リテンションとは?人事施策としての意味とメリットや高める方法について解説
- リテンション(retention)とは
- リテンションが注目されている背景
- 価値観の変容による人材の流動化
- 団塊ジュニア世代の離職
- リテンションのメリット
- 採用コストの削減
- 知識やノウハウの蓄積
- 経営の安定
- リテンションの2つの要素
- 金銭的要素によるリテンション施策
- 給与体制の見直し
- 福利厚生の充実
- 非金銭的要素によるリテンション施策
- 組織風土や企業文化の醸成
- 働きやすい職場環境の整備
- ワークライフバランスの推進
- 能力開発
- リテンションを強化するためのポイント
- リテンションによる先回りのケアで離職を防ぐ方法
- リテンションは企業にとって重要な経営課題の1つ
リテンションとは、「企業内の優秀な人材を定着させるためのさまざまな施策」のことを指します。
労働に関する「価値観の変容」や「人材の流動化」が激化している近年の状況において、自社の従業員を流出させない施策であるリテンションを行うことは、企業にとって重要な「経営課題」となっています。
この記事では、リテンションの人事用語としての意味と注目されている背景、リテンションのメリット、リテンションを高める方法、リテンションの要素について解説します。
離職予兆の分析から離職防止までを可視化
リテンション(retention)とは
リテンション(retention)とは、英語で「保持・維持」という意味を持つ言葉で、主にマーケティングと人事領域で使用されています。
マーケティングでのリテンションとは、「既存顧客との関係性を維持する施策」のことを指します。
人事領域でのリテンションとは、「企業内の優秀な人材を定着させるためのさまざまな施策」のことを指します。
一般的に、退職者が出ることで「採用コストの増加」や「機密情報の漏洩リスク」など多くの損失が発生するため、企業は積極的に離職防止の取り組みを行い優秀な人材を確保する必要があるという背景から、リテンションが注目されています。
厚生労働省による「雇用動向調査結果の概況」によれば、契約期間の満了を除いた転職理由は「収入」「人間関係」「労働時間などの労働条件」に関連していることが多いです。
リテンション強化によって、転職理由に対する課題にアプローチすることが可能なため、人事担当者はリテンションに対する理解を深めておく必要があります。
(参考)厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」
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リテンションが注目されている背景
リテンションが注目されている2つの社会的背景について確認してみましょう。
リテンションが注目されている背景
- 価値観の変容による人材の流動化
- 団塊ジュニア世代の離職
価値観の変容による人材の流動化
総務省統計局が行った「直近の転職者及び転職等希望者の動向について」の調査結果によると、日本では2013年以降、転職者が年々増加傾向にあり、2019年には過去最多の366万人を記録しています。
2020年には327万人、2021年には287万人と、新型コロナ感染症拡大の影響で大幅に減少しましたが、2022年には313万人、2023年には325万人と再び増加傾向にあります。
また転職理由として、事業不振などの「会社都合」よりも、経済状況に関わらず「より良い条件の仕事を探すこと」を目的とした転職者が増加しているようです。
さらに、日経HRの「ウィズコロナ時代の転職」の調査結果によると、新型コロナ感染症拡大によって「柔軟な働き方が推進されていない」や「自分を見つめ直して、より注力したいことに時間を使いたいと思うようになった」などを理由に転職意欲が高まった人は57%にものぼります。
社会状況の変化も影響して、1つの会社に固執することなく転職する労働者が増加する可能性が予想され、転職者が増加傾向の中、自社の従業員の離職を防ぐためにもリテンションの強化が注目されています。
(参考)総務省統計局の「直近の転職者及び転職等希望者の動向について」
(参考)日経HR「700人が回答!ウィズコロナ時代の転職意識調査『転職意欲が高まった』が約6割に」
団塊ジュニア世代の離職
日本で、団塊世代に次いで人口が多い世代が、第二次ベビーブーム時の1971年〜74年に生まれた「団塊ジュニア」と呼ばれる世代です。
団塊ジュニアの世代が2021年に50代に差し掛かることで、退職者の増加が危惧されています。
人口が多い団塊ジュニア世代が多く退職することにより、人材の流動がさらに進む可能性があり、団塊ジュニア世代から受け継がれた知識やノウハウを在職中の従業員や新入社員に定着させる必要があります。
人口が多い世代の退職が今後見込まれることからも、知識やノウハウを定着させるためにリテンションの強化を行い、現在の従業員を確保しておく必要があります。
