓練を行うことがポイントですが、さらなる取り組みとして、評価方法の見直しをすることも有効です。

360度評価(多面評価)による透明性

従来のトップダウン型のヒエラルキー組織から、フラット組織やネットワーク組織など自律型組織への転換が求められるなか、多面評価の仕組みである360度評価が注目を集めています。

従来型の上司から部下への評価だけでなく、上司や部下、同僚など、複数の視点から評価を受けることで、評価の納得性が増し、合わせて自己評価を行うことで自身と客観的に向き合うことができます。

▼「360度評価(多面評価)」についてさらに詳しく

360度評価とは?メリットとデメリットや評価項目とフィードバック方法を解説
360度多面評価って意味あるの?バレない?失敗を防ぐための準備とは

▼「トップダウン」についてさらに詳しく

ボトムアップとは?トップダウンとの違いやメリットとデメリットや意味について簡単に解説

360度評価のメリットと実施にかかる課題について解説
⇒「360度評価実施マニュアル」資料ダウンロード

コンピテンシー評価による高評価の明確化

自社のハイパフォーマーの行動特性に着目し、他の従業員の人事評価や人材育成につなげるコンピテンシー評価も注目を集めています。

コンピテンシー評価は、コンピテンシーモデルを設計する必要がありますが、コンピテンシーモデルは、実在するハイパフォーマーをベースに設計する「実在型モデル」と、会社の求める人材像のような理想をベースに設計する「理想型モデル」、実在型モデルと理想型モデルを組み合わせた「ハイブリッドモデル」があります。

コンピテンシーには画一的な評価基準はなく、自社に合った基準を作り出すため、大きな手間が掛かりますが、自社に合った納得感のある人事評価につなげることができ、人事評価のだけでなく人材育成や採用でも有効な手段です。

▼「コンピテンシー」についてさらに詳しく

コンピテンシーとは?意味やモデルの活用メリットと導入時の具体例

▼「ハイパフォーマー」についてさらに詳しく

ハイパフォーマーとは?特徴や効果と育成方法や離職防止方法について解説

▼「人材育成」についてさらに詳しく

人材育成とは?何をやるの?基本的考え方と具体的な企画方法を解説

人事制度の設計や導入について解説
⇒「ゼロから作る人事制度設計マニュアル」資料ダウンロード

人事評価の不満をなくすためには人事評価基準の見直しと訓練が大事

人事評価制度に不満があると回答した従業員は62.3%で半数以上が、人事評価に対して何かしらの不満を抱えていることが分かりました。

「評価基準が不明確」や「評価にばらつきが出て不公平」など、人事評価の不満理由を基に、人事評価の不満防止につなげるための人事評価制度の見直しや、自社に合った人事評価方法について検討してみましょう。

人事評価の不満は、放置していると退職につながってしまう場合もあるため、不満を解消することは極めて重要です。

人事評価の不満を解消するためには、「評価基準の見直し」「評価者訓練」「被評価者訓練」の実施などによって、評価の透明性や納得度の高い人事評価制度を運用することが大切です。

また、自社に合った評価制度として「360度評価」や「コンピテンシー評価」などの導入を検討しても良いでしょう。

「HRBrain タレントマネジメント」は、目標設定から人事評価とフィードバックまでの従業員データを一元管理し見える化し、評価の透明性を高め納得感の高い評価制度の実施を実現します。

さらに、従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、育成履歴、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、OKRなどの目標管理、1on1やフィードバックなどの面談履歴などの一元管理も可能です。

HRBrain タレントマネジメントの特徴

  • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

  • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

  • 人材データの見える化も柔軟で簡単に

データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。

▼「タレントマネジメントシステム」についてさらに詳しく

【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
タレントマネジメントシステムの課題とは? 目的・導入の課題と成功事例まで

▼「タレントマネジメント」お役立ち資料まとめ

【人事担当者必見】タレントマネジメントに関するお役立ち資料まとめ

HR大学編集部
HR大学 編集部

HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

\ この記事をシェアする /

  • X
  • LinkedIn

おすすめ記事