リテンションのメリット
リテンションの強化で人材確保の施策を実施することには、「優秀な人材の定着」以外にどのようなメリットがあるのか確認してみましょう。
リテンションのメリット
採用コストの削減
知識やノウハウの蓄積
経営の安定
採用コストの削減
退職者が出ると新しく人材を採用する必要があり、採用コストが必要になります。
また、採用コストに加えて、採用後の育成費用も必要となり多大なコストが掛かります。
リクルートの「就職白書2020」によると、2019年度1人当たりの平均採用コストは新卒採用で93.6万円、中途採用で103.3万円であることが分かっています。
離職率が高い企業では、従業員が退職する度に採用コストが発生し、本来リテンションを強化していれば必要のなかったコストが掛かってしまいます。
リテンションを強化して従業員の退職を防ぐことが可能になれば、人材を補完する必要が無いため採用コストの削減につながるのです。
(参考)リクルート「就職白書2020」
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知識やノウハウの蓄積
従業員が退職すると、せっかく定着させた知識やノウハウが会社に蓄積されずにそのまま流出してしまう可能性があります。
また、退職した従業員の後任に対して再度育成を行う必要があり、時間と労力が必要になるというデメリットも発生します。
さらに、優秀な人材が退職してしまうと、同等の知識やノウハウの完全な引き継ぎができない可能性もあります。
リテンションの強化で在職中の人材を引き止めることは、知識やノウハウが流出することを防ぎ、従業員の退職によって新たに育成コストが発生することを防止するメリットがあります。
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経営の安定
リテンションの強化を行うことで、優秀な人材を逃さずに確保することができるため、経営の安定が期待できます。
社内に長く在籍する優秀な人材は、企業への帰属意識や忠誠心が強い傾向にあるため、企業貢献度が高いです。
さらに、長く社内に在籍する従業員ほどパフォーマンスが安定し向上する傾向があることから、企業は安定したパフォーマンスで貢献してくれる人材を確保することで業績の向上が期待でき経営を安定させられるのです。
また、リテンションを強化することは人材の流出を防ぎ、企業が人材不足に陥るリスクを回避できるため、企業は長期的な人事戦略や事業戦略が立てやすくなります。
リテンションの強化で戦略設計の面においても安定した経営を行うことができるでしょう。
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リテンションの2つの要素
リテンションの2つの要素として「金銭的要素」と「非金銭的要素」について確認してみましょう。
リテンションの2つの要素
金銭的要素:給与などの金銭的な報酬で人材確保を図る施策
非金銭的要素:金銭に関わらない要素で人材確保を図る施策
金銭的要素によるリテンション施策
金銭的要素とは、給与など金銭的な報酬によって人材確保を図る施策のことを指します。
金銭的要素に関連する施策として、「給与体制の見直し」と「福利厚生の充実」について確認してみましょう。
金銭的要素によるリテンション施策
- 給与体制の見直し
- 福利厚生の充実
給与体制の見直し
従業員の離職を防ぐために効果的な金銭的要素の施策には、「給与体制の見直し」があります。
厚生労働省の「雇用動向調査結果の概要」によると、離職理由として「その他個的な理由」を除いた場合、男性は「労働時間や休日などの労働条件」が9.1%、「職場の人間関係」が8.3%、「給与などの収入」が7.6%となっていて、女性は「労働時間や休日などの労働条件」が10.8%、「職場の人間関係」が10.4%、「給与などの収入」が6.8%となっています。
調査結果から、給与など収入の少なさが離職につながる要因の1つであることが分かり、給与体制の改善が離職防止に役立つと言えます。
また、従業員が成果に見合った報酬を得られているかに着目して、「評価制度」を改善する必要がある場合も考えられます。
具体的には、従業員の成果と連動させたインセンティブを付与するなどして、従業員の貢献度に対して報酬が妥当になるように設定する方法もあります。
(参考)厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」
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福利厚生の充実
「福利厚生の充実」も金銭的要素の1つに含まれます。
金銭的要素は従業員の生活を担保するための基盤となるため、金銭的要素への不満が発生してしまうと従業員の離職率は高くなる可能性があります。
従業員の定着を図るためには、金銭的要素を満たすことが効果的な施策の1つであると言えます。
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非金銭的要素によるリテンション施策
非金銭的要素とは、職場環境など金銭に関わらない要素で人材確保を図る施策のことを指します。
金銭的要素の改善を行っても人材の流出が防げない場合は、従業員の企業に対しての「帰属意識」がないことが考えられるため、非金銭要素からの改善を行い、「従業員エンゲージメント」と「従業員の貢献度」を向上させる施策が必要です。
また、金銭的要素の改善による従業員の定着は一時的な効果であるのに対して、非金銭要素の改善による従業員の定着は継続的な効果があると考えられます。
randstadの「新型コロナウイルス発生後働き手が求める意識調査結果レポート」によると、勤務先を選ぶ際に働き手が求めるものとして、「職場環境が快適である」が45.5%、「福利厚生が充実している」が43.9%、「勤務地の利便性が高い」が40.2%と、「職場環境」を重視する傾向が強まっており、企業は従業員を確保するため、働き手の価値観に沿った効果的な施策を打ち出すことが求められています。
金銭的要素に関連する施策として、「組織風土や文化の醸成」「働きやすい職場環境の整備」「ワークライフバランスの推進」「能力開発」について確認してみましょう。
非金銭的要素によるリテンション施策
- 組織風土や企業文化の醸成
- 働きやすい職場環境の整備
- ワークライフバランスの推進
- 能力開発
(参考)randstad「新型コロナウイルス発生後働き手が求める意識調査結果レポート」
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組織風土や企業文化の醸成
リテンションのためにまずは、企業の基礎となる「組織風土」や「企業文化」を確立させる必要があります。
従業員が共感しやすい習慣や文化を形成することで、従業員の企業に対する理解が深まり、貢献度を高めることができます。
具体的な取り組みとしては、「コミュニケーションの活性化」「経営理念の浸透」があります。
コミュニケーションの活性化
従業員同士で相互に感情や情報を共有し合うことで、共通の目的を達成する意識が醸成されることが期待できます。
経営理念の浸透
経営理念は、会社の存在意義を表す最も重要な要素です。経営理念を従業員に浸透させ共感を得ることで組織として一体感のある企業文化を醸成する効果が期待できます。
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働きやすい職場環境の整備
「働きやすい職場環境を整備」することの最大の目的は従業員の不満を軽減させエンゲージメントを向上させることにあります。
定期的に従業員の不安がどこにあるのかを把握して改善を行なっていくことが重要です。
具体的な取り組みとしては、「サンクスカード」「心理的安全性を高める」「評価制度の見直し」があげられます。
サンクスカード
定期的に従業員同士で褒め合うことで、エンゲージメントの向上が図れます。
心理的安全性を高める
心理的安全性の高さは、従業員の職場での居心地の良さに直接関係がある重要な要素であると言えます。また、心理的安全性を高めることは組織の活性化にも繋がるため、職場で心理的安全性が担保されているかを定期的に確認すると良いでしょう。
評価制度の見直し
従業員にとって、自身の仕事量と与えられる評価が見合っていないと仕事へのエンゲージメントも低下してしまいます。結果として不当な待遇を受けていると感じてしまい、離職につながる可能性もあります。従業員の不満を汲み取り、適切な評価を行うようにすることは従業員のエンゲージメント低下を防ぐために重要な要素であると言えます。
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ワークライフバランスの推進
非金銭的要素でリテンションを強化する方法として、「ワークライフバランスの推進」があげられます。
働き方改革によるワークライフバランスの推進によって、仕事と生活を充実させ、従業員のエンゲージメントを向上させることの重要性が高まっています。
具体的な取り組みとしては主に、「労働時間の見直し」「多様な働き方の提案」「休暇制度の充実」があげられます。
労働時間の見直し
仕事と生活の両方を充実させるためには労働時間を適切な長さにする必要があります。2019年の「労働基準法」の改正によって、残業時間の上限規制がより厳しくなり、残業時間の把握や残業の抑制指導のための仕組み作りの重要性がさらに増しています。労働時間の見直しについては、勤怠ツールなどを活用して効率的に取り組みを進めることがおすすめです。
多様な働き方の提案
企業は従業員がエンゲージメント高く働くために、育児制度やフレックスタイム制を導入して仕事と生活を両立させる支援を行う必要があります。
休暇制度の充実
休暇制度を充実させることもワークライフバランスの推進として重要な施策の1つです。従業員に仕事と生活に緩急を付けさせることでエンゲージメント向上を図れます。
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能力開発
非金銭的要素でリテンション強化を実施する施策として「能力開発」があげられます。
従業員の能力開発を行うことは、従業員の成長機会の創出に繋がり、働きがいを満たす要素の1つとして機能します。
企業が従業員のライフスタイルに合わせたキャリア形成やスキルアップをサポートすることは、従業員の貢献度とエンゲージメント向上に重要であるとも言えます。
具体的な取り組みとしては、「社内公募制度や社内FA制度」と「研修やセミナーの開催」があります。
社内公募制度や社内FA制度
社内公募制度とは、外部からの人材を採用するのではなく、企業の内部で各部署が人材を募り確保する制度のことで、社内で意欲のある人材を適所に配属することができます。
反対に社内FA制度は、部署が人材を募るのではなく、従業員自身がスキルを売り込んで希望する部署や職種へ異動することを指します。
どちらも、従業員が自身のスキルを活かしてエンゲージメント高く組織に貢献できるというメリットがあり、能力開発に効果的な制度であると言えます。
研修やセミナーの開催
従業員のスキルアップを促進するためには、研修やセミナーを開催して学習の機会を与えることも効果的な手段です。
従業員が業務に必要な能力を学ぶことは、従業員自身の成果向上を可能にするため、仕事により意欲的に取り組むきっかけとなります。
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リテンションを強化するためのポイント
リテンション施策にはさまざまな取り組みがあり、人材を効果的に確保するために、自社にとって何が1番効果的で何から取り組めばいいか分からないという場合もあります。
社内の離職率が高いという問題に対して、組織のどこに改善余地があるのか分からないままリテンションを強化するための施策に取り組んでしまうと、リテンションの強化が実現しない可能性もあります。
リテンション強化に取り組む際のポイントとして、「アンケートやサーベイによる課題把握」「施策の優先順位付け」を行うことが大切です。
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リテンションによる先回りのケアで離職を防ぐ方法
リテンションの1番の目的は、現在所属している人材の確保です。
人材が流出しないためには退職傾向のある従業員を事前に把握することが大事です。
従業員が退職を意識してから、引き留めるのでは手遅れな場合もあります。
人材の流出を本当に防ぐためには、従業員の不満が発生しないように先回りのケアを行うことが重要であると言えます。
先回りのケアを行うためには、従業員のコンディションとストレス状態の把握や、エンゲージメントの把握を定期的に実施することが効果的です。
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リテンションは企業にとって重要な経営課題の1つ
リテンションとは、「企業内の優秀な人材を定着させるためのさまざまな施策」のことを指します。
労働に関する「価値観の変容」や「人材の流動化」が激化している近年の状況において、自社の従業員を流出させない施策である、リテンションを行うことは企業にとって重要な「経営課題」となっています。
リテンションを行うことで、「採用コストの削減」「知識やノウハウの蓄積」「経営の安定」などのメリットがあります。
リテンションを強化する施策には、さまざまな取り組みがあります。
リテンション強化に取り組む際は、組織課題の把握を行うことが大切です。
また、従業員の退職を防ぐためには、従業員が退職の意志を持つ前に、ストレスチェックやコンディションチェック、エンゲージメントの調査を行い、離職の兆候を事前に把握し対策を実施することが大切になります。
「HRBrain タレントマネジメント」は、離職予兆の分析から離職防止までを、従業員のモチベーション状況などの人材データをもとに、見える化します。
さらに、従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、育成履歴、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、OKRなどの目標管理、1on1やフィードバックなどの面談履歴などの一元管理も可能です。
HRBrain タレントマネジメントの特徴
検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
▼「タレントマネジメントシステム」についてさらに詳しく
【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
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